猫歴95年その1にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。みっちゃんが怖い。
卒業式の前夜祭では、ミテナは女王様に復権。あの変態揃いの猫大生を全員従えて跪かせているから、国民なんてコロリと落とせるはずだ。
そうなったら、革命だって簡単。もっと言うと、猫の国は議会制をとっているのだから、政党を作って選挙で勝てば猫の国の全てを掌握できる。王様のわしを追い出すことも不可能ではないのだ。
「いや……それはそれでアリじゃにゃい?」
「シラタマちゃん……王様やりたくないからって私に押し付けるの!?」
そう。わしは王様なんてこれっぽっちもやりたくないもん。
「みっちゃんにゃら、猫の国をいい国にしてくれると思っただけにゃ~。ちょっとだけ、ちょっとだけ乗っ取ってくれにゃい? にゃあにゃあ~??」
「イ~ヤ~! 今世はしがらみのない世界で自由気ままに生きるの~~~」
しかしミテナはわしが喉を鳴らしてスリスリしても、頑なに拒否するのであった。めっちゃ撫でて来るクセに……
前夜祭の翌日は、私立猫の国大学の卒業式。わしは理事長だから出席しなくてはいけないので、昨夜ウチに泊まったミテナと一緒にリムジンで向かってる。
「プププ……毛並みグチャグチャよ? アレからずっと怒られてたの??」
「そうにゃ。みっちゃんがチクるから、朝まで説教されて撫で回されたにゃ~~~」
もちろんわしがミテナに王位を譲渡しようとしていたのはバラされたので、王妃様方が激ギレ。ババチビルほど怒られて撫で回された。
インホワからも「王子はダメで赤の他人はいいってどゆこと? オォ?」と詰められた。でも、インホワはトバッチリで王妃様方から撫で回されていたから、わしは謝罪せずに感謝しました。
ひとまず乱れた毛並みはミテナに櫛で整えてもらっていたら、リムジンは猫大の裏口に到着。キリッとした顔で降りたけど、ミテナには伝わらなかった。とぼけた顔してるもん。
あとはわしは理事長席で卒業式を見守るだけ。自分の子供でもない卒業生代表のミテナの答辞を聞きながら、大泣きするわしであった。アーティスティックな花柄も卒業できるから嬉しくて……
「「「「「うわああぁぁ~」」」」」
「「「「「ミテナ様~~~」」」」」
でも、猫大生がそれ以上に大泣きするから、涙が引っ込むわしであったとさ。
みっちゃんはマジでこいつらに何をしたんじゃろうか……
卒業式は涙の多い良い式典になったというか、ミテナが神聖視されていたから収拾がつかない事態になったので、わしがミテナを背負って脱出。
ミテナが変装してコソコソ暮らしていたら、東の国の女王誕生日も終わり、猫歴95年となった。
今年はついにミテナが猫クランに加入する年。意気揚々とキャットタワーにやって来るかと思っていたけど、わしが玄関で「遅いな~」と待っていたら、ミテナは後ろを何度も確認しながらコソコソやって来た。
「にゃにしてるにゃ?」
「あ、シラタマちゃ~ん。ここ、猫大生いないよね?」
「まだストーカーされてたんにゃ……」
「いや~。モテる女は辛いな~」
「洗脳を解いてから卒業しないから悪いんにゃ……」
どうやらミテナは猫大生に怯えてこんなにコソコソやってるみたい。猫大生に見付かると、跪いて「女王様!」とか言われてついて来るから恥ずかしいんだって。
「そういえばみんなは?」
「みっちゃんが遅いから、もう行っちゃったにゃ~」
「えぇ~。初めての訓練なのに、もうちょっと待っててくれてもいいのに~。たった5分じゃな~い」
「猫クランは時間厳守なんにゃ。というか、体を動かしたくてウズウズしてる人ばっかりなだけにゃけど……」
