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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴75年その6にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。下ネタは嫌い……やっぱり場合によります。男だもん。


 巨大なサルみたいな体にちっさな頭を乗せているオーガと喋ってみたら、中身はオバチャン。ケンタウロス型のオーガのことが好きだったのか、下品な話になりそうだったのでわしは本題に戻す。


「名前が全員わかってよかったにゃ。いま、わしたちはオーガを探して旅してるんにゃけど、仲間の特徴と名前、覚えているだけでいいから教えてくれにゃい?」

「それを聞いてどうするの?」

「話が通じる人には、本人の意思を聞いて考えるにゃ。話が通じないにゃら、殺すつもりにゃ。それで救われることもあるかも知れないからにゃ~」


 オバチャンは鋭い目をしていたから怒ったのかと思ったが、最後の「救われる」発言を聞いて優しい顔に戻った。


「私もそう思う。オーガに志願した人はほとんど亡くなって、何も聞かされていない人のほうがオーガになった人が多いもの」

「オバチャンもその口にゃ?」

「あたしは半々ね。国のために働けるならと思ったけど、まさかこんな体になるとは知らなかったし……」

「騙されたんにゃ……」


 わしが哀れんだ顔をすると、オバチャンは首を横に振った。


「これでもいいこともあったのよ? こんなに巨乳になれたんだもの~」

「それ、筋肉じゃにゃい?」

「ちょっとは柔らかいわよ~? 揉む? 吸ってみる??」

「ご遠慮させていただきにゃす」


 わしが土下座してまで断ると、オバチャンはケラケラ笑っていたけど急に止まった。


「冗談よ。それよりさっき、アレクセイを殺したと言ったわよね? だったらあたしのことも殺してくれない??」

「にゃ? そんにゃにしっかり自分を持ってるにゃら、死ぬ必要はないんじゃないかにゃ?」

「もうね~。生き飽きたのよ。どれぐらい時間が過ぎたかわからないけど、ずっと1人だったのも悲しくってね~」

「ざっくり300年ってところにゃ。確かに辛い時間だっただろうにゃ。でも、取り戻せばいいだけにゃ。これからは、わしが寂しい思いをさせないにゃ~」

「うっ……」

「全員、退避にゃ~~~!!」


 わしがめっちゃいいことを言ったせいで、オバチャンはいまにも泣きそうだったから、わしたちは逃走。後方では、オバチャンの泣き声というより雄叫びが響き渡るのであった……



 オバチャンの雄叫びはなかなか終わらないので、しばらく離れたところでまったり。1時間も待たされて、とりあえずわしだけ犠牲になる。まだ泣く可能性があるから、皆はゆっくり戻って来るんだって。


「ゴメンね~。久し振りに優しくされたから、涙もろくなっちゃった」

「いいにゃいいにゃ。わしも数ヶ月だけど似たようにゃ経験あるから、ちょびっとは気持ちはわかるにゃ。それで~……これからどうしよっかにゃ? わしの国に来るにゃ?」

「こんな姿では……」


 オバチャンは自分の手や体を見て暗い顔になった。


「まぁみんにゃ驚くだろうけど、最初だけにゃ。我が家だって、変にゃ見た目の者が多いしにゃ~」

「そういえば、なんで毛皮着てるの?」

「オバチャンには言われたくないにゃ~」


 いまさらわしの見た目に言及して来たので、猫の国には獣の血が流れる者が多いと写真付きで説明してやった。ついでに隠していた身分も教えてあげたら、「ウソやね~ん」っと、なかなか信じてくれなかった。猫が王様してるもん。


「そんな国があるのはビックリね。長生きするもんだわ~」

「にゃろ? どうかにゃ?」

「有り難いお誘いだけど、やめとくわ」

「にゃんで~?」

「アレクセイと戦ったんなら知ってるでしょ。いつ私も自我を無くしてそうなるかわからないじゃない。あんな虐殺、二度としたくないもの」

「その言い方にゃと、ひょっとして……」

「あたしは、皇帝の命令で、自分の故郷の人を皆殺しにしたのよ」


 どうやら同郷の人は、帝国からの支援が少ないからと皇帝に楯突いてしまったらしい。さらに近くの町を防衛していたオバチャンに頼み込み、一緒に戦ってくれとお願いしたとのこと。

 オバチャンも故郷の現状を聞いて、味方に付こうとしたことが悪かった。皇帝の逆鱗に触れ、みずからの手で故郷を滅ぼすことになったらしい……


「だからね。いつも死ぬことを考えて生きていたの。でも、自殺は命令で禁止されているからできない。幸か不幸か、私より弱い獣しか現れなかったから今まで生き長らえちゃったの」


