9 俺にしか聞こえない声
金の針って俺の知識じゃ石化を解くアイテムだけど、アンデットにも有効だったみたいだ。
スケスケ骨野郎は、持ち上げた戦闘斧の重みに耐えきれずに押し潰されてしまった。金の針の魔法効力が、奴の体を内側から溶かしてしまったからだ。
「凄いなぁヒカキューン、う〜ん、呼び名が元々のヒカキューンじゃ、他のみんなが呼び出すのと一緒だし違う名前で呼ぼうか……そうだな」
俺が悩んでいる間、大人しく座って待つ黄色い狐っぽい使い魔。
「ゲン」
「俺の大事な家族の名前だよ、お前は生まれ変わりだ。今日からゲン、ゲンでいいかい?」
「キューン」
この名前で良かったのか悪かったのか、尻尾を振って俺の匂いをクンクンした後に、ゲンはフッと消えていった。
(帰ったのか……帰るって言っても何処にだろう)
そういえばさっきのスケスケ骨野郎が落としていった、戦闘斧がそこに転がっている。なかなか良いデザインなので持ってみた。
(結構重いな、そりゃあ引きずる訳だ。これを振り回すには力が要るわ)
面倒臭いから放置決定。俺は先を急ぐ事にする。しかしマンドラゴラが言っていた、元々居なかったモンスターが現れたって話は本当だった。
「さっきは教えてくれてありがとう」
俺は誰も居ない茂みの方に声を掛けた。そういえばリサも花と話している時にこんな感じだったよな。
(行ってらっしゃい、ローズ。他にも変な奴が居るから気をつけてね。私達の声に注意してね、教えてあげるから)
「わかった、気をつけるよ」
俺の通った道が塞がっていく。草花と話すだけじゃなくて、草花が動く事が出来るように出来る。それが俺のリサから引き継いだ力。
マジックポイントもおかしな事になっている。本来なら数値が出ているはずの場所に、♾(無限大)が表示されている。この状態で "アナヴィオスィ" を使ったらMPはどうなるんだろう? 他にはまだ俺が自覚していない力とかあるんだろうか。
地面に振動が走った。
俺は素早く身を屈めると、周りの様子を伺う。今回は声に出さずに近くの草木に話掛けてみる。
(今のは何? 近くに何か居るの? 誰か教えて)
使う言葉に男と女の区別が無くなって来ている。それは自分でも分かっている事だけど、草花と話す時は優しい女の子の話し方の方が良い気がしている。
(ローズ、この先300mぐらい先で誰かがたった今、モンスターに倒されたの。まだ生きてる、でもモンスターにとどめを刺されそう。助けるなら急いでっ、相手は体長5m強の [デザートグアナコ]ドラゴンになりかけのトカゲ、性格は凶暴。単体での行動を好む)
(やたら詳しいですね……本当にただの草花ですか?)
(ローズ、私達はこの世界の何処にでも居てみんなで繋がっているの、見たこと聞いたこと全てが知識として蓄積されていく。その私達にローズが繋がった。ローズというワールド、思考回路、知識、それが私達と共有されたの、蓄積された知識をどう活用するかってところにあなたという回路が加わった、だからこんな事が出来る様になったのよ)
(この世界? このワールド限定? 俺もその一部だから何となく言っている事が分かる)
(急いでっ、モンスターは沢山居る。あんまり好きになれないわっ、いい匂いがしないもの)
目の前の雑木林に道が出来ていく。真っ直ぐ進めって事だ。
(ただ、俺って剣とか無くなってしまっていて丸腰なんだけどな……)
走っている俺に声が聞こえた。
(大丈夫、私達が居る。それに糸があるじゃない)