「あ、そっちなんだ……」
ミテナも猫クランに参加したら脳筋になるのかと心配していたけど、わしがおんぶすると言ったら嬉しそうに乗った。
「ハイよ~。シラタマ号~」
「わし、王様にゃんだけど……」
こうしてわしは、ミテナに馬扱いされて訓練場所に向かうのであっ……
「ぎゃ~! 高い~! 死ぬぅぅ~~~」
「ちょっとうるさいんにゃけど~??」
わしが猫市の屋根を飛び交ったら、ミテナはギャーギャー騒ぐのであったとさ。
猫市を出たわしは、平地もダッシュ。ここでもミテナはギャーギャー速いと騒いでいたけど、わしは無視。馬扱いした罰だ。
そうしてやって来たのは、ソウ市。ここも屋根を飛び交い市役所の駐車場に着地したら、ミテナはぐったりだ。
「ほい、着いたにゃよ~?」
「はぁはぁ……なんで止まってくれないのよ!?」
「だって~。急いでたんにゃもん。プププ」
「わざとやったわね!?」
怒ったミテナはわしをワシャワシャ撫で回していたが、こんなことをしている場合ではない。周りでも市役所職員がスマホを取り出していたから、わしはミテナを肩に担いで中に入った。通報されるもん。
「ここって……ソウ市の電車工場?」
やっとミテナが落ち着いてくれたので下ろして一緒に歩いていたら、場所の質問が来た。
「うんにゃ。あんにゃに騒いでいて、よくわかったにゃ~」
「ここは怪しいから、スパイに探らせてたもん」
「にゃんですと??」
「あ、いまのナシ。てか、訓練ってどこでするんだろ~」
「スパイって、にゃに調べてたんにゃ~」
ミテナがわしの質問に答えずマシンガントークでごまかしていたら、関係者以外立ち入り禁止の場所に到着。3個ほどドアを通って最後の大部屋にミテナを押し込んだら騒ぎ出した。
「こんな密室に連れ込んで何するつもり?」
「わかって言ってるにゃろ? ただのエレベーターにゃ」
「つまんない返し~。これでも小学校からずっとモテモテだったのよ?」
「洗脳してたもんにゃ……」
「それは大学からだよ~……あれ? 小中高の男子が私を見る目、家臣みたいな目をしていたような……」
「そりゃ女王オーラ出してこき使っていたら、誰も逆らえないにゃ~」
わしが今まで見て来たことを率直に言ってみたら、ミテナのウサ耳が垂れた。
「もしかして私……本当の意味でモテてない? そういえば告白された時も、付き合ってくださいって言われたことない!?」
「告白にゃんてそんにゃもんじゃにゃいの? 文言はいっぱいあるんにゃし」
「そ、そうよね。一生傍で仕えたいって、愛の告白よね」
「それは女王様に忠誠を誓う騎士の言葉にゃ……」
「やっぱりそうよね!?」
新事実発覚。男子諸君、ミテナの女王オーラに当てられて騎士になっちゃったみたい。断ったらみんな泣き崩れていたらしいから、相当忠誠心が高かったのだろう……
「うそ~ん。男子を手玉に取っていたと思っていたのに~」
「にゃはは。それは残念だったにゃ。あ、着いたにゃ」
「笑わないでよ~……」
エレベーターの扉が開くと、ミテナは言葉を失った。わしはどうしたモノかと思ったけど、早く出ないと次が支えそうなので、ミテナの手を引いて外に出る。
「にゃんでそんにゃにワナワナしてるにゃ?」
そして扉を閉めてミテナを見たら、足やら手が震えているから意味がわからない。
「ついに……」
「ついに、にゃ?」
「ついに猫の国の中枢に潜り込んだぞ~~~!!」
「ああ~……」
ミテナ、万歳して雄叫び。何台ものフォークリフトが運ぶ電池魔道具を見て、目をキラキラさせている。
「そういえばこの施設、秘密にしてたんだったにゃ。だからスパイを送り込んでたんにゃ~。猫の国の初期に、にゃん度か報告受けてたにゃ~」
