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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴75年その2にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。黒歴史はない。と言いたい……


 インホワの息子、黒猫シゲオの猫クラン研修からわしの黒歴史をベティに引っ張り出されたから恥ずかしい。それに訓練を見てやってるシゲオは今もヤンキーファッションで黒歴史を作り続けているから、祖父としても恥ずかしい。

 とりあえずインホワをチョイチョイ呼んで、バットの素振りをしているシゲオを見ながら聞いてみる。


「あの服装はどう思ってるにゃ?」

「イヤに決まってるにゃろ~。でも、俺が言っても直さないんにゃ~」

「じゃあ、この写真をインホワに進呈するにゃ。どう使うかは自由にゃ~」

「写真にゃ? ……にゃふんっ!?」


 インホワ、反抗期時代の写真を見ただけでひっくり返る。

 わしとしてはインホワにダメージを与えるために出したワケではなく、ヤンキーファッションをやめさせるための秘密兵器に使ってもらおうと思ったんだよ? 勝手にやったら、絶対にキレるもん。


 わしがどう言ってもインホワは立ち直れそうになかったので、嫁さんに同じ写真を渡して慰めてもらうのであった……


「オヤジ~~~! 死ねにゃ~~~!!」


 でも、それはやってはいけなかったことみたい。嫁から「かわいいかわいい」撫でられたんだってさ。


「ちょっ! インホワ君、子供が親にそう言うこと言うのは、青少年の教育上よくないと思いますにゃ~~~!!」

「待てにゃ~~~!!」


 翌日にはキレて大剣を振り回すインホワに追い駆け回されるわしであったとさ。



 インホワとの仲は過去最悪になってしまったので、わしは袖の下を渡して許してもらう。反抗期時代の写真や動画をあげたから、何も言えなくなったとも言う。死ぬほど恨まれました。

 そんなわしたちを見ていたシゲオは、訓練に身が入らないみたいだ。


「にゃあ? 親子って殺し合うもんにゃの?」

「殺し合ってないにゃよ? じゃれ合ってただけにゃ~」

「あんな剣振り回してたんにゃから、じゃれ合いで済むわけないにゃろ」


 シゲオはわしの答えに納得いかないらしいので、こちらからも質問してみる。


「そっちこそ、にゃんでインホワを目の敵にしてるにゃ?」

「別に……ムカつく顔してるから……」

「それだったら、わしもムカつくにゃ? サクラやニナも似てるにゃよ?」

「ジジイの父さんたちは別に……」

「ま、そういうこともあるよにゃ。家族にゃもん。毎日顔を合わせている分、どうしてもつまらないことで腹が立ってしまうもんにゃ。その悩みは、シゲオだけのモノじゃないから心配するにゃ」


 わしがいいことを言ったら、シゲオの顔が少し柔らかくなった。悪口を言っていたから、説教でもされるのかと構えていたのかもしれない。


「てか、ジジイの父さんっての、やめてくんにゃい? わしまで嫌われてるみたいに聞こえるんにゃ~」

「じいさんだとジジイと被ってるから、言いにくいんにゃ」


 この機に思っていたことを言ってみたけど、シゲオの基準がよくわかりません。


「あだ名とかでもいいにゃよ?」

「じゃあ……猫??」

「シゲオも猫にゃろ~~~」


 あだ名も壊滅的。それはいつもわしたちが外で言われてるだけだ。

 結局この日は訓練そっちのけで、しっくり来るあだ名を考えるわしたちであった。



「ワンさん。そろそろ狩りに連れてってくれにゃ~」


 あだ名を考えた結果、わしの本当の職業「王」を中国語読みされて、世界のホームラン王みたいにシゲオから呼ばれるようになったので申し訳ない。


「まぁ実力面は問題ないんだけどにゃ~……武器は本当にそれで行くにゃ?」


 シゲオはいまだにバットを使っているから、わしがホームラン王ならシゲオは名前の通り巨人のスターかって話になるので、是非とも変えてほしい。

 というか、猫クラン加入時のオニタと比べたら腕力でかなり劣るから、バットより攻撃力が高い刃物を使ってほしいのだ。これでも真面目に考えてるんじゃよ?


