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28 果樹園を作る場所

「そう言えば……」


 モフモフうさぎが何か言いかけて黙った。隣に座るロゼッタは確か船から降りたはずだった。


「何?」


「あ、いや、なんでお前が乗ってんだ? スワンの手伝いをするって朝言ってなかったっけ」


「まだそんなに急いでるようでもなかったの。それにこの船と私の屋敷は繋いであるし、私の屋敷はアクエリア城と繋がっているでしょ。その気になればすぐ帰れるのよ」


「うーん」


 微妙に納得していないモフモフうさぎ。空間を繋ぐ事が出来るのなら、今この船でわざわざ時間をかけて遠くまで行く必要はあるのだろうか。誰か自分と同じ考えの人は居ないかと周りを見回したモフモフうさぎの目には、至極真面目にマップと外の地形を見比べて、何か1人で納得しているラヴィの姿が映った。


「これで良いのかな……?」


 ロゼッタの方を向いて首をかしげたモフモフうさぎ。


「いいのよ、だってあなたもGMなんでしょう」


「いや、GMったって他のGM達はこんなにズルはしてないと思うぞ」


「わからないわよ、だって他のGMはそれぞれ自分の元のサーバーをクエストフィールドとして使っているし、そちらの方は私達もノータッチでしょう。たまたまメインサーバーとなった私達の世界が少しだけ便利になってもそれは仕方ないと思うわ」


 なんだか納得しなきゃならないような説明をされて、頭がこんがらがったモフモフうさぎは、立ち上がってラヴィの隣に並んだ。


「ラヴィちゃん、リハクはまだ船内を探索中か?」


「いやちょっと違うけど、そんな感じかな。少し羽を伸ばすって外に繋がっている部屋に入って散歩に出かけたんだ。 そのうち帰って来るって言ってたよ」


「その部屋って何かあったの?」


「別に何も。草原と森と山と空があっただけかな。風が気持ち良かったよ」


「ふーん。リハクは飛んでるのかな」


「たぶん飛んでると思うよ。扉は閉めとけって言ってたし」


「他には何か面白い部屋とかあった?」


「鍵が掛かっていて開かない部屋が多かった」


「まだ中を決めてないもの」


 ロゼッタが寄って来て言った。そのまま手を伸ばしてマップを押すと、空間に表示されていたマップはそのままスライドして左舷の方へ移動した。代わりに前方の内壁に投影された外の映像が見やすくなった。


「ほら見えてるわよ、拡大するわ」


 確かにエリスロギアノスを示す黄色い点滅は、マップの上の赤い点のすぐそばまで来ていた。ロゼッタが前方を見て目的地だと思う場所を特定すると、マップを消して皆が見える正面に拡大して映し出した。


「あそこが果樹園を作る場所?」


 良く見ようとラヴィとモフモフが、森が切れたように見える場所に注目する。ロゼッタは操縦しているリサの側にやって来て言った。


「リサ、あの場所を中心に旋回して」


「了解!」


 リサは勢いよく舵を右にきった。



 △▽△▽ △▽△▽



 空から見る果樹園の建設予定地は、森の中に突然現れた円形の窪みの中だった。ドーム球場とほぼ同じぐらいの広さで、窪みの深さは50m程ある。円形に縁取られた壁は垂直に切り立ち、蔦や植物の葉で覆われていた。


 窪地の内部、底の部分は土の露出した大地で高い木も見当たらず、エリスロギアノスを着陸させるのに問題は無かった。


「さっき見た限りじゃ、モンスターも居ねえ」


 円形の窪地の中央部の上空にホバリングして、下を覗き込むモフモフうさぎ。ロゼッタは壁に拡大した画像を映して確認している。


「お姉様、窪地の全景スキャンが終わったの。今から立体映像を出すから、うさぎどいて」


 リサがコンソールを操作して、さっきまでマップが表示されていた場所に窪地を三次元映像で映し出した。


「あれっ平らに見えたのに。なんか地面って平らじゃないみたい…… 中心が盛り上がってる?」


 ラヴィが窪地の立体映像を見て、底の大地を指でさして言った。そこに何かが埋まっているのか、見方によれば人為的に造られたようにも見える。


「リサ、スキャンの深度を地面よりも下にしてみて。取り敢えず地表よりも30mに設定」


 ロゼッタが壁に地面の映像を拡大した状態で言った。


 ── 数秒後に窪地の立体映像が更新されていく。


「なんだろこれ?」


「何かあるね、いや居るねの方が正しいか」


「リサ何か嫌な感じがする、船は降ろさない方が良いかも」


「お父様はなぜこんな場所を選んだのかしら?」


 腕組みをしたロゼッタが首を傾げる。その様子を見ていたラヴィがモフモフうさぎに近づいて耳元で囁いた。


「モフモフさん、もしかしてこの船ってさ、ロゼッタのイメージがかなり色濃く反映されてない?」

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