そう。ここは電池魔道具の出荷場。猫の国から際限なくレンタル電池魔道具が運ばれていたから、日ノ本を除く世界中の権力者が「猫の国、どうなってんの?」と、七不思議のひとつになっていたのだ。
それを初めて他国の権力者が足を踏み入れたから、ミテナはこれほど感動していたのだ。
「わ~。すっごい数~。これだけあれば、サンドリーヌタワーも節電なんて気にせず電気使えたのに~。あっちは魔道具だ~!」
「こりゃ~。どこに行くにゃ~~~」
ミテナは興奮して走り回るので、わしは何度も捕まえたけどウルウルした目をするから拘束はできず。かわいそうじゃもん。
そうしてスパイ気分で隅々まで見たミテナは、いい笑顔で振り返った。
「東の国にちょうだい!」
「みっちゃんは猫の国の国民にゃろ~」
「あ……」
ミテナ、死んでから22年も経っているのにまだ女王気分が抜けてなかったみたい。そんな無茶なお願いよくされたな~っと、わしはちょっと懐かしいです。
「ところで魔道具に補充してる人が1人もいないけど、どうなってんの?」
「みっちゃんに喋ると東の国にリークするからにゃ~……」
「い、言わないと思います……」
「契約魔法、掛けにゃ~す」
「待って! 待ってよ~~~!!」
ミテナは確実に言いそうだけど、わしがうら若き女性にそんな非道な魔法を使うワケがない。冗談だ。変態とか言われたことは関係ない。
「みっちゃんはわかるかにゃ? ここ、かなり魔力濃度が高いんにゃけど」
「魔力濃度?? う~ん……なんか空気感が違う気はするけど……」
「訓練したらわかるようになるにゃ。その魔力濃度が高い場所に魔道具を一日ぐらい置いておけば、勝手に補充されるってのが、この施設を秘密にしている理由にゃ」
「な、なんてこと……タダでボロ儲けじゃない!? シラタマちゃんだけズルイ~~~!!」
「揺らすにゃ~~~!!」
せっかく教えてあげたのに、ミテナはわしの襟首を掴んで揺らしまくるから吐きそうだ。このやり取りもミテナの前世でよくやったと懐かしく思うけど、このままだと口元にモザイクが現れそうなのでするりと抜け出した。
「ぶっちゃけ、この施設は危険すぎるから他国には秘密にしてるんにゃ」
「そうでしょうね~。ここを奪おうと戦争おきますもんね~? 私だって、こんなこと知ってたら兵を出したわよ」
「奪いに来るにゃよ~」
ミテナが物騒なことを言っているけど、話は途中だった。
「それだけじゃ終わらないにゃよ? 獣にバレたら、めちゃくちゃ押し寄せて来るからにゃ」
「はあ~? なんで獣が欲しがるんですか~? バカなんですか~? バカ面ですね~」
わしはムカッと来たが、頑張って我慢して続ける。
「だからにゃ、巨大な白い獣がいる場所が、こういう場所なんにゃ。そこの主がいなくなったら、戦国時代に突入して森が荒れまくるんにゃ。一度、わしが殺した跡地がどうなったか見に行ったら凄かったにゃよ?
みっつの群れが命を懸けて戦ってたんにゃ。もう、怪獣大戦みたいだったにゃ~。その後も強い獣が押し寄せたのか、主が何度も変わっていたんにゃ」
ここまで話すとミテナもこの施設の危険度は伝わったのか、熟慮しているような顔に変わった。
「でも、ここは大丈夫そうじゃない?」
「まぁ地下だからにゃ。奇跡の土地なんにゃ」
「だったら東の国にも作ってよ~。シラタマちゃんならできるでしょ~~~」
「だから揺らすにゃ~~~!!」
こうしてミテナの無茶振りはまだまだ続くのであった……
「シラタマさん? ミテナちゃんの猫クラン研修は始めないんですか??」
「「にゃっ!?」」
いや、わしたちが騒いでいたら、その声に気付いたリータが今日ここに来た目的を教えてくれたので、先送りになるのであったとさ。




