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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴86年その4にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。憲法に詳しいんじゃよ?


 わしは議場からキントウ首相を連れて出たら、警備員に部屋に軟禁するように指示を出してから王様観覧場に戻る。

 そこではウロが拍手で出迎えてくれたけど、ミテナとノルンはわしを指差してゲラゲラ笑ってる。憲法はわしも頑張って作った一員なんだから、覚えてるに決まってるじゃろう……王様じゃぞ?


 わしはこれから忙しいので皆はどうするのかと聞いてみたら、ミテナは帰るらしいので、ウロにキャットタワーに連行してもらって勉強だ。

 ノルンはまだ猫会を見るのかと思ったら、今日はもう議員たちは解散するからってわしについて来るとのこと。帰ってほしいな~?


 わしの着流しの背中に潜り込んだノルンには手が届かないので、仕方なく一緒に行動。キントウ首相を軟禁した部屋で契約魔法を使って洗い(ざら)い吐かせたら、公職選挙法を違反しまくりだ~!


「マジかお前……」

「ノルンちゃんもドン引きなんだよ……」


 パワハラとセクハラのオンパレードでも引いていたのに、ここまでやられるとわしも頭が痛いを通り越して割れそうだ。

 さらに派閥の者も裏金や買収に手を貸していたのだから、何人逮捕者が出るのこれ……脳ミソ飛び出るよ~~~!


 もうこれはわしの肉球の中に収まらない。罪の告白動画は各マスコミに渡して議論してもらおう。ネコチューブには、ノーカット版を流してやる。

 警察や猫軍には議員の猫市脱出禁止を命令し、足取り重くキャットタワーに帰ったらわしの叱責のニュースがやっていたので、家族にめちゃくちゃ笑われた。だから憲法作ったのはわしなんじゃ~。


 しかし待てども暮らせど、キントウ首相のニュースは流れない。おそらく、わしと同じ意見なんだろうね。


「ねえねえシラタマちゃん。あのあと首相はどうなったの?」

「みっちゃんは帰らないにゃ?」

「今日は友達の家に泊まるって電話入れておいたから大丈夫」

「ちゃんと王様の家って言えにゃ~」


 友達は間違いではないけど、国のトップの家はちゃんと報告しないとご家族も困るだろ。とりあえずわしのほうから電話入れている間に、キントウ首相の悪事をオンエアー。

 ミテナの母親から何度も謝られて戻って来たら、動画を見ていた人は青い顔してた。


「ねえ……この人、死刑にするよね?」

「みっちゃんもそう思ったにゃ? わしもそれぐらいしたいけど、民意を聞いてから判断することにしたにゃ」

「丸投げ……」

「これだけ罪が多いと難しいんにゃって~」


 殺せるなら殺している。しかし全容解明してからじゃないと、罰を与えるのも難しい。てか、決定もいつになることやら。

 この日のわしは、頭をかかえてみっちゃんにも抱きかかえられて眠りに落ちたのであった……



 翌日の朝、猫の国に激震が走った。


 キントウ首相の告白動画が各局で流れたからだ。


 ほとんどの国民は仕事に行くか学校に行く前に見たので、職場や学校の話題の的に。わしが独裁者とか言われていたことは、「王様だからそんなもんじゃね?」とか言われてるんだとか。

 もしくは「王様に見えないよね~?」……じゃなかった。「首相の暴走を止めてくれた」と褒めてくれる声が多かったそうだ。


 そのわしはと言うと、キントウ首相から聞いた公職選挙法違反の議員を全員、契約魔法で縛り、キャットタワー2のVIP用個室に押し込む。何人か見当たらなかったので警察に問い合わせたら、国外逃亡しようとしてブタ箱に入ってた。

