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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴84年その2にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。どんな子でも曾孫はかわいい。


 わしが二本角の大柄女性グレタをかわいいと思っていても、その愛は伝わらず。契約魔法の命令を使って無理矢理座らせたら殺気ダダ漏れで睨まれました。

 これではかわいそうなので、猫クランに「そろそろ狩りは切り上げて帰りませ~ん?」と説得して、暗くなって来た頃にようやく帰宅してくれた。つまり失敗しました。


 その日はグレタに恨まれただけで終わり、次の日はソウの地下空洞でお話だ。


「ガルルゥゥ……」

「グレタちゃんはもうちょっと待っててにゃ~?」


 グレタはめちゃくちゃ唸ってるけど、わしはウロに視線を移す。


「んで……昨日の狩りを見て、決意は揺らいだかにゃ?」

「揺らいだと決め付けないでください。ちょっと揺らぎましたけど……」

「う、うんにゃ。そこまでぶっちゃけなくていいんにゃよ~?」


 ウロは怒ったような困ったような顔をするので、本当は迷ってるんだろうね。


「しかし、困難を乗り越えることも私の自由。必ずや猫クランで活躍できる人材になってみせます!」


 でも、決意は固そうだ。


「わかったにゃ。その言葉、現実にしてみせろにゃ。わしの教えは甘いから、必死について来るんにゃよ~?」

「はいっ! ……甘いのですか??」


 かと言って、猫クラン研修はゆる~く始まるので、ウロは首を傾げて走り出すのであっ……


「にゃっ!? グレタ! どこ行くにゃ!?」

「ウオオォォ~!!」

「待っ……ウロ君はゆっくり走っていいからにゃ~。待てにゃ~~~……」

「はあ……」


 ただし、鎖を外したグレタはブッ飛ばして走り出したので、ウロは置き去りにされるのであったとさ。



 今回の猫クラン研修は問題児がいるので、わし1人では心許ない。ひとまずグレタの父親のオニタに責任を取ってもらってランニングは任せる。

 わしはウロと一緒に走って応援。自分のペースでいいと言っているのに飛ばし過ぎたので、思ったより早く限界が来たから休ませる。


「ゼーゼー……グレタさんはまだ走っているのに情けない……ゼーゼー」

「あぁ~……グレタと比べてたんにゃ。グレタはちょっと特殊にゃから、いま勝負するのは諦めろにゃ」

「特殊??」


 わしもいまいちわかっていないけど予想を伝える。


これはおそらく隔世遺伝。オニタもたいした訓練をしていなかったのに、筋骨隆々で最初から普通の人間より強かったから、グレタも先祖の血が色濃く出ていると予想している。

 わしの目には、オニタが猫クランに加入した時よりも実力が上に見えているから、その予想は当たっているのではないかと説明した。


「オーガの血の力ということですか……」

「たぶんにゃ。人工的に作られたから、遺伝子がおかしくなっていたのかもしれないにゃ」

「そういうことですか。グレタさんは角が二本もありますから、その分の上乗せがありそうですね」

「そこはまだ解明されてないんだよにゃ~。オニタより好戦的だから、性格に作用してるかもしれないんだよにゃ~」

「この世界はまだまだ未知で溢れていますね」


 喋っていたら疲れが取れたようなので、次は魔法を見せてもらって評価する。


「おお~。一般人にしては、魔法の理解が深いにゃ~」

「それはシラタマさんからも基礎を習っていたからですよ」


