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10 ローズだけの魔法の力

(大丈夫、私達が居る。それに糸があるじゃない)


(糸がある?)


 かなりの早足で走っている俺は、今は声での会話をしていない。


(近い、ローズ。糸を纏って)


 俺が進むのに合わせて草木が避けて行ってくれている。周りの植物の誰かが声を掛けてくれているみたいだ。


(糸を纏うって? どうやるんだ?)


 足を止めて、息を潜めた俺は頭の中で声を掛けてくる相手に問いかけた。


(リサがやったのをローズは見ていた、思い出して。糸で体を包み込むの)


(崖から落ちている時の事か。確かリサの体から四方に広がる様に沢山の糸が出て……)


 俺があの時を思い出した瞬間、 "バッ" と体の周りが繭の様な物で囲まれた。それは次の瞬間縮まってピッタリと俺の体を包み込む。


(なんだか勝手に進んでいる気がするけど)


(今はね、ローズの体を糸で包んでいるの。でもちゃんと動けるでしょう、柔らかでしなやかなリサの糸だもの。さぁ、ローズ、その糸に魔法をかけるのよ。カメレオンの魔法を)


(助言をくれている植物の言っている意味が分かった。元の世界じゃ光学迷彩ってやつだ。でもカメレオンの魔法なんて俺は知らないぞ)


(想像するだけで、ローズの糸は変化するよ。だってローズ自身の糸だもの。君は周りからは見えなくなった、全く見えなくなった……)


 俺に暗示をかける様に、植物の声が導いてくれる。俺を包み込んだ糸越しに見る両手が、自分でも見えなくなってしまった。


(本当に見えない! 想像するだけで出来てしまうんだ)


(そうだよ、だって糸はローズの一部だから、君の思い通りになるの。さあ、先に進めっ。私達もどうなるか期待しているんだから)


(何を?)


 この問いかけには返事が無かった。周りから見えなくなった俺は、先に進み出した。目の前の草木が避けて行ってくれる。俺が見えなくても、ここにいる事はちゃんと分かっているみたいだ。


グヒッ、ズリュッ……ズンッ、ズンッ、ズンッ


 目の前の茂みの先に奴は居る。 "デザートグアナコ" ドラゴンになりかけのトカゲ、性格は凶暴。単体での行動を好むモンスター。


 最後の茂みは俺を隠す為か開く事は無かった。茂みの隙間から、ワニの色の巨大な爬虫類が見える。やられた人間の姿はここからは見えなかった。


(俺、攻撃魔法は持ってないんだ。こいつに気がつかれない様にやられた人間を助けるには、どうすりゃいいんだろう?)


(ローズ、そこの "デザートグアナコ" の向こう側に人が倒れているわ。あの長い尾を叩きつけられたようね、まだ気づかれていないし、やるわっ)


(何を?)


(よく見ときなさいっ、あなたの力を。ローズの近くにいる私達は動けるの。時に姿を変えて、時に力強く。さぁっ、あなたも想像して。奴の尾を縛りあげる強靭な蔓を、持ち上げて地面に叩きつける私達の姿をっ。行くわよっ!)

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