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(完結)『隣の席の田中くんが異世界最強勇者だった件』  作者: 雲と空
第四章:暴かれた真実と、本当の敵

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36話:異世界の村で、私たちが見た本当の平和



城塞都市ヴェサリウスでの神崎先生との再会から数日が経ち、私たち五人は新たな冒険の場を求めて旅を続けていた。


田中くん、茜姉、由希子、神崎先生、そして私。


ようやく全員が揃った、本格的なパーティでの初めての冒険だった。


「花、あの村を見てください」


由希子が指差した先に、小さな農村が見えた。『レミナの里』という看板が立っている。麦畑に囲まれた、のどかで美しい村だった。


「休憩がてら、立ち寄りませんか?」


茜姉が提案する。


「ずっと野宿続きで、由希子ちゃんも疲れてるでしょう」


「私も賛成です。村の情報収集も大切ですからね」


神崎先生が教師らしい視点で頷く。


「僕も賛成です。村の情報も聞けるかもしれません」


田中くんが頷いた。


私たちは村の入り口で門番のおじいさんに挨拶した。


「旅の冒険者の方々ですか。ここは小さな村ですが、よろしければゆっくりしていってください」


おじいさんの優しい笑顔に、私たちは自然と心が和んだ。これまでの険しい冒険とは違う、穏やかな時間が流れていた。


村長の家を訪ねると、白髪の温厚そうな男性が出迎えてくれた。


「冒険者の皆さん、遠路はるばるお疲れさまです。私は村長のトーマスと申します」


「田中健太です。こちらは仲間の佐藤花、佐藤茜、鈴木由希子、そして神崎麗華です」


田中くんが丁寧に挨拶すると、村長の目が驚きで見開かれた。


「田中様...もしかして、あの『黒刃の勇者』と呼ばれる方ですか?」


「え...?」


田中くんは困惑する。


村長が興奮気味に続けた。


「黒い刃の剣を使い、一人で魔物の大群を倒すという冒険者の話を、商人から聞いたことがあります。コボルトの集落やオークの群れを、たった一人で壊滅させたとか」


田中くんが慌てたように手を振る。


「あ、それは...人と話すのが苦手で、いつも一人で依頼を受けていただけなんです。目立つつもりはなかったんですが」


私は田中くんの過去を思い出した。花たちと出会う前、彼は一人きりで異世界での冒険を続けていた。その圧倒的な実力から、いつしか「黒刃の勇者」という噂が広まっていたのだろう。


「その黒い刃というのは...」


村長が田中くんの腰の剣に視線を向ける。


田中くんは少し恥ずかしそうに剣を抜いて見せた。ダマスカス鋼特有の黒い波紋模様が美しく浮かぶ刀身が、夕日を受けて静かに光る。


「これは、はじまりの森で最初に手に入れた剣なんです。迷いの森でドワーフの鍛冶屋に出会って...」


田中くんの話に、村長は息を呑む。


「それは...伝説の名工マイスター・グリムのことかもしれません。まさか、あの方がまだ生きておられたとは」


村長の熱心な頼みに、田中くんは少し戸惑いながらも承諾した。


「是非とも、若い者たちに剣の心得を教えていただけませんか?」


村の広場に集まった子供たちの目が、きらきらと輝いている。田中くんは木刀を手に取り、基本的な構えから教え始めた。


「剣は人を傷つけるためではなく、大切な人を守るために振るうものです」


田中くんの真剣な言葉に、子供たちは真剣に聞き入っている。


「その通りですね、田中くん」


神崎先生も槍を手に取りながら微笑む。


「私も同じことを、いつも生徒たちに伝えたいと思っていました」


先生は槍の基本的な扱い方を実演してみせた。教師らしい丁寧な説明に、子供だけでなく大人たちも興味深そうに見つめている。


田中くんが実際に剣を振ってみせると、風を切る音と共に空気が裂けるような剣圧が生まれた。黒い波紋模様の刀身が夕日を受けて美しく輝き、柄の魔石が青い光を放つ。


「本物の勇者様だ...」


集まった大人たちから、感嘆の声が上がる。


一方、茜姉は村の女性たちと子供たちの相手をしていた。最初はその豪快な性格に驚いていた村人たちも、茜姉の根っからの優しさに触れると、すぐに心を開いた。


「茜お姉ちゃん、強いのに優しいね!」


「そうだなあ、強いからこそ優しくいられるんだと思うよ」


茜姉が子供の頭を撫でながら答える姿は、まさに頼れるお姉さんそのものだった。


由希子は村の台所を借りて、私たちの食事を準備していた。しかし、せっかくなので村人たちにも振る舞おうと提案する。


「材料は私たちが持ちますから、皆さんにも召し上がっていただけませんか?」


由希子の手料理は、異世界でもどんどん上達していた。村人たちはその美味しさに魅了され、女性たちが彼女を囲んでレシピを教えてもらおうと必死だった。


そんな中、私は村の人たちとの会話を通じて、村の状況を少しずつ理解していた。


「最近、近くに盗賊が出るという噂があるんです」


老人の一人がぽつりと呟く。


「街道を通る商人も襲われているとか...私たちのような小さな村にも、いつか被害が及ぶかもしれません」


村人たちの表情に不安の影が差す。平和な村だからこそ、外部からの脅威に対する備えが十分ではないのだろう。


「でも、今日は田中様たちがいらしてくださって、心強いです」


村長が安堵の表情を浮かべる。しかし、私たちがいつまでもここにいるわけにはいかない。村人たちもそれは理解しているはずだ。


夕食の時間になり、村の人たちと一緒に食卓を囲んだ。由希子の料理を囲んで、みんなの笑顔が輝いている。こんな平和な光景を見ていると、私たちが異世界で戦い続ける理由を改めて実感できた。


「私たち、本当に良い村に出会えましたね」


「ええ、こういう平和な場所を守るために冒険しているんだって、改めて思えました」


茜姉と由希子の会話を聞きながら、私も同じ気持ちだった。


「生徒たちがこんなに立派に成長して...」


神崎先生が感慨深げにつぶやく。


「教師として、本当に誇らしいです」


田中くんも、村の子供たちと剣の話をしながら、充実した表情を浮かべていた。


どうか、この異世界の平和を守るために応援をよろしくお願いします。

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