103 モフモフうさぎの確信
「お姉様はどこに居るのっ、ねえっ姉様は」
急に慌てた様子を見せるリサ。
「聞いてくれリサっ。どうしてロゼッタがライジングサンの技を使えるんだ? おかしいと思わないか? 俺が感じた通りなら、その理由にも納得がいく」
「うさぎ、何の話なの? リサにはよくわからない」
「リサ、ロゼッタとイザヤの事だ。俺さ、イザヤと会った時にロゼッタの雰囲気を感じたんだ。あの時俺はライジングサンに憑依されていた……」
空に浮かぶ魔方陣の輝きが増していく。見上げるモフモフうさぎ達もその光の照らされて、辺りは真昼のようになった。
「イザヤが消えると、ロゼッタも消える。そんな気がする。間違いないんだ」
◇
本日のお食事会に参加していた、ゲーム情報誌[リアルナウONLINE]のカサハラが、アンタレスONLINEを擁する今回のイベントの主催者、タチバナコーポレーションの用意したゲストルームで身を起こした。
リクライニングチェアー型のVR装置に身を横たえているのは、カサハラだけでなく今回食事会に参加したゲスト達全員である。
カサハラは周りを見回した。隣に放心した様子の外国人が居る。
「あなたもやられましたか。まさかゲームの中で殺されるとは思いませんでしたねぇ」
「Sorry,can you speak English?」
カサハラが話しかけた外国人が、英語で返事をした。
「あっそうか、もう話が通じないんだった。ノーノー、アイ キャン ノット スピーク イングリッシュ」
颯爽と会話を断って、日本人を探すカサハラ。確かこの会社の社長や副社長が2列前でダイブしたはずだった。まだ立ち上がって動き回る人も無く、ここを管理する職員も何が起きていたのかこの部屋では確認していないようだ。カサハラが立ち上がっても、トイレか何かと思っている様子だった。
2列前に行くと凄腕エースプログラマーで副社長のランスロック岩井が上半身を起こした所だった。
「こんにちは、わたくしゲーム情報誌[リアルナウONLINE]のカサハラと申します。岩井副社長でよろしいですよね」
小さな声でカサハラが声を掛けた。
「あっ、いかにも岩井です。いやいやいや、皆さまには多大なるご迷惑をお掛けしてしまいまして面目ありません。いや、ほんと申し訳ない」
頭をかいて平謝りする岩井の前で、周りから見えないように腰を下ろしてカサハラが小声で話す。
「あの、岩井副社長。今回のイベントはどこまでですか? 退場した我々はもう終わりなんでしょうか?」
「いや、まだ全然。私なんてまだスピーチすらしていないんですから。そう言えばあなた……笠原さんもあの女に消されたんですよね」
笠原のネームプレートを見て名前を確認しながら岩井が言った。確か同じ列の4、5人先に座っていて、あの女NPCに先に消された人だ。自分もあの女に消されたわけだが。
「副社長も、もしかしてあの女にやられました? あの美人はプレイヤーでは無さそうでしたが」
「その通りです。あれはAI、アンタレスの中で自由に動く独立行動型の人工知能で、我々はユニークキャラと呼んでいるキャラクターの1人です」
岩井に確信は無い、だがユーザーにあのような力が使える設定はしていないのだ。
「じゃあ、今回の出来事は計画したものでは無くて、たまたまその人工知能が邪魔をしてきたと言う事で?」
笠原の記者魂に火が付いた。スクープだっ。今なら他のメディアよりも先に重要な情報を手にする事が出来る。
「正直予想外です。もう一回行ってみますか? というか殆どの人がやられたらしい」
苦笑いを浮かべて背後を振り返った岩井副社長。だが隣のVR装置の橘社長は横になったままだ。
「どうやら我が社の社長はまだ無事のようです。行かないと」
「私も行きます。あっ、副社長、最後に」
「はい」
「アンタレスは化けますよっ。とんでもないゲームです。ネットの噂は本当でしたし、我が社は総力を挙げてアンタレス特集を組みます、その時はどうぞご協力の程、宜しくお願い致します」
「いやいや、こちらこそ。では先に行ってみますね。あっ、笠原さん。次にログインする画面でアクエリアの城を選んで下さいね。特別にゲートを用意していますから。噴水広場を選ぶとまた城まで歩かなければならないですよ」
「あっそうですか。わかりました。では、また後ほどお会いしましょう」
岩井副社長が係の人を呼んでいる。どうやら起き上がった人に再度のログイン先を伝えるように指示を出しているようだ。
笠原は再びVR装置に身を横たえて、アンタレスONLINEの世界へダイブして行った。




