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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴92年その3にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。年取ったら老人に見えるのかどうか不安です。


 猫歴92年の前半にあったイサベレの誕生日から、モフモフ組の老化がわかるか心配になったけど、一番老人と言っても過言ではないギョクロの見た目も変わっていないから、心配するのは無駄。どうせ変わらないよ。

 そうこう調べ物をしたり猫クラン活動したり、猫大の秘密地下図書館でお昼寝したり、東の国から来るメールを精査していたら、ついに東の国貴族強襲作戦の日取りが決まった。


 わしたち猫クランは前日には東の国の別宅に出向き、わし主導で作戦の最終確認をしていた。


「というように、全員散り散りになるからにゃ。くれぐれもやりすぎにゃいように。全員生け捕りにするからにゃ」

「「「「「にゃっ!」」」」」


 作戦の概要は猫クランは全員散って、信頼できる騎士数人と一緒に、貴族の領地や屋敷を強襲するとのこと。

 各々に地図や騎士の名簿は渡しているけど、リリスはたぶん辿り着けないと思うから、リディアーヌたちの警護を任せた。エサもいっぱい貰えると思う。猫兄弟はさっちゃんと各地を回ったことがあるから行けるってさ。


 ちなみにこれらの貴族が本当に悪事を働いているか心配だったので、フユに確認してもらったよ。奧さんと2人の子供と共にハッキングしてくれたから、真っ黒なのは確実だ。フユ家族も今回のお手伝いで真っ黒になったけどね。


 猫クランにもどんな罪があるかを教えておいたから、やる気満々。精神的にキツイ場所に送り込まれるアンクルチームや立候補してくれた者は、少し緊張が見える。コリスとリリスはいつも通りニコニコしてる。

 そうして皆が寝床に向かい、わしが後片付けをしていたら、玉藻前と秀忠が残っていたからお酒を振る舞って話を聞いてみる。


「にゃんか用にゃ?」

「やっぱりこれって、内政干渉ですよね?」

「王族が関わっていいのか?」

「ずっと違うって言ってるにゃろ~」


 実のところ、この2人は連れて来るつもりはなかった。しかし、猫の手も狐の手も狸の手も借りたいとリディアーヌがうるさかった。

 それでも2人には秘密にしていたけど、インホワとシゲオが喋っているところを聞かれてしまったから、こっちも参加したいとうるさくなったのだ。


 ただ、思いっきり内政干渉だから、詳しいことは言えない。

 東の国の悪徳貴族を退治するって依頼を受けたとごまかしていたけど、悪徳貴族でもお取り潰しにされるほど罪が重くない者もリストにいたから、2人にもごまかしていたことがバレてしまったな。


「どう見ても内政干渉でしょ」

「猫の国が東の国の国力を削ごうとしているようにしか見えないぞ」

「お母様に報告しないと……」

「父上にも……」

「もう! わかったにゃ~。ちゃんと説明してやるにゃ~」


 玉藻と家康に言われてもわしは困らないけど、そこから他国に宣伝されるのは困る。世界最強の猫クランが国を潰そうとしているように見えるもん。

 ひとまずわしは、リディアーヌに提出した案と、猫の国と東の国との庶民の生活の違いもタブレットを使って説明してあげた。


「これが庶民の暮らし……商人の暮らしの間違いでしょ……」

「ありえない……日ノ本の村民なんて、ボロを着てるぞ……」


 すると、カルチャーショック。わしも日ノ本は都市部ばかり行っていたから、いまだにそんなことになっているとは知らなかったのでショックだ。


「まぁ日ノ本のことは置いておいてにゃ。両国の暮らしには差があるからにゃ。その差を埋めようと、税制改革をしようとしているワケにゃ。その手っ取り早いところが、貴族ってことだにゃ。資料にもあったにゃろ? 中抜き重税のオンパレードにゃ~」


