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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴90年その2にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。野生動物を自然に帰すような立派な取り組みはしていない。


 秀忠が猫クラン組手で惨敗した翌日、ついに猫クラン研修が始まる。


「クラン研修の教官はわしが担当しているにゃ。わしの指導は厳しくもあり甘くもあるから、頑張ってついて来るんにゃよ~?」

「はっ! ……どっちだ??」

「今回は合体したみたいですね」

「「「「「うんにゃ~」」」」」

「これはなんの騒ぎなんだ??」


 前回はいつもの挨拶をちょっと変えたから、今回わしがどうするかと見に来ていた猫クランメンバーは、秀忠がいい返事をしたあとにツッコンでも特に笑うこともない。

 そちらに秀忠がツッコンでも、誰も答えず解散。秀忠もわしに急かされて、重力2倍の魔道具を使ってランニングを開始する。


 今回は重力魔道具を使っていたから、秀忠は初っ端(しょっぱな)からキツそう。休憩時間に魔法の基礎もわしが教えるから、脳もキツそうだ。

 わしに教えられるのがプライドを傷付けるとかではなく、元素記号から教えているから難しくてだよ?


 そうこう秀忠は真面目に1ヶ月も訓練をしていたら、やっとこさ疑問を抱いた。


「こんなので強くなれるのか?」


 そう。訓練が(ぬる)い問題だ。ランニングと魔法の勉強しかしてないもん。


「そうだにゃ~……オニタならいけるかにゃ? ちょっと戦ってみろにゃ」

「はあ……」


 秀忠には模擬刀を投げ渡して、模擬戦の開始。思った通り秀忠が勝ったけど、オニタはかなり粘ったからほぼ相討ちだ。


「はぁはぁ……私のほうが強いのに、こうもギリギリとは……情けない」

「まぁ最初よりは、強くなったのは実感持てたにゃろ?」

「ああ。力、速さ、どちらも段違いになっている」

「あとは技と経験にゃ。そこがオニタよりかなり劣っていたってのが、今回の反省点だにゃ」

「うむ。わかりやすい……シラタマ王は、本当に素晴らしい指導者だったのだな。どうりで猫クランの一員がこんなに強いワケだ」

「にゃはは。初めて褒められたにゃ~。そんじゃあそのお礼に、剣の稽古も入れて行こっかにゃ~?」

「お頼み申す!」


 わしを褒めてくれる人なんて、本当に珍しい。わしは気を良くして、秀忠と刀を合わせるのであった。


「リータは指導された覚えある?」

「ありますけど……ほとんど自分たちで考えてやってますね」

「だよね? インホワ君とか強くしたの私たちだよね??」

「う~ん……最初はオヤジだったけど、戦闘スタイルが決まってからは、ママたちかにゃ~?」

「てことは、名トレーナーって私たちじゃない??」

「「「「「かもしれないにゃ~」」」」」


 その横ではベティが指揮を取って、わしの功績を台無しにするのであったとさ。



 猫クラン研修は訓練だけではない。秀忠は1ヶ月も訓練したら、強さだけなら三軍を超えたから早くも実地研修だ。


「シラタマ王……名代様はいつもあの姿で戦っているのか?」


 でも、玉藻前が獣の姿で戦っているから秀忠は不思議でならないらしい。


「まぁ……あっちのほうが強いのは事実だしにゃ。将軍も試してみたらどうにゃ? ご老公も本気の時は獣の姿にゃろ??」

「確かに……しかし、私はあの姿で戦ったことがないのだ」

「にゃるほど……それも訓練に入れたほうがいいかもにゃ。獣に噛み付いたりとか大丈夫そうにゃ?」

「口に血が付きそうだな……」

「それが獣にゃ~」


 秀忠、御曹司のボンボンだから獣姿に抵抗がありそう。これは時間が掛かりそうだから、まずは人型から完璧にしていこうと決めたわしであった。



 秀忠の研修じたいはそれほど時間が掛からないが、強くするには様々な課題があるからできるだけわしが訓練に付き合う。

 気功はわりと簡単な部類なのですぐ覚えたが、侍攻撃の精度アップは一朝一夕では難しい。修羅の剣の奥義【殺気の剣】や優しい剣の奥義【無意の剣】になると、どちらか片方を選ぶしかない。


