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49 ユニーク武器 プライネ

 体の大きさとつりあわない、巨大なバトルアックスを担いで冒険者たちの間をゆっくり歩いて行くドワーフの王子。


 その異様な雰囲気に、新しく手に入れた武器に興奮している人やエルフたちは自然と道を開いていく。


「ドワーフだ、凄え斧を担いでる」


「ベルクヴェルクから来たのかな?」


「あれもNPCなの? 」


 ドワーフの王子スティングは、アクエリアの外壁の上の遊歩道に登っていった。ここベルクヴェルク討伐本部は、一応軍事行動の拠点である。規律を乱すような行動は禁止されており、遊歩道の上に登ることも許されてはいなかった。


 何事かと見上げる冒険者達。ドワーフが皆を見下ろせる場所にたどり着いた頃には、部隊を率いる隊長達もテントの中から姿を見せて討伐本部の隣に設置されたステージの上に整列していた。


 ガヤガヤと何が起きるのか話している冒険者達に、怒号のような声が浴びせかけられた。


「おい、その雨を降らしているおもちゃをさっさとしまえ。遊びじゃねぇんだ、1回しか言わねえぞ。できねぇ奴は貰った武器を返して、さっさと消えろ。これから俺たちがやる事は、命を取るか取られるかだ」


 雨が降りやんだ。


 部隊長達の姿勢を正して並ぶ様子を見て、集まる冒険者たちもドワーフの声に耳を傾けるようになっていた。討伐本部で配られた武器の総数は現在1800個を超えている。おそらく武器をもらった全員がこの本部近くの広い空き地に残っている。


「テントの中に居る奴も全員出てこい。さっさと動け、とろい奴から先に死ぬぞ。生き残るつもりがあるんなら、言われる前に動け」


 当然、聞く気がない奴もいる。何せゲームのイベント、強制でも無く義務も無い。そう考えているやつは、アイテムを貰ったらもう用が無いとばかりに、背を向けて帰ろうとしている者もチラホラ見えた。


「ブンッ」


 壁の上の遊歩道から、空気を切る重い音が響いた。真面目にドワーフの話を聞いていた者は、ドワーフが体よりも大きいバタフライバトルアックスを、思いっきり投げつけたのを見る事が出来た。


 回転しながら飛んでいくドワーフの斧。その先には帰ろうとしている冒険者の1人が居た。


 あっという間の出来事だった。真っ二つになって一瞬血を吹き出して倒れ込んだ冒険者。バトルアックスは冒険者を切ってそのまま地面に突き刺さっていた。


 ざわめきすら消えて音が無くなった広場に、再びドワーフの怒号が響く。


「自分が死ぬと思っていない奴から先に死ぬ。この中で今まで死んだことがあるやつはいるか? 手を挙げてみろ」


 チラホラと手を挙げる人がいる中で、言葉を失った冒険者たちの目にはステージの上で手を挙げる1人の部隊長の姿も見えた。


「死んだことがある奴にしかわからない、この世界で死ぬ感覚。もう一度味わいたいか?手を挙げてみろよ」


 今度は誰も手を挙げなかった……


「ここは軍隊だ。規律を乱すものは容赦しない、それは今見た通りだ。やる気のない者は武器を置いて帰れ、そのかわり二度と雇わん。今から10秒やる、それで決めろっ」


 地面に突き刺さったドワーフの斧が、ひとりでにゆっくりと動きだした。気がついた周りの冒険者達が斧から距離を取る。先程真っ二つに切り倒された冒険者は、既に消えてしまっていた。


「ズバァッ」


 ぬかるんだ地面から飛び出たドワーフの斧が、空中を飛んで持ち主の方へ戻って行く。


「なんじゃあれっ、アゲハ蝶?」


 誰かがその姿を見て言った。空中へ飛び出したドワーフの斧は、その姿を鋼鉄の蝶に変えて広場に集まる冒険者たちの上を旋回すると、アクエリアの街の方に立つ木々の間を突き抜けて飛んでみせた。


 鋼鉄の蝶が通り過ぎた後の木々が、見事に崩れ落ちて行く。蝶の羽根自体が鋭い刃、あの蝶が冒険者の中で羽ばたけば、悲惨な事故が起きるに違いない。


 全員が注目する鋼鉄の蝶が、ドワーフの元へ戻った。城壁の縁にとまって、鋼鉄のアゲハ蝶がゆっくり羽根を閉じたり開いたりしている。


「俺は鉱山都市ベルクヴェルクのドワーフの王子スティングだ。アクエリアの有志の協力で、今回のベルクヴェルク討伐隊の大将を務めることになった。敵はゴブリン、悪魔だ。奴ら慈悲という言葉はない、奪い、殺し、犯し、隷属させる、悪魔の集団。見つけたら殺せ、皆殺しにしろ。そうでなければ俺たちドワーフのように皆殺しにされる。奴らは次にこのアクエリアを狙ってくる。その前に奴らを潰せっ、取り戻すんだっ、ベルクヴェルクを! まだ生きているドワーフも居る。救い出せ! ドワーフを助けろっ! 俺達を救ってくれっ!」


 素直に物を頼めない性格のドワーフ、冒険者の中には多くのエルフの姿もある。エルフに物を頼む屈辱は、プライドの高いドワーフにとっては耐え難く、つい高圧的な物言いになってしまう。


 中身はハルト、彼はそのことを知った上で演じているのか?


「今見た通りだ、俺の斧はミスリルのアゲハ "プライネ" 鉱山都市ベルクヴェルクで作られた特別な斧だ。あの街を失うとこんな武器は、もう二度と作ることが出来ない……ベルクヴェルクを取り戻した暁には、俺達は寝る間を惜しんで火に向かう事を誓う。俺達の作る道具は俺達にしか作れない、お前達に使って貰いたくても今のままじゃどうしようもないんだ。取り戻そう! あの山を、ベルクヴェルクを取り戻したら俺達と共に住んでくれでもいい、むしろ一緒に暮らしてくれっ。恩はドワーフの技術で返す、プライネもその時には自由に空に放つつもりだ。こいつが気に入ったやつが次の持ち主だ」

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