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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴78年その3にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。UMAではない。限りなく近いけど……


 第三世界5日目。わしが1人でやって来た場所は、瀬戸内海にある小島。位置情報アプリ通りの場所、ヘリポートみたいな所で待っていたら空飛ぶ車が騒音を上げて着陸した。


「シラチー、おひさ~」


 そこから降りて来たのは、さっき追い越した空飛ぶ車の中でギョッとしていた日焼けにしては黒い肌の派手なおばちゃん。初めて会うはずなのに馴れ馴れしいな。


「アハハハハ。なに飛んでるのよ~。アハハハハ。また殺すつもり~? アハハハハ」


 もう1人、清楚系のおばちゃんが降りて来たけど、笑い過ぎてうずくまった。


「もしかして……お前にゃ?」

「アハハハハ。ここで待ち合わせしたんだから、アハハハハ」

「うんにゃ。もう大丈夫にゃ。ララ。久し振りだにゃ~」


 そう。この笑いまくっている美人のおばちゃんは、広瀬空詩(ララ)。第三世界で輪廻転生したわしの元女房だ。

 ララには早い時期に、アマテラスを通じて遊びに行く旨を伝え、天皇陛下から連絡先を聞いて訪ねる旨も伝えている。なんで天皇陛下がララの連絡先を知っているかは教えてくれなかった。わしのせいで危険視されてるのかな~?


「ちょっと~。あちしのこと、無視? シラチーとあちしの仲でしょ~」

「いや、わしは日焼けした関西のおばちゃんに知り合い居ないんにゃけど?」

「ひどっ! 黒ギャルだしぃ! こないだ電話したばっかだしぃ!!」

「電話にゃ? ギャルにゃ? ……にゃ!? 総理の姉ちゃんにゃ!?」

「やっと思い出してくれたしぃ」


 この派手なおばちゃんは、元白猫党党首で元総理。わしの知っているギャル総理は、ギャルでも普通に喋っていた。こないだ電話した時は丁寧な口調だったから、ゴリッゴリの黒ギャルになっていたらわかるはずないしぃ。


