第20話 けやきの道のガンマのレストラン
ある夜の晴斗の家では、広島にいるプラチナとパソコンを通して電話をしている。説明しよう。広島県は、広島都市圏と備後都市圏を中心に工業・商業が盛んである。県庁所在地の広島市は中国・四国地方最大の都市であり、政令指定都市に指定されている。一方で海・山の豊富な自然にも恵まれ、農業・漁業も盛んである。このため「日本国の縮図」とも呼ばれている。旧国制に倣い、大まかに広島市を中心とする県西部を「安芸」、県東部で岡山県と隣接している福山市を中心とする県東部を「備後」と呼び、現在でも方言・文化の点で一部違いを見せる。ただし、近年の広島県の施策では有する都市機能と生活圏などから広島圏域、備後圏域、備北圏域の3つに分ける場合も多い。第二次世界大戦において世界で初めて核兵器による攻撃を受けた広島市を抱えることから、国際的に知名度が高い。また安芸の宮島と原爆ドームの2つのユネスコ世界遺産を有しており、日本国外からの観光客も多い。広島市は、世界史上初めて核兵器で爆撃された都市として、世界的に知名度が高い。それ故に、「国際平和文化都市」としても一定の影響力を持っており、広島市長の発案で創設された「平和市長会議」には150を超える国から4600以上の自治体が加盟している。第二次世界大戦以前には「軍事都市」であった歴史とは対照的である。古代・中世には現在の広島市街地がある太田川デルタは形成されておらず、安芸国の中心としては国府が現在の安芸郡府中町または東広島市西条にあったと推定され、太田川中下流域の祇園・戸坂から可部にかけて荘園、郷が広がっていた。16世紀末、戦国武将の毛利輝元が太田川デルタを干拓して築城を開始したのをきっかけに地域の中枢機能が太田川デルタへ移り、都市としての広島の発展が始まった。江戸時代には、広島藩42万石の城下町として藩主浅野氏のもとで発展した。明治時代に入ると、陸海軍の拠点が集中する軍事都市となり、特に日清戦争時には広島大本営が置かれて明治天皇が行在し、第7回帝国議会は広島市で開かれるなど、臨時の首都機能を担った。第二次世界大戦末期の1945年8月6日、アメリカ軍の戦略爆撃機B-29「エノラ・ゲイ」によって広島市中心部の相生橋上空に原子爆弾「リトルボーイ」が投下され、きのこ雲が立ち上り、市街地は一瞬にして破壊された。投下当日中に数万人、1945年末までに推計13万人の人命が奪われ、生存者も火傷痕、放射線後遺症、精神的後遺症、遺伝への不安に生涯苦しむなど、市民が経験した苦痛は人類史上類を見ないものであった。原爆投下後は一時的に人口が20パーセント減少したが、戦後は重工業や自動車産業を中心に復興し、現在では日本の主要な工業都市となっている。1980年4月1日には札幌市・川崎市・福岡市に続いて全国で10番目となる政令指定都市に指定された。1985年3月に人口が100万人を突破し、現在では全国の市で10番目の人口を抱える。地理的には山陽地方のほぼ中南部に位置しており、太平洋ベルトを構成する広島都市圏の核となっている。大阪と福岡のほぼ中間に位置しているため、中国地方または中国・四国地方を統括する政府機関や、全国規模で展開している企業の地方拠点も多く置かれている。また、瀬戸内工業地域を構成する西日本有数の工業都市でもあり、沿岸部は工業地帯となっている。また、沿岸漁業も盛んである。近年では西風新都などの郊外のニュータウンでの人口増加も引き続き見られる一方で、平和大通りに新たに高層ビル群が生まれるなど都心回帰の傾向も見られる。中区以外においても、広島駅周辺を始め、宇品や緑井、段原などの開発・再開発が進み、既存の商工センターや西風新都と併せて、都市拠点機能が活性化している。交通インフラ面では都市高速道路である広島高速道路の整備のほか、広島電鉄による市内線路面電車のLRT整備や、1994年の広島アジア大会の開催に合わせて開通した広島高速交通「アストラムライン」の延伸、及びJR山陽本線とのアクセス改良計画が進むなど多方面から都市機能の充実が進められている。