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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴78年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。ポポルが鬼将軍って……ウサギの耳が2本の角に見えたのかな?


 猫歴77年に亡くなったポポルのお墓には、止め()なく現役や退役した軍人が花を手向けていたから、疑問に思っていることを聞いてみた。

 どうやらポポルは、軍人を教育する時にボコっていたそうだ。それでなんでこれほど慕われているかもわからないから追加で質問したら、それ以降は優しい上官だったんだって。


「それって……シラタマさんのせいじゃないですか?」

「にゃんで~?」

「ほら? ポポル君が調子に乗ってたからって、シラタマ殿がボコってたニャー」

「その後も調子に乗っていたら、心を折っていたじゃないですか?」

「いや、それは……そんにゃことしたかにゃ~??」

「「したにゃ~」」


 リータとメイバイに報告したところ、わしのせいにされた。記憶にないことにしたかったけど、確かにポポルが調子に乗ってわしをザコ扱いしたから、教育的指導をした記憶はある。

 なのでまた軍人から聞き取りをしてみたら、被害者は調子に乗っていたヤツばかり。わしと同じようにアメとムチを使い分けていたみたいだ。


「アメなんてあげてましたっけ?」

「あげてたにゃ~。たまにお酒奢って相談に乗ってたにゃ~」

「怪しいニャー!」


 たぶんあげてたはず。嫁さんの相談に乗ったし、猫軍の視察ってテイでお昼寝の隠れ(みの)に使ったこともあるもん。これは秘密だよ?



 猫歴77年はポポルのことぐらいしか目立った話はなかったし、徳川から発注された和楽器と工具も春ごろには納品できたので、久し振りにわしは暇な時間が多かったからお昼寝三昧。

 そんなことをしていたらあっという間に月日が流れ、猫歴78年の春になった。


 今年の目玉は、UFOのエネルギーが満タンになったから、約50年振りの異世界転移だ。


「にゃ? アレ……スマホが解約されてるにゃ……」


 第三世界にやって来たけど、いきなりトラブル発生。さすがに50年は時間を空け過ぎていたから、スマホのシムが使い物にならなくなっていたのだ。

 これでは天皇陛下に連絡が取れないので、UFOは迷彩機能を維持したままキャプテンベティに預けてわしはダイブ。公衆電話を探しまくったけど、ぜんぜん見付かりません。


 なので、皇居に忍び込んで廊下を普通に歩いてみた。


「ね、こ?」

「うんにゃ。久し振りに遊びに来たにゃ~」

「キャーーー! オバケ~~~!!」

「違うにゃ! 第四世界のシラタマ王にゃ~~~~!!」


 そしたらスタッフの女性に化け猫扱い。警備の人に銃まで向けられる始末。ここでも時間を空け過ぎた弊害。わしの存在じたいがユーマ扱いとなっていたので、天皇陛下に会うまでに時間が掛かるのであったとさ。



「いや~。まさかこんにゃことになるとはにゃ~」

「警備の者が無礼を働き申し訳ありませんでしたね。スマホも更新を忘れていたとは、ご迷惑をお掛けしました」


 わしの目の前には、50代ぐらいに見える天皇陛下、御年70代だったかな? 事情を説明したら謝りっぱなしなのでちょっとかわいそうだ。


「いいにゃいいにゃ。遅くなったもんにゃ~。てか、陛下は令和天皇の甥で、当時の皇太子殿下の息子で合ってるかにゃ?」

「はい。年老いてしまいましたけどね。シラタマ王に再びお会いできたこと、幸いでございます」

「それはお互い様にゃ。いや、陛下はまだまだお若いにゃ~」

「シラタマ王のほうが、お若い……のですか?」

「これでも80歳にゃ~。にゃははは」


 とりあえず再会の握手。年齢の話になると、お互いの容姿というかわしの姿では歳がサッパリわからないので、笑いが起こるのであった。



 ベティには1時間後に皇居上空に来るように言っておいたから、それまでは世間話。お互い聞きたいことが多いので、交互にこれまでの出来事を質問する。

 時間が来たら、天皇陛下は公務が立て込んでいるらしいのでタッチ交代。息子の皇太子殿下が入って来てめちゃくちゃガン見された。オッサンにガン見されるのは慣れていないので、なんか言ってください。


 皇太子殿下はわしと小さい時に会っていたらしいが、記憶にないから緊張していた模様。わしの肉球をプニプニしてにおいを嗅いでからはぺちゃくちゃ喋ってくれたけど、そんなので記憶が戻るのか?