「総理の姉ちゃんが、にゃんでこんにゃ所でララと一緒にいるにゃ?」

「アハハ。お腹痛い。積もる話は家でしましょう。スーパーキャットさん。プププ」

「ツッコンでいいにゃ? また笑うことになると思うけど、ツッコンでいいにゃ?」

「無理! アハハハハ」


 無理ならボケるなよ。ギャル総理の手を借りて、変な形の乗り物に乗ったララたちの後を追うわしであった。それの説明もしてくれ~い。



 ララたちの乗った乗り物は、セグウェイの進化版とか言っていたけど、セグウェイからよくわかりません。

 よくわからないけど、どんな悪路でも階段でも、台はずっと平行だから落ちないんだとか。これも自動で目的地に連れて行ってくれるんだって。


「にゃ~。立派にゃ茅葺(かやぶ)き屋根にゃ~。いいにゃ~」


 ここはララの家。純日本家屋と庭は、懐かしさと羨ましさがある。


「茅葺き屋根風ね。そんな面倒な家に住んでられるワケないじゃない」

「いや、100年使えるにゃろ?」

「この離島でどうやって茅葺きを運ぶのよ。この家の素材はウレタンに似た新技術だから、デザインは自由自在。砂みたいなのを膨らませて作るから、工期も早いのよ」

「にゃんと……てことは、軽いにゃ?」

「そこそこね。土台に完全固定しているから飛ぶことはないし、繋ぎ目がないから隙間風すら入って来ないわよ」

「にゃぁ~……聞いてみないことにはわからないモノだにゃ。建物はにゃにも変わってないと思ってたにゃ~」

「フフフ。凄いでしょ? さあ、入って入って」


 茅葺き屋根風の建物は、中はお洒落なカフェっぽい作りの3階建て。1階の庭と海が見渡せる部屋は畳敷きで囲炉裏もあるから、ここをわしの部屋にしたい。


「いい景色でしょ?」

「うんにゃ。最高にゃ~。でも、囲炉裏は危なくないにゃ?」

「火は使わないわよ。オール電化。囲炉裏としてお湯とか湧かせるけど、冬はもっぱら掘りごたつになってるわ」

「にゃんか偽物ばっかりだにゃ~」

「いいでしょ。気に入ってるんだから」


 わしとしては、昔の暮らしに憧れはあるけど、皆まで言わない。これ以上踏み込むと、ララの愚痴が止まらなくなるから言えないってのもある。


「ララ~。茶、入れて来てやったぞ~」


 わしが愚痴が来ないように貝になっていたら、今度はヤンキーっぽいおばちゃんが登場。その隣にある湯飲みを乗せた、勝手に動いてるワゴンのことも説明してほしいな~?


「あ、エマ。ありがとう。あなたもエマのこと覚えてる?」

「エマ……エマ……ジュマルのマネージャーさんかにゃ?」

「おお~。覚えてくれててサンキュー。その後、ジュマルと結婚したんだ」

「へ、へ~……ララさんにゃ。友達は選べってお母さんに言われなかったにゃ?」

「言われたけど、ママも2人のこと気に入ってるわよ。見た目で判断するって、頭固いわね」


 頭が固いと言うより、和室にギャル率が高くなったから、気になることが口から出てしまったわしであったとさ。



「えっと~……先に総理の姉ちゃんを処理させてくださいにゃ~」

「ああ。カレンはね。私が日本に帰って来てから友達になったの」

「マブダチだしぃ」

「「ね~?」」

「出会いから説明してくれにゃ~」


 まったく説明されていなかってので、わしは催促。どうやらギャル総理こと藤田カレンは、総理を辞任してから勉強して看護師に転職したそうだ……


「ストップにゃ! 総理が看護師にゃ??」


 異色すぎて黙って聞いてられるワケがなかろうが!


「SPとかも付けなきゃダメにゃろ?」

「ギャルから黒ギャルに変身したから、大丈夫だしぃ」

「あ、それは変装にゃんだ~」

「昔からやりたかっただけだしぃ」

「もういいにゃ。看護師になりたい理由から聞かせてくれにゃ」


 カレンは暖簾に腕押し。違うことを聞いたほうが理由がわかるかもしれない。

 カレンは異世界転生するなら医者がもっとも近道だと思ったけど、三流大学の頭では難しい。だからそれに近い看護師なら徳を多く貰えるのではないかと、30代から頑張ったそうだ。


「まだ諦めてなかったんにゃ……」

「当たり前だしぃ! なんとしても、魔法の使える世界に行くしぃ!!」

「あんまりいいものじゃないにゃよ? みんにゃ生死を賭けて戦ってるんだからにゃ」

「絶対、行くしぃ!」


 カレンの決意は固そうなので、わしもそれ以上は口を挟めない。アマテラスの逆鱗に触れて、ヤバイ世界に飛ばされたらいい。というか、助言したらタライが降って来そうで怖いもん。

 とりあえず続きを聞いたら、ララとの出会いは還暦を過ぎてから。国境なき医師団で働いていたララが体力の限界を感じて日本に帰って、離島の診療医になってから出会ったそうだ。


