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108 良い方の神様

 王宮の噴水の池からは、三者三様の飛び出し方があった。


 人魚の尾ビレの強い推進力を考慮して慎重に浮かんできたモフモフうさぎは、池を取り囲む岩に掴まり、最後に尾ビレのひとかきで岩に飛び乗った。


 水の中で巨大な目玉と口をした体長15m程の魚と遭遇したマッテオは、止まることを考えずに尾ビレを振って水面から飛び出した。

 勢い良く地上へ飛んだマッテオは、たまたま運が良かったせいで柔らかい芝生の上に転がり落ちて、尾ビレをバタつかせていた。


 先に水中に入って行った白鳥が、魔法が解けてマネキンの姿に戻り、バタバタ音がしていた芝生の方へやって来る。


「怪我は無いかマッテオ?」


 魔法は同時に解けている。芝生に這いつくばるマッテオは白鳥を見上げて、自分の魔法も解けた事に気づいて立ち上がった。


「大丈夫だ。なんか脚が変な感じて気持ち悪かったんだ。魚に追いかけられて飛び出した時には、怪我するかと思ったけどな」


「モフモフうさぎは?」


「怪我は無いか? って聞いてる本人の手があっちを向いてるぞ〜」


 モフモフうさぎが噴水の方から歩いて来た。


 白鳥もマッテオと同じく、魚に追いかけられて逃げた勢いで池から飛び出して、打ち所が悪く腕を折っていた。


「モフモフうさぎは無事か……」


「参考までに言っておく。どうプログラムしたかは分からんが、もしも魚の生態をそのまま移植しているなら、あいつらは波動で追ってくるぞ。体の横に側線が2本も有ったから、かなり感度はいいはずだ。目がデカイ奴は視覚もやばいぞ」


「「……?」」


 モフモフうさぎの "お魚豆知識" について行けなかった白鳥が、折れ曲がった腕の関節を無理やり元に戻してから


「おほんっ」


 と、ひと息ついて言った。


「ようこそ、アクエリア王宮へ」


 ここは高い城門の内側にある広場、王宮の前に広がる長方形の広大な庭園を兼ねた場所で、噴水は3つ、その周りを緑の庭園が取り囲み、何もない石畳の広場がちょうど城の正面に位置している。


 今3人が立っているのは、城に向かって右側の噴水の前である。周りを取り囲む木立ちの合間から、城の白い壁や青い屋根が見えている。


「ここからの眺めがなかなか良いんだ」


 そう言って白鳥はマッテオが転がっていた芝生の小山の上に向かった。頂上に四角いテーブルと長椅子が2脚置かれてあった。白鳥と向かい合ってモフモフうさぎとマッテオが座る。


「さて、長くなったがもう到着する……」


 耳の良いエルフのモフモフうさぎが足音に気づいた。

 木立ちの間から1人のヒューマンが小走りに寄って来ている。


「スワンか?」


「やっと着いた、お待たせしたな」


 マネキンの白鳥が喋っているが、芝生の小山に登って来る男と声が重なっている。


「やあ、諸君。ご機嫌よう、私はGMスワン、この街を担当しているGMの1人だよ」


「今さらだけどな。マッテオは初めてだよな、この男が神様本人だ。どっちかと言うと良い方の神様」

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