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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴83年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。政治よりも赤ちゃんが好き。


 猫会に大遅刻したわしはキントウ首相に教育的指導をしただけで、マスコミの質疑からも逃げ帰ったら、夜には王妃様方から説教。

 夕方のニュースで「猫王、首相を叱責する」という映像が流れて、ノルンがわしの大遅刻をチクりやがったから怒られたの。行っただけでも偉いのでは……あ、はい、すいません。わしが悪う御座いました。


 言い訳が高校生レベルだったので、説教は追加。その件を秘密にして猫耳ウロに会ったら、政治家に物申したことを褒めてくれたので、少しは気分が紛れた。

 ウサ耳ミテナに会った時は、「なんであんな時間に猫会にいたの?」と聞かれたので「昼からいた」とウソをつきました。バレて撫で回されたけど……


 猫歴82年はパンダみたいな赤ちゃんが生まれて驚いたり、派閥なんてできてたんだと驚く年であったが、わしのお昼寝生活は変わらない。その合間に猫クラン活動も頑張っていたら、猫歴83年となった。

 この日は皆の目を盗んで赤ちゃんをあやしていたら、スマホが鳴ったので無視。その音に気付いたワンヂェンがわしから赤ちゃんを奪い取ったので、仕方なく部屋を出て電話に出た。


 その相手は、アメリヤ王国の元女王、シャーロット。何やら相談があるらしいので、翌日のアメリカ時間の朝にわしから訪ねてあげた。


「お忙しいのに、こんなに早く来てくれてありがとうございます」

「いいにゃいいにゃ。たまたま休みだったからにゃ~」


 シャーロットが申し訳なさそうにするので、わしは気遣ってあげたら笑ってくれた。ぶっちゃけ、どうせバレないだろうから数日後に行こうとしたら、王妃様方に「暇でしょ?」と追い出されたんだけどね。


「んで……相談ってのは、新女王様が関係しているのかにゃ?」


 挨拶はそこそこで席に着くと、わしはシャーロットの隣に座っている金髪美女を見た。


「ええ。おじ様は戴冠式以来でしたね」

「戴冠式では挨拶程度しかできなくて申し訳ありませんでした。改めまして……アメリヤ王国女王、サヴァンナです」

「いや~。わしこそ、ぜんぜん顔を出してなくてゴメンにゃ~」


 サヴァンナが即位したのは7年前。シャーロットはテレビ放送された東の国の戴冠式に触発されて「その手があったんだ!?」と焦って退位の準備に取り掛かったんだとか。

 焦っていた理由は、職務が忙しいから後任のことがすっかり頭から抜けていたから。元々そんなにやりたくなかったのに「30年もやったからいいよね?」と未練はまったくなかったんだって。