広島市中心部はオフィスビル建て替えやホテル建設ラッシュに沸いており、市内中心部へのサッカースタジアム建設計画や、駅ビル建て替えを含む広島駅再整備計画、広島駅周辺への高層オフィスビル建設計画など、大型再開発計画が目白押しで、まさに活況を呈している状況である。これらにより近い将来、広島市の都市としての魅力が大きく高まると期待されている。市内にはバス路線が多い。東京、大阪等に本社を持つ企業の支店が多い。市街地がデルタ地帯にあるため、長さ2メートル以上の橋が約2,600もある。東で東広島市と、北で北広島町と隣接している。なお、北広島市は広島県ではなく北海道に存在する。北広島市が北海道にあるのは、明治時代に広島県人が北海道札幌県札幌郡に入植し、それにちなんで自治体名を札幌郡広島村としたためである。
「やあ、元気にしているか?」
「ああ」
「それはよかった。ポートフロンティア学園の教師である神門あかりがネメシス財団の最高責任者を決める国民投票に出馬することになった」
「そんな…。神門先生が…」
神門先生が決意を固めたことに、晴斗は戸惑いの表情を見せる。
それでも、必死で前を向くしかなかった。
「僕らは、神門先生にたくさんのことを教えてくれた。だからこそ、全力で応援していくしかない」
晴斗は、神門先生への敬意を表し、支援していく意向を明かした。
翌日、この日は七夕。
「笹の葉さらさら」
「軒端にゆれる」
「お星さまきらきら」
「金銀砂子」
「五色の短冊」
「私が書いた」
「お星さまきらきら」
「空から見てる」
街は、短冊で飾られた笹が並んでいる。そのけやき通りを蘭が歩いていると、
「あれ?どこかで見たことがあるような人がいる。ちょっと行ってみよう」
その言葉をかけられた男が、蘭のそばについてくる。
「あなた、誰なの?」
「グリーン・ガンマだ。お前が持っている輝きを奪ってみせる!」
「そうはさせないわ!」
ガンマが蘭に勝負を仕掛けてきた。
「さあ、行くわよ」
蘭はプリンセスムーンスターを使ってドールプリンセスに変身する。
「スター・アンド・ムーン!ドレスアップ!」
紫と銀色の光が蘭を包む。
「星と月のプリンセス・トウィンクルパープル、見参!プリンセスステージ、レッツスタート!」
トウィンクルパープルが現れると、
「さあ、ついていけるか?」
ガンマとトウィンクルパープルによる追いかけっこが始まった。
「ここまでおいで!」
「私は負けない!」
二人は、先が読めない駆け引きを展開する。
そうしていくうちに、ある場所にたどり着いた。
「ここは…」
ガンマが過去を回想しようとすると、
「きらきら光る」
「お空の星よ」
「瞬きしては」
「みんなを見てる」
「きらきら光る」
「お空の星よ」
「きらきら光る」
「お空の星よ」
「みんなの歌が」
「届くといいな」
「きらきら光る」
「お空の星よ」
トウィンクルパープルの歌に乗せて、ガンマはあの時を思い出す。
それは、数年前のけやき通りでのこと。ここでガンマは「ゼルコバストリート・キッチン」という料理店でシェフとして働いていた。
「よし、今日も頑張るぞ!」
けやき通りに面していることから名づけられたレストランは、三つ星を獲得するなど国内外からの評判は上々だった。
しかし、そんなある日のこと。
「ちょっと、その食材はいつ入荷したのか?」
「それは、分かりません」
なんと、レストランで提供された料理を食べたお客さんが下痢や嘔吐を起こしてしまい、後でノロウイルスだと判明した。しかも、この料理に使われた食材はすでに賞味期限切れのものだった。
「君たち、全員クビだ!」
「そんな…」
これを受け、レストランは閉店を余儀なくされ、ガンマを含めた従業員は全員解雇された。
「俺の居場所はどこだろう…」
ガンマは、何をしたらいいかわからず、ネメシス財団に入ることに至った。
「そうだ…。ここでもう一度料理を作りたい」
「分かってくれたのね、今よ」
トウィンクルパープルは、ガンマの闇の力を浄化することを決心する。
トウィンクルパープルがプリンセスムーンスターにダイヤモンドのマジカルストーンをセット。その力をプリンセススタータンバリンに授けると、