 魔法はわしの家庭教師のおかげで小中高と主席だったので、この方向が良さそうだ。


「てことは、後衛希望って感じかにゃ?」

「そうですね……最初は後衛で、ゆくゆくは刀も習いたいです」

「うんにゃ。時間はいっぱいあるんにゃから、得意にゃことから始めようにゃ~」


 ウロはしっかりしたプランがあるので、まずは後衛職に決定。それならば体力関係以外はサクラとアリスに手伝ってもらって、わしはグレタの訓練も見る。


「うんにゃ。いいパンチにゃ~」

「受けるなよ! 殴らせろ! 死ね~~~!!」


 とりあえず戦闘の実力を見ようとしたら、わしは嫌われているので殺気ムンムン。それでも避けたり優しく受けたりしていたら、体力の限界が来たグレタはバタンキューだ。


「ところでグレタは、どんにゃハンターになりたいにゃ?」

「世界最強だ! ジジイも殺してやる!!」

「う~ん……質問の仕方が悪かったにゃ。戦闘方法はどうしたいにゃ? 徒手空拳で行くにゃ??」

「当たり前だ! 骨の折れる感触を拳で味わうんだよ!!」

「にゃるほどにゃ~……」


 ここまで戦闘狂では、話にならない。リータ先生とオニタ先生に訓練を任せてみよう。コリス先生とリリス先生はいいかな? 尻尾ないもん。

 完全な徒手空拳といえば、コリスとリリスだったので呼ばれたと思ってやって来たけど、超高級串焼きを遠くにぶん投げて排除。戻って来るまでにグレタを見て、コリスたちが再びやって来たら串焼きをぶん投げる。


 なんだか犬と戯れているようだと思っていたら、リータがグレタをボコボコにしたので、わしの回復魔法で治す。オニタとチェンジしたら、さすがに娘は殴れないのか仁王立ちしていたけど、先に倒れたのはグレタだった。


「ゼーゼーゼー……」

「にゃはは。実力の差は歴然だにゃ~」

「なに笑ってやがんだ……ゼーゼー。ちょっと調子が悪かっただけだ……ゼーゼー」

「そんにゃ心持ちじゃ、誰にも勝てないにゃよ?」

「はあ? オレは最強だ!!」

「いつまで子供みたいにゃことを言ってるんにゃ。グレタは、この中で最弱にゃ。それすらわからないんじゃ、すぐに死んじゃうにゃ~」

「ふっざけやがって……死ね~~~!!」


 わしが事実を言っているのに、グレタは襲い掛かって来たので、【殺気の剣・肉球バージョン】。向かって来る度に足を払って、わしに近付けさせない。(はた)から見たら、1人でこけてるだけにしか見えないから暴力ではありません。

 そんなことをしていたら体力の限界が来て、グレタは気絶するように倒れてしまった。


「ありゃりゃ。ちょっとやりすぎたにゃ~。ま、今日のグレタの訓練はここまでにゃ。オニタ、あとは任せたにゃ~」

「おう!」

 

 オニタがグレタをお姫様抱っこで縁側に運び、母親のアリーチェと共に看病する姿を確認したら、わしは再びウロの訓練に顔を出してアドバイスするのであった。



 翌日……ソウの地下空洞では、グレタの前に猫クランメンバーが仁王立ちで立っていた。


「なんだよ。ヤル気か?」


 さすがにグレタでも、わしたちの雰囲気がおかしいと気付いたみたいだ。


「昨日、わしが言ったにゃろ? グレタはこの中では最弱だとにゃ。いまからそれを思い知らせてやるにゃ~」

「ハッ! ババアたちとヤレるのは願ったり叶ったりだ! 全員、ブッ殺してやる!!」

「「「「「ババア……」」」」」

「こ、殺すのは無しだからにゃ??」


 グレタが禁句を口走ってしまったからには、アンクルチームが超怖い。いちおう頼んでみたけど、死は免れないかも?

 強く言い過ぎるとわしにまでモフリ被害が来そうなので、さっさと猫クラン組手を始めてしまおう!


