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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴91年その2にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。王様でもあるし、私立猫の国大学の理事長でもある。


「大工さんは?」


 ミテナの言う大工さんでは絶対にない!


 私立猫の国大学に入ったミテナは、自由すぎる校風のせいで何を学んでいいかわからないらしいので、わしが選んであげる。

 ミテナは高校では勉強もさることながら、普通科なのに魔法の授業でもトップを取っていたから魔法科学はアリだろう。しかし今日は午後の授業しかなかったので、先に秘密地下図書館に連れて行く。


 ここは、地上では学べないことをやりたいと言ったド変態しか入れない場所。

 もちろん契約魔法で縛るから不満な顔をするが、第三世界の蔵書を見たらそんな気持ちが吹っ飛んで頬擦りまでするのだ。だから、契約魔法の項目に頬擦り禁止も入れてるけどね。


 入るにはそれなりの手続きがいる。扉でカードキーの読み取り。中の警備員のチェック。直通エレベーターでは暗証番号を打ち込まないと動かない。このセキュリティーは、全部黒モフ組が作ってくれたんだよ。

 キャットタワー側の直通エレベーターは、もっとセキュリティーは甘い。エレベーターのボタンの一番下を鉄製のカバーで囲って、カギで開けるだけ。セキュリティーが厳しいとみんな面倒って言うんじゃもん。



「久し振りに来たな~……何年振りだろ?」


 秘密地下図書館にやって来たミテナは、懐かしそうに周りを見渡している。


「たぶん……50年振りとかかにゃ?」

「そんなに? よく覚えてるわね~」

「漫画と小説を片付けたら、誰も寄り付かなくなったのがその頃ってだけにゃ」

「うん。あったわね。全部コピーが終わったと言われて行く気無くした記憶があるわ」


 そりゃ勉強する人しか来ないのだから、ミテナが来るワケがない。


「まだカードキー発行してないけど、図書館の使い方だけ教えておくにゃ。あそこに受付あるにゃろ?」

「うん。こんなのできてたんだ」

「あそこでカードキーを見せて、タイムカードを付けてもらうんにゃ。90分いれば、それで出席数がひとコマ貰えるからにゃ」

「ウソ……なんで漫画とか置いておいてくれないのよ~」

「そういう人がいるからにゃ」

「だよね~? てへ」


 勉強大好きド変態なら漫画なんかに目移りしないのだが、猫ファミリーの大学生はそれでけっこう出席日数を稼いでいたから、ミテナ対策ではないってのが悲しい。

 ひとまずミテナの欠席が増えるのはかわいそうなので、わしは受付で便宜を図る。適当な紙に名前と使用時間、わしのサインを入れて証拠にしてあげる。


 それから世界の政治なんかが収められている棚に移動して、そこから有名な本をわしが何冊かピックアップしてミテナに読ませてみる。

 思った通り、ミテナは熟読しているので、わしは適当に読みながらウトウト。完全に寝入っていたら、ミテナにワシャワシャされて起こされた。


「なかなか面白かったわよ」

「にゃはは。君主にとっては、いい勉強の本だもんにゃ」

「でも、このファシズムってのが、ちょっと気になるわね。これって第三世界の歴史上の名称でしょ? 論文に書いて大丈夫なの??」

「いい質問だにゃ。そういう場合は、自分で好きに名前を決めていいことになってるんにゃ。出せない名前だからにゃ」

「ホント? これって教科書にも乗りそうよね~……ラッキー」


 ミテナはこういう功績は大好きだから、めっちゃ喜んで考えてらっしゃる。


「サンドリーヌイズムってのはどう?」

「それだとさっちゃんが、労働階級を押さえ付けて侵略戦争を是とする独裁者ってことになっちゃうにゃけど……」

「あっ! いまのナシ! そんなことしたことないも~~~ん」


 でも、東の国で女王をしていた頃の名前を出して功績を足そうとするので、命名は大失敗になるのであったとさ。



 ミテナの命名は大失敗だけど、秘密地下図書館に連れて来たのは大正解。ミテナは本を読み漁り、知識を蓄えている。

 わしも同じように読んでいたはずなのに、ワシャワシャされて起床。お腹がすいたとのことなので、片付けをして地上の大食堂に移動する。ミテナには旨いエサを(たか)られたけど、学生が食べてる物をわしが食べたいから我慢だ。


