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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴96年にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。王様は動物愛護団体の救済目的に合致しない。


 動物愛護団体がわしにまで口撃して来ると聞いたミテナは、ずっと笑っているからムカつくな。普通の害獣を駆除して回っていても、「また動物愛護団体に怒られるわよ~?」と肩を持つからムカムカだ。


「みっちゃんだって、これを放置してたらダメなのわかってるにゃろ~」

「うん。畑の被害、人的被害、疫病の蔓延、最悪のケースは森が人里を押し潰してしまうわね」

「じゃあ、わしのやってることは??」

「……ギルティ? プッ」

「にゃんで動物愛護団体側にいるにゃ~」


 ミテナはわしをからかいたいだけ。散々からかったら、ミテナもわしの仕事を手伝うとか言い出したので許してあげる。わしは心が広いからな。


「ここでは本気は禁止にゃ」

「え~? 私、まだ新人だよ??」

「わしのクランの新人は、もう世界の敵になるだけの実力はあるんにゃ」

「……へ??」

「弱い獣にゃんか跡形も無く消せるにゃ。リータにゃんか、パンチ1発でパーンにゃ。もちろん人間もにゃ……」

「こわっ!? てか、私も世界の敵になっちゃったの~~~!?」


 猫クランに入るということは、そういうこと。ミテナは初めて、猫クランに入ったことを後悔したのであった。



 猫クランに入ると強くなり過ぎるから、手加減の練習は必須。ミテナも世界の敵になりたくないからって弱い獣で練習するけど、1回目はオーバーキルだ。

 これでは売り物にならないとわしがレクチャーしながら害獣の駆除をしていたら、ハンターギルドで受けた依頼の数は達成。これ以上は他のハンターの仕事を奪うことになるので帰宅する。


 それからのわしは、猫クラン活動がある日はミテナを(そば)に置いてぺちゃくちゃお喋り。いや、指導。

 ミテナも世界の敵の一員になってしまったので、真剣に聞いて真剣にボランティア活動もやってる。そこまで肩に力を入れなくていいよ~?


 そんな感じで猫歴95年はミテナの猫クラン加入でモフモフうるさい年であったが、あっという間に1年が経ち、猫歴96年となった。

 今年は静かな年になるといいなと思っていた矢先、1月からキャットタワーは慌ただしくなっていた。


「エティ……」


 ミテナが暗い顔をして見ているベッドで眠る人物は、エティエンヌ88歳。猫家の入り婿で東の国の王子様で、サンドリーヌの息子だ。


「まぁ倒れたは倒れたけど、処置は早かったから案外寿命は延びてるかもしれないにゃよ?」

「そうだけど~……この手で抱き締めた時に、こんなに軽かったんだと驚いたの~」

「それは強くなった弊害にゃ~」


 でも、わしはそこまで深刻にしてない。エティエンヌが死ぬ日はシャーマンから聞いて知ってるもん。元々今日の出来事も聞いていたから、ミテナがずっとエティエンヌに付き(まと)って迷惑そうにされてるのも見てたよ。


