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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴87年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。せっかく王様らしい仕事をしてたのに……トホホ。


 猫歴86年は市役所の建設から、どういうワケかキントウ元首相や元議員の悪事を裁くことになったから、国民からは「さすが猫王様。略してサスニャー!」と褒められることに。

 だがしかし、早くキャットタワーのリフォームをしろと急かされたので、家族からは王様とは呼ばれず「リフォームおじさん。略してリフォニャー」と最後の最後に呼ばれて1年が終わる。


「リフォニャーって……おじさんも酷いけど、王様とおじさんはどこに行ったんにゃ~」


 なのでグチグチ言いながら年越しソバをススっていたら、ベティの質問が来た。


「SNSで話題のサスニャーって、いったい誰が言い出したんだろ?」

「知らないにゃ~。誰かがこんにゃ言葉遊びをやり出したんにゃ~」

「犯人探しなら、ノルンちゃんが手伝ってあげるんだよ~」


 王様を侮辱しているように見えるので、ノルンも加わって言葉遊びの由来を調べてみたら……


「王妃様方ってなってるわよ?」

「インターネットが普及した辺りにまとめサイトが作られてるんだよ」

「どういうことにゃ? にゃっ!?」

「「にゃ~??」」


 このまとめサイトには「冷酷な猫王。略してヒヤニャー」とか、「恐怖の猫王。略してフニャー」とか載っていたので、わしは猫の国初期のことを思い出した。

 この言葉遊びは日ノ本を発見したあとに、リータたちやアイパーティ、挙げ句の果てにはペトロニーヌ女王や双子王女までやっていたのだ。


 これは恥ずかし過ぎるので、サイト立ち上げに協力していそうなナツを訪ねてそれとなく聞き出してみたら、リータたちは忘れそうだからってここにデジタルタトゥーを刻んだらしい……

 もちろん消してくれと頼んだけど、今まで協力してくれていたベティ&ノルンが裏切って、王妃様方にチクってくれやがったから、この不名誉なまとめサイトの駆逐はできなかったのであったとさ。



 まとめサイトは気になるので全て目を通してみたら、毎年ちょっとずつ増えているからまだ見ている人がいるのか……

 腹が立つので、わしもエゴサーチはやめてゴロゴロお昼寝していたら、猫歴87年の4月までに新しい家族が続々と増えた。


「わ~。みんなシラタマちゃんそっくりね~。モフモフ~」


 ミテナは赤ちゃんが1人ずつキャットタワーにやって来てるのに、4人が集まっても同じ反応をしてベビーサークルの中で埋もれてる。この変態が……

 ちなみに今回の子供は三男一女。猫耳の曾孫も2人増えたよ。わしの実子は上手いことお母様方の第一子と性別は逆に生まれた。ここで、ついに奇跡が起きる。


 ローマ人の末裔で東の国では白い一族と呼ばれ、千年間男子の出産がなかったイサベレの血筋に、初めて男子が生まれたのだ。

 イサベレはさぞかし喜んでいるだろうと手を取ったら、いつもの無表情。男子でも白猫が生まれたもんね。でも、これでも死ぬほど喜んでたんだって。


 男の子もそうだが、前の2人は猫耳だったのにモフモフがやっと産めたと、1週間後ぐらいに泣いてはりました。どっちの涙かわからないんじゃよな~。


「それはそうと、こんなにそっくりで間違わないの?」

「それはギョクロたちの子で経験済みにゃから、足に名前入りのタグを付けてるにゃ」

「うわ~。値札付いてる~。この子いくら?」

「100億ネコにゃ。買えるモノにゃら買ってみろにゃ……」

「ウソウソ。冗談だよ~? 怒らないで。ね?」


 女王の時ならまだしも、ミテナはまだ中学生なんだから買えるワケがない。そもそも売る気もないので、わしもオコだ。さすがにミテナも謝罪して話を逸らす。悪いと思ってなさそうだな。


