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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴75年その4にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。ケンカの理由、つまんな。


 インホワ親子の仲違いの理由を知ったわしが騒いでいたら、メイバイママが出て来てシゲオに謝らせることに成功。そのおかげで、親子仲はちょっとは良くなったように見える。


「チッ……クソオヤジが……」


 でも、わしとインホワの仲はまた最悪に。ムリヤリ謝らせたのはメイバイなんだから、恨むならメイバイを恨めよ。わしが騒いだのが悪いって……逆恨みすんな!


 ケンカをしているのだから、狩りでの戦闘はわしには回って来ない。指示もインホワが出して、わしをハミゴにする始末。

 それでもオーガ探索は順調。見付かる気配はないが、猫クランの躍進で次々と候補地は消されて行く。


 オーガ探索開始から1ヶ月が過ぎた頃、東の国の真上辺りを超えたら、白い木の数が増えて森の景色が一変した。


「ここからが本番だにゃ~……わしが前に出るにゃ。異論は聞かんからにゃ」

「「「「「にゃっ!」」」」」


 わしの発言に、猫クランアンクルチームは真剣な顔で返事。玉藻と家康は笑うなら同じ返事するなよ。

 ミドルチームも数人は真剣な顔をしているけど、ヤングチームは全員ポカン。今までハミゴにされていたわしが偉そうにして、今まで上層部にいた面々が従っているから、この下克上が信じられないみたいだ。


「基本、わしが遊撃、玉藻とご老公は補佐にゃ。クランメンバーは若手が多いから防御陣形にゃ」

「「「「「にゃっ!」」」」」

「ナディちゃん、グリ君、シゲオは絶対に無理せず、自分のできることだけをやれにゃ。もしも守られない場合は、強制送還するから忘れるにゃよ?」

「「に、にゃっ!」」

「にゃ~す」

「……インホワ。シゲオから目を離すにゃ。もしもの場合は……わかってるにゃ?」

「おうにゃ!」


 ナディヂザとグリゴリーは微妙に遅れたが、このノリについて行こうと頑張ってるけど「はっ!」でもいいんじゃぞ?

 そんな中、シゲオだけふざけた返事を……わしの耳には全員ふざけた返事に聞こえるけど、その中でも一際ふざけた返事をしたから、インホワをお目付役に。皆まで言わなかったが、インホワはどうすればいいかわかっただろう。


「んじゃ、命を大事ににゃ。行くにゃ~~~!!」

「「「「「にゃ~~~!!」」」」」

「「「に、にゃ~」」」


 わしの号令で、猫クランは力強く動き出したのであった。


 若手はノリについて来れないなら言わなくもいいよ?



 ここからは本当に危険なので、わしもおふざけなし。探知魔法を遠くに飛ばして、獣の群れを確認しながら慎重に進む。

 玉藻と家康に相談してみたら、ここは思った通りイタリアに近い獣の分布になっていたので、縄張りも白い森を基準ではなく境界線が存在していた。


 だからできるだけ境界線上を進み、戦闘が必要ならば皆と相談。猫クランでも苦労しそうな獣も多いので、わし、玉藻、家康の最強チームで大物を蹴散らしてから、猫クランを投入。

 ザコでも白い獣クラスがゴロゴロ出て来るからの、超安全策。わししか相手できない獣が出た場合は、他は玉藻と家康に頑張ってもらいながら目的のオーガを探す予定だ。


 若手はわしがこんなに凄いのかと驚いていたのか、獣が強くて大きいからビビっているのか午前中は静かだったが、ランチを終えた頃には慣れて来て、シゲオが指示を無視して前に出てしまった。


