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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第49話 アーノルド・セラー首相。

       ◆◆◆


 紺色のスーツに紺色のネクタイ。

 髪はきちっと七三に分けている。

 すらりと背が高い。

 もう六十を過ぎたということだが、若々しく映る男だ。


 男の名はアーノルド・セラー。

 プサルムの首相である。


 アーノルドの立礼はひときわきちんとしたものだ。

 さすがは一国のまつりごとを預かるニンゲンである。

 立ち居振る舞い一つとっても、凛々しさが匂い立つ。

 椅子に座るよう促すと、彼は静かに腰掛けたのだった。


 スフィーダは「日々、お疲れさまなのじゃ」と言った。

 するとアーノルドは「陛下からのねぎらいの言葉は格別です」と述べ、わずかに口元を緩めてみせた。


「アーノルドよ、今日、来てもらったのは他でもない。わしはそなたに謝罪せねばならんのじゃ」

「理由をお聞かせ願えますか?」


 スフィーダは一つ、うむと頷いた。


「わしはときに、出すぎた真似をしておるじゃろう? こないだなど特にそうじゃ。ビーンシィに飛んでしまった。そうしたいからという理由だけで、国主カタリーナと会ってしまった」

「その件に関しましては、問題ありません。そもそも、あいだを取り持ったのは私なのですから」

「議会の承認は得ずともよかったのか?」

「繰り返しになりますが、いっさい問題はありません」


 そう言って、アーノルドは首を横に振るのである。


「もう一つある」

「伺いましょう」

「ネフェルティティの件じゃ。本来であれば、奴にはそなたが会うべきじゃ。わしはそう考えておる」

「いえ。その件に関しましても、陛下にお会いいただいている現状で問題はありません。ネフェルティティ女王は、ニンゲンの話になど耳を傾けない御方でしょう?」


 苦笑したスフィーダである。


「それはまあ、そうやもしれんの」

「少なくとも私が首相であるうちは、陛下のお考え通りに振る舞っていただいて結構です」

「そうなのか? じゃが、なにか問題が噴出したときにはずぐに教えてほしい。無論、これからも、わしのほうから逐一報告を求めることはせん。そなたが旗手となって、よりよい国づくりに励んでもらいたい」

「承知しました。以降も最善を尽くしてまいる所存です」

「偉そうなことをのたまってしまった。すまんかった」

「そんなことはありません」

「わしは偉くもなんともない。長く生きているというだけじゃ。そう解釈する者も、中にはおるじゃろう?」

「少なからず、ご存じでしょう? 陛下の存在そのものを否定する野党も、あるにはあります」


 スフィーダは「それはやむを得ぬことじゃ」と言いつつ、笑みをこぼした。


「しかし、我が国の歴史を語る上で、陛下の存在を欠かすことはできません。陛下に絶対的な象徴になっていただくことによって、人々は心強さを胸に、国を立ち上げることができた。その後も、一つにまとまることができた」

「いつか、わしなど要らなくなる日が来るかもしれん」

「寂しいことをおっしゃらないでいただきたい」

「それでものぅ、わしは魔女などおらぬほうが、ずっと健全だと思うのじゃ」

「そのような世界を望まぬニンゲンも多い。それもまた事実です」

「あいわかった。今後もわしは、やれることを全力でがんばるぞ」

「国民を代表して、御礼申し上げます」


 うむと答え、スフィーダは笑顔をこしらえた。


「ところでアーノルドよ、一緒にランチでもどうじゃ?」


 そしたら、アーノルドは懐中時計を取り出して。


「やはり忙しいのか?」

「念のための確認です。私の一日のスケジュールは、詳細まで新聞に掲載されておりますので」


 アーノルドは時計を懐に収めた。


「問題ありません。ご一緒したく存じます」

「よし。決まりじゃっ」 


 プサルムの首相は、力強く、そして魅力的な男である。


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