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猫王様の千年股旅  作者: ma-no
猫歴50年~

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猫歴74年その1にゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。侍の剣を極められるかは自信はない。


 猫歴73年は猫兄弟の猫クラン加入から懐かしい顔を思い出したので、この年はハンター活動初期の思い出話が多かった。

 というわけで、暇な日にわしは1人でお出掛け。東の国王都のハンターギルドに入り、「猫? 猫? 王様??」とか騒がしいハンターのド真ん中を抜けて、知り合いの受付嬢がいるカウンターに近付いた。


「エリーザ、久し振りにゃ~」

「お久し振りですね。買い取りは向こうですけど、ボケたのですか?」

「酷いにゃ~。まだまだハッキリしてるにゃ~」

「すいません。死んだお婆ちゃんより年上って聞いたので……」

「まぁ……ティーサの晩年は大変だったもんにゃ~」


 このエリーザという女性は、わしが初めてこのハンターギルドに来た時に、ハンター証の登録をしてくれたティーサという受付嬢の孫。なんだかんだあってこの道を選んだみたいなので、できるだけエリーザを選んで昔話なんかもしている仲だ。

 ティーサの晩年は認知症が酷かったので、ご家族も大変だった。その話を人伝に聞いたから訪ねたら、わしのことは完全に覚えていた。忘れるワケないよね~?


「でも、猫さんが来てからは、ほとんど治ったじゃないですか? もう、我が家は猫さんに足を向けて寝られませんよ~」

「もうちょっと早く訪ねてたら、記憶も失わなかったかも知れないのににゃ~」

「いえいえ。お婆ちゃんも、自分の子供や孫の顔も名前も覚えたまま死ねると、喜んで亡くなりましたもの」


 実は、認知症には治療法がある……わしの回復魔法だ。ティーサが子供の名前も思い出せないと泣いていたから、軽い気持ちで頭に回復魔法を試してみたら認知症の症状が止まったのだ。

 ただ、忘れてしまった記憶は思い出せないので、初期症状の時に使うことがベスト。しかし、忘れたならインプットすればいいだけ。写真や映像もあるのだから、幸せな思い出は完璧だ。


 夫が浮気して喧嘩したと書かれた日記が残っていたから、修羅場になってたけど……


 認知症の治療法は確立できたといっても、脳の知識と魔力量が物を言うから、1人で治療ができる者は猫の国でも極一部。

 わしとワンヂェン、猫クランのメンバーが半分ぐらい。あとはエルフ族の専門医、合わせて20人程度。他国は3人から5人掛かりでやっているらしい。

 年に2回は定期的に治療を受けないと認知症は進んでしまうので、完全に治療できたとは言えないが、患者や家族たちには救世主的な魔法となった。


 そのせいで白猫教が活気付いたけど……わしの名前で論文なんて発表するんじゃなかった~~~!!



「ところで、今日はどういったご用件で?」


 しばし思い出話をしていたが、わしの後ろに列ができていたのでエリーザは話を戻した。真後ろの女性ハンターたちは、わしの尻尾をニギニギしないでくれません?


「あ、そうだったにゃ。アーホノルドってヤツいるにゃろ? 話せる範囲でいいから、詳しく教えてくれにゃ~」


 どうやらアーホノルドは、このギルドの出世頭。あっという間にB級まで昇格し、A級もあと数年で手が届くのではないかと言われているとのこと。

 性格なんかも聞いてみたけど、品行方正、礼儀正しく女性に人気があると言われたけど、わしはまったく信じられない。


 なので、お茶してたら絡まれたことと、イサベレ親子を同時に口説いたことをチクって、ネガティブキャンペーンを頼む。あとはアーホノルドの活動なんかはたまに教えてくれたら有り難いとお願いして立ち去るわしであっ……