 そんな感じでわしたちがのほほんとした会話をしてるので、妻のサクラや娘のアリスも不安が和らいだように見える。どちらかというと病室で騒ぐなって顔にも見えなくもない。

 わしはその顔に負けてコソコソ退室。そうしてお昼ごはんを食べてメイバイの膝の上でお昼寝していたら、エティエンヌの意識が戻ったと聞いたので病室に顔を出した。


「もう大丈夫そうだにゃ」

「お義父様にまで心配を掛けて申し訳ありませんでした」

「謝るのはナシにゃ。家族なんだからにゃ~」


 エティエンヌは申し訳なさそうにしていたが、わしの一言で笑みを浮かべる。家族という言葉には、それほどの力があるのかもしれない。


「まぁにゃんだ……歳も歳にゃんだから、自分の引き際ぐらいは考えておけにゃ。心残りなく逝けるようににゃ」

「そうですね。あまり時間も残されていないでしょうし……」

「エティ君! エティ君はまだまだ死なないにゃ~。パパはにゃんてこと言うにゃ!?」

「おじい様……酷いです……」

「いや、こういうのはちゃんと話をしておくもんにゃよ? 大変なんにゃから」

「「フシャーーーッ!!」」


 死んだあとの話なんて、ご家族の前では時期尚早っぽい。わしはよかれと思って話をしたのに、サクラとアリスに追い出されてしまうのであった。


 猫耳娘のアリスも怒ったら「フシャーッ」って言うんだ……



 孫娘の新しい発見は置いておいて、話は途中だったのでサクラたちが寝入った頃にエティエンヌの部屋に忍び込むわし。

 ジジイの部屋にコソコソ忍び込むなんて何してんだと思いながら入ったら、エティエンヌはまだ起きていた。


「やはり待っていて正解でしたね」

「無理するにゃと言いたいところにゃけど、やり残しだけサラサラッと聞かせてくれにゃ。もしくは、エンディングノートってのを書くのも手だにゃ」

「エンディングノートとは?」

「やり残したことを書いてひとつずつ消化して行くとか、自分の生い立ちを書いたりとか、残された人に書いたりとか、人それぞれだにゃ」

「なかなか難しい物ですね。書くことを決めるまでに時間が掛かりそうです」

「まぁにゃ~……気軽にメモ感覚で書いておけば、あとはわしたちでいいようにしてやるにゃ」


 エティエンヌは死んでまで迷惑掛けるのかと渋り掛けたが、わしは強引に3冊のノートを押し付け、取り急ぎのやり残しだけは聞いておいた。

 ただ、ちょっと難しい話もあったから、間に合うかどうかはわしも約束できませんでした。


「あとは~……葬儀って、どっちでやるべきなんにゃろ? お墓とかも、お母さんと一緒がいいのかにゃ??」

「あ、そうですね……私にも立場がありましたね。長い間普通に接して来られたから、自分が王子だったことを忘れていました。ははは」

「聞いておいてよかったにゃ~。近々、東の国に出向いて聞いておくにゃ~」


 王子と王女で縁を結んだのだから、国が介入するのは当たり前。もしも急に亡くなって家族葬なんてしていたら、絶対揉めていたはずだ。

 わしはホッと胸を撫で下ろし、聞くことも聞けたのでさっさと退室するのであった。



 その翌日、わしは食堂でサクラとアリスをジーッと眺め続け、食事が終わった2人の跡をミテナと一緒につけて行く。

 そうして2人がエティエンヌの部屋に入って行ったのを確認したら、5分後ぐらいにノックをして入って行った。


「にゃに~? 朝からずっと見てたにゃろ~? 気持ち悪いからやめてにゃ~」


 すると、早くもサクラの苦情が来たから泣きそうだ。


「ちょっとアリスに話があってにゃ」

「私ですか? ま、まさか……新しい遺跡を見付けたとか??」

「それだったら普通にみんにゃの前でしたにゃ」


 アリスは表情は合っていたけど、口から斜め上のボケが出たからサクラに肉球ツッコミされちゃったよ。


「結婚にゃ。いい加減、相手ぐらい居ないのかにゃ~っと思ってにゃ」

「それにゃ! にゃんか忘れてると思ってたの、結婚にゃ~~~!!」


 そう。エティエンヌがやり残したことの中にアリスの結婚があったから、わしは言いに来たのだ。まさかサクラも忘れていたとはビックリです。あ、見た目が変わらないからですか。わしも同意見です。


「お相手ならいますけど……」

「そうにゃの? よかったにゃ~。結婚の話はしてるにゃ? どんにゃ人にゃ? 今度連れて来てにゃ~。あ、写真とかないにゃ??」


 アリスが相手がいると言うと、サクラが矢継ぎ早に質問してる。わしと口調が一緒ですみません。

 そのアリスは、なんだかモジモジしながらスマホをタップして彼氏の写真を見せてくれたけど……


「にゃ~? カピカピにゃ……この人、体は大丈夫にゃの??」


 変な人。なのでドン引きのわしが答えを言うよ。


「これ、ファラオさんだよにゃ?」

「おじい様はよくわかりましたね~。カッコイイでしょ~?」

「ミイラと結婚は許しにゃせん!!」

「えぇ!?」

「「ええぇぇ~~~!?」」


 だって、ピラミッドにうん千年間眠っていた人だもん。わしが反対すると、アリスは「まさかそんなこと言われるとは」って驚き、サクラとミテナは「死人と結婚!?」というような驚き方をするのであった。

