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42 侵略の足音はすぐそこに

「ゴブリンや他のモンスターにはその発信機を取り付けて居ない。つまり動き出してからじゃ遅いって事なんだ」


「ありがとう、ミュラー。納得したよ、確かに街のNPCにすらポインタは設置していなかった。ポインタさえつけていれば強制的にアクセスする事が出来たんだな」


「だったらさっきのハルトとミュラーには、ポインタが取り付けられていたから、囚われたハルトを強制的に回収する事が出来るんじゃないですか?」


 リュークが思い出したように言った。その話をスワンが遮る。


「駄目なんだ、時間軸の行動原理に従う。それがアンタレスの世界観として作られている。例えば君が誰かと手を繋いでいるとする。君と言う存在は、手を繋いでいる相手の時間軸と交差している。だから君はその状態からいきなり姿を消す事が出来ない。ハルトのように、自分でVR装置を外してしまえばゲームから離れることは出来るけれど、ゲームの中の自分はまだ手を繋いだままで、手を離すまで自由にはならないんだ。これは、状況も当てはまる様になっている。例えば牢屋に入れられてしまったら、ログアウトをする事でそこから抜ける事は出来ない。唯一牢屋から抜ける事が出来るとすれば、それはそこで死んでしまう事だけ。誰かに助けてもらわなければ、抜けるにはそれしか無い」


「つまり、ゴブリンに捕まっている状況は奴らの時間軸の中にあるから、強制力が効かないと言いたいのか。……なあ、もっと簡単に出来なかったのか?」


「リアルを追求した結果がこうだ、でも今はカオスとしか思えない」


「じゃあサーバーを他のサーバーに変えるか?」


「意味が無いよ。もう各サーバーを街のイベント、クエスト、高位NPC用の情報領域としてエメラルドサーバーに繋いでしまっているから、どのサーバーもエメラルドサーバーの影響を受けてしまっている。だからサーバーを変えても同じなんだ」


(ラヴィアンローズが居るんだ。サーバーを変えてしまうなんて出来ない。そこは絶対に譲れない事だ)


「ゴブリンの討伐。やるしかないな、じゃないと……」


 ハルトが口ごもる。


「どうした? ハルト、じゃないと?」


「あいつら、次はアクエリアを襲うって言ってたんだ。俺がアクエリアから来たって言ったら、何処にあるのかとか色々聞かれて……全部話してしまった」


 ミュラーとリューク、スワンが目を合わせる。


 ゴブリンが鉱山都市ベルクヴェルクを襲って、支配してしまった。次はアクエリアだと言う。という事は、こうしている間にもゴブリン達の侵略は進んでいると考えられるわけだ。


 恐らくアクエリアとゴブリン王国の戦争になる。


「ログインして対策を練りましょう。今のプレイヤー達の戦力で街を守れるのか?それとも強力な武器を投入して、圧倒的にゴブリンを倒してしまうのか」


「この対応は、今後のアンタレスのサービスに大きな影響が出ると思われる。スワン、お前のとこのカルとバッドムRさんはいいから、他のGM全員を招集して会議だ。出来るだけ早く公文書館に集まるように手配をしてくれ」


 ミュラーとリュークがVR装置に向かう。ハルトはカルのVR装置を装着して、キャラメイクから始める様子だ。スワンは自分専用のVR装置を装着する前に、サーバーの管理モニターで、GMの能力の変更を始めた。


 無敵モードの適用。GMであってもハルトの様に行動に制約を受けてしまう事が起きてしまっては、ゲームの管理など、もう行う事が出来そうになかった。

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