「プリンセスステージ、ライブスタート!」
トウィンクルパープルによるガンマの改心がはじまった。
「発車のベルと」
「同時に出会う二人」
「でもすれ違ってしまう」
「早く会いたい」
「だけど知らない」
「だから だから unknown unknown」
「なぜそんなに会いたい?」
「あなたの思い」
「ねえ 目を合わせて」
「振り向かずに」
「そうそうそう 気になりそう」
「私の脳内は」
「あなたのことだらけ」
「さあさあさあ 勇気を出して」
「本当のことを」
「伝えに行こう」
「恋するリフレイン」
「ダイヤモンドの輝きでパワーアップ!乙女の輝き!ダイヤモンド・トウィンクル・ナビゲーション!」
トウィンクルパープルがプリンセススタータンバリンをガンマに向けて響かせる。すると、ガンマの心は正の部分と負の部分に分離された。
「ちゅ、ちゅ、ちゅるるわー!」
とコロンはマジカルストーンの気配を察知した。マジカルストーンが落ちていく方に行くと、
「キャッチ!」
とコロンがマジカルストーンを回収することに成功した。それを蘭のプリンセスムーンスターに認識して、
「アゲート。青いレースのマジカルストーンよ」
「それではまた次回、輝く世界でお会いしましょう!プリンセスステージ、ハッピーフィナーレ!」
トウィンクルパープルが勝利宣言する一方で、正の部分がガンマの元に戻った。
「これは…」
「心石。真実の心を秘めている不思議な石よ」
「ありがとう」
「大事にしてね」
コロンは、ガンマに心石を渡した。
「いらっしゃいませ!本日オープン『けやき亭』でございます!」
ガンマは、かつて「ゼルコバストリート・キッチン」があった場所に「けやき亭」というレストランを新しく開業した。説明しよう。欅とは、英語でゼルコバと直訳し、「ゼルコバストリート・キッチン」の志を引き継ぐべくけやき亭を開業した。
「ここ、新しいお店よ!」
「どんなメニューがあるのか、行ってみたい!」
蘭は、つぼみを連れてけやき亭のオープンを見届ける。
「ねえねえ、蘭」
「ここだけの話なの?」
「そうだよ。実は、みんなでお手伝いをしたの」
つぼみの話によると、つぼみをはじめとするポートフロンティア学園の生徒たちが地元の大学生と協力して、けやき亭の開業に至ったという。
「ご注文はいかがでしょうか?」
「ポークチャップで!」
「私も!」
「かしこまりました」
つぼみと蘭は、けやき亭の看板メニューであるポークチャップを注文する。
「お待たせいたしました。ポークチャップでございます」
「ありがとうございます!」
「では、ごゆっくりどうぞ」
ポークチャップをおいしそうに食べるつぼみと蘭。
「すごくおいしい!」
「豚肉とケチャップの味がマッチしているわ!」
つぼみと蘭が感想を述べた後、オーナーシェフのガンマが現れた。
「俺の料理を褒めてくれて、本当に嬉しいぜ!」
ガンマがこう語った後、
「君の言葉でなんだか勇気が湧いてきた!さあ、がんばるぞ!」
ガンマは、なんだか力が湧いてきた。どうやら、ガンマが開業したけやき亭は大繁盛しているようだ。
一方その頃、オメガは北米視察の一環としてカナダへと身を寄せていた。説明しよう。北米は、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマが位置する。地理的にも実質的にも広義の北アメリカ地方の大半を占めるといってよい。これはカリブ海地域においては大国であるキューバを北アメリカ大陸で最も国内総生産が高い国であるアメリカ合衆国と比較すると人口が約26分の1、面積に至っては約87分の1であり、またアメリカ合衆国の国内総生産はカリブ海地域で最大であるプエルトリコのそれの約169倍である。なお、北アメリカ地方と称した場合にはメキシコ以南を中央アメリカ地方として区別することがあるのに対し、「北アメリカ大陸」という語にはそのような用法は存在しない。先住民は大航海時代以前においてはモンゴロイドが中心であったが、クリストファー・コロンブスによる大陸の発見以降、ヨーロッパ人が北アメリカ大陸に到達したことから、彼らとの戦闘や持ち込まれた病原菌によって、先住民の人口は劇的に減少した。