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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴87年その3にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。美容師でもキャンパスでもない。


 白猫赤ちゃん誕生から我が猫家がカラーリング魔法で遊んでいたら、悠方(ひさかた)上皇の訃報(ふほう)が届いた。わしはその1ヶ月前から暇な時間は毎日会いに行っていたから、全然悲しくない。

 しかし日ノ本国民は、悠方上皇崩御に物凄い落ち込みよう。長年天皇でいたから功績が恐ろしくあるし、災害の多い日ノ本のために尽力していたから、まさに神様のように(あが)められていたからだ。


 悠方上皇崩御から日ノ本は喪に服し、沈みに沈んでいるけど、今年は大事な年。5年に一度の関ヶ原があるから、玉藻前筆頭に上層部は落ち込んでいる場合ではない。

 ネットではこんな時期にやるべきではないと言う言葉で溢れていたが、日ノ本政府は強行して、今日その日を迎えた。


 関ヶ原の会場は、史実通り関ヶ原の合戦があった場所。昔は東側と南側しか観覧席が無かったのだが、東の国周辺の王族が見たいとうるさいから、西側にわしがオクタゴンという巨大な八角形の建物を建てたの。

 それから10年ぐらい経った頃に、世界中の民も三ツ鳥居を潜って旅をするぐらいの余裕が出て来たので、北側にも小さな町と大きな観覧席が作られた。


 これもわしは手伝わされました。世界が広くなったから、必然的に王族の数が増えたから、オクタゴン並みの守りの堅い建物を作れと……


 その東側と南側の観覧席は、例年なら日ノ本の民で満員御礼なのだが、空席が目立つ。おそらく悠方上皇を静かに見送りたいという理由からボイコットしている人が多いのだろう。

 北側の観覧席は、5年に一度のお祭りということなので他国の者で満員。西側のオクタゴンは、完全に王族専用の建物で観覧席だからガラガラだ……言い方が悪かった。ゆとりがめっちゃあるの間違い。


 関ヶ原の開始時刻が過ぎると、今代の天皇陛下と、名代で五尾の狐耳スレンダー美女の玉藻前、将軍で三尾の白タヌキの徳川秀忠が揃って現れて開始を告げる。しかし、熱気はまったく感じ取れない。


『ちょっと待ったにゃ~~~!!』


 そこに、わしの大声。黒いマントを羽織った猫クランメンバーが空から続々と降って来て、会場の中央に着地した。


『我が輩は猫の国の王であるにゃ。名前はシラタマにゃ。こんにゃ暗いお祭り、ブッ潰しに来たにゃ~。にゃ~っはっはっはっはっ』

「「「「「にゃ~っはっはっはっはっ」」」」」


 地上に並んだわしたち猫クランメンバーが腕を組んで大笑いすると、他国の客は大盛り上がり。日ノ本の民は激怒。

 関ヶ原は西と東に分かれて戦うお祭りだから、普段は仲がそれほどいいってワケではない民でも、一致団結してわしたちを非難している。


『何がブッ潰すだ。玉藻前、秀忠……今年の関ヶ原は内容変更だ。その猫を、日ノ本の力で叩きのめしてやれ』

『『はっ!!』』

「「「「「わああああああ」」」」」


 その民の声に応えた天皇の勅命(ちょくめい)で、日ノ本の民はやっと大盛り上がり。天皇陛下は、もうちょっと声を張ってほしいかな?