 どちらかというと【殺気の剣】の習得条件のほうが軽いから、秀忠はこちらを選んだ。なので、できるだけ殺害数を稼ぐために2人で大蟻の巣にも突撃したよ。

 わしは遠くで見てるだけだったけど……虫、嫌いなんじゃもん。秀忠の実力なら余裕余裕。秀忠には「急にいなくなるな」と怒られたけどね。


 そうこう猫クラン研修に精を出していたけど、わしも忙しい身。たまにはグデ~ンとお昼寝していたら、ミテナにワシャワシャされて起こされた。


「久し振りの休みにゃのに、にゃに~?」

「起こしてゴメンね。ちょっと相談があって……」


 ミテナが謝るなんてただ事ではない。と、思うので、わしも体を起こして真面目に話を聞く。


「あのね。高校で三者面談があってね。卒業後は猫クランに内定が決まってるって言ってるのに、先生もお母さんも信じてくれないのよ~」


 でも、ずっこけた。だってわし、内定出した記憶がないもん。


「わし、内定出してないよにゃ?」

「私が8歳の時に入れてくれるって言ったじゃな~い」

「大人になってからって言ったにゃ~」

「高卒は大人でしょ!? シラタマちゃんが説得してよ~~~!!」

「まず、揺らすにゃ~~~!!」


 ミテナがワガママさんになっていては話もままならない。わしは服を脱ぎ捨てて、肉球を嗅がせたり顔に抱きついたりして、ミテナの気持ちを落ち着かせるのであった。


 死ぬほどモフられたけどね!