「服装に似合っててカッコよくにゃい?」


 でも、シゲオには伝わっていないから、わしも最終手段だ。


「合ってはいるんだけどにゃ~……その基準にゃと、インホワと一緒にゃよ?」

「はあ!? ジジイとオレが一緒にゃと~~~!?」

「うんにゃ。アイツ、カッコイイからって、あんにゃ馬鹿デカイ剣を使って黒い鎧着てるんにゃもん」

「ジジイと一緒はイヤにゃ~~~!!」


 この際インホワを売ってでも、バットを禁止するわしであった。


「ちにゃみにワンさんは、にゃんで刀を使うようになったにゃ?」

「わしは……カッコイイからかにゃ?」

「みんにゃ同じにゃ~~~!!」


 男の子の基準なんてそんなもん。わしまで見た目で武器を選んでいたので、シゲオは悩みに悩み出したのであったとさ。



 シゲオの実力は猫クランの最低限には届いたけど、武器選びに難航。皆からもどんな基準で選んでいるのかと聞いてるけど、だいたいが「猫と一緒に考えた」だったので困っていた。わしの基準では信じられないみたい。

 そこでいつまで経ってもメイン武器が決まらないキアラに寄って行ったシゲオ。なんだか「アネキ、アネキ」と仲良くなってるな。キアラまでロングスカートのセイラー服着るなよ。戦いにくいじゃろ。かといってマイクロミニは禁止で~す。


 シゲオはキアラから武器を借りて決める模様。変わった武器が次々と出て来るけど、だいたいハートとかピンクなので持ちたく無さそうだな。

 それでもようやく決まったら、わしが戦闘のレクチャー。上手く使えるようになると、最終確認をする。


「まさか薙刀を選ぶとはにゃ~」

「これは薙刀じゃにゃくて、中国の武将が使う槍にゃ。刃が大きいにゃろ?」

「あぁ~。三国志に出て来そうにゃヤツ、キアラに作らされたにゃ~……ま、上手く使えているみたいにゃから、わしも合ってると思うにゃ。これで決定ってことでいいよにゃ?」

「うんにゃ。できたら、()の部分を尖らせて突きでも攻撃したいにゃ」

「それぐらいお安い御用にゃ~」


 シゲオの武器、三国志に出て来そうな槍に決定。わしは丹精込めて、二倍圧縮の黒魔鉱製の槍を作り上げるのであった。


「あと、刃の部分は龍の刻印とかできにゃい?」

「それは戦闘に必要にゃの??」


 まだまだヤンキー気質が抜けないシゲオであったとさ。



 猫クラン研修は、実地研修に移行。やや難易度の低い黒い森に転移して、まずは皆の虐殺風景を見せてシゲオのやる気を削ぐ。


「こんにゃ化け物といつも戦ってるんにゃ……」

「こんにゃのかわいいもんにゃ。この程度で恐れていたら、うちのクランではやっていけないにゃ~」

「こ、怖くないにゃ! 怖いのはバアちゃんたちだけにゃ!!」

「それが普通にゃ……」

「ワンさんもなんにゃ……」


 強がるシゲオの言葉にわしが同意したら、シゲオは強がったことを恥ずかしそうにしてる。笑うことの少ないイサベレすら、血を見て笑っている顔を見たら怖いよね~?

 気を取り直して、シゲオにちょうどよさそうな黒い獣をわしが運んで来たら、レディーゴー! かなり苦戦していたが、獣を殺すことには躊躇(ためら)いがなかったから、ハンターとしてやっていけそうだ。