「何か売ってから帰ってください!」

「あ……にゃはは」


 でも、エリーザに尻尾をガシッと掴まれて、適当な獣を卸してから猫の国に帰るわしであった。



 猫の国に帰ってからも、わしの生活は変わらない。変わったことは、家でのお昼寝時間が増えたぐらい。

 そんな感じでダラダラ過ごしていたら猫歴74年になり、3月の後半に、日ノ本に留学していたナディヂザとグリゴリーが帰って来た。


 時の流れが早すぎて忘れている方もおられるでしょうが、この2人はオニタとアリーチェの娘と息子。生まれる前に、死の危険があった双子だ。

 ナディヂザとグリゴリーは未熟児で生まれたせいか、アリーチェやオニヒメに似たのか、背が低くて白髪の双子。かわいらしい顔には似つかわしくない角がおでこから一本伸びている。


 何故、日ノ本に留学していたかというと、鬼のルーツを学びたいと言うから。猫大のほうが都市伝説の本がいっぱいあるから民俗学ってテイで勧めたけど、本場がいいんだとか。

 泣く泣くわしは送り出した。オニタとアリーチェは、もう1人の娘に手を焼いていたからそこまで止めなかったの。わしだけ反対してるみたいじゃろうが……


 ただし、この2人は猫の国の王族。何かあっては死んでも死にきれないから、玉藻に「おでぇかん様~。おねげぇしますだ~」と土下座で頼み込んで身元引受人になってもらった。天皇家の客人なら、誰も手が出せないからな。


 ナディヂザとグリゴリーは、4年間、日ノ本で民俗学を学んだ結果……


「「(おきな)。ただいま戻りましたでごじゃる~」」


 なんか胡散臭い公家みたいになって帰って来たのであったとさ。



「まぁ……おかえりにゃ」


 ぶっちゃけ言うと、暇な時にちょくちょく会いに行っていたから、双子が公家みたいになっていたのは知ってる。日に日に公家っぽい服装やメイクや口調になって行くから、玉藻にどうしてかと質問もした。

 双子は京大学に入学してから日ノ本の歴史を学んでいたけど、その先生がゴリッゴリの公家口調だったのだ。さらに公家が多く働く屋敷で寝食を共にしていたから、移ってしまったと玉藻も半笑いで言ってた。


「それで~……京大学は卒業したんにゃから、働かないとにゃ~……猫大に民俗学部でも作って、そこの講師になるにゃ?」


 まだ猫大にはそんな学問はなかったので持って来いかとわしは勧めてみたけど、双子にはやりたい職業があるらしい。


「麻呂たちは猫クランに入りたいでおじゃる」

「そのために、玉藻様から式神を習っていたでおじゃる」

「にゃ? 玉藻からそんにゃ話聞いてないんにゃけど……」

「翁たちを驚かせたかったでおじゃる」

「どうぞよしなにお願いでごじゃる」


 双子からも玉藻からもそんな話は一切聞いてなかったので、オニタ夫婦にも意見を聞いてみる。


「オニタはどう思うにゃ?」

「俺は……子供と一緒に戦えるのは楽しみだ」

「アリーチェもにゃ?」

「戦いたいなら好きにしたらいい」

「ムゥ……ま、向き不向きもあるから、研修をしてからだにゃ。とりあえず数日ゆっくりしてから、いまの実力を見させてもらうにゃ~」


 わしとしては曾孫に危険な仕事はしてほしくないけど、オニタ夫婦が止めないのではゴネるワケにはいかない。今日のところは「おかえりパーティー」をして、双子の帰還を祝うのであった。



 数日後、猫クランの訓練日にナディヂザとグリゴリーを連れてソウの地下空洞にやって来た。いつも通り教官はわしだけど、式神を使うらしいので同じ式神使いのサクラに補助をしてもらう。


「う~ん……日ノ本の神職レベルだにゃ」

「うんにゃ。うちでやるには、ちょっと時間掛かるにゃ~」

「ま、式神も難しい魔法にゃし、才能がないワケではないにゃろ」


 いくら玉藻から習っていても、猫の国では戦闘の英才教育をして来なかったのだから、一般人に毛が生えた程度。次は運動能力を見てみる。


「うんにゃ。普通だにゃ。誰かさんと比べたら、雲泥の差にゃ~」

「「ホント、すいません……」」

「にゃ!? リータとアリスに言ったんじゃにゃいからにゃ? ハンターギルドにいたアイツのことにゃ~」


 ナディヂザたちが走っている姿を見てわしが呟いたら、いつの間にかリータとアリスが隣に立っていたので超言い訳。誰かさんとは、完全にアリスを指してたんだから、リータは暗い顔しなくていいよ~?