「ここって、安いのにけっこう美味しいのよね~」

「メニューはベティとエミリが考えてくれたからにゃ。マズイわけないにゃ~」

「ここにもあの2人が関わってるんだ……小中高の給食も?」

「そうにゃ。猫の国の料理は、あの2人が作り出したと言っても過言じゃないにゃ。みっちゃんちの家庭料理とかもにゃ」

「そう聞くと凄いね。文化を創り出してるんだから」

「第三世界のパクリだけどにゃ。にゃははは」


 わしが笑うと「シラタマちゃんも一緒だよ?」とツッコまれたので笑いが引っ込む。確かにわしが作った物は全部パクリだから笑えませんね。

 それからしばし雑談していたら、4限目の時間になったので、魔法科学がやっている教室で真面目に授業を受けた。


「む、難しい……」


 チャイムが鳴る前からミテナの頭に煙が上がっていたから、わしはヨシヨシ撫でて消火してあげた。


「みっちゃんにゃらギリギリついて行けると思ったんだけどにゃ~……」

「これが? 受けてる人も少ないわよ??」

「う~ん……初っ端からは厳しいかもにゃ……ちょっと待っててにゃ~」


 ミテナでダメなら、テコ入れは必要。わしは講師に話し掛けに行き、「なんで黒くてヒョウ柄?」って質問は無視。もう一段、簡単な授業をしろと言って戻った。


「要は、高校の授業で元素とか習ったにゃろ? それと魔法を合わせた学問なんにゃ」

「ああ~……そういうことだったんだ。よくそんなこと考えたね」

「アメリヤ王国出身の科学者、ケラハーってヤツが考えた学問にゃ。名前ぐらいは聞いたことないかにゃ?」

「あ、物理の教科書に載ってたわね。あれ? 私、その前から知っていたような……」

「アメリヤ王国を発見した年に、わしが連れ帰ったからにゃ。双子王女から聞いたか、面識があったのかもにゃ」


 わしの発言に、ミテナは目を輝かせる。


「うわ~。賢い人がいるなと尊敬してたの~。歴史上の人物に、私、会ってたかもしれないんだ~」

「サンドリーヌ女王様も、歴史上の人物にゃよ?」

「うっ……歴史の教科書に載ってた……なんであんな教科書作ったの!? 私、めちゃくちゃ恥ずかしかったんだからね~」

「教科書はわしの管轄じゃないにゃ~。そんにゃに嫌にゃら、消してくれとお願いぐらいはしておくにゃ」

「それはそれでもったいない気が……どうしたらいい??」

「知らないにゃ~」

「シラタマちゃんも面白おかしく書かれてたじゃな~い」


 子供や孫に教える時に、歴史の教科書もわしは熟読していたから、そんな文言は書かれていなかったはずだ。


「いや、わしの功績が書かれているだけで、面白いことは一切書かれてないにゃよ?」

「顔が載ってるだけで笑えるのよ~~~」

「それはみっちゃんだけにゃろ~~~」


 教科書の話で、何故かケンカ。でも、お互いの功績を挙げるだけだから、恥ずかしくなってすぐに仲直りするわしたちであったとさ。



 5限目も魔法科学の授業に出席したら、猫大の1日は終了。講師陣や学生は地上の図書館や秘密地下図書館で、自分の研究に精を出す。

 ただし、こいつらは時間の概念がないから、午後9時になったら校内から追い出すよ。そうでもしないと過労死するもん。


 ミテナも勉強して疲れていたので、わしの車で送り届けようとしたけど、復習したいとか言うのでキャットタワーで。わしが教えてあげようと思ったら、王妃様方に囲まれた。


「にゃ、にゃんですか?」

「「「「「黒い……ヒョウ柄……」」」」」

「しにゃった!? いにゃ~~~ん!!」


 変身魔法の解除を忘れてた。それなのに王妃様方はわしだと気付き、めちゃくちゃモフられて気絶。いつもと違う顔だから、興奮したっぽい。