 質問が多すぎたので遮り、外に出て2人で空に手を振っていたら、浮き上がって空に吸い込まれた。


「あわわわわわ」

「もう大丈夫にゃ。皇太子殿下、UFOにようこそにゃ~」

「「「「「ようこそにゃ~」」」」」


 もちろんそこにUFOがあったから。猫ファミリーも笑顔で出迎えてくれたのに、皇太子殿下は腰が砕けて立てそうにない。突然UFOにアブダクションされたらそうなるか。

 とりあえず宿泊場所の確保はもう2時間は掛かるらしいので、皇太子殿下のペラッペラのスマホを借りて動画サイトの皇室チャンネルに一緒に生出演だ。


『キャット、ビー、バックにゃ~。にゃはははは』


 わしの顔どアップから始まると、視聴者は100人未満。皇太子殿下と喋っている間もなかなか増えないなと思っていたら、2分後に爆発した。

 たぶん、最初から見ていた人はわしに驚いて固まっていたのだろう。復活した誰かが拡散して連鎖を繰り返したから、一気に視聴数が一千万人を超えたと思われる。


『まだ宿が整ってにゃいから、しばらく日本上空を飛んでるにゃ~。まずは北から行くからにゃ? UFOが見たい人は皇室チャンネルと主要都市の空を見ていてくれにゃ~』


 多くの人が気付いたら、まずはサービス。都道府県を移動して、UFOの姿を見せる。その間、皇室チャンネルの視聴者は増え過ぎて見れない人続出。

 世界中からアクセスが集中してしまったので、日本人は個人でやっている動画チャンネルやSNSでUFOを追い回す。


 日本を一周回って全ての都道府県を制覇したら、UFOは東京に戻ってホテルのヘリポートに着陸したのであった。



「しかし凄い人数ですね……」


 宿泊場所は、高級ホテルの最上階ワンフロア。スウィートルームでの宴会に出席した天皇陛下は、あんなに小さなUFOにこんなに入っていたのかと驚いてらっしゃる。

 今回は少ない人数での1週間を考えていたので「仕事で空ける」との嘘で乗り切ろうとしたけど、どこからか情報が漏れて猫ファミリー全員「行きた~~~い」と座り込みのストライキをされたから全員連れて来るしかなかったの。


 犯人はフユじゃろ? どこに盗聴器仕込んでたんじゃ!?


 猫ファミリー、嫁や婿も入れて総勢46人。そこに玉藻と家康とアンジェリーヌもついて来てるよ。

 こんなに多いので、ついにスサノオに「多いわっ!」って怒られました。「帰ったら覚えておけ」とか言われたけど、殺されませんように!!


「そっちこそ、仕事にゃいの?」

「全員、やってられるかとなったそうです……」


 天皇家は、うちの倍。現天皇陛下が4人の男子を授かり、女系も公務に当たれるように皇族に残れる制度になったらしいので、この50年で増殖しまくっているから後継者も心配ないそうだ。仕事は後日に回したんだって。


「そんじゃ、ま、今宵は語らいにゃすか」

「ええ。楽しい会にしましょう」


 楽しいのは、天皇家たちだけ。質問の嵐とモフモフの嵐となったので、猫ファミリーの若手とモフモフ組は、2時間ほどで自室に逃げて行ってインターネットを楽しむのであった。



 昨夜は遅くまで喋っていたので、翌日は10時頃から行動を開始する。わしと玉藻、家康とアンジェリーヌは挨拶程度の記者会見に出席し、残りは東京観光。

 来たことのある人もいるし護衛も大勢いるし、皇室の広報の人もいるから楽しく遊べるだろう。


 第三世界に来たのは3度目なので、質問は減るかと思ったけど時間を空けすぎたので止まる気配がない。ただ、売りたい物があるから、程々になったらわしの実演販売だ。


「こちらのガラス張りの箱に入った石は、水星から持ち帰った石にゃ。これだけじゃないにゃよ~? 水金、地火は飛んで木、土天界冥は行って来たにゃ。色んにゃサンプル持って帰って来たにゃよ~?」

「「「「「おお~」」」」」

「さらにこちらの映像は、太陽系を出た惑星で撮影した物にゃ。まだ宇宙人は見付かってにゃいけど、生物がいる惑星は何個か発見したにゃ~」

「「「「「おおおお~~~!!」」」」」

「これらはオークションでと言いたいところにゃけど、お金に困ってにゃいから、惑星ごとのサンプルを数ヵ国に1億円で売るにゃ。わしとしては宇宙技術が高いところから選べばいいと思うけど、決め方は任せるにゃ~」


