第5話 アリスと動物たちの楽園
ある週末の日、アリスは横中にある動物園を訪れている。
「数多くの動物たちと触れ合うことができる『よこなかアニマルパーク』、一回行ってみたかったのです」
気持ちを昂りつつアニマルパークの中に入るアリス。
だが、そこで見た光景は、想像もしていないものであった。
「こんなアニマルパーク、見たことがありません…」
ゴミが散らかされており、看板に落書きも散見されるというあまりにも衝撃的な園内に、アリスは思わず言葉を失ってしまった。
「誰がこんなことをしたのですか!?」
「俺だよ、俺」
すると、アリスの目の前に謎の男が現れた。
「アニマルパークはもうとっくに俺のもの!さあ、ゴミをまき散らすぞ!」
「ちょっと待ってください!」
「何だと!?」
ゴミ箱を投げようとする謎の男を、アリスは差し押さえようとする。
「どうしてもアニマルパークを返したいのかい?ならば、自己紹介しよう。俺の名前は、オートラル・ウェスタ―。四天王の一人だ」
謎の男が黒いマントと仮面をとる。その正体は、ネメシス財団の幹部の一人であるウェスタ―だった。
「アニマルパークを取り返したいのであれば、俺と勝負してみろ!」
「わかりました!では、受けて立ちます!」
ウェスタ―の突然の誘いに、アリスはきっぱりと答える。
「では、行きます」
アリスは、プリンセスミラーでシトラスイエローに変身する。
「イエロー・ジュエル・パワー!ドレスアップ!」
アリスを黄色の光が包む。
「花のプリンセス・シトラスイエロー、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
シトラスイエローが現れたその時、ウェスタ―は空っぽのペットボトルを投げようとする。
「よっしゃ、いくで!」
その時、シトラスイエローはオーストラリア大陸に住んでいる動物たちのエリアにいた。説明しよう。現在のオーストラリア大陸の位置は中緯度高圧帯の付近にあり、特に冬季はほぼ直下に当たるため、概ね乾燥した気候となっている。さらに、大陸の最東部に大分水嶺山脈があり、太平洋から水分を含んだ空気はここで大量の雨を降らして水分を失うため、その西には乾いた風を吹き降ろすこととなり、大陸中央部はさらに乾燥している。この結果、沙漠気候が約3割、ステップ気候も含めた乾燥地帯は5割を超える。しかし、大分水嶺山脈に降った雨は地下水となって山脈西部へも流れ下っているので、気候は乾燥しているものの、地下水を汲み上げることで牧畜などを行うことも可能である。なお、大陸の西部は大半が乾燥した沙漠や荒野で、人口のほとんどは比較的降雨のある海岸部の都市周辺に分布している。オーストラリア大陸には大分水嶺山脈のような山地も見られるものの、全体として浸食の進んだ平坦な大陸であり、オーストラリア大陸の最高峰は、大分水嶺山脈に存在する、標高2228mのコジオスコである。そして中部からは西部には極めて古く安定したオーストラリア盾状地が位置する。さらにごく一部ながらピルバラクラトンのような20億年以上も前に形成された岩石が残っている部分も存在する。太平洋沿岸のサンゴ礁「グレートバリアリーフ」や、浸食によって形成されたウルルなど、世界的な観光名所も多い。
「哺乳綱オポッサム目コアラ科コアラ属に分類される有袋類のコアラとカンガルー科 に分類されるカンガルーって、知っていますか?」
「そんなもん、知らないぞ」
「コアラは体色は背面が灰色で、腹面が白色、体長は約65cm-82cm、体重は約4kg-15kgです。オーストラリア北部に生息するコアラよりも南部に生息するコアラの方が、体が大きく体毛の長さも長いのです。タンニンや油分を多く含むユーカリの葉を好んで食べます。歩くときは稀にあり4足歩行であります。カンガルーはオーストラリア大陸、タスマニア島、ニューギニア島に生息しています。大型のカンガルー、小型のワラビー、樹上性のキノボリカンガルーなどがいますが、同じカンガルー属にオオカンガルーもアカクビワラビーも中間サイズのワラルーもおり、大型カンガルーとワラビーの区別は分類学的なものではありません。ともにオーストラリアに生息している生き物です。しかしながら、今は絶滅の危機に瀕しています」
シトラスイエローがウェスタ―にこう訴えると、別のところへと移動する。
