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110 俺もゴブリンですけど

「見えた? ほら、ここの壁の暗いところ。何か動いてない?」


 フレデリックが身を乗り出して目を凝らした。


「前のお前と同じ黒い服だな」


 モフモフうさぎには見えるのか、目で姿を追っている。


「ゴブリンです」


 目を細めたあどけない少年、フレディもラヴィの耳元で囁いた。ラヴィからフレディと呼ばれるようになって、本人もラヴィに懐くようになった。姉と弟、そう言われればそうだと思うほど距離も近い。


 2人は小さな声で話す。なにせリサの糸で姿形を少年に偽ったゴブリンがここに居るなんて、ちょっとだけまずいなって思ったりしてた、なのに声のデカいモフモフがいらん事を言うもんだから……


「スワン、モフモフとラヴィはわかるが、もう1人の少年、フレデリックと言ったな。どんなタイプのユニークキャラクターとして生まれたんだ?」


 " 作った " と本人を目の前にして言わないミュラー。ユニークキャラクターが、この世界、アンタレスの中でまるで人……人として完成されている事を知っているからだった、しかし疑問を持っていた事を思い出していた。


「行方不明の、とある国の王子。記憶を無くして、私の弟としてアクエリアに暮らしている。でも時が来れば、国を背負って立つ1人。スティングと同じよ」


 スワンの代わりにラヴィが答えた。


「おいおい、それを本人の前で言うか?」


「いいのよ、記憶が無いんだもん。それにあなたが聞いた事だし」


「スワン、情報を引き出したゴブリンはどこにいるんだ?」


 ミュラーの質問はガッツリ聞こえていたけれど、さりげなくモニターに集中しているフリを始めるラヴィとフレディ。モフモフは腕を組んで立ったままだ。


「ゴブリンは死んでしまったんだ」


 スワンが答えた。


「私が捕まえた時に締め上げ過ぎてね……死んじゃったの。ごめんね」


 どちらかというと、フレディに謝ったように見えたモニターを見つめるラヴィ。


「ラヴィちゃん、モフモフはわかるけど君は何か特別な武器を持ってるのかい?」


「言ったでしょう、私はスワンが作り損ねたけれど、一応ユニークキャラなんだって。素敵な魅力を持っているわ、その魅力でゴブリンを籠絡したのよ」


「……・」


「本当よっ!」


 ミュラーがスワンに本当か聞いている。


「本当だ、モフモフとは違って回復系の能力は世界最高だよ」


 ウンウンと頷くラヴィ。


「回復系でどうやって締め上げるんだ?」


「機会があればあなたも締めあげてあげるわ、ミュラー。その時は2人きりで」


「その潤んだ目で見つめるのは、反則だよっ。どこまで本当かラヴィちゃんは分からない」


 頭を掻きながらミュラーが目を伏せた。


 《こちらヨシロウ、リュークを発見したぞーい。ぬわっ、リュークが消えたっ!》


 《スワン、リュークが今目の前で消えたわっ。瓦礫にくぎの様にめり込んでいたから、周りを壊してやっと助け出したの。リュークはどうしたの?なんでこうなっていたの?》


 《スワンです。なんで消えた?ポインタは?ミュラー》


 《リュークのポインタは……噴水広場。もしかして帰還スクロールをリュークは使ったのかも》

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