 ちなみにエティエンヌも死ぬほど驚いているよ。というか魂が外に出たから、わしが捕まえて口に放り込みました。ホンマホンマ。



「はぁ~……どうしよっかにゃ?」


 サクラの説教はほどほどで止めたけど、さすがのわしも呆れてなんのアイデアも浮かばない。別にまだ結婚しなくてもいいと思っている。ワケではない。サクラさん、怖いです。


「東の国の貴族を婿に迎えたら? ライアン君も公爵家と結婚したでしょ? それなら両国の絆も、より深くなると思うのよね~」

「それ、政略結婚と言うのでは……」

「イヤだな~。アリスちゃんは美人だから、カッコイイ男の人がいいと思っただけよ~」

「どっちに利があると思うにゃ??」

「それは~……愛があれば利益とか関係ないでしょ??」

「政略結婚には愛がないんにゃ~~~」


 ミテナはまた東の国ファーストになっていたので、もう喋らせない。アリスだけミテナの正体を知らないから首を傾げてるんだもん。


「1人ぐらい気になる人はいにゃいの?」

「始皇帝が見付かればファラオ君を捨ててもいいのですけど……」

「生きてる人から選んでくれにゃ~」


 ダメだこりゃ。アリスの結婚はまだまだ遠そうなので、わしは違う案を提出するのであった……



 それから2ヶ月後……


「ご結婚、おめでとうございにゃ~す」

「「「「「おめでとうございにゃ~す」」」」」


 猫会という教会みたいな施設で、盛大な結婚式が開かれていた。


「ニナちゃ~ん。綺麗だよ~」

「ウロく~ん。幸せににゃ~」


 ずっとアリスの話をしていたからアリスがスピード結婚したと思った人もいるだろうけど、本日の主役は実はニナとウロ。

 10年間は様子を見ると2人から聞いていたのに、去年、急に結婚するとか言って来たの! まだ1年あるのに、ウロのヤツが約束破ったの!!


 事実はどうやら、ミテナが猫クランに来たからニナが取られると焦って結婚を急いだらしいけど、わしはウロが悪いと思ってます。


 その結婚式はわしがウロを睨み殺そうとしていても滞り無く進み、誓いのキスまでしやがったから涙が溢れた。これは嬉し涙と言いたい。

 そうして新郎新婦が退場して行くと、わしも退場するのであった。



「さあ、続いての新郎新婦がそろそろ入場します。こちらの御両人は、諸事情で式だけ豪華にとの希望ですので、皆様には少しの間ご協力を願います。では、新婦アリス様、新郎ファラオ様を祝福してください」


 ここからは無茶振り結婚式。アリスとファラオ君の入場だ。

 この結婚式は本当にフリだけなので、司会者も適当なご挨拶。入場も適当。初っ端から新郎新婦が現れて、新郎が新婦のお義父さんの車イスを押すという型破りだ。


 ただ、神父の言葉は先程と同じ。違う点は早口と、キスはやってるフリだけで終わることだけだ。


「では、誓いの口付けを……」


 その神父の言葉で、ファラオ君がアリスのベールを上げてキスする体勢に……


「す、凄い……AIファラオ、完璧! ブッチュ~~~!!」

「ッッッ!?」


 しかし、興奮したアリスがディープな感じでやっちゃった。ファラオ君もビックリして手をバタバタしてる。

 それからなんとか退場して控室に戻ったファラオ君は、打ち合わせと違うと説教だ。


「アリスちゃんにゃ。わし、にゃん度も変身魔法を使ってるからと念を押したよにゃ?」


 そう、ファラオ君の正体はわし。AIやらなんやらを駆使してミイラの生前の姿を3Dで復元し、変身魔法でわしがその姿に変身していたのだ。


「おじい様! 喋らないで! いえ……『にゃ』って言わないように喋ってくれます? それで声も再現できてると思うので!!」

「アリスよ。祖父とキスしたけど、いいのか?」

「素敵な声~~~!!」


 アリスはまだ夢の中にいるみたい。遅れてやって来た家族にわしたちは説教されることになったけど、エティエンヌは娘のウエディングドレス姿を見れたからか、はたまた猫ファミリーの日常が楽しいのか、この日は終始笑顔なのであった……


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