現在は、コーカソイド、ネグロイドなどを含めた多種多様な人種の人々が住んでいる。カナダとは、イギリス連邦加盟国であり、英連邦王国の一つである。アメリカ合衆国と国境を接する。国土面積は世界最大のロシアに次いで広い。歴史的に先住民族が居住する中、外からやってきた英仏両国の植民地連合体として始まった。1763年からイギリス帝国に包括された。1867年の連邦化をきっかけに独立が進み、1931年ウエストミンスター憲章で承認され、1982年憲法制定を持って政体が安定した。一連の過程においてアメリカと政治・経済両面での関係が深まった。連邦制をとり、連邦政府の運営は首相を中心に行われている。
「無投票が濃厚と言われていたが…。ついに来た」
神門先生がネメシス財団の最高責任者を決める国民投票に出馬することを決めたことをカルガリーで知ったオメガ。説明しよう。カルガリーは、カナダ西部のアルバータ州にある都市である。周辺を含めた都市圏人口は140万人で同州最大の都市かつ同国有数の世界都市である。アルバータ州の南部、カナディアンロッキー山麓から東におよそ80kmの高原地帯に位置する。カルガリーからエドモントンを結ぶ地域は人口密度が高くカルガリー・エドモントン街道と呼ぶ。都市の近郊にあるいくつものマウンテン・リゾートを含め、ウィンタースポーツとエコツーリズムが盛んな場所として知られる。代表的な年間行事にカルガリー・スタンピード、フォーク・ミュージック・フェスティバル、ライラック・フェスティバル、グローバルフェスト、カリブ系の祭りとしては国内で2番目の規模を持つカリフェストなどが開催される。カルガリー・スタンピードで有名であることから「スタンピード・シティ」の愛称を持つ。アルバータ牛でも知られ、牛の街「カウタウン」とも呼ばれる。
そんなオメガは、バンクーバーに向かっていた。説明しよう。バンクーバーとは、バンクーバーを中心とする都市圏人口は210万人とカナダ国内第3位の都市圏を形成している。バンクーバー市のみの人口では同国内で第8位の約64万人である。民族や言語が多様で、人口のおよそ52%は第一言語が同州の公用語にあたる英語ではない。北米有数の世界都市であり、2016年に発表された「世界の都市総合力ランキング」では、世界28位と評価された。1867年に製材所ができ、これらを中心とする入植地であったギャスタウンは発展を続け、グランビルとして町は拡大した。東カナダから続く鉄道の終着駅が町まで敷かれることになった1886年に町はバンクーバーとして改名され市政となる。林業が同市最大の産業で、都市部ながら自然に囲まれた都市として知られていることから、観光業が発達しており、同市第2の産業となっている。同市にあるメトロバンクーバー港は同国最大の港であり、北米においても積載量で第4位の規模を持つ。同市および隣のバーナビー市には、主要な各映画製作会社が拠点を置いており、ロサンゼルス、ニューヨークに続く北米第3位の規模となる映画製作拠点となっている。このため、通称ハリウッドノースとも呼ばれる。国際会議や国際競技が数多く開催されており、2010年には第21回冬季オリンピックが開催された。
「ああ、長いレールの向こうには、何があるのだろうか…。この世界のどこかに、俺を待っている人がいる…。『いい日旅立ち』とは、こういうことだったのか」
バンクーバーが終点のレールをじっと見ているオメガ。
「2020年7月22日、決戦の日だ」
ここで、ネメシス財団の最高責任者を決める国民投票について説明しよう。投票は、7月15日から21日までの一週間、一日一回インターネットに接続しているスマートフォンやパソコン、タブレットで投票する方式である。開票結果を発表するのは、22日の午後八時で、多くのテレビ局が国民投票に関する特番を編成することになっている。
「君たちの清き一票を待っている」
オメガは、有権者に向けてメッセージを残して、次の目的地に向かうのであった。




