107 男の人魚
「黒が最後か。白鳥、俺の考えを言うぞ。外れていたらもう正解を言ってくれ。確かに遊んでる暇は無かった。まずな、ホワイトの渦のオーブはブレスじゃねぇか? 息、水の中でも息が続く系の。それからブルーは水の色だろ……水に関係するなら泳ぎの補助系だろう。透明なオーブがあるが、これはインビジブル、見えなくなる系だと思う。でオレンジがヒート系、ブラックは……何だろ。触ったら死ぬとか思ったけど最後なんだな。よく分からん」
「ほぼ正解っ! 何でだ? お前やった事があるのか? あ〜結構考えたのに、これじゃあ簡単すぎだったか……」
「触る順番もあるだろう? 俺似たのやった事があるもんね」
「まじかっ」
「見た所、天井の水にどうやって飛び込む? ジャンプしたって届かない高さじゃないか。階段も無いし……ということはブラックは触ると天井の水が落ちてくるんじゃ無いか?」
「完璧に正解……なんか自信なくすわ」
「後はどれだけ小細工がされているかだな……オーブを持つと、受け皿の部分が軽くなってスイッチが入って水が落ちてくるとか、黒に途中で触ると残りのオーブが全部黒になるとか……何度もトライ出来る感じか?」
「出来るが、最初からだ。ここはほぼ終わりに近いからまた最初からになるとガックリくるだろうな」
「自力で30m泳げは何とかなるんだろっ、俺泳ぎは得意だ」
マッテオの特技に泳ぎが加わった……
白鳥だけがマッテオの変化に気づいていた。
NPCそれぞれに単独のAIを持たせてある。つまり今のが進化、適応、予想外という既存のゲームにあるようで無いプログラムから外れたNPCの変化だった。マッテオに泳ぎなどという設定などしていないのだから……
「上の水の中に入ったらすぐ分かるよ。水の中には肉食系のモンスターと呼べる魚達が泳いでいる。モフモフうさぎが言っていたインビジブルの魔法が無いと、多分水の中で襲われて死亡だ」
「ブルーが泳ぎの補助系の魔法だろっ」
「そうだ、青に触れると一時的に足が魚の尾になる。そしてその間歩けなくなる。先に触れば他のオーブに届かない仕組みだ」
「じゃあ、ブルーに触った後にブラックに触る事が出来ない?」
「手を繋げっ、鏡を通り抜ける時にもやっただろう。もしもここに辿り着いたパーティがいたとしてだ、和を大切にしているか、仲が良いか、もしくは自らを犠牲にして仲間を救う事が出来るのか……などの人間性を確かめるトラップ、いや仕掛けなんだ。誰かを出し抜こうとしたり、個人プレイに走る人間に王宮に入る資格は無いからな」
「俺達は?」
「だから言っただろう、もう資格は持っているって。全て観た私が言うんだ。じゃあ行こうか、オレンジから触って白、透明に触る前に皆で手を繋いで端の人が透明に触れる。次は声を掛けながら、片方の端の人が青、もう片方の端の人が黒に触れられる位置に移動して、黒いオーブに先に触れれば良い」
「1人の時には?」
「魔法は3分で切れる。運が良ければそれで解るはずだよ」
(モフモフうさぎ、お前みたいに分かっている奴ならな)
3人で手を繋いで、ブラックのオーブに白鳥が触れた直後に、モフモフうさぎがブルーのオーブに触れた。
水の天井から部屋の中央に水柱が出来て、激しい勢いで部屋を水没させて行く。
お互いにインビジブルの魔法が掛かっているので、目には見えないが、全員にブルーのオーブの魔法……脚が魚の尾、というか腰から下が人魚と同じ姿になっていた。
「水が増えたら一気に水面の光を目指せっ! 魔法が切れたら、魚に喰われるぞっ」
白鳥の声が聞こえた後に、溜まった水から勢い良くジャンプした飛沫が上がった。水面の、この場合は天井の水面に波紋が広がり白鳥が先に行った事が分かった。
「マッテオ、遅れるなよっ。俺も行くぜ」
「泳ぎは得意だっ。付いて来いっ!」
(えっ、いや、見えねえけど……)
2人もほぼ同時に尾ビレをはたいて天井の水面に飛び込んで行った。