「まぁにゃんだ……先生やお母さんの言い分には、わしも賛成かにゃ~?」

「シラタマちゃんまでそんなこと言うんだ……」


 ミテナが落ち着いてから何を言われたのかと聞いたら、わしのアンサー。もちろんミテナは納得いかないと両手をワキュワキュしてる。


「まぁ聞けにゃ……みっちゃんだって、母親の経験あるにゃろ? アンちゃんが女王を継ぐことは、少なからず葛藤はあったはずにゃ」

「うん……大変な仕事だもの……」

「にゃ~? ハンターだって大変な仕事にゃ。命の危険があるんだからにゃ。お母さんが止める気持ちわかるにゃろ?」

「うん……」


 ミテナもわかってくれたので、わしも自分の意見を言ってみる。


「それに先生は大学に合格できると太鼓判を押してくれたんにゃろ? だったら受験するべきにゃ。若者の可能性を広げてくれる場所だからにゃ。

 これは進路に悩んでいる子にいつも言ってるんにゃけど、若い時にしかできない苦労は、若い時に全てやるべきにゃ。そのほうが、将来後悔することがなくなるからにゃ。

 わしは二度の人生を経験してるけど、どちらの世界でも高校も大学にも行けなかったことは、残念に思ってるんにゃ。キャンパスライフ、楽しそうにゃも~ん」


 最後は茶化してしまったけど、わしの言いたいことはミテナに伝わったと思う。


「そうね……高校生活、楽しいものね。大学生活も楽しいかもしれないものね」

「そうにゃ。友達も増えるしにゃ。大学の友達は一生物とも言うし、大学に行けるみっちゃんは羨ましいにゃ~」

「うん……ひとまず大学行くよ。卒業後は、今度こそ猫クランに入れてね?」

「うんにゃ。その時は、わしも両親を説得してあげるにゃ~」


 これでミテナの悩みは解消。晴れ晴れした顔で、受験勉強を頑張るミテナであっ……


「ねえ? シラタマちゃんって理事長よね? 裏口入学はやってないの?」

「にゃんてこと言うにゃ!? にゃん度もやったけど……」

「やってるの!? だったら私も裏口から入れてよ~~~」


 いや、裏口があると知って、受験勉強は放棄するので……


「猫大受験が論文しかなかった頃の話にゃ~。わしが勉強見るから、頑張って勉強しようにゃ。にゃ?」

「だからシラタマちゃんに教わったら自信なくすんだって~~~」


 いや、ウロから教わって、受験勉強を頑張るミテナであった。


 もしも落ちたら、理事長推薦とか言って捻じ込むけどね……フフフ。


 わしはうるさい人を4年間隔離できると不敵に笑うのであったとさ。



 ミテナが進学を決めて勉強するなか、お母さんが訪ねて来たから面会。大学進学に感謝しているみたいだ。

 しかし、わしも言っておかなくてはならないことはある。大学卒業後は、好きにさせてやれと。ミテナが本気ならば猫クランで受け入れることまで説明したら、お母さんもさすがに驚いていた。


 その理由は、娘が本気で言っていたというより、娘が本当のことを言っていたとの驚き。王様がそこまで必要としているなら、何も反対しなかったのにと、手のひら返しまでしてるよ。

 このまま帰してしまうと、ミテナに猫クラン入りを許可しそうなので、こちらにも説得。ハンターなんて大学卒業してからでもできる仕事だと言いくるめて帰したわしであったとさ。



 ミテナのことが片付いたのでお昼寝しつつ猫クラン研修も続けていたら、秀忠は猫クランの二軍を全員やっつけた。


「にゃはは。にゃかにゃか優秀な生徒だにゃ~」

「いやいや。まだまだ足りないところばかりだ」

「んじゃ、足りないところはわしがちょっとだけ補ってやるにゃ。白魔鉱で武器を作ってやるにゃ。どんにゃのがいいにゃ?」

「おお! 刀! 刀がいい! 父上が使っている大きな刀を作ってくれ」


 徳川家康の刀とは、5メートルの巨体が持ってちょうどいい長さだけど、わし的には同じ物を作りたくない。


「アレにゃ~……あんまりデキが良くないんだよにゃ~……」

「そ、そうなのか? かなりの業物だったが……」

「ほら? 無駄にデカイにゃろ? だから白魔鉱をケチッてるんにゃ。それでも白銀の刃になったけど、たぶんギリギリだろうにゃ~」


 秀忠はあまりわかっていない顔をしているので、わしのメイン武器、猫撫での剣……じゃなかった。白猫刀・改と、サブ武器、猫干し竿……じゃなかった。長猫刀を見せてあげる。


「ほお~……短いのは何度か見たことがあるが、この長いのは初めてだ。それに素晴らしい刃文……美しい」

「短いほうは、その当時の日ノ本ナンバー1の鍛冶師との合作にゃ。長いのは、それからわしも研究して作った一本にゃ。この二本と比べると、ご老公の刀が見劣りするにゃろ?」

「ああ……引き込まれそうだ」

「無理して長物持たずに、自分に見合った物を持てにゃ」

「ですな。体に合った物を宜しく頼む」


 秀忠の刀は、2メートルの体に合った物だからそれでも長い。しかしこの程度なら、わしも作りやすいので鉄魔法を使って3倍圧縮の刀を完成させるのであった。


「ちなみにこれが領収書にゃんだけど……」

「なんだこの程度か。これなら脇差しも頼もうか」

「ご老公のは白魔鉱たっぷりで高かったから麻痺してにゃい?」


 素材の量が半分ぐらいになっているから安く見えるけど、トップハンターでも手が出ない額なんだからもっと驚こうよ。

 なんだか秀忠の金銭感覚が心配になったけど、わしの次元倉庫には秀忠の狩った白い巨大魚が入っているからそこから支払われたので、対価を貰った実感もやり甲斐も感じられないのであった。


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