第48話 ラブラブ。
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玉座のすぐ後ろに設けさせた白いテーブルにて。
テーブルを挟んだ向こうには、ヨシュアと彼の妻であるクロエが座っている。
三人でディナーを楽しんでいるところなのである。
亜麻色の髪をしたクロエは、しとやかで本当に美しい。
美しいのだが、ぶきっちょだ。
牛フィレのステーキはとても柔らかいのに、なぜだか切るのに手こずる。
フォークに刺して口へと運ぼうとしたところで、ぽろりと落としてしまう。
そして、実に申し訳なさそうな顔をする。
ついには「スフィーダ様、本当に申し訳ございません……」と口に出して謝罪した。
妻にそんなセリフを吐かせる前に、おまえがフォローせぬか!
ヨシュアにそう言ってやりたいスフィーダである。
言ったら言ったで場の雰囲気が悪くなってしまいそうなので言わないのだが。
食事が終わり、皿が下げられた。
「のぅ、クロエよ」
「は、はい。なんでしょうか、スフィーダ様」
「これこれ。そう緊張するでない」
「で、ですが、私はその、申し訳ございません……」
「な、なぜここで謝るのじゃ」
「本当に申し訳ございません……」
クロエは目にじわりと涙を浮かべる。
なのにヨシュアときたら、やっぱりいっさいフォローしない。
いい加減、かばってやったらどうなのか。
空気が読めない男でもあるまいし。
「前にわしと会ったときは、もう少しリラックスできていたじゃろう?」
「そうなのですが、あのあと、家に帰って後悔したのでございます」
「後悔?」
「はい。肩の力を抜きすぎてしまったと思って……」
グスッと鼻を鳴らしたクロエ。
ダメだ、かなりの重症だ。
奥ゆかしいにもほどがある。
「わしはただ、そなたとおしゃべりがしたいだけなのじゃ」
「それは、わかっているのですが……」
「クロエ」
ついにヨシュアが口を開いた。
「は、はい、ヨシュア様」
「どんな話題なら、楽しく話せそうですか?」
「それはその……わかりません……」
「では、色事の話でもしましょう」
ヨシュアがいきなりぶっ込んできたので、スフィーダは両手を上げ、どひゃっと驚いた。
「ヨ、ヨシュア様、それは……」
「私は貴女の背中にいくつほくろがあるか知っています」
「そっ、そんなこと、スフィーダ様の前で……っ」
頬を赤らめて、抗議したクロエである。
色事方面のことについて突っ込んだ話をするのは得意でないスフィーダだが、クロエが息を吹き返したように思えて嬉しくなった。
少なくとも、肩をすぼめて小さくなられているよりはずっといい。
だから、とことんまで彼女を攻めてやることにする。
「背中のほくろの数ということは、クロエよ、そういうことなのか?」
「ス、スフィーダ様までなにをおっしゃって――」
「まったく、そなたは、はしたない女じゃのぅ」
「そんなこと、ありません……っ」
「いいえ。貴女はベッドの上では、はしたなくなる女性ですよ」
「も、もうやめてください、ヨシュア様」
「いいえ、やめません」
「そんな……」
スフィーダ、耳まで真っ赤にしたクロエを見て、声を上げて笑った。
ヨシュアはヨシュアで気が済んだのか、左手を伸ばして彼女の背をさする。
「意地悪です。陛下も、ヨシュア様も」
そう言って、頬をふくらませたクロエのかわいさったらなかった。




