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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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564/575

第564話 接近の曙光。

       ◆◆◆


 ネフェルティティが失われてからというもの、スフィーダは毎日泣いてばかりいた。ベッドで横になり、来る日も来る日も、ぐすぐすぐすぐす泣いた。姉を亡くしたような気分だった。妹を亡くしたような気分だった。家族を亡くしたような気分だった。二千年も生きているのに情けない話だ。公務にも支障をきたすくらいだ。謁見の間すら開くことができない。それでもヨシュアがなにも言ってこないのは、彼が心中をそれはもうきちんと把握してくれているからなのだ。だが、だからこそ、自分一人が悲しみに暮れていていいわけがないとも思うのだ。


 スフィーダはその日、白い寝巻のまま、枕を抱いて、私室からちょこんと出た。玉座の隣にはヨシュアの背中が見え、彼は振り向くと「おはようございます、陛下」と言い、にこりと笑みを浮かべた。スフィーダは目をこすりながら近づく。そして、彼を見上げた。


「おまえがずっと一人で対応しておったのか?」

「まあ、はい、ええ。私では物足りないというニンゲンが多いように思いましたが」

「そんなことはあるまい」

「あるんですよ」と言い、ヨシュアはいたずらっぽく笑った。


 スフィーダは、枕を抱えたまま、玉座におしりをのせた。


「ここ数日でなにか変化は?」

「危なっかしい状態です」

「危なっかしい? どういうことじゃ?」

「私はそこまでやっておられるとは考えていなかったのですが、ネフェルティティ様は自らが敗れた折には、プサルムに降れと伝えていたようです。しかし、いくらなんでも、受け容れる側としていきなりそれは難しい。そうでなくとも、アーカムの上層部のニンゲンにとって、その命令には従い難い」

「ネフェルティティの命令じゃろう? じゃったら――」

「ネフェルティティ様がいなくなってしまったからこそ、聞けない命令なんですよ」

「そういうことか……」

「はい」


 スフィーダはぎゅっと枕を抱き締める。ヨシュアが「朝食にいたしましょうか?」と訊ねてきたが、彼女は「食欲がない」と断った。


「スフィーダちゃんは大食いなのでは?」

「大食いではあるが、もはやスフィーダちゃんではない」

「スフィーダちゃんですよ」

「ヨシュア!」

「おや、私と喧嘩をなさいますか? その枕を武器にして」


 途端、毒気を抜かれてしまった。


 スフィーダはおいおい泣く。


「そうじゃ、そうじゃのう、そうなんじゃのう。ネフェルティティは死んでしまったのじゃのぅ。悲しいぞ、ヨシュア、とってもとっても悲しいぞ」

「そうお思いなら、一つ、私の首を刎ねてみてはいかがでしょう?」


 冗談を言うなと睨みつけてやると、ヨシュアは深く深く頭を垂れた。


「もういい、わかった。死んだ者を思うのは尊いことじゃが、それでは国が立ち行かん」

「陛下、賢いではありませんか」

「じゃから、ヨシュア、おまえはっ――」

「曙光が接触してきました」

「……は?」


 曙光?

 あの曙光?

 あの曙光しかないだろう。

 連中が接触してきた?


「実質的にノキア、こちらの大陸に残った大国はプサルムのみです。ティターンはおとなしいものです。が、先に申し上げたとおり、アーカムとのあいだでは、これからも揉めることがあるでしょう。そのへんの敵情視察。そんなところが、目的ではないでしょうか」

「先方の代表は? またリヒャルトか?」

「驚かないでくださいませ」

「ななっ、なんじゃ、あらたまりよってからに」

「ダイン皇帝です」


 さすがに目を見開かざるをえなかった。


「ダイン自ら……?」

「ぜひとも丁重に迎えてもらいたいとのことです」


 スフィーダは立ち上がると、枕を地面に叩きつけた。


「なにをほざくか! ダインのせいでネフェルティティは死んだのじゃぞ!」

「それは多少飛躍した物言いですね。攻め込んできのは、あくまでもネフェルティティ様の意志あってのことです」

「そんなわけあるか!」

「陛下、落ち着いてくださいませ」


 スフィーダはヨシュアにぼふっと抱きついた。


「ネフェルティティのせいではない。ほかに悪い輩がいる。そうとでも考えなければ、やりきれんじゃろうがぁぁ……」

「陛下はとことんお優しいですね」

「そう思うなら、よしよしと頭を撫でてくれ」


 そうしてもらえたので、スフィーダ、若干、回復。

 ヨシュアから離れた。


「で、どうするのじゃ?」

「戦うのは簡単です。しかし、私たちにはなにより先に国民を守る義務がある」

「裏を返せば、義務がなければ、戦うということか?」

「そうではありません。理想の問題です」

「会うしかないというのか?」

「現状、従うしかありません」

「不本意じゃのぅ」


 肩を落としたスフィーダである。


「やむをえません」

「民には? どうするのじゃ?」

「周知します。隠し事をすることが、最もよくありませんから」


 スフィーダは枕を拾い上げ、またそれを抱き締めた。


「上から目線で皇帝を名乗っているだけの、どうせつまらん若造じゃろう。ヨシュアよ、場合によってはその場で討つぞ」

「ほんとうにそれほど軽い相手なのか――見極めるためにも必要な会談だと考えます」

「日取りは?」

「今日、来ます」

「せっかちじゃのぅ」

「指導者とは少なからず急進的なものです」

「着替えてくるぞ」

「そうなさってくださいませ」


 スフィーダ、今日は戦闘服の黒いドレスで迎え撃とうと決めた。


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