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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴75年その3にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。わしだって王様の仕事のひとつやふたつ……


「また工具作ってるの? ホント、物作り好きね~」

「マスターは工具メーカーに就職したんだよ~」 

「「キャハハハハ」」


 ない。せっせとせっせと黒魔鉱製の工具を作っていたら、ベティとノルンに笑われました。こんな似たような形の物、好きで作ってるワケじゃないのに……


(おきな)。そろそろいい季節じゃないでおじゃるか?」

「オーガ探索に行きたいでおじゃる~」


 わしがベティ&ノルンにキレていたら、ナディヂザとグリゴリーがやって来たので、そんな恥ずかしい姿は見せられない。わしはリータたちを呼んでもらったら、買い出しは任せて工具作り。納期に間に合うか微妙だもん。

 その後、工具作りの合間に、猫クラン活動再開。準備が整った出発前日の夜には、キャットタワーの大食堂で作戦会議だ。


「この地図にある、赤い丸を付けられた場所を片っ端から当たってみようと思うにゃ。もしも強い獣が出た場合に備えて、逃げる方向だけは頭に入れておいてくれにゃ」


 夏場に撮ったロシアの衛星写真をスクリーンに映して、わしのリーダーらしい発言。久し振りでも、皆は真面目にわしの話を聞いてくれている。一部は、わしがリーダーらしいことしてるから不思議そうにしてるけどね。

 大まかな話が終わったら、質問タイム。古代遺物大好き猫耳アリスが手を上げていたので当ててあげた。


「遺跡も探したいのですけど、ダメですか?」

「う~ん……ロシアの夏は短いからにゃ~……オーガ探索は地上から探す予定にゃから、道中を注意して見るってのはどうにゃろ? 人の痕跡を見付けたらマーキングして、空いた時間か来年に来ようにゃ」

「それで構いません! 私も遺跡地図を用意していますので、寄り道します!!」

「ぜんぜん構わなくにゃい?」


 アリスは後回しにしてくれなさそうなので、母親のサクラに「メッ!」と叱ってもらう。あとの質問にも答えたら、気になる人にも声を掛けてみよう。


「にゃんで玉藻と御老公が普通にいるにゃ?」


 そう。呼んでもいないのに玉藻と元狸将軍徳川家康が我が物顔で座っているし、わしがリーダーらしい発言をする度に2人でヒソヒソやるしニヤニヤするから、ずっと気になっていたのだ。


「少し前にリータから電話があってのう。ついて来ないかと誘われたんじゃ」

(わし)はメイバイからじゃ。腕が鳴るのう」

「にゃんで呼ぶんにゃ~~~」

「「まぁまぁまぁまぁ」」


 ここ最近、玉藻と絡んで酷い目にあっていたから、わしはしばらく顔を見たくない。家康も一緒。こないだ御所で行われた演奏会に出席していたので白い和楽器を見られてしまい「徳川にもお頼み申す!」と必死に頭を下げられたのだ。

 そんなの知らんがなとわしが断っていたら、リータが「製作依頼が立て込んでいるから来年以降でも構いませんか?」と受けてしまったの。


 たぶん徳川を呼んでいたのは、天皇家が自慢したかったのだろう。そんなことするから、わしの仕事が増えたんじゃからな。

 しかも、発注書を見たら、徳川方は知らない楽器が4種類あって数も2個増えたの! また修行からじゃ~~~!!


 怒りがぶり返したわしは「にゃ~にゃ~」玉藻と家康に文句ばっかり言いまくっていたから、リーダーから降格。気付いたら会議は終わっていたのであったとさ。



 翌日は予定通り、朝早くから猫帝国に移動して出発。リータとメイバイを先頭に、程良い感じの強さで割り振られて配置に就いた皆は走る。

 わしはリーダーだから、全員が見渡せる最後尾。バックアタックも注意しなくちゃいけない難しい位置だ。


「にゃあ? ワンさんが俺たちといるのは、新人のお目付役ってことにゃ?」

「そうにゃの……昨日までリーダーにゃったのに、どうしてこうなってるんにゃろ?」

「玉藻さんたちとつまらないケンカするからにゃ」

「翁は子供みたいなケンカしてたでごじゃる」

「家康公たちは大人対応してたでおじゃる」


 そう。わしはリーダーではなく新人を教育する教官に配置換え。シゲオもナディヂザもグリゴリーも辛辣(しんらつ)だ。これもそれも、玉藻と家康のせいじゃ!