そこは、南極のエリアだった。説明しよう。南極大陸は、地球の最も南にあり、南極点を含む大陸である。南半球の南極地方にあり、南氷洋に囲まれた南極圏に位置する。5番目に大きな大陸であり約1400万km2の面積は、オーストラリア大陸のほぼ2倍に相当する。約98%は氷で覆われ、その厚さは平均2.00325kmに及ぶ。南極大陸は、平均気温が最も低く、乾燥し、強風に晒され、また平均海抜も最も高い大陸である。年間降水量が海岸部分で200mm、内陸ではさらに少ない砂漠と考えられる。南極大陸で観測された最低気温は、2018年7月に記録した-97.8°Cである。この気温では人間が定住することは難しいが、約1000-5000人が大陸中に点在する研究所に年間を通して滞在している。自然状態では、寒冷な環境に適応可能な生物のみが生存し、多くの藻類、ダニ・線虫やペンギン・鰭脚類・節足動物などの動物類、バクテリア、菌類、植物および原生生物が繁殖している。植生はツンドラである。かつて、「南の地」を意味するテラ・アウストラリス (Terra Australis) という大陸が空想されていた南極域に、公式に大陸が存在する事が確認されたのは1820年にロシアの探検家ファビアン・ゴットリープ・フォン・ベリングスハウゼンとミハイル・ラザレフがボストーク号とミールヌイ号(en)で行った遠征に端を発する。しかし、厳しい自然環境や、当時は資源が見つからなかった事、そして孤立的な地理条件から、19世紀中はほとんど注目されなかった。1959年、12ヶ国の批准で始まった南極条約は、その後加盟国が49にまで増えた。条約は、軍事的活動や鉱物採掘、核爆発や核廃棄物の発生、各国家による領域主権の主張を禁止し、科学的研究の支援と生物地理区としての保護を定めた。多くの国から派遣された科学者たちが、研究や実験を行っている。
「鳥綱ペンギン目に属するペンギンとアザラシ科ゴマフアザラシ属に属する海棲哺乳類のゴマフアザラシのいる南極の氷が溶けているようです。しかも、面積も減っていることを」
「なっ、なっ、なぬっ!?」
「地球温暖化の影響です。気候変動の一部で、地球表面の大気や海洋の年間の平均気温が上昇する現象で、生態系に悪影響を及ぼすのです。イギリスで起きた産業革命から化石燃料を大量に使用することで、大気圏にあって、地表から放射された赤外線の一部を吸収することにより、温室効果をもたらす気体の温室効果ガスの増加が加速しました」
シトラスイエローがウェスタ―に説得すると、広場へと戻る。
そこには、アニマルパークで飼育されている動物たちがいた。
「みんな、この空の下で過ごしています。サルも、タヌキも、キツネも、ウサギも、ネズミも、クマも、イノシシも、オコジョも、カモも、スズメも、アヒルも、クジャクも、パンダも、カメも、シロクマも、ムクムクも…。そう、私たちは動物たちを守らなければなりません。たった一度しかない小さな命を大切にするために」
シトラスイエローの熱意を込めた発言に、
「こんなことがあるのか…。そりゃ、知らなかった…」
ウェスタ―は涙を流した。
「今がチャンスです」
シトラスイエローはプリンセスミラーにシトリンのマジカルストーンをセットする。その力をプリンセスバトンロッドに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
シトラスイエローによるウェスタ―の撃退がはじまった。
「花が咲いて 鳥も鳴いたら」
「あたたかな季節がはじまる」
「たんぽぽの綿毛が」
「飛んでいかないうちに」
「風が吹いて 月も光ると」
「一日の終わり」
「光に照らされていく」
「黄色の菊が」
「はちみつ色の日々」
「私の人生は」
「甘くてほんのり」
「味を感じるの」
「Honey Days」
「It’s a Wonderful Life」
「シトリンの輝きでパワーアップ!乙女の勇気!シトリン・フローラル・セラピー!」
シトラスイエローがオレンジ色の花を描き、ウェスタ―に向かって放つ。すると、ウェスタ―は混乱状態に陥った。
「そこまでです」
「何だとっ!?」
今度は、トパーズのマジカルストーンをセットして、ウェスタ―が持っている闇の力の浄化に挑む。
「得意なことより」
「好きなことがいい」
「だけど」
「遊びもいいけど」
「学びもきちんとね」
「時にはきっと苦しい」
「命って尊い」
「すべてを受け止めて」
「歩みを止めない」
「そう 人生は一筆書き」
「真っ白なキャンバスに」
「どんなふうに描こうかな」
「パパとママと先生も」
「おじいちゃんおばあちゃんも」
「そして 子供たちも」
「みんな同じ」
「世界の中に」
「暮らしているよ」
「個性を生かしながら…」
「トパーズの輝きでパワーアップ!乙女の勇気!トパーズ・フローラル・セラピー!」
