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80 旅立ち


「それでは、アルジャルス()()……本当に色々と、ありがとうございました」


 ローズたち四人は笑顔で礼を言う。

 この一ヶ月の間に――彼女たちとアルジャルスは、呼び名が変わるくらいに親しくなっていた。


「まあ、おまえたちなら……我の名を呼び捨てにしても構わぬがな」


 ツンデレモードのアルジャルスが、恥ずかしそうに言う。


 いや、さすがに自分たちが仕える光の神の化身を、呼び捨てにする訳にもいかないだろうと、エストは困った顔をするが……


「解ったわ……アルジャルス、本当にありがとう!」


「私も感謝してるよ……アルジャルス、また遊びに来るね!」


 そんなハードルなど、ローズとエマは一瞬で乗り越えてしまう。


(あれ……私の感覚がおかしいのか?)


 困惑するエストに――アリスは肩を優しく叩くと、


「大丈夫よ……あの子たちが普通じゃないだけだから」


 順応が早すぎる二人を、呆れた顔で見ていた。


「おまえたちは……まだまだ危なっかしいところがあるからのう。多少強くなったことは認めるが、くれぐれも慎重に行動するのだぞ。世界には……偽物の(フェイク)バハムートなど歯牙にも掛けぬ強者も、存在するのだからな」


 心配そうなアルジャルスに、ローズが笑顔で応える。


「ええ、解っているわ……もう私たちは三人も、実際に会っているから」


 カイエにエレノアにアルジャルス……魔神と神の化身である彼らの力は、全く底が知れなかった。

 自分たちが強くなったことは実感できるが――彼らに少しでも近づけたという感覚はまるで無かった。


「そうか……ならば良いのだがのう……」


 自分が強者だと言われたことに、アルジャルスが照れていると――


「勿論、あなたを悲しませるような事はしないわよ……他に選択肢がある限りはね」


 ローズは素直な気持ちを口にする――もし、命を賭けなければ誰かを救えない状況になったら……自分は迷わずに行動する。

 今だって、そう思っているから――アルジャルスに嘘を言うつもりはなかった。


「おい……ローズ! おまえは我が苦言を呈した傍から、何を言っておるのだ!」


「ごめんなさい、アルジャルス。でも……全部一人でやろうとは思わないわよ。私にはみんなが居るから……」


 エスト、アリス、エマ……もっとみんなを頼るべきだとローズは気づいていた。


「それに……カイエが一緒にいてくれるから……」


 いきなり乙女モードを全開にして――ローズはカイエを見つめる。


 別にカイエの力に甘える気はないが――たとえどんな状況になろうとも、彼ならば何とかしてくれる。そんな絶対的な信頼感をローズは抱いていたが……


「我に言わせれば……あの男こそが、一番問題なのだがな」


 昔からそうだ――カイエは、自分の命()()を軽視しているところがある。

 目的を果たすためであれば……自分の命を賭ける(ベットする)どころか、自らを捨て駒にすらする男だ。


 かつて、神の化身と魔神が世界を業火で焼き払おうとしたとき――カイエは自らが消滅する可能性を無視して、人と魔族を守ったのだ。


()()()()()()――カイエがそこまでする状況は発生しないだろうが。()()で奴が懲りたとは、とても思えんな)


 アルジャルスが忌々し気な視線を向けると――カイエは『ナニ、俺のこと?』といった感じで惚けた反応をするが……


(どうせ、解っておるだろうに……本当に、忌々しい奴だ!)


 アルジャルスもエレノアも、カイエに『何でも言うことを聞く』と約束させながら、具体的な要求は何もしていない。その理由は――いざというときに、彼を止めるためだった。


「何だよ……もう話は終わったのか?」


 カイエは何食わぬ顔で、彼女たちの方にやって来る。

 彼の漆黒の瞳――本当に何を考えているのか、よく解らないところがあるが……何を大切にしているのかだけは、アルジャルスも良く解っていた。


「「「……カイエ!」」」


 ローズたち四人はカイエを取り囲んで、それぞれのポジションに収まるように密着するすると――彼はちょっと困ったような顔をしながらも、彼女たちを受け入ていた。


「ああ……全部終わったから、さっさと行くが良い。おまえの顔など、もう見飽きたわ」


 素っ気なく言うアルジャルスに――カイエは明け透けな笑みを浮かべる。


「おまえもさ……暇ができたら、一緒に来いよな。みんなだって、おまえのことを待っているからさ」


 しれっとド直球の言葉に――思わずアルジャルスは真っ赤になった。


「な……何を馬鹿なことを! 我はおまえたちと違って、暇ではないのだ!」


「ああ、解ってるよ。おまえとエレノアねえさんが、俺が眠っている間も……今も頑張っていることくらい、俺も知っているからさ」


 今度の言葉は――アルジャルスにとっても不意打ちだった。


 カイエが姿を消した後――残された世界を、アルジャルスとエレノアは、ずっと見守り続けて来た。


 カイエが生きていたように――他の神の化身や魔神が、本当にこの世界から消滅したのかは、誰にも解らないのだ。彼らが復活する可能性はゼロではない――


 実際に、『獄炎』の魔神は復活し――カイエに仕留められている。


 あれは偽神(デミフィーンド)と呼ばれる下級の魔神だったが……逆に言えば、その程度のモノでも復活できたのだ。


「カイエ、おまえは……いつから気づいていたのだ?」


「いや、気づいたって言うかさ……それくらい、お互い長い付き合いなんだから解るよ」

 唖然とするアルジャルスに、カイエは事も無げに応える。


「あのときも俺が目覚めなかったら、どうにかするつもりだったんだろう? だけどさ……今すぐどうこうなるような話じゃないし、もう俺がいるんだから……おまえも、もう少し自由に生きて良いと思うけどな?」


 そんなことを言われて――アルジャルスは正直に言えば胸にくるものがあったが……同時に、別の想いがあった。


(もう……おまえだけに頼りたくはないのだ)


 しかし――アルジャルスは、必死に思いを隠した。


「……余計なお世話だ。我は、我が思うように生きておるわ!」


「そうか……だったら、気が向いたときにでも声を掛けてくれよ」


 カイエは『ああ、解ってるよ』という感じで微笑むと――


「それじゃ……俺たちは行くか?」


 ローズたちとともに、転移魔法で旅立っていった。



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