79 過去編2:思うがままに
過去編第2話……すみません、今回もシリアスモードです。
当時、普通に存在していた神の化身と魔神たちは――自分たちの争いによって世界を壊さないために、決して直接手を下さないという盟約を結んでいた。
彼らは『権能』を与えることで、自らを崇める者たちを支配し、『世界の創造主』として君臨していたが――
「奴らが世界を創ったなんて……唯のまやかしだよ。人族や魔族の方が、奴らよりも先に居たんだからさ――証拠なら幾らでもある」
世界の果てでカイエが手に入れた『記録』には――神の化身と魔神が語る神話とは異なる史実が残されていた。
人族と魔族は、神話の時代よりも前から存在しており――かつて栄華を極めた彼らは、神々の理とは異なる世界を築いていたのだ。
「まあ、奴らが創造主じゃないとしても――強いモノを崇めて従うのは、生き物の本能みたいなものだから。そうしたい奴らを止めるつもりはないけど……」
神の化身と魔神に支配された者たちの代理戦争によって――世界には争いが溢れており、数えきれないほどの命が失われていた。
魔族は人族を、人族は魔族を殺すことこそ創造主の意志だと――疑うこともなく戦い続けて、屍の山を築いていたのだ。
「神の化身も魔神も自分たちの創造主じゃないと、人族と魔族が気づいたとき――このまま奴らに言われるままに殺し合いを続けるか……試してみるか?」
本当の創造主が残した武器を手にして――カイエは戦いを始めた。
神の化身と魔神の『権能』による支配は――直接『権能』を与えられた者たちを通じて、種族全体に伝播していた。
『権能』を消し去ることで、周囲の者たちも支配から解放されるが――彼らが感じるのは違和感と、戦いに対する死の恐怖であり……
そこからカイエは、『権能』から解放された者たちに証拠を見せて、史実を語って説き伏せる必要があった。
それでも、皆が皆、カイエの言葉を信じる訳もなく――結局は、強者に従う弱者として生きる選択をする者も多かったが……
「おまえの言うことが事実なら……これ以上同胞たちに無駄に血を流させたくはない。神の化身から同胞を解放するには、どうすれば良いのだ?」
「なるほどな……俺たち魔族は、魔神に踊らされていた訳だ! 良いぜ……奴らに一泡吹かせてやろうじゃねえか!」
神々に抗おうとする者たちも少なからず居たのだ。
そんな彼らに、カイエは『権能』に抗う武器を与えて――ともに世界を相手に戦うことにした。
カイエが率いる人族と魔族の混成集団『神と魔神に喧嘩を売る者たち』は――戦いの度に勢力を増大させていった。
彼らが使う『権能』を消滅させる武器は――魔神エレノアがもたらした情報により、さらに数を増やすことができた。
それと同時にエレノアは――『盟約』を盾に神々を監視した。
神の化身にも魔神にも従わない者たち――その勢力が増大すると、『権能』の支配が弱い地域から、同調する者たちが次々に現れた。
カイエたちの活動は、世界の理を変える大きな流れとなったが――
世界を支配する者たちが、この状況をいつまでも黙認する筈もなかった。
そのくらいのことは、カイエも解っていたから――『神と魔神に喧嘩を売る者たち』が人族や魔族から襲撃を受けないように、彼らを分散して各地に潜伏させた上に、拠点を点々と移動させた。
だから、外部から襲撃を受けることは滅多になかったが――神々が放つ猛毒の刃は、彼らの内側に侵食していたのだ。
「おい……何の冗談だよ?」
揶揄うようなカイエの言葉に――顎髭を生やした青年王は抜き身の剣を手にして、悲しい目をする。
「いや……カイエ、私は本気だよ」
クエルスタフ王国の国王ギゼルは――『権能』に疑問を持ち、国を捨ててカイエの活動に参加していた。
「残してきた我が国民が――人質に取られているのだ。まさか神の化身が信者を人質になど……私が甘かった」
「俺だって……本気だぜ。カイエ……呪ってくれて構わないからな!」
魔族の国ザッカーレフ魔道国の魔将ストルフェンは――完成した最上位魔法の魔法陣をカイエに向ける。
神の化身と魔神たちは――盟約を破るどころか、この件に関しては完全に結託していた。
彼らが創造主ではないという事実は――世界を支配する上で大きな障害となるタブーであり……彼らがゲームを続けるためには、世界の記憶から消し去ることが最優先事項だった。
「まあ、当然かもな……おまえたちも大切なものを守るためなら、自分の手が血に塗れることくらい構わないだろうし――奴らは簒奪者だから、このくらいのことはやると思ってたよ」
『神と魔神に喧嘩を売る者たち』の幹部に包囲されて――カイエは笑っていた。
彼は言葉通りに――こうなることを、初めから予期していたのだ。
「一つだけ……約束してくれないか? 奴らの支配を再び受け入れても構わないが――魂だけは売り渡すなよ。そうすれば……今は無理でも、いつかは全部取り戻せるからさ」
別に、自己犠牲など糞食らえだと思っているが――カイエは初めから、この戦いに自分が勝てるとは考えていなかった。
(いや……そうじゃないな。俺だけでは、勝てないってだけだ)
神の化身と魔神の正体を知ったカイエは――自分の力では、決して彼らから世界を解放できないと冷静に判断していたが……その先にあるモノを見据えて、この戦いを始めたのだ。
「せいぜい……俺を犠牲にしたことを後悔しろよ? それが、次の戦いの糧になる筈だからな――」
人族でも魔族でもないカイエにとって――この世界は優しくなかったが……それでも自分の思い通りに生きてやると、カイエは決めていた。
(勝てるとか、敗けるとか――そんなものは関係ない)
消滅する瞬間まで――カイエは思うがままに生きた。
とりあず……次回からは元の話に戻ります。また次の機会がありましたら、過去編の続きも書きたいと思います。




