猫歴95年その4にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。無茶はアカン。
わしが作った感脳波式遠隔操作型……もうキャットボールでいいや。ミテナはキャットボールを貰ってから使いこなそうと頑張っていたけど、たまに隠れて4個同時に使って頭から煙を吹いている。
その都度注意していたら、2個同時は早くも使いこなせるようになって来た。
これならばと戦闘訓練に以降したけど、わしに最大威力で放つな。危ないじゃろうが……
速度もなければ捻りもない攻撃、わしに当たるワケがない。でも、雷ビームは猫クランメンバーには速過ぎるので、そっちに被弾しそうだったから非難囂々だ。
猫クランメンバーに説教されたミテナは、これ以降は横向きに使わなくなったから……
「そういうことじゃないんだにゃ~……」
「じょ、冗談よ~。エヘヘ」
「次、許可なくやったら取り上げるからにゃ?」
「はいにゃ~」
いや、上から下に使ったからマジ説教。当たらなくても秘密地下施設の地面に穴が開くから当然の説教だ。
そうこうしていたらミテナも最低限は猫クランの実力に届いたので、忘れていた防具の件をいまさら話に行った。
「なんで忘れてたの?」
「にゃんでも作ってやるから、忘れてくれにゃ~」
「それならね~……大蚕の一番いい生地でね~。王冠もね~」
「それは女王様のコスプレじゃにゃい?」
ミテナ、チョロイと思ったのは束の間で超高級品の衣装ばかり御所望。どう考えても動きにくそうなので、わしも口を出したら今度は悩み出した。
「どんな服が一番冒険者らしいんだろ?」
「さあにゃ~? 革の胸当てとかかにゃ??」
「聞く猫、間違えた……」
「ちゃんとアドバイスできてるにゃろ~」
着流しか裸で戦うわしでは、ファッションセンスを疑うんだとか。なので昔写真に収めて捨てさせたキアラコレクションをタブレットに出して、ここから決めさせるわしであった。
多すぎるって苦情は聞きません。
ミテナの防具は、結局わしの案を採用して革の軽鎧と手足にも革製品を付ける、ザ・新人冒険者風。ただし、素材の革はわしが持つ最高品質だから、普通の鉄製の鎧なんか紙かと思うほどの防御力と目が飛び出すほどの価格だ。
こんなのでいいのかと思っていたら、ミテナは普通の冒険者になりたかったからいいんだって。
気に入っているならそれでいい。ミテナの猫クラン研修は次のステージに上がり、実地研修に黒い森に連れて来た。いつも通り、猫クランメンバーのほとんどは強敵を探しにどっか行った。
「ウロ君とニナちゃんしか残ってくれなかったね」
「うんにゃ……そこ! イチャイチャしにゃい!!」
「2人もいなくなったね……」
「森の中でにゃにするつもりにゃ~~~!!」
ウロたちは残って手伝ってくれるのかと思っていたのに、デート気分。わしは怒鳴ってみたけど、2人は虫を探しに行ったのだと言い聞かせてミテナに視線を戻す。
「はぁ~……わしが前衛するから、みっちゃんは後ろから攻撃してくれにゃ」
「先に謝っておくわ。シラタマちゃんに当たったらゴメンね?」
「それ、当てる宣言じゃにゃい??」
「まっさか~」
ミテナの謝罪は、いまは受け取らないわし。あの顔は絶対に当てる顔だもん。
とりあえずわしは辺りを警戒しながら歩き、ミテナにも同じように歩かせる。これは普通のハンターのやり方なんだから、背中に乗せろとか言うな。研修やめるぞ?
