25 初日終了
「黒い月よ世界を照らせっ! メ・テ・オ・ン」
シーン
「あれっ?」
カニバリズマーが素っ頓狂な声を出した。
「ダッサ、見た? 煙となんとかは高い所が好きって言うけど、今なんかやってなかった?」
モフモフうさぎが宙に浮かぶカニバリズマーを指さして言った。
「うん、両手を挙げて、黒椅子よ世界を照らせっ! メテオ? って言ってたよ。ププッ、何も起こらねぇし」
さっきカニバリズマーがメテオンを唱えた姿を真似をして自分で大受けしている。
「ラヴィちゃん、笑ったら怒られるよ。ちなみに黒椅子じゃなくて、黒い月って言ってたから……滑舌悪そうね、あの人」
モフモフうさぎとラヴィアンローズ、そして白刃のロビーは、頭上20m程の空中に浮いているカニバリズマーとイザヤを地上から見上げて、それとなく聞こえるようにわざと大きな声で話した。
「なぬっ……しまったーっ! メテオンって、HPとMPを残り1にする代わりに放てる魔法だった……我ながら迂闊、回復せねばならないっ」
(一回死んでこい、カニバリズマー。さすがにダサすぎるわ、お前)
「聞いた? モフモフさん。あいつ今HP1なんじゃないの?」
「届くかな? 俺からのプレゼントーーーッ」
そう言うと、モフモフさんは短剣を空中のカニバリズマーに向かって投げた。
ズバッ
「えっ? 俺、そんなバナナ」
しょうもないダジャレを残してカニバリズマーが地上に落下する。
「あははははははははは、そんなバナナー」
「くっくっくっく、あはははっバナナッて」
「あはっ、あはっ、あはははっ、ごめんね、笑って、ごめんなさいっ、くっ苦しい」
カニバリズマーの呆然とした表情と、散り際の言葉が面白すぎて、笑い転げる3人。
(Rダサすぎ、やってらんねぇ)
空中から、紫紺の美姫 イザヤの姿が消えた。
「うおーっ」
「どうした? モフモフさんっ」
「遂に加護付与が来たー!」
「何、何、何?」
「わぁ、おめでとうっ。でもチャットじゃないから分からないね。どんな加護?」
「えっと、長いけど読むよ。
えー、ユニークモンスター
" 暗黒の不死者 "
討伐報酬、
称号付与:Knight of Nightmare、
報酬:ライジングサン(ユニーク武器、種族に応じて変化)
加護付与ボーナス:英雄の誉れ(全パラメーターが1.2倍)、英雄の風(パーティメンバーの全パラメーターが1.2)だって」
「すげぇ、ライジングサンって何?」
(いきなりユニーク武器ってすげえよ)
「モフモフさん、だけなの? うらやまっ」
腰に手を当てて、頰を膨らませてロビーちゃんが言う。
「あぁっそんなー、ロビーちゃんそんなつもりじゃ」
「うそよっ、気にしないで。 というか消えたね、上にいた黒い女も」
「本当だ、でもまた来るかもしれないから街に入ろうよ。そんなバナナって奴、頭悪そうだからさ」
「しつこそうだしね、街で見せてねライジングサン」
「オッケー、じゃあ行こう!」
「街にいたGMさんはまともだったから、ラヴィちゃんお話を聞いてみてね。お詫びって言ってたから」
「わかったぁ」
(ネカマを暴露した件だよな。凄く傷ついたって言ってみよっ)
「ラヴィちゃん、私にも青いオーラかけて!」
「んっ、あぁいいよ。近くに来て、モフモフさんも。うん、その辺でいいよ。じゃいくよー」
(ロビーちゃんの前で初披露だよっ。ちょっと顔がにやけそう……我慢、我慢)
ラヴィアンローズが厳かに呪文を唱える。
「光の守護の恩寵をホーリークロスッ」
呪文を唱えた瞬間、ラヴィアンローズを中心に直径10mぐらいの青白い光の魔方陣が足元から浮かび上がり、残像を残して3人を包み込んだ。
「うわぁ、身体が青白く光ってる!」
「どう、どう?」
「不思議、なんか異世界に来てる〜って感じが初めてしてる」
「行こっか」
俺たちは、モフモフさんを先頭に吊り橋を渡って街へと入って行った。
♬♬♬♬
「カル、R、おーいっどうなってる? 返事しろっ」
GMスワンは、GMカルとGMバッドムRと繋がっているはずのチャットで何度も呼びかけていた。
先程、街が揺れてバキバキっと街のどこかが壊れた様な音がした。さすがに何かヤバイ事が起きたことはわかっている。しかし、あくまでも懸念でしかないが、この異変をもしもGMカルとGMバッドムRが引き起こしたのであれば、この公式掲示板の荒れ具合はどう収めれば良いのだろうか?