 こんな話を聞かされては、わしも覚悟を決める。


「もうちょっとだけ考えにゃい? これ、うちの国の紹介映像にゃ~」

「ナニコレ~~~! いっぱい人が歩いてる~~~!!」


 いや、生きる希望を探してみる。オバチャンは大画面テレビに映された映像に虜になって、ずっと「ナニコレ~~~!」と見続けるのであった。



 結局この日も泊まりになりそうだったので、オーガ探索は一時中断。帰りたい人を聞いて、キャットタワーに送る。

 残ったのは、わしと王妃の3人。オニタと双子。あとは玉藻と家康。残りはオバチャンとの話に飽きて、ゲームしたいとか言ってた。ここでもインターネット繋がってるからできるんだけどね。


 残ったわしはというと、大画面テレビに映像を流して、オバチャンと一緒に寝転んでながら見。猫の国だけでは少ないだろうと、わしが撮った世界中の映像も流す予定だ。

 2人でお茶やセンベイをボリボリし、たまにウトウトしていたら、わしは玉藻に首根っ子を掴まれてオバチャンから離された。


「にゃに~? テレビ見てたにゃ~」

「完全に寝ていたじゃろうが……まぁそれはいい。いったいそちが何を考えているか聞いておこうと思ってのう」


 わしがオバチャンと一緒に茶の間でくつろいでいるようにしか見えなかったから、皆も「こいつ、サボってやがんな?」と睨んでたんだって。


「聞いてたにゃろ? オバチャンが死にたがっていたから、世界の国々を見せて考え直そうとしているんにゃ」


 わしだって考えてやっているんだから、リータとメイバイも賛成みたい。


「やっぱりシラタマさんは優しいですね」

「私もオバチャンに死んでほしくないニャー」

「優しいかどうかは、オバチャンが決めることかにゃ~?」

「「どういうことにゃ~?」」

「ご老公……わしは優しいにゃ?」


 2人はわかっていないみたいなので、家康に答えを言ってもらう。


「すでに死を望んでいる者を生き長らえさせるなど、罰にしかならんじゃろう。侍なら、誇りを傷付けられたと怒るところじゃ」

「じゃな。故郷を滅ぼしたんじゃ。300年も悔やみ続けたのだから、一刻も早く楽にしてやるのも優しさじゃ」


 玉藻まで家康に乗っかると、リータたちは複雑な顔をする。どちらが正しいか、わからなくなってしまったのだ。


「そんにゃ顔するにゃ。答えを出すのはオバチャンにゃ。その答えを尊重したらいいだけにゃ」

「「はいにゃ……」」

「ま、オバチャンが気が済むまでわしが付き合うにゃ。みんにゃも好きにしてくれにゃ~」


 わしはテレビの操作で残らなくてはならないので、三ツ鳥居だけ設置してゴロゴロ。ここなら魔力濃度が高いから、猫の国側でコリスにでも魔力の補充をさせれば毎日何度も繋げられるからな。

 初日は全員残ってわしたちを見ていたけど、わしが屋根とかお昼寝しやすい空間を作ってからはずっとウトウトしているので、ほとんど呆れて帰って行った。誰か1人は残って、見張りはするらしいけど。わしの……



