46 花雅 別邸 ラヴィの豪邸
「ラヴィちゃん、ちょっといいか」
嫉妬に駆られたモフモフうさぎがラヴィに詰め寄る。
「さっきのは何だ! んっ、申してみよ。『 おかえりなさいませ、ご主人様っ? 』 さすがに俺もリサの代わりにひと言、物を申すぞっ」
花雅のエントランスホールは和の中に洋風のテイストを加えた、レトロモダンな仕上がりになっている。
モフモフうさぎは玄関から入った瞬間に、可愛らしい女中さん達に囲まれるラヴィを眺めて、物凄く差をつけられた気持ちになってしまっていたのだ。
そして、もう1人機嫌の悪い人物が居る。
「リサ、もう帰る」
「待ってリサ、ゲートが閉じているから帰れないし、外はもうすぐ暗くなるから駄目よ」
「リサ、ここは少し冷静に」
引き返そうとするリサに、リハクとロビーが声を掛けた。
「帰れなくてもいいもん、リサはどこかの宿に1人で泊まるから。 女の子のひとり旅だもん」
「駄目、危ないから」
「じゃあロビーも一緒に来て」
「えっ? あっ、リハク様も一緒になら別にいいけど」
ロビーがリハクを見つめ、どうするか決めかねているリサが口を膨らまして座り込んだ。
「リサっ行こう」
ラヴィが女中達の輪から戻ってきてリサの手を取ろうとする。
「リサはローズと話しがあるの。 だからロビーとリハクは2人で別の宿を探しておいてねっ。 リサのお願いなのっ」
ラヴィに手を取られてロビーに背中を向ける瞬間、リサの口元に笑みが浮かんだのをロビーは見逃さなかった。
(ありがとうリサ、さすが心の友よ。 このチャンス、掴んでみせるわっ!)
「リハク様、行きましょう。 あのように女に浮ついたラヴィに振り回されるリサの為にも、どこか別の宿を見つけて今夜はしっぽりと更ける夜の時間をすごしましょう」
勢いよく手を引かれ玄関から連れ出されたリハクは、ロビーの少し強引なところに振り回されている自分が嫌な気分では無い事に気がついていたのだった。
◇
ロビーとリハクが消えた後、静々とラヴィに手を引かれるリサ。
(さっきリサって怒ってなかったっけ?)
そんな事を考えながらモフモフうさぎが続く。
花雅の受付から右に向かってすぐに、和風庭園の竹林の中を走る小径に出た。 下から照らすオレンジ色の照明が、緑の竹林を暖かい印象に変化させていた。
しばらく歩くと竹林が途切れ、平屋の大きな家が現れた。
「着いたよ、ここが花雅別邸。 温泉付きの僕の家なんだ」
「またおかえりなさいませっ、とか言われるんじゃないのか?」
「大丈夫、この家には誰も居ないよ。 僕が居ない時は花雅の人が手入れをしてくれてるけどね」
「いいなぁ、ラヴィちゃん」
玄関から中に入ると、靴を脱ぐようになっていた。
「完全に日本だなっ」
ブーツを脱ぎ散らかして廊下を先に進むモフモフうさぎが声をあげた。
「縁側になってんのか。 庭が凄え、星も見えるし。 あっあの煙は露天か?」
「うん、庭の向こうに露天風呂があるよ」
「混浴か?」
「ダメ」
「ちっ」
「お姉様に言いつけるんだから。 エロうさぎっ」
「じゃあラヴィちゃんはリサと一緒に入るのか?」
「えっ……」
顔を赤らめて障子を開いたリサが、部屋の中に入る。
「おっ、畳っ。 懐かしい」
「モフモフさんの部屋ってフローリング?」
「うん、畳なんて久々だしこの畳、新品の匂いがする。 やっぱ畳はいいなあ」
ベタな日本人の感想を述べるダークエルフのモフモフうさぎ。 畳の上に背の高いエルフが寝っ転がって感触を確かめる様子は、違和感ありまくりの様相であった。
「先に風呂に入る?」
「もちろんっ」
「じゃあ露天風呂は縁側をずっと進んで行くと、庭に伸びる渡り廊下があるから、そこを渡ると露天風呂だよ。 一応男湯と女湯と分けているから、間違わないようにね」
「ラヴィちゃんはどうするんだ?」
「リサとちょっと話すよ。 さっきのを謝らないといけないしね」
「そっか、わかった。 じゃあ露天は俺が独り占めしとくぜっ。 風呂じゃぁぁぁ」
子供のように縁側を走って行ったモフモフうさぎを見送って、ラヴィがリサの方を向いた。