『この世界最強のわしを叩きのめすにゃと~? また大きく出たにゃ~。そんにゃ戯言(ざれごと)、わしの(しもべ)を倒してから言えにゃ。ウサギ族ぅぅ……出て来いにゃ~~~!!』


 わしが煽るように叫ぶと、軽快な笛の音が会場に鳴り響く。するとオクタゴンの隣の建物から体にペイントしたカラフルなウサギ族が続々と登場。

 大量のウサギ族は腰をクネクネ、両腕を振り回し、踊りながら前進。会場の中央に集合すると、大きな掛け声。


「「「「「サンバにゃ~!」」」」」

「「「「「わああああああ」」」」」


 そう。この集団ダンスは、猫の国建国記念日でお馴染みのサンバカーニバルだ。

 ウサギ族がまた前進して会場を一周回ると、他国組は大盛り上がり。見てるだけで損したくない阿呆は、その場でマネして踊っている。


 サンバカーニバルが続くなか、猫クランメンバーは全員オクタゴン前まで退避。天皇陛下たちは南側の観客席まで引いた。


『それがどうしたと言うのだ。我々の踊りのほうが優れておるぞ。玉藻前、秀忠』

『『はっ!』』

『西の精鋭……』

『東の精鋭……』

『『出て参れ!!』』

「「「「「わああああああ」」」」」


 天皇陛下のマイクパフォーマンスの後、玉藻前と秀忠の号令で、西軍と東軍の入場口から阿波踊りとねぶたのダンサーが登場。混ざらないように一塊ずつになって会場を踊り歩く。


 ということは、わしの乱入は、筋書き通り。これが悠方上皇からの頼み事だ。


 先々代、悠方上皇の父親が亡くなった時には小さかったからあまり記憶にはなかったが、その時も御所は喪に服して静まり返っていたのは印象にあったらしい。

 成人してから玉藻にその時のことを聞いたら、1年ぐらい西側の民は暗く、経済活動も悪かったと知る。それから年老いて、引退した時には惜しむ声が日ノ本全土から聞こえ、経済活動が落ち込んだことは自分の目で知った。


 これらのことから、自分の死は日ノ本に大きな影を落とすのではないかと思い悩んだそうだ。

 だからこそ悠方上皇は、わしに関ヶ原に参加して、落ち込んでいる日ノ本の民を叩き起こしてくれと頼んだのだ。


 もちろん1人では無理なので、わしと天皇陛下はしっかりと打ち合わせして企画を考えたよ。上手く行くかは、正直自信ありません。失敗しても、化けて出ませんように!



 踊り対決は、観客の盛り上がりや掛け声の大きさで勝敗が決まるので、他国の観客のほうが多いから「勝ったかな?」とわしは見ていた。

 だがしかし、日ノ本の民は喉から血が出るほどの大声を張り上げたので、圧勝。猫の国の敗北となった。無理するなよ……


 日ノ本の民がグッタリするなか、続いての対決は相撲対決。わしはまだ出たくなかったが、猫クランに男手が6人しかいないから出ざるを得ない。

 オニヒメ似のグリゴリーの廻し姿はなんかやらしいから、欠場させるしかない。ロリかショタにしか見えないもん。巨体のオニタとわしたちモフモフ組は丸いから大丈夫だが、ウロはあまり廻しは似合ってないけどやる気満々だ。


 ただ、土俵に登る前から、見知った人物がいたからわしのやる気は全然出ません。


「ご老公も出るんにゃ……」

「お主が出そうだと思ってのう。当たったわい」

「てか、八百長するの覚えてるよにゃ?」

「わかっておる。負けたらいいんじゃろ。ただで負けるのは面白くないから、お主とやる時は全力で突っ込むがな」

「全然わかってるように聞こえないにゃ~」


 日ノ本の力士は、六尾の巨大タヌキ家康と秀忠を入れたタヌキばかり。昔は江戸の力士が圧倒していたが、最近は京の力士も強いから、残りは京からの力士で埋めたらしい。

 見た目もデカくて強そうなタヌキ力士だけど、猫クランに掛かればザコ。ウロに全員突き出された。


 そのウロは、タヌキ将軍徳川秀忠の巨体と地位にビビって軽く押し出され、シゲオの出番。シゲオは善戦虚しく、秀忠の豪快な上手出し投げで決着だ。

 秀忠は昔より強くなっているのか、オニタにも辛くも勝利。インホワが土俵に上がれば、疲れの溜まっている秀忠なんて秒で電車道の勝利だ。シゲオの仇を討ったと喜んでいたけど、シゲオはあまり喜んでなかったよ。