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プリンプリンス>終了ー
ハンマーボキッ>お通夜……ちーん
ロマンプール>INしたら、隕石。シャレにならんっ
sniper郷>ゲート潰れたんじゃねぇ? 入れないぞ今
蘭丸Ⅲ>祭りじゃ、祭りじゃ
青い空>私も潰されました、乙カレー
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どんどん書き込みが増えていく
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(何をやったんだ? 隕石? 街にぶつけた? 巻き添えのプレイヤーが多数いる模様、スポーンゲートも破損? )
「まずいなー、あいつらが来ないと収拾がつかない。もうどうする? 1回メンテで巻き戻しするか? 」
GMスワンが独り言を言う。
「あっ、まだ居た。GMさーんっ」
白刃のロビーが手を振りながら走って来る。その後から、2人の人影が見える。
(あれはネカマのラヴィともう1人のモフモフうさぎだな。うちのカルとバッドムRはどこに行った?)
「こんにちは〜、と言うかリアルならこんばんは〜だな。初めてまして、GMスワンさん」
GMスワンは、頭の上の名前表示をonにしていた。
「初めてまして、GMスワンです。このエメラルド鯖のGMをやっています。よろしくお願いします」
「ごんばんは〜、ラヴィアンローズです。 GMスワンさん、でどうすんの? あの2人」
「あぁ、あのご迷惑をお掛けして申し訳ありません。で、あの2人はどうなりましたか?」
「知らないの? GM同士でわからないんですか?」
モフモフさんが突っ込む。
「はいっ、先程から連絡しようとはしているんですが、連絡が取れないんですよ」
「そうなんですか? まぁさっき2人共ぶっ倒しましたけどね」
「えっ?」
信じられないっといった顔でGMスワンがモフモフの方を見る。
「本当だよ、なんか身体が勝手に動いて剣が使えたし」
「俺もだ。短剣飛ばしを勝手にやってくれるし、体術も凄かった。何かやった?」
「音声は解放しました。もしかしてモーションも解放したのかな」
「いやまあとにかく、ラヴィアンローズさん、あのー、言いにくい事ですが、色々とプレイに関して誤解を生む様な、つまりプレイスタイルの否定に繋がる様なロールプレイを半ば強制的にしていただいた事に対して、お詫びを申し上げます、すいませんでした」
「あぁ、はい。凄く傷つきましたょ。俺の乙女なハートが」
「すいません、シナリオの流れではあったのですが、ここには居ませんが後2人居るGMがですね、ちょっとやり過ぎまして、まぁそもそもの口の悪い奴らなんですが」
「あのー、逆に大丈夫ですか? ここまでゲームをぶっ崩す様なGMさん、初めて見ました。凄いっすよ」
「いやー、まぁ色々とシステムの問題もあるんですが、新しいMMOの世界を作りたいというコンセプトで、何が起こるかわからない自由過ぎる設計にはなっているんです」
「NPCも独自のAIで個別に動いているんでしょ?」
「はいっ、一応役割付けはしていますけど、動き出してからその先どうなるかはやってみないとわからないと言う見切り発車的な感じで」
「そうなんですか、俺はその踏み台にされてしまった訳ですね……」
(お詫びはいいから、何かくれっ)
「本当にすいませんでした。あの、お詫びといいますか、今後のお役に立てばと思いまして今回は特別にラヴィアンローズ様と、お仲間のモフモフうさぎ様、白刃のロビー様に運営よりプレゼントを用意させていただこうと思います。ただし他のプレイされている方々と差がつく様な事にならないような物を差し上げようと思うのですが、ラヴィアンローズ様、如何でしょうか?」
(なんとか、ごまかしごまかしで言ったぞ。何をあげるとは言ってないしな、どうだ? )
「スワンさん、さっき変なのがつーか多分あと2人のGMさんだと思うけど、魔女と魔導士みたいなのが出てきて隕石落として行ったよ。 で、みんなが下敷きになってしまったんだ」
「はい、そうなんですか」
(そう言うことか。あの2人め! だからチャットにも反応が無いわけだ)
「せめてみんなのデスペナをゼロに戻してあげてくれないかな?」
「えっ、そんなのでいいんですか?」
「ラヴィちゃん、まじ? 善人だったの? まじ? 」
(まじが多過ぎ)
「凄いね、ラヴィちゃん。なんだか」
(えっ、ロビーちゃん、目をパチパチさせてどうしたの?)