 納得はいかないが、これ以上家長としての威厳が下がると困るので、教官を頑張る。久し振りの冒険にテンション上がっている面々にコソコソ交渉して、シゲオたち用の獲物もキープ。

 シゲオたちが疲れたら、猫型・大に戻って乗り物にもなってあげたから、威厳復活だ。


「ワンさん、雑用しかしてないにゃ~」

「本当に強いでおじゃる?」

「玉藻様と家康公のほうが怖いでおじゃるな」


 威厳、右肩下がり。1回も戦ってないもんね。戦おうとしたら「下がってろ!」って怒られてたもんね。威厳が復活する要素がひとつもないもんね……


「わし、本当に強いにゃよ? それはもう、全員束になっても適わないにゃよ? わしがみんにゃが敵わない獣を倒した話をしてあげたら、3人は尊敬した目で聞いてたにゃ~」

「気のせいじゃにゃい?」

「「気のせいでおじゃる」」

「してたにゃ~~~」


 あまりにも不甲斐なさすぎて、尊敬はなかったことに。この日は各所に斯く斯く云々と説明して、強い獣を融通してくれないかと頭を下げ続けたわしであったとさ。


 誰も譲ってくれなかったから、わしの弱さは確信に変わったよ……



 オーガ探索は日帰りでもできるけど、転移魔法を使うと魔力がもったいないので3日働いて1日休みのスパン。2日間野宿というか、強い(ぬし)がいる白い森の一角を間借りして、屋根お風呂トイレ食事有りの普通のお泊まり。

 オーガは白い森を根城にしていると思われるので、主を殺す必要はない。主を殺すとその辺一帯の獣が活発になって猫の国に被害が行くかもしれないから、よっぽど殺意があるヤツ以外は殺さないようにわしが交渉しているのだ。


「ちょっと戦ってもいいですか?」

「殺さないように気を付けるニャー!」

「交渉は上手くいったんにゃから、わざわざ怒らせないでくれにゃい?」


 でも、リータとメイバイ筆頭に猫クランは好戦的。体高30メートルはある白い獣に突っ込んで行ったよ。


「バアちゃんたち、よくあんなのと戦おうと思うにゃ……」

「だよにゃ~? わしのほうが正しいよにゃ~??」

「今回は翁に一票を入れるでおじゃる」

「平和が一番でおじゃるな」

「お茶が美味しいね~」


 新人のシゲオ、2年目の双子、遺跡以外あまり興味のないアリスだけは、わしの味方になってくれるのであったとさ。



 オーガ探索は3日働いたので、1日は完全休養日。わしは王様だから首相に電話……は、何かあったら向こうから掛けて来るからお昼寝。

 黒モフ組からも、事件もなく平和と聞いたので、休養を終えたら前回進んだ場所に転移してオーガ探索を再開する。すると、不服そうな顔をしたインホワがわしたちの下へやって来た。