「私が言いたかったのはね。お風呂とか、外した時は危なくない?ってこと」

「まぁにゃ~。もうちょっと大きくなったら、自分から外すこともあるだろうから気を付けなくちゃならないだろうにゃ~」

「そうだ! 色を塗ったら? 絶対かわいいって!!」

「かわいいとは思うけど、にゃにも意見ができない子にやるのはかわいそうにゃ~。てか、面白がってるにゃろ?」


 ミテナの案は人道的にも動物愛護的にも、わしは却下。するとミテナはリータたちの下へ走って行って、ゴニョゴニョ喋ったら戻って来た。


「なんかね。みんな男の子が3人もいるから間違いそうで心配なんだって。だからワンポイントぐらいなら、やってもいいかな~って」

「そうにゃの? でもにゃ~。カラーリングは赤ちゃんの体に悪いかもしれないしにゃ~」

「薬品を舐める心配か……じゃあ、魔法でやったら?」

「そんにゃ魔法あるにゃ??」

「シラタマちゃんなら作れるんじゃない??」

「そんにゃのできないにゃ~」

「えぇ~。シラタマちゃん、自力で変身魔法作ってたじゃな~い。なんとかなるって~」


 一瞬ミテナは、アマテラスから迷惑料で貰ったわしの魔法書のことを知っているのかと思ったけど、この顔は赤ちゃんにカラーリングがしたい顔だな……絶対、ワンポイントで終わらない顔をしておる!

 その(たくら)みがわかったわしは、ウダウダ言ってうやむやにしてやろうとしていたら、お母様方からも頼まれたからやるしかない。


「ちょ~っと、時間をくれにゃ~」


 こうしてわしは、毛に色を付けるだけってどうでもいい新魔法開発に、多大な時間を掛けるのであった……


「あっ、もういけそうにゃ」

「「「「「はやっ!?」」」」」


 いや、たまたま偶然、魔法書さんを検索したらいい魔法がヒットしたから、物の数分で習得したのであったとさ。



 カラーリング魔法は習得したけど、赤ちゃんに使うのは怖いので実験体は必要だ。


「シラタ……」

「誰かインホワを捕まえて来てくれにゃ~!」

「「「「にゃっ!」」」」


 ミテナはわしを実験動物にしようとしたので、わしはインホワを売る。するとお母様方は散り散りに動いて、インホワを抱えて戻って来た。


「ドラマ見てたのに、なんなんにゃ~」

「いや~……わしたちの赤ちゃんのために、ちょっとだけ協力してほしいんにゃ。尻尾の先っぽだけでいいからにゃ」

「は? にゃにしようとしてるにゃ!?」


 わしは本当にちょびっとだけ色を付けようとしたのに、メイバイとリータがインホワの両腕をガシッと持つもんだから、怖そうにしてる。


「シラタマちゃん。とりあえず、ホワイトタイガーみたいにしてみて」

「にゃに言ってるにゃ?」

「ホワイトタイガーってにゃに!? 俺ににゃにしようとしてるにゃ~~~!!」

「「「「まぁまぁ……」」」」

「やめろにゃ~~~! オヤジ~~~!!」


 かわいそうなインホワ。ミテナの指示にわしが首を傾げている間に、お母様方に服を脱がされて畳に張り付けられ、悪の組織に改造手術されそうな叫び声をあげるインホワであった。


 すまないインホワ。わしに決定権はないんじゃ……



 急にホワイトタイガーとか言われても、わしも柄は記憶にないのでスマホで調べてみたら、難しいな。これはわしの肉球に余るので他にしてくれと頼んだら、さっちゃんがサラサラッと簡略化した絵を描いてくれた。

 わしはそれを見ながら指に魔力を集め、頭の中で黒く色が付くイメージをしながらインホワの体毛に触れる。そうして指を縦横斜めと動かし、顔も綺麗に塗ったらインホワを立たせた。


「うぅ……オヤジに犯されたにゃ……」

「泣くにゃ~。わしが悪かったにゃ。ほれ? かっこよく塗ってやったんにゃから、許してくれにゃ~」

「かっこよくにゃ??」


 わしが全身鏡を前に置いたら、インホワの心臓がトゥクンと鳴ったような気がする。顔もなんだか一目惚れしたような顔をしているから間違いないと思うけど、初めてプロのメイクさんに化粧をしてもらった人みたいで気持ち悪いな。


「にゃにこれ……これが、俺……?」

「う、うんにゃ。雄々しくなったにゃ~」

「うんにゃ! オヤジ、ありがとにゃ~~~!!」


 さっきまでわしに殺してやるとか言っていたクセに、両手で握手までして来るなんて、本当に気持ち悪い。お母様方が「ヒューヒュー」言ってスマホで写真を撮っているのも、嬉しそうにポーズを決めるインホワであった……


