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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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158/575

第158話 パパがいなくなった理由。

       ◆◆◆


 大扉が開く。


 玉座の間に入ってきたのは少女だった。

 まだとおに満たないくらいだろう。

 黄色いワンピースを着ている。

 おさげに結った髪がなんとも愛らしい。


 所定の位置で止まると少女はぺこりとお辞儀をして、「ルリです」と名乗り、椅子に腰掛けた。


 次の瞬間、「あっ」と声を上げたルリ。

 ゆるしを得る前に座ってしまったことに気づいたのだ。

 だから椅子からおり、また頭を下げ「ごめんなさい」と謝罪したのだった。


「よいよい。かまわん。座ってよいのじゃ」

「えっと、それでは失礼します」


 ここに来る前に、練習してきたのだろうか。

 きちんとしよう、きちんと振る舞おう。

 そんな思いが確実に伝わってくる。

 微笑ましい限りだ。


「ルリはどうしてここに来たのじゃ?」

「言っていいですか?」

「もちろんじゃ」

「パパがいなくなってしまったんです。それで、えーっと、えーっと……」

「ゆっくりでよいぞ」

「はい。大丈夫です。えっと、少し、お知恵をいただきたいと思ったんです」

「知恵、知恵か。パパがいなくなってしまった理由について、話をしたいというわけじゃな?」

「はい。スフィーダ様なら、なにかわかるかなって思ったんです」

「ふむ。そういうことか」

「ママは理由を知っているみたいです。でも、訊いても教えてくれません」


 スフィーダ、その理由とやらを一生懸命に考えた。

 だが、全然思いつかないので、ヒントを得ようとルリに問うことにした。


「パパはどういう仕事をしておったのじゃ?」

「大工さんです。おうちを建てていました」

「まさか、事故に遭ったわけではあるまいな?」

「それなら、ママは教えてくれると思います」

「なるほど。その通りじゃ」

「きっと教えられない理由があるんです」

「うーむ。どういうことじゃろうのぅ」

「スフィーダ様でもわかりませんか?」

「すまぬ。わしにはさっぱり見当がつかん」


 ルリは「そうなんだ……」とつぶやき、表情を曇らせる。


「私には、なんとなくわかりましたよ」


 今日も玉座のかたわらに控えているヨシュアが言った。


「言ってみろ。どのような理由じゃ?」

「この場では申し上げたくありません」


 ルリが大きな瞳をヨシュアに向け、「どうしてですか? どうして教えてくれないんですか?」と無邪気な感たっぷりに問い掛けた。


「貴女にとっては、あまりよくない理由だからです」

「よくない理由? それでもいいです。教えてください」

「すみません。言えませんよ。私には言えません」

「そうですか……」


 がっかりしたような顔をしたルリ。


「パパのことを忘れることはできませんか?」

「できません」

「まあ、それはそうでしょうね」

「帰ってきてほしいです」

「そうなることを、私も願いたい」


 ルリは椅子からおり、深く深くお辞儀をして見せた。

 そして、「スフィーダ様、ヴィノー様、相談に乗っていただき、ありがとうございました」と言うと、とぼとぼとした足取りで引き揚げていったのだった。




       ◆◆◆


 三日後。


 またルリが現れた。

 今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。


「ル、ルリよ、どうしたのじゃ?」


 スフィーダは極度に心配して訊ねた。


「パパを見つけました……」

「おっ、それはめでたいことではないか」


 すると、ヨシュアが「陛下」と呼び掛けてきて。


「ひとまず黙ってください」

「なぜじゃ? 大いに喜ぶところじゃろう?」

「ルリさん。なにがあったのか、説明していただけますか?」

「……わかりました」


 ルリは俯いたまま椅子に座ると、いよいよ肩を上下させ始めた。

 ひっくひっくとしゃくり上げる。


「パパは……パパは、知らない女のヒトと歩いていました。とても楽しそうに、手をつないで……」


 スフィーダは思わず「えっ!」と声を上げた。


 まさか、そういうことなのか……?

 背筋を冷たいものが滑り落ちた。


「不倫なのか……?」

「ママから聞かされて、その言葉を初めて知りました。ママは泣いていました……」

「ゆるせん。ゆるせん話じゃ」

「でも、でも……」

「でも、なんじゃ?」

「あんなに幸せそうなパパの顔、初めて見たから、それでよかったのかなって……」

「そんなわけないじゃろうが。ルリのパパは、そなたのことも、そなたのママのことも裏切ったのじゃぞ?」

「裏切ったなんて思いたくない……です」

「なんじゃったら、わしが地獄に落としてやるぞ」

「そんなこと、私もママも望んでいません」

「し、しかしじゃな……」

「ママはとっても強いんです。私もそうなりたいです」

「それではわしの気が収まらん」

「陛下」

「なんじゃ、ヨシュア。なにか文句があるのか?」

「こういうことは、ままあることかと存じます」

「それは、そうかもしれんが……」


 ルリが顔を上げて、ズズッと鼻をすすった。


「スフィーダ様とヴィノー様の優しさを、私はずっと忘れません」

「わしは到底、納得できんぞ」

「陛下、こらえてくださいませ」

「ヨシュアよ、おまえは客観的すぎやせんか?」

「裏を返せば、陛下が感情的になりすぎているということでございます」


 椅子からおり、「本当にありがとうございました」とお辞儀をしたルリ。


「わしはそなたの味方じゃ。つらくなったら、またここを訪れるのじゃぞ?」

「そうしてもいいですか?」

「もちろんじゃ」

「ご迷惑をおかけしました」

「じゃから、気にするなと言っておる」


 ヨシュアが階段を下りた。

 歩を進め、立ち止まり、両膝を折ると、小さなルリのことを抱き締めた。


「もっと泣いていきなさい。きちんとたくさん泣いていきなさい」


 すると、途端に「えーん、えーん」と泣きじゃくったルリだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 駄目だ、こういう話には弱くて。 ルリが賢くていじらしくて、お父さんの幸せを願っているところが余計辛かったです。 [一言] スフィーダが感情的になっていてヨシュアが理性的に判断する。バランス…
[良い点] ラストのヨシュア、ずるいです! そういうところです!! おかげで涙ぐんでしまったじゃないですか! [一言] くだけた感想ですみません。あまりにツボだったので、どうしても叫びたくなってしまい…
2020/10/13 12:53 退会済み
管理
[一言] 大人の都合は子供に関係ないって詭弁ですよね。
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