「どうかしたにゃ?」

「ママがこっちの隊に入れってにゃ。前衛足りてないんにゃろ」

「いや、わしがやろうと思ってたんにゃけど……」


 けっこう西側まで来たから獣のレベルも上がっていたので、ようやく出番が来たとわしが指揮を取ろうと思っていたから、ここは譲れない。


「こっちは大丈夫にゃから、向こう行ってもいいにゃよ?」

「ママの指示が優先にゃ。文句あるにゃらママに言えにゃ~」

「ちょ、わしが最高責任者にゃ~」


 とは言ったモノの、メイバイたちに文句を言ってもモフられるだけなので、わしは抗議したように見せるだけ。怖いんです。

 トボトボ戻って来たらシゲオたちの目は気になるので「考えがあるみたい」と嘘をついて、オーガ探索に取り掛かる。


 今日も白い森を訪問して、オーガがいなければ別に移動。道案内アプリの音声を聞きながら迷うことなく進んで行く。


「アリスちゃんにゃ。どこ行こうとしてるにゃ?」

「あそこに遺跡がありまして……」

「アレはただの町跡にゃ」

「古い物は遺跡なんですよ~」

「サクラにチクるにゃよ?」

「そんにゃ~~~」


 遺跡オタクのアリスが自分から道に迷いに行くので、ちょくちょく止めるわし。マーキングしておいたから、今度2人で来ようね~?

 そう言っておけば、アリスもご満悦。孫とデートできるので、わしもご満悦だ。インホワは、その目をやめろ。誰が気持ち悪いんじゃ。


 そんな感じでのほほんと進んでいたけど、大規模な群れと遭遇。強い獣は玉藻と家康が相手している間に、他の獣は各隊で対応。

 わしの隊も囲まれているので、今度こそわしの出番だ。


「インホワ~。前に出すぎにゃ~。シゲオを置き去りにしてるにゃよ~?」

「わかってるにゃ! いま戻ろうとしていたところにゃ~!!」


 ただ、わしは新人の教官も兼ねているから、この程度のピンチはまだ口だけ。インホワは注意されると、大剣で獣を吹き飛ばしてから急いでシゲオの下へ。

 シゲオが相手取っていた2匹の獣も吹き飛ばしたら、隊列を合わせた。


「すまにゃい。シゲオに合わせるの忘れてたにゃ」

「……ザコ扱いするにゃよ」

「そんにゃこと思ってたら背中を預けるワケないにゃろ。それより次が来たにゃ! 立て直すにゃよ!!」

「チッ……」


 シゲオにはわしが教育していたから、嫌いなインホワの指示でも舌打ちしながらでも従う。わしは2人が協力して戦う姿を見ながら「これ、出番なさそうじゃね?」と肩を落とすのであった。



 それから数日、インホワとシゲオは口喧嘩はするが戦闘では協力して隊を支えているから、少し距離が近付いたように見える。なので本日の宿の白い森では食事の席で、わしはシゲオに感想を聞いてみる。


「インホワって、けっこう頼りになるにゃろ?」

「別に……」

「嘘だにゃ。あの日、インホワに助けられてから見る目が変わったにゃ。にゃんか思うことがあるんにゃろ?」


 シゲオは言いたく無さそうだったけど、焚き火のあるこのシチュエーションのせいか本心が漏れる。


「ジジイでも、謝ることができるんだにゃ~っと思って……」

「謝るにゃ?」

「うんにゃ。オレのプリンを食べた時も、ゲームのデータを間違って消した時も、逆ギレしてぜんぜん謝らなかったにゃ。初めて謝ってくれたにゃ……」

「ひょっとして……仲違いしてたの、インホワが謝ってくれなかったからにゃ?」

「それだけじゃにゃいけど……にゃにかとうるさいしにゃ~」

「にゃるほど……」


 2人が仲が悪いのは、ホント些末(さまつ)なこと。てか、100%インホワが悪い!


「インホワ! お前にゃ~。子供のプリンを勝手に食べておいて、にゃんで謝らないんにゃ!!」

「プリンにゃ? ……まだ根に持ってたにゃ!?」

「当たり前にゃろ! 食べ物の恨みは一生付き纏うにゃよ! いますぐ謝れにゃ!!」

「あとで2個買ってやったんにゃから、それで謝ったことになるにゃろ?」

「口に出せにゃ~~~!!」


 仲違いの理由は、ただのコミュニケーション不足。わしは教育的指導で叱り付けるが、そもそもインホワとの仲もよろしくないので、(かたく)なに拒否しやがるのであったとさ。


「ほら? インホワが悪いんにゃから、謝ろうニャー。ニャ?」

「ゴ、ゴメンにゃ」


 母親のメイバイが言ったらすぐ謝るってどゆこと? 怖いのですか。でしょうね……


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