 小説の売り上げがまだまだ残っているからの大盤振る舞い。と見せて、第四世界ではまだまだ研究者がいないから第三世界任せ。でも、働いた対価は貰うよ? 趣味で行ってただけじゃけど……

 今日は顔見せの記者会見なので、用意していた第三世界の資料を配ったら解散。わしは家電量販店などに足を運んで爆買いするのであった。


 アンジェリーヌさんは、化粧品買い過ぎじゃない? 新作コスメのためについて来たのか……



 夜になると天皇家がまた押し掛けて来たから、猫の国料理を並べて黙らせる。これが目的で来てるんじゃろ?

 静かになったところで、わしは天皇陛下と町並みの話をしてみる。


「しっかし、思ったより未来っぽくなってないんだにゃ。空飛ぶ車はどこに行ったにゃ?」

「フフフ。私も万博で見てからいつかできるモノだと思っていたのですが、エネルギーとコストの折り合いがつかなくて下火になりました」


 どうやら空飛ぶ車は、電気にしても石油にしても短時間しか飛べない代物らしい。それに騒音も酷いので、想定していた高度では近所迷惑になるとのこと。

 いまでは離島を行き来するぐらいしか使われてないんだって。


「せっかくの技術にゃのにもったいにゃい」

「それがなかなか使い勝手がいいんですよ。離島は医療問題がありましたけど、空飛ぶ車は自動運転ですから、医者と看護師ぐらいならまさに飛んで行けますからね」

「にゃるほど……操縦士いらずにゃら、そういう使い方もできるんにゃ。離島医療の革命だにゃ~」

「はい。その技術を使って車のほとんどが自動運転となりましたから、渋滞も事故もめっきり減りました。小規模な配達なんかはドローンを使うので、配達員の人手も減りましたね」

「そういえばにゃんかブンブン飛んでたにゃ。無駄にゃ技術ではなかったんだにゃ~」


 個人的には少年時代に夢見た未来になっていてほしかったが、一歩ずつ進んでいるなら止まらないでほしい。


「そういえば、第一世界は空飛ぶ車が主流だったみたいにゃけど、プロペラとかは使ってなかったのかにゃ?」

「第一世界……行ったのですか?」

「いや、時の賢者の話って覚えてるかにゃ? 千年前にうちの世界に異世界転生してたヤツにゃんだけど……」

「確かシラタマ王が質疑応答で言っていた人ですね。科学が二千年は進んでいる世界から来られたとかの。そういえば、あまり詳しくお話してなかったような……皆さん、シラタマ王のことでいっぱいいっぱいでしたからですかね」

「それもあるかもにゃ。にゃはは。まぁそいつの手記をわしは持っててにゃ。未来の記述は載ってたんにゃけど、ちょっとしかなかったからわしもどう飛んでたかはサッパリなんにゃ~」

「それは残念ですが、行けばいいだけですよね? 是非ともシラタマ王には、第一世界の技術を手に入れて第三世界に届けてほしいです」


 まだうちは第三世界の技術に近付いたところなので、第一世界はハードルが高い。


「そうだにゃ~……百年後にはにゃんとか」

「そんなに先ですか……」

「早く見たいにゃら、異世界転生したらいいにゃ。陛下にゃら、徳が高そうだから行けるんじゃないかにゃ~?」

「私なんか無理ですよ」

「そんにゃことないにゃよ? 陛下のおじさん、猫の国にいるからにゃ」

「……はい?」

「あ、失言だったにゃ。他言無用でお願いするにゃ~」


 天皇陛下は約束してくれたけど、ウロのことは知りたいらしいので写真を見せたら笑っていらした。ネコ耳付いてるもんね。


「ところで、父もそちらにおられるのでしょうか?」

「お父様は……先代陛下より若く亡くなったんだったよにゃ?」

「はい。先代より5年先でした」

「じゃあ、社会人やってるんじゃにゃい? 案外近くで見てるかもにゃ~」

「ということは、この世界に……」

「無様な姿は見せられないにゃ~。にゃはは」

「はい。よりいっそう振る舞いには気を付けないとなりませんね。フフフ」


 失言から天皇陛下は父親の思い出を語るので、わしは微笑ましく拝聴するのであった……


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