 わしがお昼寝生活をゲットして……オバチャンが世界中の映像を見始めてから1週間。この日は気付いたらわしとオバチャンしかいなかった。


 そんな日に限って、オバチャンは寝転んだまま決意を語る。


「みんな、幸せそうね」

「うんにゃ。笑顔が多いにゃ~」

「やっぱり、私はいらない存在だわ」

「そんにゃことないにゃ。うちに来ても仕事はあるにゃ。もしも暴走しても、わしが必ず止めてやるにゃ~」

「その言葉だけで充分よ。ありがとう。このテレビってのも楽しかったわ。世界中を旅した気分になれた。もう思い残すことはないわ。だって、世界はこんなに平和なんだもの」


 薄らと涙を浮かべるオバチャンの決意は固そうだ。


「それはよかったにゃ~。ちにゃみにどんな死に方が希望にゃ?」

「そうね……痛いのはイヤかな~?」

「難しい注文するにゃよ~。オーガの生命力、わしは痛いほど知ってるんにゃ~」

「ウフフ。頑張って」

「ま、やるだけやってみるにゃ。その前に、お別れパーティーだけやらせてくれにゃ」

「派手にやってね~」


 この日は準備があるからと言って、わしはリータに電話を掛けるのであった……



 オバチャンに過去の話を聞き、話忘れはないと確認が取れた翌日、オバチャンのリクエスト通り、猫ファミリーによるド派手な送別会が行われる。

 料理はベティ、エミリ、ニナが担当し、オバチャンの腹とコリスとリリスの腹に吸い込まれるけど、コリスとリリスは手加減してください。

 出し物は、後衛組の魔法花火と魔法アート。それと戦闘狂の殺し合い……だからね。オバチャンは平和主義だから、手加減してください。


 今日は仕事のないわしの子供や孫、嫁や婿も加わって、笑顔の絶えない会にしたかったのに、殺し合いなんてするから引いてます。

 それでもオバチャンは楽しそうにしていたから、まぁいっか。


 そろそろ頃合いとなると、猫クランメンバー以外の家族はオバチャンに別れの挨拶。握手だけでいいのに、オバチャンに抱きついたり肩に乗せてもらってから三ツ鳥居を潜る。

 これからやることはリータたちから聞いていたから、帰って行く者はオバチャンとわしに悲しい目を送っていた。


「さてと……やるとするにゃ」


 ここに残っているのは、オバチャンの死を見送ることを決めたメンバーだけ。わしは覚悟を決めて前に出たら、玉藻と家康がわしより前に出た。


「にゃ?」

「そちは優しいからな。(わらわ)が変わってやろう」

(わし)ならこれぐらいで心は痛まん。変わって進ぜよう」


 そんなことを言われても、わしにも譲れないものがある。


「有り難いけど、これだけは譲れないにゃ。オニヒメの記憶が戻った日から、この(ごう)はわしが背負うと決めてたんにゃ。オーガは全てわしの獲物にゃ。下がってろにゃ」


 そう。オニヒメの父親や阿修羅を殺したのはわしだ。ケンタウロスを殺す時には覚悟は決まっている。


「フッ……どうじゃ。妾の言った通りじゃろ? シラタマはそういう男じゃ」

「儂もわかっておった。シラタマは王の器じゃ。お主たちは、良い夫を持ったな」


 玉藻と家康は、振り向いてリータたちに声を掛けた。話から察するに2人がこの旅について来ていたのは、リータたちからわしの心の負担を減らすようにお願いされていたのだろう。

 わしはそのことを心の中で感謝していたら、2人に背中を叩かれてもう1歩前に出る。


「いい家族ね」

「うんにゃ。最高の家族と親友にゃ~」


 するとオバチャンに褒められたので、わしもニッコリと返した。


「最後に言い残すことはないにゃ?」

「そうね……名前を言ってなかったわね。お墓には、この名前を刻んで。ユシェンコフの子、セルゲイ・ユシェンコフ。これがあたしが人間だった頃の名前よ」

「わかったにゃ。セルゲイ・ユシェンコフだにゃ……ん?」

「ん??」

「「「「「んん~~~??」」」」」


 名前を聞いて、わしたち全員の頭にハテナマークが浮かんだ。


「にゃあ? その名前って、男の名前じゃにゃい??」

「そうだけど……」

「ずっと女だと思ってたにゃ~~~!!」

「「「「「うんうん」」」」」

「こ、心は女なのよ!!」


 まさか性別詐称していたとはこれっぽっちも思っていなかったから、わしの覚悟が揺らぎ、オバチャンとの別れはしばし中断するのであったとさ。



 それからオバチャンと話をしていたら、オニヒメから「角の移植は男じゃないと精神的に耐えられない」と聞いていたことを思い出し、女の心を持つオバチャンが実験で選ばれたのではないかという結論で落ち着いた。


「さて……今度こそお別れといこうかにゃ」


 突然生まれた謎も解消したら、わしは刀を抜きながらオバチャンに近付いた。


「ええ。ただし、上からの命令がいまも残っているから反撃はするわよ? オバチャン、めちゃくちゃ強いから頑張って」

「にゃはは。わしはもっと強いから心配するにゃ。一瞬で終わらせてやるから、最後の言葉は先に聞かせてくれにゃ」

「最後の言葉ね……ナメてんじゃないわよ!」


 オバチャンの声は怒っているけど顔はまったく違う顔をしているので、わしは怖くない。


「と、言いたいところだけど、短い間だったけど本当にありがとう。最後に楽しい思い出をくれてありがとう。あたしを殺してくれてありがとう。さよなら……」


 感謝の気持ちが顔から溢れているからだ。


「わしは猫の国の王、シラタマにゃ! 帝国はわしに滅ぼされ、猫帝国として生まれ変わったにゃ! 新皇帝から言い渡すにゃ! 長きに渡り、国を守ってくれて感謝するにゃ! その褒美に、永遠の休眠を与えるにゃ~~~!!」

「ウオオォォ~~~!!」


 わしはその気持ちを汲んで王として振る舞ってから歩き出し、オバチャンは呼応するように雄叫びをあげる。


「さよならにゃ~」


 次の瞬間にはオバチャンに巨大な炎の鳥が突っ込み、爆発して灰が舞い散るのであった……


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