 そこで白羽の矢が立ったのは、サヴァンナ。シャーロットの第一子で金融機関に勤めていたから適任だと泣き落とししたみたい。サヴァンナもやりたくなかったんだね。

 その説得に3年も要し、シャーロットが58歳、サヴァンナが35歳で、退位と即位となったのだ。


 わしは戴冠式の招待状が届いたから、ブッチしようとしたよ? でも、たまにしかやって来ない王様の仕事だったから、王妃様方に首根っこ掴まれて強制連行されたの。

 それ以降は毎年シャーロットが遊びに来るから、城にまで足を運ぶことはしなかった。外交とかはそれで充分なんだもん。


「それで今日、お招きした理由なのですが……」


 サヴァンナの説明では、新しいことを始めようとしているとのこと。それは、企業や個人がお金を出し合い、会社を支援する制度。

 そういう会社が10年前ぐらいから増えていたからそれをまとめる機関を作り、現在はインターネットを使ったシステムを構築中らしい。


「ほ、ほ~うにゃ……株取り引きをやってたんにゃ……」

「株取り引きですか? というか、シラタマ王はこの支援制度をご存知だったのですか!? アメリヤ王国初で秘密にしていたのですよ!?」


 誰かがやり出さないかと見守っていたのだから、わしは嬉しくって失言。アメリヤ王国の秘密が漏れていたのかとサヴァンナを驚かせてしまったので言い訳だ。


「昔から構想があっただけにゃ。だからしてやられたにゃ~っと驚いてるにゃ~。にゃははは」

「本当ですか? スパイを潜り込ませて……ウサギさんたちですね!? 返しませんよ!!」

「そこは返すところじゃにゃい?」


 出張ウサギ従者サービスは確かにスパイも兼ねてるけど、スパイとわかったなら強制送還するのが筋。でも、かわいいからその選択肢はないんだって。


「ウサギさんは関係ないにゃ。シャーロットにゃら知ってるかにゃ? ホウジツってヤツにゃんだけど……第1回金融会議で難しい国債の説明をしていた胡散臭いジジイ、覚えてないかにゃ?」

「ホウジツさんなら覚えています。私の人生を変えた人ですから。あの当時、こんなに賢い人がいるのかと、驚きと同時に尊敬の念を抱きましたからね」

「お~。それにゃらホウジツも浮かばれるにゃ~。ちなみにわしは、どう思ったにゃ?」

「ぬいぐるみ……猫……」

「賢い話してたにゃろ~~~」


 どうやらシャーロットは、世界金融会議で初めて動くわしを見たから、こんな感想を持ったらしい。祖父のジョージはかわいい孫娘がわしを見たら嫁に行くとか言い出しそうだからって、小さい頃は隠していたんだとか。

 あと覚えていることは、各国の王様から怒鳴られたり馬鹿にされたりしていたこと。賢い一面はまったく記憶にないそうだ。


「ま、まぁその件はもういいにゃ。そのホウジツが、株取り引きを提案していたんにゃ」

「そんなに昔から構想があったのに、どうして猫の国はやらなかったのですか?」

「理由は時代が早すぎたからにゃ。ウチ、その頃は国営企業ばかりでにゃ~。小さにゃ会社だけでやるのも数が少なかったから、わしが先送りさせてたんにゃ」

「シラタマ王が止めていた、と……本当ですか?」

「わしの顔をそんにゃ顔で見ないでくれにゃい?」


 サヴァンナはこのとぼけた顔では信用に値しないと顔に書いてあるので、シャーロットの家庭教師をしていたと説明してやったけど、あまり変わらないな。


「株取り引きに気付いたのは、為替からにゃろ? 誰かがこのシステムを使ったら儲かると言い出したんにゃ。違うにゃ?」

「うっ……その通りです」

「そこで必要にゃのが、インターネットを使ったシステムにゃ。取り引きが正確かつ、活発になるもんにゃ~。世界も巻き込めば、ボロ儲けにゃ~。そのシステム開発が上手く行ってないんにゃろ?」

「なんでその顔で正確に当てるんですか~~~」

「いい加減、わしの顔に触れないでくれにゃい?」


 始まりからやりたいことまで全て当てられたサヴァンナは、わしの顔しかけなせないのであった……このご時世に酷くない?



 わしの顔を侮辱しまくるサヴァンナのことはシャーロットが「メッ!」と叱ってくれたので、一旦ブレイク。2人に撫で回されてから、リムジンに乗り込む。

 そのリムジンでも撫で回されていたら、やって来たのは怪しい雰囲気が漂う建物。ここで株取り引きをしているらしいが、黒服がいっぱい囲んでいるからマフィアが仕切っている鉄火場にしか見えないよ。


「おお~。すっごい活気だにゃ~」


 しかし、中に入ってしまえば別世界。広い部屋の中心部では、魚市場の()りのような掛け声が響き、人々が一喜一憂していた。


「これを見ても驚かないのですね……」

「そりゃ~……日ノ本の魚市場も同じくらい活気があるからにゃ。今度、一緒に見に行くにゃ? 舞鶴のとれたてピチピチの魚は格別にゃよ~?」


 こんなアナログな株取り引きは、遠い昔にテレビの中で見たことがあるので、わしは驚くというより懐かしい。そのせいでまた失言をしそうになったので、競りの話でごまかす。

 2人とも一緒に旅行したいとか言ってたけど、サヴァンナは仕事はいいんじゃろうか?