うるさいミテナを脅して進めば、ミテナにはちょっと手に余る黒い獣を発見。わしが盾役をやりながら、チャンスがあれば攻撃をさせる。
ミテナはキャットボール2個を器用に使いながら、さらに自分は風魔法を使って黒い獣にダメージを与える。
「うんにゃ……そんにゃもんかにゃ?」
その結果、手数は多いモノの楽勝で勝利だ。
「なに? なんか歯に物が詰まったような言い方ね」
「指示通りやったから驚いたんにゃ~」
「まあ!? こんな危険な場所でふざけたりしないわよ! シラタマちゃんと一緒にしないで!!」
「ゴメンにゃ~。この調子で行こうにゃ~」
そりゃこれまでのミテナを見ていたらそう思うよ。ただ、あとで話を聞いてみたら、初めての狩りだからけっこう緊張してたんだって。
だからそれ以降はチャンスがある時は、わしを巻き込んだ攻撃をしていたのか……
それからも実地研修に精を出していたら、弱い獣ならミテナも1人で倒せるようになったから、今日はハンターギルドに登録しにやって来た。
「部外者を猫クランにですか!?」
「シーッ! 大声出すにゃ」
すると受付嬢が興奮して叫ぶモノだから、周りに聞かれてしまった。どうやら前回担当していた子もギルマスもいなくなっていたから、わしへの対応の申し送りが完璧じゃなかったみたいだ。
なので、にじり寄るハンターたち。誰もが羨む猫クランに入れてほしいと、アピールがうるさい。女性ハンターは手をワキュワキュしているのは、何が目的なんだか……
「うっさいにゃ~。この子は未来の王妃様にゃ」
「「「「「えっ!?」」」」」
「というワケにゃから、温かく見守っていてくれにゃ~」
「「「「「うわああぁぁ~~~!!」」」」」
ハンターたちがうるさいから、ウロの時に使った手を使ったらパニック。もっとうるさくなっちゃった。しかし、誰もわしたちに寄って来なくなったので、さっさと登録だけしてミテナとハンターギルドを出るのであった。
ハンターギルドを出たわしは、ミテナの手を引いて歩いていたが、ミテナは静か過ぎる。どうした物かと振り向いたら、ミテナはまったく表情がなかったからわしもビクッとしちゃった。
「ど、どうしたにゃ? そんにゃ顔、初めて見たにゃよ??」
わしの問いに、ミテナはそのままの顔で首を傾げた。
「いつもの顔だと思うけど……というか、あんなこと言ってよかったの? 大ニュースになっちゃうわよ??」
「そうだろうにゃ~。ま、一時のことだから大丈夫にゃろ。それに……」
「一時でも、リータたちに怒られても知らないわよ~??」
「ああ~。それもにゃんとかなるにゃろ。だからにゃ、みっちゃん」
「あっ! 今日、お母さんに呼ばれてたんだった。また明日ね~~~」
ミテナはそう言うと、普通の人にはほとんど見えない速度で走って行ったから、そんなに急いでいたのかと追うことはしないわしであった。
その日のわしは王妃様方に言い訳を繰り返し、モフられまくってクタクタになって眠る。次の日はミテナは風邪を引いたとかメールがあったので、わしはやることもないのでお昼寝。
いや、ミテナ家のマスコミ対応もメールで指示されていたので「先日の王妃発言は嘘やね~ん」とふざけた文章をネコイッターに載せたら炎上した。わしが考えた文章じゃないよ? ミテナに言われた通りやったらコレじゃ……
ミテナは3日も風邪をこじらしていたが、やっと治ったと思ったらどこか様子がおかしい。わしの指導は受けたくないと、サクラや若手とチームを組んで実地研修を終えた。
これでミテナは、猫クランの正式な一員。卒業証書を渡したけど「猫クランから追い出すの?」と言われて笑われた。こういう場合は認定証が普通だな。
そうして本格的な猫クラン活動が始まると、ミテナはわしを避けなくなったけど、狩りの頻度が少ないとうるさいな。いつもこんなもんなんですよ。
「お昼寝ばっかりじゃな~い」
「それもいつものことにゃ~」
「それもそうね……私は何したらいいの?」
「狩りのない日は訓練とか趣味かにゃ~?」
「シラタマちゃんは?」
「お昼寝か……にゃんかイロイロにゃ」
「やっぱりお昼寝ばっかりじゃない!?」
猫クランは自主性を重視している職場。というか、狩り過ぎている可能性もあるから、最近のわしは自重しているのだ。わしだけだから、上に言われたら従います。
「とりあえず訓練したらどうにゃ?」
「ソウまで遠いも~ん」
「みんにゃ準備運動がてら、走って行ってるにゃよ?」
「あっ! そういうことだったの? なんでキャットトレイン使わないのかとずっと不思議だったの~~~」