シトラスイエローがレモンイエローの花を描き、ウェスタ―に向かって放つ。すると、ウェスタ―はみるみる力を失っていき、ペンダントとして身に着けていた闇の石が粉々に砕けた。
「ちゅ、ちゅ、ちゅっぴー!」
とチララは闇の石から出てきたマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とチララがマジカルストーンを回収することに成功した。それをアリスのプリンセスミラーに認識して、
「ちゅちゅ!これは、ロイヤルクリスタル・イエロー!強い力を持つプリンセスジュエルだ!」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
シトラスイエローが勝利宣言する一方で、
「我がネメシス財団の人生に、一片の悔いもありません…」
ウェスタ―が倒れようとしたところを現場に駆け付けた警察にとらえられ、そのまま現行犯で逮捕された。
「ぞうさん」
「ぞうさん」
「お鼻が 長いのね」
「そうよ」
「母さんも 長いのよ」
「ぞうさん」
「ぞうさん」
「誰が 好きなの」
「あのね」
「母さんが 好きなのよ」
その後、アニマルパークはいつもの光景を取り戻した。
「ここに行ってみます」
すると、アリスはある場所に向かう。
「短い尻尾に丸い体つき…。夏は褐色の羽に冬は白い羽…。それこそキジ目キジ科ライチョウ属に分類される鳥類のライチョウなのです!夏場を中心とした季節には高山帯で生活をしていますが、気温が激しく低下する冬場においては、亜高山帯まで移動します。英語圏では、冬に白い羽となるライチョウ属の種をPtarmigan、羽の色を変化させない種はGrouseと呼び区別されます」
そこは、人工飼育しているライチョウを展示している場所だった。
そこに、飼育員が現れる。
「アニマルパークを危機から救ってくれて、本当にありがとう」
「どういたしまして」
「このライチョウは、白銀山脈で産んだ卵を人工ふ化して僕たちの手で育てているんだよ。富山県・長野県・岐阜県の県鳥に指定されているからね」
飼育員はアリスに、アニマルパークのライチョウについて語る。
そのうえで、
「ライチョウは国の特別天然記念物で絶滅危惧種にも指定されているんだ」
「本当なんでしょうか?あのライチョウが絶滅の危機に立たされているなんて」
「そう。白銀山脈や中部地方の高山地域をはじめとするアルプスの地域にライチョウは生息しているんだけれども、国が総力を挙げて徹底して保護しなければならない。ネコ科ベンガルヤマネコ属に分類される、ベンガルヤマネコの亜種であるイリオモテヤマネコや有尾目オオサンショウウオ科オオサンショウウオ属に分類される有尾類であるオオサンショウウオ、ペリカン目トキ科トキ属に分類される鳥類のトキもそんな感じだよ」
と、世界の動物が絶滅してしまうかもしれないという話を飼育員は語る。
その言葉を聞いたアリスは、
「守りたい、大切なものを」
と決意を新たにするのであった。
一方その頃、プラチナの家では、カレンとチャミィがプラチナのことについて語っている。
「王子…、いや、お兄ちゃんの帰りはいつになるの?」
「そりゃ、分からない。王子は横中とおとぎの世界を行ったり来たりしている。光の女神にプリンセスドールズと人間界の現状について報告をすることが主な目的だからね」
そして、アリスがロイヤルクリスタル・イエローを手に入れ、残るロイヤルクリスタルはピンクとブルーだけとなった。だが、チャミィはこう語る。
「もし仮にロイヤルクリスタルをすべて揃えたとしても、プリンセスドールズとネメシス財団との戦いはより一層激しくなる。今日も、新たなる脅威が生み出されたのだろう。次なる戦いの時は刻一刻と近づいている」
としたうえで、カレンは、
「私もプリンセスドールズの一員として頑張らなくちゃ。だって、おとぎの世界の次の女王候補は私なんだから」
と語る。
以前、プリンセスドールズがダイヤモンドのマジカルストーンとパールのマジカルストーンをネメシス財団の手から取り戻したことをチャミィは引き合いに出し、
「いつ発表会が行われるかはわからない。横中は世界でも有数の国際都市だから」
とさらなる脅威を警戒するのであった。
その頃、2120年の横中にあるネメシス財団の本社ビルでは、ドクターはあることを企んでいた。
「ものすごい責任を感じている。ノーザとウェスタ―が国際警察に身柄を確保されたのか…。残すはあと二人となってしまった」
と嘆きつつ、
「もし幹部四人全員を倒したとすれば、新たなる脅威を送り込む。場所は前と同じ2020年の横中だ」
と何かを予告するのであった。