 気絶から復活すると、ミテナが白猫に戻れと言うから、わしを気遣っているのだろう。と思っていたけど、違う狙いがあるみたい。


「それじゃあベティちゃん……やっちまいな!」

「任せなさい!!」

「にゃにするにゃ!?」


 わしのカラーリングだ。王妃様方からも体を押さえられて、わしは新たな黒ヒョウに色付けされるのであっ……


「にゃんか所々ハートやスペードがあるんにゃけど……」

「「「「「かわいいにゃ~」」」」」


 ヒョウ柄でもファンシーな感じになっているので、わしは皆から「かわいいかわいい」撫でられるのであったとさ。



 こんな柄ではさすがに外も歩けないので、わしは消したい。しかしミテナが「これじゃないと大学辞める~」と脅すので、渋々我慢だ。

 子供たちや孫のモフモフ組は半笑いで肩をポンッと叩いて一声かけてくれるから、わしを慰めているのだろう。だったらその顔は、ないわ~。


 とりあえずミテナはこの日はお泊まり。翌日はキャットタワーからわしと一緒に猫大に向かう。


 それからのわしは、猫クラン活動がある日は無駄に変身魔法を上乗せして白猫ぬいぐるみに。玉藻前と秀忠が混乱するし、ミテナが消したら大学辞めるって脅すんじゃもん。そのせいで【吸収魔法・球】が使えなくて防御力ダダ下がりです。

 猫クラン活動がない日は猫大に行ってミテナと一緒にお勉強。魔法科学の授業は机に突っ伏し、秘密地下図書館では本を片手にお昼寝だ。

 カラーリングされた見た目は恥ずかしいが、お昼寝時間を確保できたのは重畳(ちょうじょう)。ミテナもわしが隣にいるから撫で放題だから特に何も言わない。


 そんな生活をしていたある日のお昼過ぎ、寝過ごしたわしがあくびをしながら魔法科学の教室に入ったら、ミテナの隣にショートカットのメガネ猫耳女子が座っていた。メガネはゴムバンドでくっ付いていると思われる。


「おはようにゃ~」


 わしは挨拶をしたら、ミテナの隣に座って質問する。


「その子は友達にゃ?」

「うん。メイメイちゃん。やっと普通に話ができる人が見付かったの」


 どうやらミテナ。わしがいない日は1人になって寂しいから、友達を募集していた模様。だいたい一言めでその人がどれほど変人かわかるから、目に付く人に試して回ったっぽい。


「そうにゃんだ~。わしのほうからも頼むにゃ。みっちゃんと仲良くしてやってくれにゃ」

「はい……私も話相手に困ってましたので……でも、わし? プー君も1年生ですよね??」

「いや、わしは……」

「プー君はお父さんに憧れてるから、こんな口調なの。おかしいよね~? アハハ」

「そういうことなんですか。猫王様は立派な方ですもんね。私はいいと思いますよ」


 わしが自己紹介しようとしたら、ミテナに肘打ちされて黙らされた。なので空気を読んで、しばらくたわいのない会話をしていたら授業が始まったので、そのタイミングでミテナに念話を繋いだ。


「どういうことにゃ?」

「いや、お忍びだから、王様って言えないでしょ? だからシラタマちゃんは、王様の浮気相手の子供で、名前はプーってことにしたの。ギリ王族って立場にしておいたよ」

「そんにゃとんでもない噓つくぐらいにゃら、普通に紹介してくれにゃ~」


 これはアカン。この嘘をメイメイがネットにアップしたらわしの大炎上は確実。世間的にではなく、王妃様方の撫で回しの刑で火がつくって~。

 なのでメイメイに真実を話そうとしたけど、ミテナが大学辞めると脅すので、わしは「このことネットにアップしたら何とは言わないけど消されるよ?」とメイメイを脅すのであったとさ。


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