 わしの言葉は2人の耳には入っていると思うけど、めっちゃ(こす)ってる。公家や武家も似たようなことをしてるから、耳が痛いんだろうね。


「「ということは、同じことを日ノ本でもやれば……」」

「埋蔵金は山ほど出て来るだろうにゃ。藩主とかも貯め込んでるんじゃにゃい?」

「「確かに……」」

「話を東の国に戻すとにゃ。この改革には貴族の反発が出るから、血も多く流れるにゃ。2人も想像できるにゃろ?」

「「はい……」」

「そこでわしたちの出番にゃ。血が出る前に、有力貴族を全て押さえてしまうにゃ。頭を押さえてしまえば、あとは烏合の衆にゃ。さらに、イモヅル式……普通は下から引っ張るんにゃけど、上から引っこ抜いて裁いてしまうってのが、この作戦のミソだにゃ」


 わしの完璧な作戦を聞いた2人は、声も出ない。ちなみにこの作戦を考えたのはミテナと東の国だけど、いちいち説明する必要はないだろう。わしが考えたと勘違いしてそうだし……


「ちょっとこれは、結果がどうなるか見物ね」

「ああ。上手く行くなら、江戸でも試してみたいぐらいだ」

「やるにゃらもういっそ、今回だけは手を組んだらどうにゃ? 日ノ本全土の話だしにゃ~」

「そうね……陛下と母上に話をしてみるわ」

「私も結果と共に父上に報告してみる」

「その時は、わしも間に入ってやるにゃ~」


 わしは元日本国民。日ノ本の国民が裕福になるなら、協力は惜しまない。その言葉を聞いた玉藻前と秀忠は、珍しく酒を片手に語り合うのであった……わしはホドホドで寝たよ?