 旅行の話はまたあとですることにして、わしたちは現在使っている2階のパソコン部屋に移動する。


「にゃるほどにゃ~……目視と手作業なんにゃ」

「いまは慣れましたけど、やり始めた頃は何度も聞き直していたから、物凄く時間が掛かっていたのですよ」

「それを早くできるようにしろってことだにゃ……うんにゃ。わかったにゃ~」

「もう改善点は浮かんだのですか?」

「そうにゃよ? こんにゃのお茶の子さいさいにゃ~」


 サヴァンナはまた疑った目をしているけど、わしが次々に出したアイデアが完璧すぎて、どんどんヘコンでた。


「わしも10株ぐらい買って行こうかにゃ~……にゃんかいい技術がある会社知らにゃい?」

「その株ってのは、どういう意味でそう名付けられているのですか?」

「あ、そうにゃ。呼び方違ったんだったにゃ。株はにゃ~……そのままにゃ。木を切ったあとに切り株が残るにゃろ? それを、人が死んだり経営者がいなくなったあとに財産が残ることに当て嵌めてるんにゃ。その切り株に人が群がる姿、いま下でやってる取り引きと似てにゃ~い?」

「「確かに……」」


 掻い摘まんだ説明だけで、2人とも納得。誰が言い出したのかと聞かれた時もホウジツとウソをついたら納得してくれたけど、これって歴史に残りそうだな。

 そんなことを考えていたら、この取り引きの名前は支援制度から株取り引きに変更。名付け親はシャーロットとサヴァンナの連名にしたいんだとか。


「う~ん……ま、いいにゃ。ホウジツもそんにゃこと気にするようにゃヤツじゃないからにゃ」

「「え……いいのですか?」」

「猫、噓つかないにゃ~」

「「はあ……」」


 どうやらダメ元だったみたい。わしが許可しているのに、これだけは納得してくれない2人であった。



 それから少し話し込んだら、わしは猫の国時間の朝方に帰宅。王妃様方に「大口の仕事を取って来たよ」と報告したら、撫で回しの刑。褒めてくれたらしいけど、気絶しました。

 この日はアメリカ時間に合わせて仕事をしていたので、わしが寝ていても王妃様方は何も言わない。でも、翌日は朝から追い出されたので仕事をしろと言うことらしい。


「ギョクロ~。ちょっといいかにゃ?」


 わしがやって来たのは、猫大秘密地下施設の開発部門。何やら会議中だったから邪魔しないように、ギョクロがわしに気付いてから声を掛けた。


「うんにゃ。父さんが来るのは珍しいにゃ~。手伝いに来てくれたにゃ??」

「まったくの別件にゃ。システム開発に強いヤツを借りたいんにゃ」

「えぇ~。いまでも遅れてるのに、ウチから取るにゃ~??」

「そんにゃに遅れてるんにゃ……ひとまず話を聞かせてくれにゃ」


 いま作っている物は、わしもチンプンカンプン。しかし聞く限り、人手は余っていそうだ。


「実験が上手く行ってないにゃら、システム部門はいらなくにゃい?」

「多角的にゃ面からアイデアを出してもらっているから必要にゃ」

「じゃあ、出資者権限で借りてくにゃ~」

「必要って言ってるにゃろ!?」


 強権発動。わしは容赦なくシステム部門を引っこ抜くのであった。ちなみにシステム部門を統括していたフユからは「助けてくれてありがとう」と言われた。会議ばっかして楽しくなかったんだってさ。


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