「診療医もしんどいんじゃないにゃ?」

「ちょうど空飛ぶ車が手に入ったから、移動が楽になるかな~っと。私としては、島の中を移動するために使っていたのに、まさか島々に派遣されるとは思ってなかったわよ」

「お前がやり出したんにゃ……」

「そうなの。みんな、行けるんじゃない?とか、好き放題言って……」


 離島医療革命は、ララが島内の家に訪問する時は空を飛んで行っていたから「お隣の島に急患がいるらしいのよ~」と、ご近所さん感覚で言われたことが始まりらしい。

 さすがに遠いからララも渋ったらしいが、連絡してみたら緊急性が高いし外科医もいなかったから、まさに飛んで行って手術をしたそうだ。


「そもそもにゃんだけど、島の中を飛び回っても法律は大丈夫にゃの?」

「離島ならバレないと思ったのにな~。てへ」

「バレるに決まってるにゃろ!?」


 手術のことが病院に報告された上に、交通違反をしていたこともネタに使われて、離島医療改革のモデルケースになったんだって。


「そこで助手にやって来たのが、あちしってこと。ララたんのことは、ネットとかで見て尊敬してたから、ラッキーだったしぃ」

「本当にラッキーにゃ? 権力使わなかったにゃ??」

「つかっ……ちょっとだけだしぃ……ララちゃんネルのファンだったから……」

「そんな話、初めて聞いたわよ!?」


 ララとさほど歳の変わらないロートルのカレンが空飛ぶナースをやるなんて、よっぽどのことがないと叶わないとは思ったら、簡単にゲロッた。白猫党の神様には嘘がつけなかったみたいだね。

 しかし20年近くも一緒に働いていた人が自分のファンだったと知ったララは、今ごろ気持ち悪そうな顔をするのであったとさ。



 ララとカレンの出会いはわかったけど、2人でギャーギャー喧嘩してるので、わしはもう1人のギャルというかヤンキー、犬飼咲茉(エマ)と話をしてる。


「エマさんは、今日は遊びに来てるにゃ?」

「エマでいいって。ウチもこの島に住んでるんだ」

「てことは、ジュマルもにゃ?」

「ああ。今ごろ島の外周を走り回ってると思う」

「相変わらず猫のままにゃんだ~」

「あんたほど猫じゃないぞ?」


 確かにわしは猫半分で残りの成分は謎だけど、猫の心は持ち合わせていない。けど、そんな話はする必要ないのでジュマルのその後を聞いてみたら、世にあるスポーツを全て総ナメしたんだって。

 それが40歳で、暇だからってもう1周しようとしたら、個人競技のスポーツからは追い出されたらしい。


「もう1周するジュマルもジュマルにゃけど、スポーツ界はジュマルを欲しくにゃかったの? 有名選手なんにゃろ?」

「記録がな……人間には到底出せない記録ばっかだから、追い出されたんだ」

「ありゃりゃ。わしにはまったく勝てないのににゃ~」

「あんたよりは人間だからな?」


 団体競技は少なからずオファーがあったから、格安の値段でチームを渡り歩いたけど、出場回数は制限されていたんだとか。野球で言ったら、全打席ホームラン、完全試合みたいなことを毎日やられたらたまらないんだってさ。

 だからジュマルの記録は、殿堂入りというよりお蔵入り。それでも子供たちに夢を与えるヒーローとして、60歳まで世界中を飛び回っていたそうだ。


「もう人生何十周もできる金もあるし、夫婦でのんびりしようかと考えてる時にララが帰って来たから、一緒に島に移住したんだ。ここの暮らしはジュマルも気に入ってるぞ」

「いいにゃ~。わしも早く引退したいにゃ~」

「したらいいんじゃね?」

「それが王妃が働けってうるさいんにゃ~」


 エマはわしが千年も生きると知らなかったので愚痴を聞いてもらっていたら、ララが寿命をチクった上に「王様らしい仕事を一切しないから王妃から怒られているだけ」と極秘事項まで言いやがった。

 そのせいで、エマに「ララみたいに馬車馬の如く働けっ!」って怒られました。


「ちょっと~。馬車馬の如くって酷くな~い?」

「その言い方だと、あちしって馬? ウケるしぃ」


 その怒り方に引っ掛かったララとカレンは異議を唱えているが、わしも引っ掛かることがある。


「てか、まだ診療医やってるにゃ?」

「なに? 文句ある?」

「いや、もう80歳にゃのにご苦労だと思ってにゃ~」

「まっ! 失礼ね~。まだ80歳じゃありませ~ん」

「79歳は、もう80歳でよくにゃい?」

「「「よくない!!」」」


 女性はいくつになっても歳に敏感でした。たった1歳で、そこまで怒らなくてもいいのに……


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