「よしにゃ。まずは基礎的にゃことからやって、徐々に魔法の訓練を増やして行くからにゃ。それでもわしの訓練は甘いから、頑張ってついて来るんにゃよ~?」

「「はっ! ……甘いでおじゃる?」」

「パパが毎回そんにゃこと言うから、始まる前にやる気が削がれるんにゃ~」


 ナディヂザとグリゴリーの猫クラン研修は、いい返事と首を傾げるのはマスト。それをツッコむサクラの声でゆる~っく始まるのであった。



 ナディヂザたちの体力アップは、アリスと違って簡単。ただ、去年は猫兄弟の研修があったから少しハードになっていたので、双子は毎日倒れて眠る毎日。

 それでも双子は泣き言いわずについて来ているし、そもそも後衛希望者なので、最低限の体力がついたらサクラの出番だ。


「そうにゃそうにゃ。上手いにゃ~」

「にゃかにゃか才能あるにゃ~。いや、玉藻のおかげかにゃ?」


 あっという間に折り鶴5羽を不規則に飛ばせるようになったので、わしたちは拍手。オニタは鬼の目にも涙だ。


「母さん……母さんそっくりの魔法だ……うおおぉぉ~~~!!」


 どうやら双子の姿がオニヒメの姿に重なったから大泣きしてるっぽい。わしとしては、公家装束を脱がないから陰陽師にしか見えないので微妙な顔。

 とりあえずオニタを慰めたら、訓練メニューは徐々に激しくして、ある程度の実力になったら装備を決めて行こう。


「2人はその服、気に入ってるにゃ?」

「そうでおじゃる」

「似合っているでおじゃる」

「まぁ似合ってるんだけどにゃ~……」

「「いま、倒される側とか思ったでおじゃるな?」」

「思ってないにゃ~」


 ちょっと顔に出てバレてしまったけど、双子は玉藻たちに言われていたからそんなやり取りは慣れっこらしい。いつも「鬼が陰陽師なら最強でおじゃる」と反論してたんだってさ。

 別に双子は後衛だから、動きに阻害されないのなら格好を非難するつもりはない。ただ、日ノ本の着物では防御力が乏しいので、大蚕(おおかいこ)の糸とわしの抜け毛を編み込んだ生地で新調してやろう。


 ちなみにわしの抜け毛は皆の装備にも使われていて、防御力は半端なく上がるから使われてるんだよ?

 わしはそんなストーカーみたいな装備は反対したとだけ言っておく。サクラとシリエージョに「キモッ」って言われて泣いたとだけは言わせてくれ……

 ちなみにちなみに、猫兄弟たちのような四つ足組には、白銀猫の抜け毛で作ったマフラーで首だけはガードしている。わしの抜け毛がイヤと言われたワケじゃなく、普通にかわいい服を着てくれないからだ。


「武器は~……どっちかお婆ちゃんの形見の扇を使うにゃ? オニタも喜んで貸してくれるにゃろ」

「麻呂は龍笛(りゅうてき)を武器にしたいと考えているでおじゃる」

「リュウテキ……にゃにそれ?」

雅楽(ががく)で使う横笛の一種でおじゃる」

「横笛にゃら吹く物じゃにゃいかにゃ~?」


 グリゴリーは楽器を武器にしたいみたいなので意味不明。ナディヂザはもっと意味不明だ。


「翁、(わらわ)は頑丈な(そう)を所望するでおじゃる」

「うんにゃ。専門用語で言われてもわらないにゃ~」

「琴みたいな物でおじゃる」

「琴にゃ? 琴は奏でる物じゃにゃいかにゃ~??」

「「お願いでおじゃるぅぅ」」

「ま、まぁ……やってみるにゃ……」


 横笛なら棒として使えないことはないけど、琴は置いて使う物じゃもん。しかし曾孫にも甘いわしは、四苦八苦しながら楽器を製造するのであった。


「やっぱり武器に見えないよにゃ?」

「「「「「うんにゃ~」」」」」


 わしだけおかしいのかと思って皆にも現物を見せてあげたら、激しく同意してくれるのであったとさ。


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