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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴92年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。親子の再会は泣ける。


 ミテナとアンジェリーヌの涙涙の再会を見ていたわしはもらい泣き。その「にゃ~にゃ~」泣く声がうるさいからって、ミテナに窓から投げ落とされました。12階からって酷くない?

 8回転して着地したわしは、大ジャンプで屋上から侵入。部屋の前で待っていたら、ナースウサギが入ろうとしたので「もう大丈夫ですか~?」とわしから声を掛けてあげた。ギロッと睨まれたけど……


 それからのアンジェリーヌは、ベッドの上での生活となり、出掛ける時は必ず車イスに乗ってなので遠出もできないらしい。

 そんな物、わしに掛かればチョチョイのチョイ。アンジェリーヌに行きたい場所のリクエストを聞き、その場所に三ツ鳥居を置いて運んであげる。わしの転移魔法はなんとなく秘密だ。


 三ツ鳥居を使うことでとんでもない金額を使ったピクニックになるけど、それぐらいわしのポケットマネーからいくらでも出してやる。

 ぶっちゃけ、猫帝国にでも置いておけば1日で復活するから、一銭も掛かってないけどね。


 隔週の頻度でミテナとアンジェリーヌは遠出したりキャットタワーにお泊まりしていたら、年末年始の女王誕生祭となった。

 今年はフランシーヌ最後の雄姿ということもあり、猫クラン総出演のバトルイベントもあるよ。アンジェリーヌもわしたちの誰かが運ぶから、祭りを大いに楽しめたことだろう。


 女王誕生祭は、例年通り(つつが)なく終わると、次は戴冠式。例の(ごと)く英雄卿として呼び出されたわしが一番いい場所でカメラマンをしていたら、ついに貴族から文句を言われました。

 だから、文句なら女王に言ってよ。毎回断ってるんじゃよ? ちなみに王様の仕事の時は、白猫です。これがフォーマルらしいです。


 戴冠式はわしがいることで空気が悪くなっているけど、新女王リディアーヌが入場したら、厳かな空気に早変わり。でも、リディアーヌがわしを二度見して吹き出したから驚きの空気になった。言ってなかったんか~い。

 全世界にリディアーヌの無様な様がお届けされたのかというと、さすがはわし。リディアーヌの顔をアップで撮っていたわしは、顔がくしゃっとなると感じた瞬間にカメラを横にしたから、威厳は守られたはず。


 そのせいで名前は忘れたけど、なんとか侯爵って人が大口開けてあくびしてるところがお茶の間に流れたらしい。わしはめっちゃ恨まれたんだって。



 戴冠式はなんとかかんとかリディアーヌは持ち直し、その日の夜に行われる晩餐会はわしも出席して、元女王のお二人、アンジェリーヌ、フランシーヌと喋っていた。誰よりもいいドレスを着たミテナも、わしの連れとして潜り込んでるよ。


「まさか孫の戴冠式まで見られるとは……」

「それ、さっちゃんも言ってたにゃ~」

「お母様、涙が……」

「泣かせてやれにゃ。さっちゃんも泣いてたんだからにゃ。でも、フランちゃんはまだダメにゃ~」


 アンジェリーヌの涙にフランシーヌが注意しようとしたのでわしは止めた。フランシーヌの涙もね。


「グスッ……あの時、お母様よりおじ様のほうが泣いてませんでした?」

「まぁ……フランちゃんはわしの孫みたいなもんだからにゃ。感極まっちゃったにゃ。曾孫の立派な姿も泣ける、にゃ~~~」

「「まったく血の繋がりありませんよ?」」


 こうしてわしが大泣きすることで、2人は泣くに泣けないのか涙が引っ込んだのであった。ミテナは違う席で大泣きしてたけどね。



 戴冠式の出し物はこれで終わりではない。日を変えてパレードで民にお姿を。貴族への新女王様の顔見せ。他国の者とも挨拶程度に個別に会う。

 わしは英雄卿でもあるが、他国の王様なので会わないといけない。リディアーヌとはけっこう会ってるから断っているのに会うのは、他国の牽制になるから逃がすワケがないって理由じゃないかとわしは疑ってる。


「どうしてあんな所にいるんですか~」

「いや、その苦情はフランちゃんに言ってくんにゃい?」


 普通の他国の者なら、用意した祝賀の定型文を言ってお互いの懸案事項を軽く話すところだが、わしの場合はリディアーヌはまずは苦情から。フランシーヌが言い忘れたことが悪い。


「おじ様~。私にも功績くださ~~~い」


 続きましては、例年通りのおねだり。これで四代連続だ。


「それがにゃ~……いい物が思い付かなくてにゃ~」

「考えてくれていたのですね! でしたら、ウサギ市をください!!」

「領地にゃと!?」


 リディアーヌは予想の斜め上を行く超弩級のおねだり。確かにウサギ市を猫の国から盗ったとなったらとんでもない功績になるけど、全面戦争になってしまう。

 わしじゃないよ? 東の国VS猫の国王妃様方のほうです。それも王妃様方が蹂躙する未来の……


「それは無理にゃのわかって言ってるんだよにゃ?」

「はい。ノリです……あるいは~?」

「ないにゃ~」


 ダメだこりゃ。甘やかされて育ったのかもしれないな。


「これはリディちゃんのお母さんとお婆さんにも言ったんにゃけど、心して聞いてくれにゃ」

「はあ……」

「考えも無しに無理して功績を得ようとすると、必ず民が苦しむことになるにゃ。手っ取り早く戦争を仕掛けたりにゃ。東の国にゃら勝てるかもしれないにゃ。でもにゃ。民は万単位で死ぬにゃ。そのにゃん十倍も敵国の民に恨まれることになるにゃ。ペトロニーヌ女王から続くこの平和を崩していいにゃ? それこそ負の功績になっちゃうにゃ~」

