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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴84年その6にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。その「にゃっ!」ってふざけた返事はいい加減やめてほしい。


 グレタの体質はある程度把握できたので、ここからは猫クラン研修は激しさを増す。2日に1度のマジの殴り合いだ。

 アリスが痛くなったから避けさせてくれと訴えて来たら、わしは許可。でも、サクラが許可しないからそのまま。鬼と言うならわしじゃなくて、母親のサクラか本物の鬼のグレタに言ってくれ。


 その頃にはわしもお昼寝時間が確保できたので、縁側で横になる。


「あの……私のこと忘れてません?」

「にゃ……にゃはは。覚えてますがにゃ~。元天皇陛下のことは、一時も忘れられませんにゃ~」

「忘れてましたよね? 怒らないから真実を告げてください」


 ウロは怒ってらっしゃるから、その罠には引っ掛かりません。完全に忘れていたけど「覚えてる」の一辺倒で乗り切ってやった。


「ウロ君は毎日基礎を頑張ってたからにゃ。そろそろ武器や防具を作ってやるにゃ~」

「それは嬉しいですけど……物で釣ろうとしてません?」

「滅相もないですにゃ~。ほらほら~。採寸に行くにゃよ~?」


 それでもダメだったので物で釣ろうとしたけど、これもバレバレ。しかし採寸して防具の候補や、武器の話を聞いてあげたらなんとか忘れてくれてので、わしは胸を撫で下ろしたのであった。



「う~ん……やっぱり()は普通のほうがいいんじゃにゃい?」

「ですね……振りにくいです」


 ウロが欲した武器は、仕込み杖。シルクハットと燕尾服に合わせて柄が円形に曲がったステッキにしたらしいけど、何を目指してるんじゃろう?


「燕尾服もどうなんにゃろ?」

「個性がないので、せめてこれぐらいは頑張ろうかと……公家装束は取られていますし」

「そんにゃんで決めるにゃよ~」

「皆さん個性的じゃないですか~」


 確かに猫クランメンバーの戦闘服は、変なのが多い。わしの着流しは普通。その他はメイド、ヤンキー、探検家、公家、料理人、歌舞伎者。極め付けは全裸……コリスたち四つ足だから毛皮は着てるな。

 これほどバラエティに富んでいることだけじゃなく、キアラが毎日コスプレしているのもウロは触発されたんだって。


「まぁいいにゃ。そろそろウロ君も戦闘訓練始めて行くからにゃ~」

「やっとです~」


 グレタばかり戦闘訓練をしていたから、ウロは羨ましかったみたい。ウロは活き活きしてわしに魔法を放ち、実力を高めて行くので……


「ぜんぜん効かない……」

「わしは最強なんにゃもん」


 実力と反比例して、自信は失って行くのであったとさ。



 ウロの戦闘訓練が始まると、最初の内はわしから学べると楽しそうにやっていたのに、魔法が効かないのでチェンジを希望。ベティを送り込んだけど、汚い魔法ばかり教えるからこれもチェンジ。

 サクラとコリスを送り込んだら、やっとしっくり来たみたい。いや、あの顔はもう諦めたな。


 それで手の空いたわしは、グレタに装備のことを聞いてみる。


「前に徒手空拳で戦いたいと言ってたにゃろ? せめて手には、武器を付けにゃい??」

「武器って……婆ちゃんたちが付けてる猫の手か? あんなダサイの付けるぐらいなら、素手がいい」

「アレは人の趣味みたいにゃ物にゃから、酷いこと言っちゃダメにゃ~。わしも変だと思ってるけどにゃ」

「だよな? 誰も指摘しないからオレが変なのかと思ってた」


 このままではリータたちの猫の手グローブの悪口になりそうだから、わしは土魔法でメリケンサックを数種類作ってグレタの意見を聞く。


「こういう物がグレタには合ってると思うんにゃ。拳に怪我することもなくなるし、素材によっては攻撃力が上がるにゃ。どうかにゃ?」

「おぉ~。カッケー。トゲトゲいいな~」

「トゲが有るのはけっこう扱いが難しいから、わしとしてはトゲ無しがお勧めにゃ~」


 グレタはトゲ有りメリケンサックが気に入ったみたいなので、わしの勧めは却下。トゲが刺さって抜けなくなる場合があるが、その分攻撃力は高いから、仕方なく了承してあげる。