 翌日は和気あいあいと朝ごはんを食べ、庭で円陣を組んだら各々の持ち場にダッシュ。走ったほうが速いんじゃもん。

 そうして各々の持ち場の騎士と合流して、オペレーターのフユ家族に連絡を入れたら、フユの号令で一斉に貴族の屋敷に強襲だ。


 わしも屋敷の門番を眠らせたら、ドアから押し入って侯爵家の当主を探して面会していた。


「な、なんで、猫の国の国王が……」

「ほれ? お前は殺人罪の容疑が掛かっているにゃ。女王のサインが入った逮捕状にゃ~」


 当主はわしの顔を見て混乱していたから、罪状の書かれた書状を見せたけど往生際が悪い。


「殺人罪? どこにそんな証拠があるのだ?? そもそも猫の国の国王が私を裁けるワケがない! これは内政干渉だ!!」

「だからにゃ。この書状を見たら女王から依頼されたとわかるにゃろ。あと、お前……同じ趣味のヤツとメールで写真見せ合ってるにゃろ? これが証拠にゃ~」

「な……なんで……」


 ついでにわしのスマホでいたいけな被害者の写真を何枚も見せたら、当主はヨロヨロとよろけた。


「こ、こうなったら……護衛、こいつを殺してしまえ! 証拠が無ければ裁けるワケがないからな! わははははは」

「やっぱりそう来たにゃ~……」


 10人ほど部屋に流れ込んで来た護衛は、途切れたところで全員バタンキュー。わしがネコパンチで意識を奪ったのだ。


「はは、は~~~??」

「んじゃ、お前も寝てろにゃ。たぶんお前の家はお取り潰しで、にゃん人かは死刑にゃ。被害者の恨みを我が身に受けて反省しろにゃ」

「ま、待って……私じゃないんだ~~~!! グフッ……」


 反論する相手はわしではない。わしは当主の意識を奪い、屋敷にいる残りも全員、手錠を掛けて無力化して騎士に預けるのであった。



 それから地下牢にも立ち寄ったわしは、生き残りの哀れな被害者や拷問部屋の写真を撮り、被害者は魔法で治して騎士に預ける。

 そしてフユに連絡を取り、もう2件、受け持っている貴族の屋敷も強襲して、犯罪者を騎士に預ける。


 これでわしの仕事は終了。フユに連絡を取ったら遅れている者がいたからそちらに走り、猫クランの強襲が終わると、王都の城の庭にて合流した。


「フユからは聞いてるけど、誰も殺してないにゃ?」

「「「「「はいにゃ~」」」」」

「んじゃ、わしたちの仕事は終了にゃ。お疲れ様にゃ~」

「「「「「お疲れ様にゃ~」」」」」


 わしの労いのあとは、拍手で締め。レジャーシートを敷いて宴会だ。そこで皆の話を聞いてみたら、「ひかえおろう!」って感じのことができたからけっこう楽しかったらしい。

 反撃しようとした護衛も、殺気を放つだけでバタバタ倒れたから楽だったとのこと。わしがそんなことをしたら死人を出すから殴るしかなかったの。


 何人かは、酷い拷問現場を見て参っていたのでわしのモフモフカウンセリング。そんなことをしていたら、フランシーヌ元女王がやって来たのでお疲れ様会に入れてあげた。


「皆様のおかげで、1人も死人を出さずに裁けそうです。余罪も共犯者も続々出て来てるらしいですよ。ありがとうございました」

「感謝はまだ取っておけにゃ。これからもっと大変になるからにゃ~」

「ですね……」


 いまはトップを捕まえただけ。下の者がヤケになって兵を上げる可能性は少なからずあるから、まだまだ気が抜けない。


「まぁキアラとマティルデを残して行くから、王都の守りは大丈夫にゃ。もしも兵を挙げたら、連絡してくれたらすかさず叩いてやるにゃ~」

「本当にありがとうございます。ところで報酬の話が抜けていましたが、如何(いか)ほど払えば……」

「あ、本当だにゃ……ま、リディちゃんのご祝儀にゃから、お金はいいにゃ。貰い過ぎだと思うにゃら、貸しに付けておいてくれにゃ」

「貸しですか……東の国はいつになったらおじ様に全てを返済できるのでしょうね。ウフフ」


 確かに東の国はわしに借金まみれだけど、返す方法はないこともない。


「花柄をやめていいようにリータたちを説得してくれたら、1個減るにゃよ?」

「それは~……追々」

「にゃんでにゃ~。めちゃくちゃリーズナブルな返済方法にゃろ~~~」


 フランシーヌもわしの花柄は気に入っていたみたい。なので「王妃様方が飽きた頃に貸しを返すと言っても遅いからな」と脅すように言ってみたけど、少し悩むだけで諦めるフランシーヌであったとさ。



 貴族強襲作戦は一滴も血が流れず上手く行ったのだが、そこからが大変。上級貴族が証拠付きで大量に捕まったのだから、東の国全土の貴族が混乱に(おちい)ったからだ。

 善良な貴族や領主はリディアーヌ女王の政策に、賛辞と共に兵を送ってくれることは有り難い限り。小悪党の貴族や領主は申し開きに王都を訪れて、半分ぐらい御用。馬鹿なヤツらだ。


 その他リストに載っていた悪徳貴族は、シリエージョ率いる近衛騎士団に次々と生け捕りにされて、王都の外にある収容所に放り込まれる。

 この収容所はわしが作りました。給金は100万リーヌ貰ったけど、キャットゲージって名前がな~……そこはわしたち(ネコ)が入る場所では?