「んじゃ、このクランナンバー2のコリスから行ってみようにゃ! 5分は持たすんにゃよ~?」

「わかった~」


 二尾の巨大白リスのコリス推定183歳なら穏便だから、ババアって発言ぐらいでは怒らない。できるだけ長く戦ってもらって、アンクルチームの怒りを冷ましたい。

 と願っていたけど、2分で決着。コリスは手を抜いてグレタの攻撃を捌いていたのに、アンクルチームが時間をごまかして伝えたから、コリスもラストは尻尾ベチコーッンでグレタを叩き潰しちゃったよ。


「だ、大丈夫にゃ? 無理だったら後日にしようにゃ。にゃ?」

「こんなもん掠り傷だ!」

「両手両足、逆に向いてたにゃよ?」


 わしの回復魔法で完全復活したからには、グレタはもうやる気満々。わしがあわあわしていたら、アンクルチームからも次を急かされたので紹介だ。


「え~……ナンバー3は……イサベレかにゃ?」

「ん」

「私です!」

「私ニャー!」

「え~……暫定ナンバー3は、順位はそのままでジャンケンで決めましょうにゃ~」


 一番ハンター歴の長い、白髪美女イサベレ今年191歳、愛らしい女性リータ97歳、猫耳メイバイ99歳は順位で揉めそうだったから同着。

 ジャンケンではメイバイ、イサベレ、リータとなったので、メイバイが勝ち誇った顔をしていた。


「んじゃ、メイバイも時間掛けてにゃ~?」

「教育的指導ニャー!」

「アレはダメな見本だからにゃ~?」


 その3人はババアと言われていたから、グレタが死なない程度の力加減でビンタ連発。一撃では倒さないから、グレタの顔が凄い腫れてます。怖いです。


「え~……6位のベティ。時間稼いでくれにゃ~」

「6位じゃないわよ!? 5位は堅いでしょ!?」

「その苦情は、汚い手段なしでリータたちに勝ってから言えにゃ~」


 またグレタを完全回復したら、カーリーヘアのベティ86歳を送り込んでみたけど、わしの紹介が悪かったのかグレタをボコボコに。きっと「パーマババア」と言われたから手加減が下手になってるんだな。すぐに終わっちゃった。


「7位は~……ここにいないシリちゃんだから、8位のインホワが次だにゃ」

「はあ!? 俺が7位にゃろ!?」

「いいから行けにゃ~。あと、女の子殴ったら、わしが許さないからにゃ?」

「オヤジがそんにゃこと言うから、シリエージョにいつも負けるんにゃ~~~!!」


 白猫インホワ77歳は順位に文句があるみたいだけど、グレタのほうが飛び掛かって来たので仕方なく相手。わしが暴力を禁じているから、腕を組んだまま微動だにしないでグレタの拳を受け続けた。


「おお~い。グレタの拳が割れてるにゃ~。わざと前に出たにゃろ?」

「どうしろって言うんにゃ~~~!!」


 その結果は、グレタの両手両足が使い物にならなくなって倒れたから、わしはインホワを説教。お母様方からもこれは仕方がないと説得されたから、わしも許すしかなかった。


「9位はニナで、10位はオニタ、11位にキアラってところかにゃ?」

「そんにゃに上にゃの?」

「ゲテモノ姉ちゃんは俺より強い」

「誰がゲテモノにゃ!?」

「まぁニナ姉とオニ兄にはまだ届かないよ~」


 この3人はわしの順位発表に文句はないみたい。白猫ニナ67歳は一本角の大鬼オニタ61歳のあだ名に文句あるみたいだけど。相変わらずクセが強いあだ名だな。

 だから言うこと聞いてくれたけど、オニタ以外はグレタをボコボコにすることには変わりないので、わしは見てられない。白髪長身美女に育ったキアラ57歳はやる気なさそうにビンタしてた。


「12位はサクラにゃ」

「うう……産休が無ければニナにも負けてなかったのに……」

「そう悲観することないにゃ。ベティの家系は結婚から縁遠いからにゃ~」

「そうだにゃ。女としては私の勝ちにゃ~。にゃははは」

「「なんにゃと~~~!!」」

「わしは縁遠いとしか言ってないにゃ~~~」


 二児の母、白猫サクラ77歳も認めてくれたけど、ベティとニナの異議申し立てがうるさいな。そんなに言うなら、男遊びばかりしてないで早く結婚しろよ。噛むな!


 こうしてわしがベティとニナに噛み付かれている間も、サクラが往復ネコパンチでグレタを痛め付け続けるのであった……


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