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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴79年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。3度目の第三世界は、めっちゃ楽しかった。


「「「「「ゲーム出してにゃ~」」」」」

「「「「「マンガも読みたいにゃ~」」」」」

「いま回想してるから、もうちょっと待ってくれにゃい?」

「「「「「早くしてにゃ~」」」」」

「わかったにゃ~」


 猫ファミリーも楽しかったのか、いつも通りわしの回想を邪魔する始末。欲しい物を全部出したら、続きの回想だ。


 今回の第三世界旅行は文句を言う必要もなかったので、何もやらかしていない。せいぜいララの島で遊び過ぎたぐらい。

 3日間もお祭り騒ぎになったのは、島民のせいであってわしのせいではない。なのにララのヤツ、あんなに怒らなくてもいいのに……


「にゃあ? 新しいコンピュータとか発電機、早く設置しに行こうにゃ~」

「「「「「にゃあにゃあ?」」」」」

「もう! 落ち落ち回想もしてられないにゃ~」


 ギョクロたち黒モフ組は、新技術を御所望。モフモフに囲まれては暑苦しいから暇な人を誘って……みんな忙しいらしいので、わしと黒モフ組で猫大秘密地下施設に向かうのであった。



 黒モフ組も機械類をちょっと出したらそれに夢中になってしまったので、展示はわし1人でやらなきゃダメになってしまった。

 ここ猫大秘密地下施設は、昔は大量の大学生が第三世界の本を読んで勝手に勉強していたのだけど、50年近くも経つと学び終えて地上に出たので、いまはマニアックな勉強をする人間しか出入りしていない。


 そいつらを捕まえて、本の仕分けや展示をムリヤリやらせる。ブーイングはされたけど、こんな時のために契約魔法で縛っているから従順だ。本当は秘密保持のためだよ?

 機械類は、いまだに秘匿の技術が多いから、技術者もわんさかいるのでこいつらにもムリヤリ手伝わせる。平賀家並みの発明バカがかなりいるから、契約魔法は解除できない。下手したら勝手に分解するんだもの。


 なんとかかんとか展示が終わっても、わしの仕事は終わらない。技術関連はギョクロたちに任せられるけど、新しい本はチェックして講師に引き継がないと知識は伝わらないので、理事長のわしの出番だ。

 学長にチョチョイと説明したら、あとは丸投げ。「契約魔法が必要な時は呼んでね~」とだけ告げて、わしはお家に帰るのであった。



 それから数日、黒モフ組が家に帰って来ないので迎えに行ったり、契約魔法を掛けに行ったり、お昼寝していたら丸投げしたことを王妃たちにバレたりしていたけど、やっと一息つけたのでウロを呼び出してお土産話だ。


「いや~。50年の進化は凄まじかったにゃ~」

「フフフ。お気に召してくれたようですね」


 このネコ耳男子学生のウロ17歳とは、第三世界の元天皇陛下。異世界転生して来たから第三世界のことを聞きたかっけど、この目で見て驚きたかったから、我慢して正解だった。

 ちなみにウロにも里帰りするかと聞いたら、まだ17年ぐらいだしこっちの高校生活のほうが楽しいと辞退していた。


「あ、そうにゃ。甥御さんにこっちにいるって言っちゃったんだよにゃ~……異世界転生して来るかもにゃ」

「口を滑らせたのですか……まぁ第三世界に残るより、こちらのほうが羽を伸ばせますから、来たほうがいいかも知れませんね」

「確かににゃ~。皇室や国民が気になって仕方ないかもにゃ。ウロ君も羽を伸ばせているにゃ?」

「ええ。こないだ初めて、学校をサボってみました。親にバレないかとドキドキしましたよ」

「にゃはは。皇族にあるまじき贅沢だにゃ~」


 ウロとは話が合うので世間話は弾むが、わしは時々暗い顔をしていた模様。このとぼけた顔の変化を読み取るとは、家族よりわしに詳しいのではなかろうか?


「何か悩み事ですか?」

「まぁにゃ~……誰とは言えないから、名前がわかっても口にしないでくれにゃい?」

「あぁ~……あの方関連ですか」

「正確に言うと、こっちのあの方にゃ」


 さすがは元天皇陛下。すぐに神様の話だと気付いてくれたので話をしやすい。


「大勢あっちに連れて行ったら怒られてにゃ~。帰って来たら覚えとけって言われたんにゃけど、5日も音沙汰ないんにゃ」

「それは怖いですね。あの方の逆鱗に触れたなんて……連絡する方法はないのですか?」

「あるっちゃあるんにゃけど……怖いじゃにゃい?」

「後回しにするほうが怖いのでは? 海が干上がったり火山の噴火とかイヤですよ??」

「そんにゃこと言うにゃよ~。もっと怖くなったにゃ~」


 相談役に持って来いの人間だったけど、今回ばかりは失敗。古事記に書かれているスサノオは恐ろしい逸話が多いので、それを聞かされたわしは怖くってなかなか連絡を取れないのであった。



 それからのわしは、意外と忙しい。1ヶ月近くも猫クラン活動をしていなかったので頻度を増やされたし、黒モフ組からも「この形の鉄製品作って」とかこき使われたり。

 お昼寝もしないといけないので、すっかりスサノオのことを忘れてしまってから年末。神様が夢の世界に現れて、てんやわんや。


 スサノオもわしのことをすっかり忘れていたからお互い謝ったので、特にお(とが)めはなし。渡航券を維持したいなら仕事をしろと言われたことは、許容範囲だからまぁいい。

 その後、アマテラスとツクヨミが乱入して来て「私の手駒、勝手に使うな!」と大喧嘩。神々の力で夢の世界が圧縮されて、死ぬとこだったよ!