「す、すいません。焦ってました……」


 リディアーヌがシュンとして謝ったのだから、この話はここまでにしてあげよう。


「んでにゃ。これは功績になるかわからないけど、ひとつ提案があるにゃ」

「提案ですか……」

「うんにゃ。提案にゃから、やるかどうかはリディちゃんの判断で決めたらいいからにゃ。決してわしは強要しないにゃ」


 リディアーヌが頷いたので、わしは付き人を入れていいかと許可を取ってから、スーツ姿のミテナを呼び込んだ。このスーツも(たか)られたから、めっちゃ高いです。


「この子は国王直属、政策秘書のミテナにゃ。相談したら、東の国に使える政策があると言うから連れて来たにゃ」

「よく見掛けると思ったら、おじ様の秘書だったからですか。さぞかし有能な方なのですね」

「そうにゃ。んじゃ、用意した政策を発表してくれにゃ」

「はっ」


 ミテナは2台のタブレットを操作して説明する。その内容は、猫の国政府が発表している民の情報と、猫の国の民の暮らし。プラス、東の国の民の暮らしも写真付きでタブレットに映し出される。


「このように、民の暮らしを比較すると、東の国は猫の国に完全に負けています。この改善を行うことができれば、女王様の大きな功績になるはずです」


 これは、ミテナが転生してから温めていた改革案。自分の家がド庶民なのに裕福な暮らしをしていたから、いつか東の国に伝えてやろうと考えていたのだ。

 しかしミテナが完璧なプレゼンをしたけど、リディアーヌは混乱してる。


「ちょ、ちょっと待って。おじ様、猫の国ならわかりますが、どうしておじ様が東の国の村や町の民家に入って行けるのですか?」

「その村はにゃ~。90年以上も前にわしが助けたことのある村なんにゃ。2年も雨が降らずに不作だった話にゃんだけど、知ってるにゃ?」

「歴史書で見たような見てないような……」

「遠い昔のことにゃんだから、そんにゃもんだよにゃ~? にゃのに、その村のヤツら、わしのこと覚えてやがったにゃ! 90年振りぐらいに行ったのに、御使い様って言われたにゃ~~~」

「御使い様? ……あっ! 村にある猫の像!!」


 およそ94年前、わしは東の国の村々を回り、大量の獣の解体の対価で肉を配っていたら、いつしか御使い様と呼ばれるようになった。

 猫の国に移住してからはリータの出身の村とベティの出身の村は訪ねていたけど、それも60年近く前の話。わしを知っている人は全員寿命で死んだから、覚えてるワケがないのだ。


 だがしかし、今回適当な村を訪ねたら、御使い様フィーバー。猫の石像まで何個もあるから不思議に思ってミテナを見たら、てへぺろしてた。


 そう、犯人はミテナ。女王の時や引退したあとに、村を訪ねた時はわしの話を聞いて、御使い様伝説を残す活動もしてやがったの!

 だから「家の中、動画で撮らせて」って言っても、「どうぞどうぞ」と話が早かった。ちなみに王都の民家は、ハンターギルドで受付嬢をしていたティーサの子孫や、わしがちょっとだけ助けた孤児院出身で自立した子の子孫に頼んだよ。


「続きを説明してもよろしいでしょうか?」


 わしが東の国でスパイ活動をしていた話を掻い摘まんで説明していたら、ミテナが割り込んだ。


「ええ。聞かせてちょうだい」

「民を潤すには、減税するしかありません。その財源として、貴族を減らすのはどうでしょうか? どうせアイツらは民から搾り取って豪遊してるんですから……」

「う、うん……うちの貴族に、何か嫌なことされたのかな~?」

「い、いえ!」


 ミテナは貴族の舵取りに苦労していたのか、心の声が漏れてしまったのでリディアーヌにも心配されちゃった。


「おじ様……この案は、どう思いますか?」

「アリっちゃアリだけどにゃ~……どんにゃに準備しても、貴族の反発は必ずあると思うにゃ。血を見る覚悟は必要だろうにゃ」

「ですよね……」

「まぁみっちゃんの言う通り、必要のない貴族やどうしようもない貴族はいるはずにゃ。そこから手を入れて、時間を掛けてやるのが一番血が流れない方法じゃないかにゃ~?」

「言いたいことはわかりますけど……」


 こんな大改革、リディアーヌの腰が引けるのはわしもわからないことはない。しかしミテナは、それを解決できる腹案があるらしい。


「貴族が反発して兵を上げた場合は、シラタマ王を頼ったらいいんですよ。猫クランに出て貰えば、誰1人殺さずに捕まえてくれますからね」


 でも、その案も斜め上を行く超超弩弓のおねだり。わしは開いた口が閉じません。


「その案、おじ様にちゃんと確認した? おじ様、すっごい顔して見てるよ??」

「こ、これぐらい、聡明で名高い王様は予想の範疇かと……ですよね?」

「だからわしに集るにゃ~~~!!」


 そんなもん予想できるか!


 わしが怒鳴るとミテナはわしの口を塞ぐ。そんなことをしていたら猫の国の持ち時間が過ぎたので、リディアーヌから「また詳しく聞かせてください」と言われて追い出されたのであったとさ。


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