「あのさ、俺はこの国の王様になりたいんだよな〜」
(利権でガッポガッポ、ウハウハしたいっ。 うひひ)
「手伝ってくれる? GMスワンさん」
「む、無理ですよっ」
「えー、じゃあどうやったら国王になれるんだよー」
「国王になるには、この街の他にも街があるんですが、あっまだ詳しくは言えませんが、いかつかの街が集まって国として分けています」
「はい」
「この世界には、国と呼ばれるものがあと2つあります。今いる人の国と合わせて全部で3つになるんです」
「で? 」
「それぞれの国の国王は、国を形成する街全てのNPCからの投票で選ばれる事になっています。 先ほども申しましたがNPCは各々が独立したAIで動いていますので、好感度を上げるような行いを積み重ねて、知名度が上がった上で選挙に立候補していただき、NPCの投票の結果めでたく国王となるわけです」
「NPCからの好感度が必要なんだ。じゃあ、あげてくれ」
「それはちょっと……」
「じゃあ何が出来るんですか? もう〜けちっ」
「家をプレゼントしようかと思うんですが」
「家?」
ロビーちゃんとモフモフさんが、会話に戻って来た。
ラヴィが国王の話を始めてから、ちょっと飽き飽きモードだったのだが、家となると話が違う。
「家くれんの? 一個ずつ?」
「いやいや、皆さんで一軒ということで」
「いいんじゃ無い? ラヴィちゃん」
「ロビーちゃんと2人きりで1つ屋根の下ならオッケーオッケー」
「モフモフうさぎ様もよろしいですか?」
「ラヴィちゃん、俺も居る事忘れてない?」
「いま、思い出したょ」
「では、お屋敷を一軒ご用意させていただきます。ただ、この事は他言無用でお願いします。他のプレイヤーの皆様にはわからない処理を行いますので、用意が出来ましたらメールにて座標と、キーをアイテムボックスに入れておきます。キーは皆さんそれぞれに差し上げますので心配なく」
「わかりました、ありがとうございます」
「いつ頃になるんですか?」
「今夜のメンテナンスの後になると思います。先程ラヴィアンローズ様から言われました、デスペナルティの件ですが、前向きに検討いたします。今回はこのような形でお話をさせていただきましたが、宜しければ今後も色々ご意見を頂ければと思っています。直接お話出来るようにしておきますので、何かあればすぐご相談下さい」
GMスワンはそう言うと、右手を差し出した。
俺とモフモフさん、そしてロビーちゃんはGMスワンさんとガッチリ握手をしてフレンド登録を行った。
GMスワンさんは、残りの2人のGMと連絡を取ると言って、そのあと姿を消した。
少しして、緊急メンテナンスのアナウンスが流れた。
「メンテ明けたらすぐ入る?」
「いつ終わるかわからないよね、明日は朝起きて見てみて入れたらすぐ入ります」
「ラヴィちゃんは?」
「今から風呂入って飯食って寝るよ。 起きたら速攻入って、お屋敷とやらがあるのか見てみるつもり。みんなも、もしお屋敷があったらそこで待ち合わせって事でいいんじゃない?」
「うん、まぁ街の中をぶらついていてもフレンドチャットで呼んでくれればお屋敷に戻るよ」
「楽しみっ、でも巻き戻しで芋掘りから始めるのかな?」
「わからんけど、さすがにもう電波はないだろう。あの様子じゃ、今から会議&突貫工事だよ。お疲れ様だね〜」
「うん、じゃあそろそろ時間だから落ちるね。 おやすみっ」
モフモフさんが手を振って消えた。
「あっ、落ちるのはやっ。 ロビーちゃんもお疲れさまでした」
「ラヴィちゃんもお疲れ様。 また色々話してね、今度街を散策しようね〜。おやすみっ」
ロビーちゃんも手を振って消えた。
あっという間に俺のアンタレス1日目は終わりを告げた。
(待った待った、そういえばモフモフさんのライジングサンって見てなかった。巻き戻しで消えてたら見損ねたって事になるよな。つーかモフモフさん本人も見てないだろ。 まっいっか、とにかくメンテ明けだ。俺もログアウトしよう)