 そんなことがあったので、東の国の女王誕生祭は欠席。元々行くつもりなかったのは置いておいて、グ~タラしていたら猫歴79年となった。


「あの~……スサノオ様から依頼を受けたんにゃけど、ついて来てくれる人はいにゃすか?」


 猫クランの前で発表してみたけど、誰も手を上げてくれない。神々の喧嘩に巻き込まれた人もいるし、わしが「絶対に関わってはならない神様だ」と子供たちには小さな頃から恐怖を刷り込ませていたから自業自得だ。


「依頼内容ぐらい聞いてほしいにゃ~?」


 なので皆が解散しそうになったので、わしは回り込んで通せんぼ。散り散りに逃げようとするから、わしは分身しているみたいだ。


「討伐依頼にゃんだけど……」

「「「「「それを先に言えにゃ~~~~!!」」」」」


 依頼内容を言ったら食い付いてくれたけど、こうなりそうだったから言わなかったの。


「人数制限が6人までにゃから、どうやって決めようかにゃ?」

「「「「かかってこいにゃ~!」」」」

「「「「「ええぇぇ~……」」」」」


 だって、人数制限があるんだもん。アンクルチームが力業(ちからわざ)でミドルチームとヤングチームを押し退けるとわかってたんだもん!


 わしはいちおう平和的にアミダクジを用意していたけど、アンクルチームはビリビリに破り捨て、一致団結でミドルチームとヤングチームを蹴散らしたのであったとさ。



「んじゃ、依頼内容にゃんだけど、水の惑星ってところにいる敵を倒せだってにゃ。こいつが生物を殺しまくっているから、その惑星じたいが破滅に向かってるらしいんにゃ」


 決着がついたら、さっそく作戦会議。わしの説明には足らないところばかりなので、イサベレの手が上がった。


「その敵って、どんなの?」

「わしも聞いたんにゃけど『見たらわかる』の一辺倒でにゃ~。あと、『試練』とも言ってたから意地悪してると思うにゃ」

「例えば、ダーリンしか相手にできない敵だとしたらどうする?」

「わしがやるにゃ。ま、人数の指定があるってことは、みんにゃにも役割があるかも知れないにゃ。だから、水の惑星ってぐらいにゃんだから、水対策の訓練をしてから挑もうと思うにゃ。異論はあるにゃ?」

「「「「「にゃっ!」」」」」


 アンクルチームの返事はサッパリわからないけど、たぶん「了解」ってことだと受け取ったわし。

 それからは猫クランの力を借りて、波打ち際での戦闘や、海面に立って戦う訓練、もしもの海中戦も想定して、白い巨大魚とも不利な条件での戦闘を行う。

 ちなみにエリザベスたちも実力的にはアンクルチームになっているけど、水の中に潜りたくないからって討伐依頼は辞退してくれたよ。



 訓練を開始してから1ヶ月。準備が整ったので、旅立つ前日にインホワをわしの仕事部屋に呼び出した。


「にゃにこれ?」

「わしたちの遺書にゃ」

「……」


 インホワに封筒を手渡したら、最初は軽そうにしていたけど、遺書と聞いてズシリと重みを感じて黙った。


「そう心配するにゃ。念の為に渡しておくだけにゃ」

「そ、そうだよにゃ。オヤジたちが簡単に死ぬわけないよにゃ」

「でも、神様案件にゃから、にゃにが起こるかわからないにゃ。だからインホワ……」


 わしは立ち上がってインホワの肩に右手をそっと置いた。


「もしもの場合は、猫の国の君主はリリスにゃ」

「おうにゃ!」


 インホワはわしの考えを理解して、力強く返事をしてくれた。


「……にゃ? ちょ、ちょっと待ってにゃ。いま、リリスって言ったにゃ?」

「うんにゃ。言ったにゃよ?」

「にゃんでにゃ~~~!? いま、俺の目を見て言ってたんにゃから、王様は俺にゃろ!?」


 どうやら自分の名前を呼ばれたと思っていたっぽい。


「いや、リリスのほうが長生きにゃから、王位継承は1回で済むからいいかにゃ~っと。インホワにはリリスが立派にゃ女王になれるように、サポートしてほしいんにゃ」

「それにゃら紛らわしい言い方するにゃよ!?」

「勘違いしたのそっちにゃろ~……わかったにゃ。遺言書、書き直してやるにゃ。そんにゃにやりたいにゃら、王様にしてやるにゃ~」

「もうやりたくないにゃ! この、クソオヤジにゃ~~~!!」


 というわけで、インホワが激怒したので喧嘩別れしちゃったわしであった。


「にゃあ? ジジイがめちゃくちゃキレてたけど、ワンさんがにゃにかしたにゃ?」

「さっきこんにゃことがあってにゃ~……」

「そりゃワンさんが悪いにゃ~」


 インホワのことが嫌いなシゲオにも、わしが悪いと決め付けられたのであったとさ。



 遺書も無事渡せたので、完全に準備完了。猫ファミリーに見送られ、わしたちアンクルチーム、わし、リータ、メイバイ、イサベレ、ベティ、珍しくノリでついて来たコリスは、時のピラミッドに保管してあるUFOの中に直接転移した。


「スサノオ様~。来たにゃよ~?」


 出発はUFOに乗って名を呼べと言われていたからその通りにしたら、ガチャガチャした音のあとに、わしの頭の中だけにスサノオの声が聞こえて来た。


『準備はいいのだな?』

「はいにゃ~」

『1人、人数は多いが……この程度ならまぁいいか。行って来い』

「にゃ? ノルンが密航してるにゃ!? 捜せにゃ~~~!!」

『水の惑星を救え』


 こうしてわしたちがノルンを捜している間に、UFOはスサノオの力で水の惑星に運ばれたのであった……


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