「シゲオ! 出すぎにゃ! チッ……ニナ。援護してくれにゃ!!」

「うんにゃ!」


 シゲオを追うインホワ。しかし無情にも3匹の白い獣が襲い掛かり、シゲオは捌き切れずに今にもかぶりつかれそうになった……


「ジジイ……」


 シゲオが目を開けると、そこには右手の大剣で一匹の獣を抑え、左手と左足を噛り付かれたインホワの姿があった。


「ぐっ……にゃああぁぁ~~~!!」


 黒い鎧の関節部に牙が突き刺さり左半身から血が垂れるインホワは、大剣と体を無理矢理振り回し、3匹の獣を振り払うことに成功する。


「血が……」

「俺のことはいいにゃ! 下がれにゃ!!」

「でも……」

「いいから行けにゃ! 邪魔にゃ~~~!!」

「う、うんにゃ……」


 インホワの威圧に押されたシゲオは、真っ直ぐ安全地帯に走る。インホワはその場に残り、歯を食い縛って獣と戦いながら、ゆっくりと下がるのであった。



 戦闘じたいは大勝利。わしが獣を次元倉庫に片付けたら、しばらくこの場で休憩する。その時、インホワが怪我をしていたから、サクラの治療を受けているインホワにわしは近付いた。


「申し訳なかったにゃ!」

「もういいにゃ。気にするにゃ」


 そこではシゲオが頭を下げていたので、わしはシゲオの肩をポンッと叩く。


「ワンさん……」

「にゃんであの時、シゲオは隊列を乱して前に出たんにゃ? みんにゃ下がってたにゃろ?」

「下がってたにゃ? 押し返すように聞こえた気がするんにゃけど……」

「にゃるほど。獣の声と合わさって、聞こえづらかったんだにゃ。でも、もっと周りを見ていたら気付いたはずにゃ。あやふやに聞こえた時は、必ず誰かに聞けにゃ。わかったにゃ?」

「うんにゃ……」


 まずはシゲオから事情聴取したら、わしはインホワを睨んだ。


「わし、言ったよにゃ? シゲオから目を離すにゃと」

「ゴメンにゃさい……」

「……ま、体を張って守ったのは及第点にゃから、今回は許してやるにゃ。でも、次はないからにゃ? 同じ場面になったら、殴ってでもシゲオを引き戻せにゃ。わかったにゃ?」

「はいにゃ!」


 ちょっと叱ったら2人ともわかってくれたので、あとは2人にして話し合いをさせる。その風景を見れるところに腰を下ろしたわしがお茶を飲んでいたら、ナディヂザとグリゴリーが目の前に座った。


「にゃ?」

「先程の会話、変だったでおじゃる」

「どこが変だったにゃ?」

「まるで2人の動きを上から見ていたかのようでおじゃる」

「あぁ~……」


 わしはどう答えたモノかと考えた瞬間、玉藻が背後からわしの頭の上に大きなふたつの柔らかい物を乗せた。


「こやつ、シゲオのことが心配だからって、戦いながら見ておったのじゃ。いよいよの時には助けに行こうとしておったが、インホワが間に合いそうだったから我慢したんじゃ。な?」