 もちろん簡単に捕まらない悪徳貴族もいる。国外逃亡しようとした貴族はほとんど国境で捕まり、他国にも指名手配を出しているから強制送還される。

 もうこれでは生き残る(すべ)がないと悟った悪徳貴族は徒党を組み反旗を(ひるがえ)そうとしたけど、アジトを猫クランに強襲されてその事実さえ消される。


「おじ様……どこでこの情報を得たのですか?」

「そりゃウチにもスパイがいるからにゃ~」

「私たちが知り得ない情報をスパイがって……絶対なにか裏がありますよ~」


 悪徳貴族軍を護送したら、リディアーヌに疑われちゃった。実際問題、フユ家族が悪徳貴族のスマホをハッキングして得た情報だから言えません。



 二度ほど兵を挙げた悪徳貴族はいたが、それ以降は何もできず。やれることは潜伏ぐらいなので、夏には東の国も平穏は取り戻されたと思う。

 だがしかし、バットニュースも同時に入り、わしはミテナと共にアンジェリーヌの寝室を訪ねた。


「そんなに慌てて来なくとも、ただの風邪ですよ」


 でも、たいしたことはないと、アンジェリーヌは笑っている。


「ここ最近って、外出とかしてたにゃ?」

「いえ。外は危険ですので、邪魔にならないように建物からは出ていません」

「てことは、風邪の人から移されたのかにゃ~?」

「咳をする者も近付けるなとおじ様から言われていたから、守っていたんですけどね。少し冷房が利き過ぎたのかもしれませんね」


 わしがこんなに風邪について問診している理由は、これが引き金になってアンジェリーヌの命が尽きると知っているから。だからこそ、わしとミテナは慌ててやって来たのだ。


「ま、元気そうでよかったにゃ」

「それは長年のストレスが発散されたからでしょうね。あのアードルフ侯爵家、私のやることなすことに反対したり、お母様と比べると見劣りしてなりませんとか、私の前で堂々と言うのですよ? 何度、殺してやろうと思ったか……」

「にゃはは。そいつって、死罪に決定したんにゃろ? 夢が叶ったにゃ~」


 アンジェリーヌの愚痴にわしが付き合って笑っていても、ミテナは話に入って来ないからわしから振ってあげる。


「みっちゃんは嫌いにゃ貴族いなかったにゃ?」

「え? あぁ~……いっぱい居たけど、ほとんど死んじゃってるからね。それでもう許したみたいな?」

「本当かにゃ~? 夜な夜な貴族のリストを見ながらグフグフ笑ってるの、わし、知ってるにゃよ?」

「起きてたの!? なんで黙ってるのよ~」

「いや~。面白いからにゃ~……ヒゲを引っ張るにゃ~~~」


 せっかく話を振ってあげたのに、ミテナはケンカ腰。そのケンカを見ていたアンジェリーヌは、ケラケラと笑っている。


「ウフフ。そのやり取り、いつもやってましたね。お母様もおじ様も、死んでも何も変わりませんね」

「せ、成長してるよね?」

「わしは死んでないにゃ~」

「ウフフフフ」


 この2ヶ月後、アンジェリーヌは他界する。わしたち猫ファミリーは前日から押し掛けて、その最後を見届けた。

 今回はさっちゃんの時のように民は押し掛けて来なかったが、一代だけ民のお別れ会を行うのもおかしく思ったのか、アンジェリーヌの希望もあり、民も最後の別れができるように棺を広場にて御拝見。

 おそらく王都民が大多数だろうが、涙の多い良いお別れ会となった。


 その数日後には、盛大な葬儀が行われていた……


「シラタマちゃん……子供の死は、お母様やお姉様、夫とは違って、違う悲しみが押し寄せるね」

「そうだにゃ」

「この悲しみを持って、シラタマちゃんは千年生き続けて行かなくちゃいけないのね……」

「だにゃ……でも、それがわしの運命にゃ。記憶、記録、家族、子孫に助けてもらいながら生きるにゃ。みっちゃん……わしのことはいいにゃよ? いまはアンちゃんのことだけ悲しんでやれにゃ。にゃ?」

「うん……アンジェ……うぅぅ……」


 ミテナの優しさを噛み締めながら、わしは空を見上げるのであった……



 アンジェリーヌ元女王。享年85歳。先代、先々代と功績の多い女王の跡を継いだがために、不運の女王と歴史に刻まれる。

 しかし、その数十年後には、猫の国からパソコンとスマホの製作権利を勝ち取って為替にも関わっていたこともあり、凄く頑張った女王と見直されたんだとか……


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