「プッ……プププ。インホワ君、めちゃくちゃ単純ね……アハハハハ」

「「「「「アハハハハハハ」」」」」

「笑ってやるにゃよ~~~」


 インホワが出て行ったしばらくあとに、笑い転げるミテナたちであったとさ。



 カラーリング魔法の実験は成功したのだが、実験動物が面白い反応ばかりするから逃がしてしまったので、次なる犠牲者を狩りにお母様方は出て行った。

 そのしばらくあとに、ベティ&ノルンが首を傾げながら入って来た。


「ねえ? インホワ君がトラ柄になってスキップしてたんだけど、何がどうなってんの?」

「わしじゃないにゃよ? みっちゃんたちが悪ふざけしたんにゃ~」


 とりあえず斯く斯く云々と教えてあげたら、ベティ&ノルンもひっくり返って笑い出した。トラ柄が不可思議すぎて、今まで笑うのを忘れていたから爆発したんだってさ。


「はぁ~。おかし。相変わらずインホワ君は単純ね」

「そう言ってやるにゃ。かわいそうにゃ被験者なんにゃ」

「被験者ね~……被験者が足りてないなら、私がシラタマ君に色を塗ってあげるわ。その魔法、教えなさい」

「イヤにゃ~。わしがお昼寝してたら、絶対落書きするにゃろ~」

「そんなこと、し……します」

「嘘もつけないだにゃ……」

「教えてよ~~~」


 ベティの生き甲斐はわしをからかうこと。カラーリング魔法を教えて貰ったら、嘘でもやらないと言えないみたい。

 そうこう2人で揉めていたら、お母様方がサクラとニナを担いで戻って来た。その2人は何も聞かされていないのか、めちゃくちゃ(おび)えているからかわいそうだ。


「そんにゃ顔しなくても大丈夫にゃ。ちょっと赤ちゃんの為に協力してもらうだけにゃ。魔法で尻尾か耳に、ちょっと色を付けるだけにゃから、痛くも痒くもないにゃ~」

「「色にゃ??」」


 わしはデキる猫。インホワの時は言葉を句切ったから、あんなに怖がらせることになったのだ。だから今回はやることを一気に喋ったら、2人も安心してゴニョゴニョ相談している。


「それって、絵とかも描けるにゃ?」

「うんにゃ。あんまり難しいとわしは自信ないから、イラスト程度に留めてくれにゃ」

「じゃあ、ちょっと待ってにゃ~」


 サクラの描いた絵は、わしの美的センスを信用してないのか、桜の花びら。これを顔の左に3枚がヒラヒラと落ちるように描いてほしいらしい。難しい注文だな……


「これでどうにゃ?」

「うんにゃ……かわいくなったにゃ~」

「「「「「かわいいにゃ~」」」」」


 わしが頑張った結果、全員ベタ褒め。顔にタトゥーを入れてるみたいだけど、この程度ならかわいいからわしも許す!


「あーしはにゃ~。二の腕に文字を入れて欲しいんにゃ~」

「任せろにゃ~」


 続いてはニナ。文字なら簡単だから、安請け合いしちゃった。


「ウロ ラブって……正気にゃ?」


 でも、絶対描きたくない!!


「正気にゃ~。ラブラブにゃも~ん」

「まだ付き合ってもにゃいのに、フラれた時どうするんにゃ?」

「酷いにゃ!? もう付き合ってるのに、にゃんでそんにゃこと言うにゃ!?」

「「「「「えっ!?」」」」」

「にゃ……」


 どうやらニナ、ウロと隠れて付き合っていたから、家族の誰も知らなかった模様。それを口を滑らせてしまったモノだから、わしは許しません!


「それ、ニナが付き合ってると思ってるだけじゃにゃい?」

「本当に付き合ってるにゃ~。デートもにゃん度もしてるし、体の関係もあるにゃ~」

「にゃふんっ!?」

「「「「「あ……倒れた……」」」」」


 それでも信じられないわしは妄想だと追及したら、ニナはもっと凄いことを口走ったので、わしは受け止められなくてパタッと倒れるのであったとさ。


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