 いちおうカウンセリングはして、実地研修を続けること数回。今回はシゲオを双子と組ませて、盾役としてチームプレイを学んでもらう。

 そんなことをしていたら、アダルトチームで狩りをしていたインホワが抜けてわしの所までやって来た。


「おお……シゲオのヤツ、頑張ってるにゃ……ちゃんとグリゴリーたちが攻撃しやすいように位置取りもできてるにゃ……」

「にゃはは。自分の子供が立派になった姿を見るのは、けっこう来るにゃろ?」

「うんにゃ。グスッ……アレで性格がよかったらにゃ~」

「それは親の姿を見て育ったからじゃないかにゃ~? 他の子は、みんにゃグレてないにゃろ?」

「俺のせいにゃの!?」


 ぶっちゃけ、同時期に生まれた孫は、みんな素直ないい子。ギョクロの子もナツの子もシラツユの子も、両親と仲が良く、大学を出てからは同じ職場に就職したもん。

 若干、ゲームとかパソコンに幼い頃から触れていたから、オタク気質が(はぐく)まれたように見えるけどね。


「ま、シゲオもインホワと同じ仕事を選んだんにゃから、真底嫌われているってワケじゃないにゃろ。インホワもわしのことが好きにゃから、この道を選んだんだからにゃ」

「俺はママのためにゃよ? 勘違いするにゃよ」

「そんにゃこと言って、照れちゃってにゃ~」

「そういうとこが嫌いなんにゃ! 今日こそ殺してやるにゃ~~~!!」


 シゲオを見て感動していたインホワ、わしの言葉で涙が引っ込む。今日の狩りも放棄して、わしに挑み続けるインホワであった。


「またやってるにゃ……」

「いいにゃろ~? 仲良しだもんにゃ~??」

「ゼェゼェ……死ねにゃ~~~!!」

「どう見ても、ジジイはワンさんを殺そうとしてるにゃよ?」


 それを呆れて見ているシゲオであったとさ。



 わしがインホワに命を狙われる日々が続いていたけど、夏前にはシゲオの猫クラン研修は終わった。

 その頃にはわしの和楽器修行も製造も終わったので、全てを持って御所に納品だ。玉藻には日時を伝えていたから、その日は雅楽(ががく)の演奏会を開いてくれると言うので、猫ファミリーで来たい人を誘ってやって来ている。


「「「「「おお~……」」」」」

「「「「「にゃあぁ~……」」」」」


 白い楽器で奏でられる雅楽は、天にも昇る気分。同席している公家たちは、涙ながらに拝んでいる。わしたち猫ファミリーも、意味もわからず手を合わせちゃってるよ。

 そんな中、皇族席に拉致られていたわしは悠方(ひさかた)天皇と喋っていた。


「素晴らしい楽器の数々、誠に感謝する」

「これも仕事にゃ。大金貰ってるんにゃから感謝する必要ないにゃ。どうしても礼を言いたいにゃら、わしの尻を叩き続けた玉藻に言えにゃ」

「フッ……お主は本当に、出会った頃と一切変わらないな。日ノ本の者がした無礼も笑って許し、(ちん)の願いもヤマタノオロチ討伐も、見返りを要求しなかった」

「やめてくれにゃ~」


 楽器の話から思い出話に変わり、チョイチョイ褒められるからわしも調子が狂う。そんな悠方天皇も褒めることがなくなると、また楽器の話に戻った。


「退位する前に、楽器を仕上げてくれて助かった。これで心残りはもうない」

「にゃ? 辞めちゃうにゃ??」

「自分で(そそのか)しておいてとぼけるな」

「いや~。もっと悩んで、死ぬまで決まらないと思っていたからにゃ~……」

「子に道を示すためには死んでられんからな」


 わしのボケを真面目な顔で返されたらどうしようもない。


「確か……5歳からやってるんだったかにゃ? 年端もいかぬ頃から74年も、この重き役割を果たしていた陛下に、わしは敬意を払うにゃ。お疲れ様にゃ~」

「シラタマこそ、まだまだその荷を下ろせないのだろう? 朕も敬意を払うと共に、いつまでも(すこ)やかにいることを祈っているぞ」


 今日はお互い喧嘩はなし。同じ君主どうしの苦労話をしていたが、玉藻が台無しにする。


「こやつに敬意なんて必要ないぞ。君主らしい仕事は、年に数回しかやっておらんからな」

「そ、それでも苦労は多いんにゃ~」

「話を聞いておったが、途中から陛下しか喋っておらんかったじゃないか。助けてやったんだから、感謝してほしいぐらいじゃ」

「それはありがとうございにゃした~」


 いや、本当に助かりました。なのでちゃんとお礼を言ったら、悠方天皇の冷たい目が痛い。玉藻様、いま一度助けてください。


「そうじゃそうじゃ。楽器は納品されたが、工具がまだじゃぞ。今年中には頼むからな」

「まだ作らにゃいといけないにゃ!? そんにゃことばっかりやらすから、王様の仕事ができないんにゃ~~~」


 そんな助け方ある? やっと終わったと思っていた仕事が続くのだから、わしの嘆きは止まらないのであった。


「逆じゃ逆。君主の仕事をしないから舞い込んで来るんじゃ」

「ホント、変わらないヤツだな……ハハハハ」


 呆れ返る玉藻と悠方天皇。しかし悠方天皇は、そんな変わらないわしが(うらや)ましいのか、雅楽が流れるなか多いに笑うのであった……


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