ミテナ、まだ女王気分が抜けてなかったから、乗り物移動が普通だと思っていたみたい。徒歩6日の距離を走るヤツなんて、猫クランしかいないもん。
その常識を教えてからは、ミテナも走ってソウ市の地下訓練場に向かって汗を流す。そんな日々を送っていたミテナであったが、今日はわしの行動が気になって付いて来た。
「ねえ? なんでこんなに朝早くから起きてるの??」
「ちょっと仕事があるだけにゃ~」
「シラタマちゃんが仕事~? ……女の匂いがするわね。つけちゃおっと」
「宣言してから尾行する人はいないと思うんにゃけど……」
ミテナはどうしても付いて来るみたいなので、ぺちゃくちゃ喋りながら移動。そうしてわしが物陰で人間バージョンに変身したら、ミテナはますます浮気しに行くのだと疑ってた。
「ハンターギルド?」
「うんにゃ。みっちゃんが入ると騒ぎになるかもしれないから、ちょっと待っててにゃ」
「ああ~……うん。離れて待ってる」
ミテナが聞き分けがいいなと思ったけど、炎上した件はハンターギルドが発端の地。顔を見られたらまた炎上するから危機管理をしているのだろう。
わしの場合はこの時間はハンターが多いから、ぬいぐるみ型はやめているだけだよ? 痴漢にあうもん。
ギルドマスターの部屋で依頼のデータをまとめてスマホで受け取ると、わしは小走りにミテナと合流するのであった。
要件は片付いたので、ここからはダッシュで移動。ミテナもやってみたいと、屋根を飛び交い、外壁だけはわしが背負って大ジャンプ。
目的の場所はけっこう離れていたからミテナをおんぶしてやろうと思ったら、猫型・大がいいとのこと。急いでいるから仕方がないので、ブッ飛ばして走ってやった。
「モフモフモフモフ~~~!!」
でも、ミテナには効かず。猫クラン研修のせいで肉体が強靱になっていたから、この程度の風とかではわしの毛が勝るらしい。
そんな速度で走っていたから、あっという間に目的地に到着。なかなか降りてくれないミテナを振り払い、ぬいぐるみ型に変身して森に入る。
「え? ひょっとしてだけど、ハンターギルドの依頼を受けてるの??」
「うんにゃ。それがにゃに?」
「シラタマちゃんがいまさら? 白や黒い獣しか狙わない猫クランの親玉が??」
「ああ~。みっちゃんには言ってなかったにゃ。忘れてたにゃ~」
猫クランメンバーなら誰でも知っているから、わしのうっかりミス。そりゃハンターギルドを見ても付いて来るワケだと説明してあげる。
「ここ10年ぐらいかにゃ~? ハンターの総数が少なくなって来ててにゃ。クランにもオファーが度々来てたんにゃ」
「そうなの? 稼げる職業のはずなんだけど……」
「稼げるっちゃ稼げるけど、猫の国だと他の職業もけっこう貰えるからにゃ。この程度の違いにゃら、安全な仕事に就きたいってのが、人の性ってヤツにゃろ」
「そっか~。ウチも両親が大反対してたもんね。どこの親御さんも一緒だったんだ~」
ハンター不足はまだ深刻ってワケではないが、早い内に手を打つように首相には言ってあるけど、どうも深刻さが伝わっていないのか動きが鈍い。
なので、わしが時々依頼をまとめて受けて、獣の数を減らしていたのだ。
「王様が前線に立つのは変ってのは置いておいて……」
「お気遣いありがとうございにゃす」
「イサベレたちは? 他のメンバーは参加しないの??」
「それが獣が弱すぎるってにゃ~……」
「うん。なんか見なくもわかった気がするわ」
「それだけにゃらいいんにゃ。根刮ぎ狩ろうとしたりもするから、わしが1人でやったほうが穏便に済むかにゃ~っと」
ミテナも弱くて怒るまでは想像できたみたいだけど、蹂躙は想定外だったみたいで驚いてらっしゃる。
「これって猫の国だけの問題? 東の国とかは起こってないの??」
「減少傾向とは聞いてるかにゃ? 猫の国よりかは、遙かに緩やかにって感じにゃ」
「やった~! よかった~!!」
「けっこう深刻なんにゃよ? 動物愛護団体もうるさいしにゃ」
わしがジト目をすると、ミテナは聞き慣れない言葉にバンザイは止まった。
「動物愛護団体って??」
「そのままの意味にゃ。たまにハンターギルド前で『獣を殺すにゃ~』って、デモとかしてるんにゃ。わしに向かってまで言うんにゃよ?」
「プッ。守られる側なのに酷いね~。アハハハハ」
「そういうことじゃなくてにゃ……」
わしとしては国民の命を守っている王様だと言いたかったのに、ミテナにはまったく伝わらず。指差して馬鹿笑いするので、わしは訂正と謝罪を諦めて仕事に取り掛かるのであった。