 これらの議員から聞き取りをするのは、裁判所の仕事。いちおう裏金やワイロの罰は決まっているが、組織的にやっていたから罰は重くする予定だ。


 わしの仕事はそれだけでは終われない。大混乱の猫会議事堂に顔を出して、暫定政権の樹立。残った議員に丸投げしただけとも言える。

 暫定政権は、任期があと数ヶ月だから本当に暫定なので、首相等の任命はナシ。ただ、役職がないと締まらないので、名代と副名代と呼んで仕事をさせる。


 仕事は、キントウ首相がやった政策を見直してもらい、酷い法案は停止、もしくは廃案に持って行く。

 議員は半分ぐらいしか残っていないので仕事はサクサク進んでるけど、廃案ばっかじゃな。あ、増税ばっかりしようとしていたのですか……あっぶねぇ。


 廃案の場合は、勝手にやられては国民が納得しないだろうとわしも目を通すようにしてるから、めっちゃ忙しい。なので猫クラン活動を減らす。


「忙しいのはわかるけど、週に1日は狩りに連れて行けにゃ~」


 王妃様方はおめでただから休めると思ったのに、インホワ筆頭に子供たちがうるさい。


「その日ぐらい休ませてくれにゃ~」


 しかし、働き過ぎてわしの体も限界だ。


「週2で休んでるの知ってるんにゃ……」

「にゃ!? 誰から聞いたにゃ!?」

「ママに言うにゃよ?」

「それだけはご勘弁してくだせぇにゃ~」


 家主がいなくなった猫会議事堂の首相専用執務室で寝ていたからバレないと思っていたのに、バレてしまっちゃあ仕方がねぇ。

 猫クラン活動があるので週1日はリモート会議に変えて、わしは週休2日を維持するのであった……


「てか、にゃんでバレたんにゃろ? まさか、執務室が盗聴されてるのでは……あったにゃ!?」


 なんとなく気になって調べてみたら、コンセント型の盗聴器を発見したわしであったとさ。



 盗聴器の件はフユに犯人探しをさせたら、すぐに解決。電波を飛ばす方式だったから犯人はわからないが、全て取り外してくれたからもう大丈夫だ。


「チッ……にゃんでバレたんにゃ……」


 犯人はフユとは気付かずに……動機は、わしがスマホ等のハッキングを法律で禁じたかららしい……


 猫クラン活動は週1と決まってしまったが、他の日は子供たちは訓練が多い。わしはたまに見に行って「ご苦労なこって」と帰ったら、この日はミテナの勉強日。

 ミテナは週3もオフィシャルな理由で訪ねられると喜んでいたけど、いつも堂々と来てたと思う。しかし今日は、妙に縮こまっていたからわしはリビングの外に連れ出した。


「今日のみっちゃん、にゃんか変じゃにゃい?」

「変なのは私じゃないよ~。ニナちゃんが変なのよ~」

「ニナにゃ??」


 ニナに虫でも食べさせられたのかと思ったけど、そういうことではないみたい。ウロに勉強を教えてもらっていたら、ニナがいつもジーッと見て来るんだって。


「いつも気付いたら徐々に近付いているの。足音も立てずに……今日なんて、真横にいて顔を覗き込んで来たのよ? 悲鳴あげたら逃げてったけど……」

「まんま猫だにゃ……」

「私、ニナちゃんが怒るようなことしたのかな? 嫌われてる??」

「ああ~……たぶんウロ君と距離が近いからにゃ」


 わしはニナがウロを狙っているから嫉妬しているのだと教えてあげた。


「そっか。そういうことだったんだ」

「ここだけの話だから秘密にしてにゃ~?」

「人の恋路をどうこう言うのも野暮だもんね。ちなみにアシストは大丈夫??」

「ダメにゃ。それだけはダメだからにゃ」

「ねえ? ニナちゃんいくつだと思ってるのよ。いい加減子離れしないと結婚できないわよ?」


 ミテナに言われなくてもわかっているけど、わしは娘がかわいいので、ウロがニナと距離が近い時は音も立てずに近付くようになった。


「親子ね……」


 その姿をたまにミテナが冷めた目で見ているのであったとさ。



 そうこう忙しくしていたら、秋にある国政選挙の開幕。今回は猫市から出馬した首相と副首相が圧倒的多数でワンツーフィニッシュとなった。

 どうやらわしが動いたのは猫市市長の嘆願だとどこからリークされたから、猫市の人なら信用できると票が集中したみたいだ。犯人はツイファ市長じゃろ……


 任命式は、キャットタワーの1階大広間。こういう王様の仕事は王様の居城でやるべきだと王妃様方がうるさいので、このクソ忙しいのに整備させられたの。

 でも、他のフロアは許してくれたから鬼ではないよ。妊娠してから若干、優しくなった気がしないでもない。


 これで猫会は通常運転に戻りキントウ元首相の息の掛かっている者は1人もいなくなったから、猫会議員は伸び伸びと議論をしているように見える。

 あとはキントウ首相たちの量刑だ。テレビやネコイッターでは、最初は「キントウは死刑」という言葉も多く出ていたが、この頃には落ち着いた議論になっていた。


 その案が出揃った頃に裁判官と議員を集めてディスカッション。散々悩んだ末、キントウは縦横2親等までの公民権の停止。税金や公金の使い込みもあったので倍返しの国庫返還。10年間の贅沢禁止とボランティアと農業従事を罰とした。

 公職選挙法に違反した議員は、6年間の公民権の停止。違反に使った額を倍返しの国庫返還。1年間の贅沢禁止とボランティアと農業従事と決まった。


 ミテナには軽すぎると言われたが、この罰は政治家に取っては死活問題。いまは二世三世が当たり前のご時世なのに、キントウの家系は50年近く出馬はできないから、政治家は廃業せざるを得ないだろう。

 議員も一緒。いまから6年なら自分は二期は出馬できないから、後継に譲るか廃業するしかない。


 農業従事の罰とは、猫耳テロリストに1ヶ月やらせたら改心したので、もしかしての期待。最低でも1年間、一般市民の暮らしをやらせるから、贅沢をしていた政治家には耐えられない屈辱になると思う。

 その旨と狙いをわしの口から国民にしっかり説明したら、「まぁ、人も殺してないからこんなもんじゃね?」という意見が大多数を占めたので、わしは胸を撫で下ろした。


 これにて、久し振りにやって来たわしの王様らしい仕事は終了。もう年末も近いんだから、残りはグデ~ンとダラケ切って残りの時間を消化するのであっ……


「シラタマさん……お疲れのところ悪いのですが、キャットタワーの空き部屋はどうするのですか?」

「外から見たら下の階はガランとしてるから、ネットでは廃墟だと言われているニャー」


 リータとメイバイは年末にこんなこと言ってるけど、わしはもう働きたくない。


「赤ちゃんが産まれるのは来年なんにゃから、作業は来年でよくにゃい?」

「ここ、猫の国の首都で王様のお城ですよ?」

「お城が廃墟だと言われていたら、私たちも国民も恥ずかしいニャー!」

「我慢することはできにゃいでしょうか?」

「「「「「ムリにゃ~~~」」」」」


 家族全員から恥ずかしいと責められて、今年最後のわしの仕事は、リフォームになるのであったとさ。


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