 そのインホワは、家康に挑んだけど子供扱い。そもそもサイズが4倍以上違うから、組むこともできずに体当たりばかりだ。

 決まり手は、蹴手繰(けたぐ)り。インホワは家康に転ばされて、「クソにゃ~!」と土俵を殴るのであった。



「もうちょっと普通に相手してやってもよかったんじゃにゃい?」


 真打ち登場。わしは土俵に登ると、家康に声を掛けた。


「こんな小さな土俵では、本気でやり合えまい。インホワには、後半で相手になってやると言っておいてくれ」

「後半にゃ~……出れるかにゃ?」

「もしもの時は、(わし)から訪ねる。それでよかろう」

「ま、伝えておくにゃ~」


 無駄話はここまで。わしたちは仕切りを何度も繰り返して待ったナシ。どちらも頭からぶつかり、小さなわしが土俵に残ったのであった……


 「ドッカーーーンッ!!」と物凄い音が鳴って観客がブッ飛んだけどね!



 関ヶ原は騒然。相撲対決はかなりスピーディーに終わったから、小一時間の休憩が取られてからわしの勝利が告げられた。

 日ノ本の観客は落胆したあとは、ブーイングと応援。その声に押されて両陣営から綱引き対決の戦士が出て来た。


 そして綱を持って、行司がハッケヨイ。


「待ったにゃ~~~!!」


 その前に、わしの乱入だ。


「なんじゃ急に邪魔しおって」

「玉藻たちまで出たら、綱なんて簡単にちぎれるにゃろ!?」

「「あっ!?」」


 そう。ここは猫クランが圧倒するって筋書きだったのに、九尾の狐耳巨乳美女の玉藻と玉藻前の白キツネ親子が揃っていたら、どんなに強い綱でも糸みたいに切れるに決まってる。いま気付いたのかよ……


「てか、にゃんで出てるにゃ?」

「そ、それは~……暇だったからじゃ。な?」

「ええ。倒してやろうとか思ってませんよ」

「疑わしいにゃ……本当に八百長する気あるにゃ~?」

「「あるにゃ~」」

 

 今回の関ヶ原は、プロレス。玉藻親子の返事は絶対にプロレスをやらない返しだ。しかし、猫クランから早くしろと苦情が入ったので、それなりに試合になるようにしなくてはならない。

 とりあえず手持ちの白魔鉱を長い棒に変えて、掴みやすいように溝を作る。もうこの際、他の出場者のことは知らない。わしたち猫兄弟だけを抜いた猫クランVS玉藻親子のガチンコ勝負で棒引きだ。


 20人対2人の条件が酷すぎる棒引きだけど、人間界ナンバー2の玉藻がいるから白魔鉱の棒が悲鳴を上げてる。頑張れ棒……

 なんとか引きちぎれなかったので、ジリジリ引かれて玉藻親子の勝利。あまりにも棒がかわいそうなので、玉藻にはハンデ。魔力を流して強度を上げさせハッケヨイだ。


 二回戦は猫クランも息を合わせて善戦したけど、5分の引き合いの末、玉藻親子が綱引き対決の勝者となったのであった。



「初日は最低、ウチが2勝する予定だったんにゃけど~?」

「「「「面目にゃい……」」」」


 その夜、わしは天皇陛下の屋敷を訪ねて苦情。玉藻も玉藻前も、家康も秀忠もテへって顔で頭を掻いてるから、まったく伝わってないな!


「ウチが圧勝して日ノ本の人を呼び込む作戦にゃのに、来なかったらどうするにゃ~。陛下も叱ってやってにゃ~」

「う、うむ……皆、こんなに強かったのだな……」

「にゃにビビってるにゃ~。お父さんが泣いてるにゃ~」


 どうやら天皇陛下、わしたちもそうだが玉藻たちの実力を今日知ったっぽい。だから暗殺を恐れて、あまり強く言えないのであった……


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