 この流れで防具の話をしてみたら、なんでもいいとのこと。その答えが一番困るので、キアラの部屋を訪ねてキアラコレクションから気になる物を探してみよう。


「にゃんかまた増えてにゃい?」

「そう? お姉ちゃんの部屋を借りられるようになったから、減ったぐらいなんだけど」

「にゃんですと?」


 前にキアラの部屋に入ったのはかなり前で、その時も大量の自作の服が部屋を占拠していたから嫌味を言ってみたら、シリエージョの部屋を使ってるなんて驚き。

 シリエージョの部屋を勝手に開けたら、生活空間が入口近くにあるベッドだけ。わしの計算だと、ひとつの部屋に収まらないだけの服があるよ。


「にゃあ? これ、シリちゃんは本当に知ってるにゃ??」

「し、知ってるよ? ちゃんと服を置かせてって言ったもん」

「数も伝えたんだにゃ??」

「う、うん……」

「シリちゃんにテレビ電話しにゃ~す」

「待って! 掛けちゃダメ~~~!!」


 キアラはもう答えを言っているようなモノだけど、わしは容赦なく電話。キアラは「お姉ちゃんが仕事中でありますように!」と祈っていたけど、たまたま休憩中だったシリエージョは出た。

 わしの顔を見飽きたとか言ってるシリエージョに、部屋に入るところから見せてみたら絶叫。やっぱりここまで多いとは聞いてなかったみたいだ。


 シリエージョが「次帰るまでにまだ置いてあったら燃やす」と言って切ったからには、キアラがわしに泣き付いて来た。


「パパ~。私の作った服が燃やされるよ~」

「半分以上捨てたらどうにゃ? もう着ないにゃろ??」

「着るも~ん。パパ助けて~~~」

「しょうがないにゃ~」


 娘が泣いているのだ。父親のわしが助けるのは当然のことだ。


「ダーリン。またダーリンはキアラを甘やかすの?」

「イサベレさんにゃ!?」

「ママ!?」


 でも、シリエージョが電話を切ったすぐあとにキアラの服のことをイサベレに伝えていたので、「甘やかすな」と怒られるわしであったとさ。



 イサベレもこの服の量には引いていたので、断捨離を命令。キアラも泣く泣くそれを受け入れていた。

 ただし、捨てようにもお気に入りの服がどこにあるかもわからないらしいので、服だけお引っ越し。王族居住区はあまり余裕がないので、猫大秘密地下施設の空いてる大部屋に全てを運び込んだ。


「な~んだ~。こんな空き部屋あるなら、捨てなくていいじゃ~ん」

「いいワケないにゃ。ここは大学の施設内にゃよ? そもそもイサベレと約束したんにゃから、減らさないとにゃにされるかわからないにゃ~」

「そうそうバレないって~」

「バレる」

「ママ!?」


 イサベレ、気配を消してまだつけていた模様。わしはキアラの味方をしなくてよかったと肝を冷やしたよ。

 そうしてドッキドキしていたら、グレタがわしの頭をバシバシ叩いた。グレタの服を探しに来たのに忘れてるから教えてくれたみたいだ。


 そこで断捨離は一旦中止。キアラにも手伝ってもらってグレタに似合いそうな服を探すのであった。

 ちなみに大量の服は、全てキアラが一度着て写真に収めてから捨てるという超面倒なことをしたから、断捨離はめっちゃ時間が掛かりました。娘と遊べてわしは楽しかったのは秘密だ。



「カッケー! いいだろ~?」

「う~ん……トゲトゲが増えたにゃ……」


 キアラがセレクトして完成したグレタの戦闘服は、(びょう)が打ち付けられた黒の革ジャンに、ジーパンにロングブーツ。いわゆるパンクファッションだ。

 いちおう全ての素材はめちゃくちゃ高級品を使っているから防御力は高いけど、鬼がパンクって不良みたいに見えるので、わしは好みじゃない。


「グレタ、めちゃくちゃ似合ってるにゃ~。カッケーにゃ~」

「おう! シゲオのアニキも、その服カッケーな~」


 混ぜるな危険。白学ランのシゲオとグレタが並ぶとヤンキーカップルにしか見えないので、シッシッと追い払うわしであったとさ。



 ウロとグレタの装備も整ったので、何度かチームプレイを確かめてから、猫クラン研修は実践研修に移行。

 今回は新人さんが2人もいるので、ランクの低い狩り場に転移してやって来たけど、アンクルチームが奥に走って行ったらほとんどの人はついてった。


「残ったのはこんだけにゃ……」

「「妹を助けるでおじゃる~」」

「この近くって遺跡がありましたよね? そっち行ってますね~」


 ナディヂザとグリゴリーの双子コンビは口では助けると言ってるけど、グレタに恨みを持っているから何かしでかさないか心配。アリスはもうどっか行った。


「あーし1人がいれば、にゃんとかなるにゃろ」

「ニナはマルチで動けるから助かるんだけどにゃ~……新種の虫を探す気にゃろ?」

「ギクッ……」

「もう好きにしろにゃ~」


 頼りになりそうなニナも手伝ってくれそうにないので、わしと双子で引率の先生。わしは探知魔法を広範囲に飛ばしながら、ちょうどいい獣の場所までウロたちを連れて行くのであった。