「玉藻はわしばっかり見てにゃいで戦闘に集中しろにゃ~」

「そちの顔色がコロコロ変わるから見ていて楽しいのじゃ」

「ずっとポーカーフェイスにゃ~」

「噓つけ」


 玉藻に全部言われてしまったから恥ずかしい。


(おきな)はあんな大きな獣と戦いながら、周りを見る余裕があったでおじゃるか……」

「玉藻様まで余裕そうにしているでおじゃる。本当にどちらも化け物だったのでおじゃるな」

「「子供みたいな言い合いしているでおじゃるが……」」


 双子はそれを聞いて化け物を見る目になっていたけど「アホアホ」言い合うわしたちを見て生温い目に変わるのであった。



 ところ変わって、インホワとシゲオは気まずそうに近くに座っていた。


「まぁにゃんだ。目を離して悪かったにゃ。怖い思いをさせたのは、父さんが完全に悪いにゃ」

「いや。オレが周りを見てなかったのが悪いにゃ。そのせいで怪我させてゴメンにゃさい」

「こんにゃの掠り傷にゃ。父さん、けっこう頑丈なんにゃ。だから気にするにゃ。にゃ?」

「うんにゃ」


 インホワとシゲオ、この出来事で親子の距離が縮まる。ポンッと肩を叩かれたシゲオは、インホワの大きな背中に尊敬の念を抱くのであった……


「このアホキツネにゃ~」

「アホって言うほうがアホ猫なんじゃ」

「「アホアホ、アホアホ~」」


 わしと玉藻の程度の低すぎるケンカを見て、父としても祖父としても尊敬できないとため息が出る2人であったとさ。



 それからというもの、インホワとシゲオの仲は良くなったからいい傾向だろう。わしも猫クランのリーダーとして尊敬して見られていたはずだけど、ヤングチームから尊敬の眼差しが消えた。玉藻のせいだな。

 いま探索している場所は、魔力濃度が高すぎて白い木が多い地。これではオーガのいる場所が検討が付かないと言いたいところだが、阿修羅は建物があった場所にいたのだからそこに賭ける。


 衛星写真を下に、町がありそうな区間を探索しているから、アリスがアゲアゲ。なんか宝石を見付けたら悪魔でも取り憑いたかのような踊りをするから気持ち悪い。たぶんその宝石、たいした価値ないと思うよ?

 この世界の歴史と場所から察するに、この辺りは500年から800年前に森に飲み込まれたはず。アリスはそれを思い出して、残念そうな顔で宝石を自分の収納バッグに入れていた。山分けってルール覚えてる?


 アリスを注意しながら進んでいたら、猫クランアンクルチームとミドルチームもアゲアゲ。普段ここまで難易度の高い場所で狩りなんてしないから、嬉しいらしい。

 玉藻と家康もいつもよりテンション高いけど、ここの難易度はイタリアより低いから少し拍子抜けっぽい。わしが戦ってる獣を「寄越せ」と奪って行く始末。


 別にわしは戦闘狂ではないので、楽ができるに越したことはない。猫クランメンバーが危険に(おちい)らないように見張り、誰かが危ない場面には割って入る。本当は外から獣の群れを削りたかったけど、倒し過ぎるとみんな怒るの。

 そうこう進んでオーガ探索開始から2ヶ月が経った頃、町があったと思われる場所で、ついにわしの探知魔法にオーガらしき反応があった。


「探知魔法持ちの人、わかるかにゃ? わしが吸収魔法を使った時のようにゃ、ポッカリと空いた穴があるにゃろ? こいつがオーガにゃ」


 せっかくだから、軽くレクチャー。後衛組がウンウンと頷くのを見たら、オーガと接触するメンバーを決める。


「ナディちゃんとグリ君は動いてるところ見たいよにゃ~……」

「見たいでおじゃる!」

「すぐ戦闘になったら最悪見れないでおじゃる!」

「だよにゃ~……玉藻と御老公について来てもらおっかにゃ? 戦闘になったらわしが時間稼ぎするから、2人を連れて逃げてくれにゃ。戦いたかったら、そのあとにゃら譲るにゃ」

「「おう!」」

「んじゃ、気を引き締めて行こうにゃ~」


 メンバーが決まったらさっそく会いに行こうとしたけど、なんだかわしに既視感があるのでグリンッて振り返った。


「「「「「ギクッ!」」」」」


 そしたら猫クランメンバーが忍び足してやがった。


「やっぱりにゃ~。前も勝手について来て、戦いにくかったんにゃよ~。見たかったら、玉藻と御老公が戻ってからにしてくれにゃ~」


 そう。ケンタウロスの時に、当時の猫パーティは、わしが待機を指示したらいい返事をしてくれたのに全員ついて来てやがったのだ。

 今回は釘を刺したから大丈夫だと思うけど、わしは二度ほど勢いよく振り返るのであったとさ。


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