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35 天空に舞う炎の竜

 天空に舞う炎の竜、それは紅竜リハクであった。


 何者かにエリスロギアノスが襲われて、リサ様が墜落するエリスロギアノスを救おうとしていた 。それだけがわかっていた。



 ── エリスロギアノスの胴体に、穴を開けた敵がどこかにいる。



( モフモフうさぎはどこだ? 奴に預けたドラゴンオーブの感覚は森の中から伝わって来るが)


 巨大樹のそばから空に舞い上がった紅竜リハクが目にしたのは、眼下に広がる深い森と円形に落ち込んだ窪地。そして窪地の縁から一直線に遥か彼方まで続く、黒く焦げた煙の立ち昇る道であった。


 明らかに尋常ではない光景を見て、紅竜リハクを包む炎が一層厚くなる。炎を引きずるほどの炎を纏った竜が窪地の上空を旋回した。



 グゥォガァァァァァ



 空気を震わす咆哮が地面に向かって放たれた。竜の目は窪地の底を見ている。そこに居るのは首無しの人型アダムス。ノロノロとした動きを止めたアダムスの、白みががった体が黒くなり赤い線が混じり始めた。



 ── アダムスの手が空に、竜に向けられる。



 首無しの人型、アダムスが紅竜リハクに向かって赤黒いビームのような魔弾を放った。竜の翼は熱波の塊を空中に残しながら羽ばたいている。飛んでいる竜を狙ったアダムスの魔弾は、熱で屈折した場所で方向を変えて外れた。


 ── 威力の程度が知れた。


 ならばとスピードを増した紅竜リハクが、高度を下げてアダムスに直線で迫る。


( 今の禍々しい攻撃、あれがエリスロギアノスをやったのか? )


 真っ直ぐに迫って来る竜に向けて、アダムスが再び魔弾を放った。今度は両手を突き出し、1発ではなく2発、3発と立て続けに連射する。


 魔弾は向かって来る竜に直撃している。しかし構わず突っ込んで来る竜に気づき、アダムスの右手が変形して、死神の鎌のような武器を一瞬で造りだした。


 アダムスの背丈よりも長い鎌の部分がゆるりとカーブを描く巨大な鎌。刃渡りが15mはありそうな鎌を、奴は竜殺しに使おうとしている。



 ズバババババッ



 ── 光刃乱舞



 窪地の縁から光の刃がアダムスに向かって降り注いだ。


( うさぎ、そこに居たか )


 アダムスに光刃が斬り込む直前に、魔法陣が浮かび上がり受け止めていく。予期せぬ方向からの攻撃を受けて、アダムスの注意がリハクから逸れた。


 真っ直ぐにアダムスに向かって飛んでいた紅竜リハクが両の翼を横に広げて急激にスピードを落とした。地面に降りる直前に熱波の塊をアダムスに向けて撃ち込む。


 音のせぬ熱の塊がアダムスに迫る。わずかにボヤける空気の境目に気づくには、アダムスとリハクの間の距離は近すぎだった。


 巨大な鎌がアダムスの手から剥ぎ取られて背後に飛んで行った。アダムスの防御用の魔法障壁が作動していない。熱波の塊を攻撃されていると判断出来ないアダムスに、容赦なく熱い空気の塊がぶち当たっていく。


 膨張する熱い空気を、翼で巨大な風船のようにまとめて撃ち出すリハクの攻撃は、強大な魔力で作り出す炎よりも時に危険で防ぎようのない物と言えた。


 熱波で体の表面がただれて、右腕は肩から先がちぎれて飛んでいってしまったアダムス。



 ドゥンッ



 重力を正面から受けるような圧力の波が紅竜リハクから発せられた。



 ── ドラゴンの魔力の鼓動。



 再びアダムスから剥がれ落ちていくのは、身体を構成する物質ではなく、魔法障壁である魔法陣だった。


 ドラゴンが放つ魔力の波動は、特別な物。


 ガラスが粉々に砕けていくようにキラキラとした粒子が流れて、完全に丸裸となった首無しの人型アダムス。



 ザンッ



 空から稲妻が舞い降りて、一刀両断された人型の残骸は、もはや再生することも無く、今まで越えて来た時を取り戻すかのように朽ちて地に還って行った。


「リハク」


 灰色の砂が消えて地面が土の色に変わって行く場所の中から立ち上がったモフモフうさぎが、竜の姿のリハクに声をかけた。


「うさぎ、森の大樹に船はある。木の下にはリサ様が倒れていらっしゃる。船の中の皆は?」


 今は竜であるリハクが念話を使ってモフモフうさぎに伝える。


「誰も返事が無いんだ。船へ急がなきゃ、上の砲台は俺が潰したからここにはもう敵は居ないはずだ」


(ロゼッタの声がしない)


 地面を蹴り上げてモフモフうさぎが船へと向かう。窪地からも巨大樹の山形に伸びた樹上が見える。おそらくあれを作り出したのはリサだろう。


 エリスロギアノス号は、樹の太い枝に絡めとられまるで樹の中に埋め込まれたようになっていた。木々の間に少しだけ白い場所があった。


 がっしりとした太い枝に降り立つと、モフモフうさぎは枝を伝ってエリスロギアノスに駆け込んで行くのであった。

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