「うおおぉぉ~!!」

「か、勝った……」


 前衛のグレタと後衛のウロだけで弱い黒い獣に勝利したら、グレタは雄叫び。とりあえずわしは、いまにも膝が折れそうなウロに声を掛ける。


「ほとんどグレタにいいところを持って行かれちゃったにゃ~」

「ええ。2、3発しか当たりませんでしたね……」

「それでも殺しに協力した事実は変わらないにゃ。心は痛くないにゃ? 吐き気はないにゃ? 苦しかったら必ず言ってくれにゃ」

「だ、大丈夫です! やって行けます!!」

「そういうことじゃないんだよにゃ~……」


 うるさいグレタには獣がいる方向を教えて双子と一緒に離れさせると、わしは再びウロと向き合った。


「アリスもにゃ。最初は獣を殺す罪悪感に潰れそうになったんにゃ。だからそれ以降は、カウンセリングしながら研修を続けることにしてるんにゃ。弱音を吐いたぐらいで研修中止にゃんかしないから、心配するにゃ。にゃ?」

「つ、強がって申し訳ありませんでした……」

「にゃはは。夢が叶う一歩手前だもんにゃ。気にするにゃ~」


 やはりウロは罪悪感に(さいな)まれていたので、カウンセリングは必要だ。とりあえず今日のところは、生きとし生ける物に感謝する神道の教えを思い出させて、グレタたちの狩りの様子を見学させる。

 さらに解体の様子を見せて、国民の腹を満たす行為は第三世界と同じだと説明。ウロも解体したいと言うので、少しだけナイフを入れさせて命の重みを感じさせる。グレタは笑うなと言っておろう?


 5度ほど狩りをしたら、アリスが調べていた町跡でお昼休憩。リータたちはお弁当がいっぱい入ったキャットケースを持って行ったから、戻って来る気配がないな。

 ウロは少し気分が悪そうだったが、お昼からも動くのだからと頑張って胃に入れてたけど、旨すぎて普通に食ってた。


 そうして食休みしていたら、ニナが虫カゴ片手に嬉しそうにやって来た。


「にゃはは。美味しそうにゃ虫がいっぱいとれたにゃ~」

「ニナ~。苦手にゃ人もいるんにゃから、そういうことは口にするにゃよ~」

「いい加減、パパも慣れてにゃ~。ほら? この幼虫、さっき生で食べたけど甘くて美味しかったにゃよ?」

「見せるにゃ! ウロ君は獣を殺すことにも気分が悪くなるほど繊細なんにゃ。ちょっとは空気を読んでくれにゃ~」

「にゃ……そうだったんにゃ。ゴメンにゃ~。パパをからかうためにやってただけにゃから、ウロ君には食べさせたりしないからにゃ~?」


 ニナは空気を読み出したけど、父親をからかうなよ。まぁウロのおかげで虫を隠してくれたから、わしとしては助かる。


「先ほど食べた幼虫とは、なんの幼虫だったのですか?」

「にゃ? 興味あるにゃ??」

「はい。大学では虫の研究をしていましたからね」

「そうにゃの? パパ……」


 ウロと喋っていたニナは、何故か怒りの表情でわしを睨んだ。


「にゃ、にゃんですか?」

「ウロ君連れて来たのはパパだよにゃ?」

「う、うんにゃ……それがにゃに?」

「だったら、虫の研究してるのも知ってたよにゃ!? にゃんでもっと早く言ってくれなかったんにゃ~~~!!」


 そう。これほど話が合う珍しい人はいないから、ニナは怒ってらっしゃるのだ。


「いや、虫を食べさせられたらかわいそうにゃし……わし、にゃんか間違ったこと言ってるにゃ??」

「「(おきな)は正しいでおじゃる~」」

「私もおじい様に一票」

「オレはどうでもいい」


 だって、元天皇陛下に虫を食べさせるなんて、わしにはできないもん! 双子とアリスはわしの意見に賛同して、グレタは投票拒否。それでもわしの勝ちだ。


「ウロ君~? 向こうであーしとお喋りしようにゃ~。ゴロゴロ~」

「にゃに猫撫で声出してるにゃ!? 離れにゃさい!!」


 しかし、ニナはウロをロックオン。腕を組んでスリスリしているので、わしは2人の仲を引き裂くのであったとさ。


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