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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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154/575

第154話 事後の顛末。

       ◆◆◆


 カナデとブレーデセンへの支援は、要請に応じる格好で決定した。

 イェンファは全面降伏、プサルムの一部となった。

 多くの犠牲を払うことになったが、目的はおおむね達成したというわけだ。


 戦争を勝利で終えた場合、決まって高まりを見せるものがある。

 ナショナリズムだ。


 謁見者にも、その傾向が見られた。


 さすがは、我が軍、我が国。

 さすがは、ヴィノー様、メルドー少佐。

 そして、さすがは女王陛下。


 そんなふうなことを言う者ばかりで、中には万歳三唱をする者までいた。


 それが悪いことだとは言わない。

 何事もうまく運んだ以上、国民感情が盛り上がるのは当然だからだ。


 そのうち、プサルムと仲の悪い隣国であるグスタフやハイペリオンを攻め取ってしまえという意見も噴出するかもしれない。


 しかし、義がなくば立つことはできず、動くわけにはいかない。

 政治家にも軍人にも、そのことは肝に銘じておいてほしいと、スフィーダは考える。




       ◆◆◆


 玉座のそばに設けさせたテーブルにての昼食をとり終わったあとのこと。

 紅茶のカップをソーサーに置いたヨシュアが、「陛下」と呼び掛けてきた。


「なんじゃ?」

「異界に通じる穴をあける、くだんの術者らの処遇についてなのですが」

「おぉっ。結局、どうすることになったのじゃ?」

「我が国で裁判にかけることになりました。というか、そうするしかありません」

「ふむ。まあ、そうじゃろうな」


 スフィーダは品のよさを意識して、紅茶をすする。

 プサルムの茶はいつもおいしいのだ。

 まずいなどと言っていたどこかの女王陛下は馬鹿なのだ。


「術者らは、間違いなく死刑になります」

「そ、そうなのか?」

「彼ら三名は、大昔から存在する宗教の現幹部です。国が窮地に立たされたとき、政府に働きかけたんですよ。自分達なら状況を打開できる、と」

「政府はその三人の存在を知っておったのか?」

「ミチル・ハガネ首相の証言によると、把握はしていたとのことです。長きにわたって魔物と通じていることをうたい文句としていたわけですから、それもおかしな話ではないと考えます」

「イェンファの首脳を含め、かばう余地はなし、か……。じゃが、よく殺されんかったな」

「術者らのことでございますか?」

「そうじゃ。穴はあいているわけじゃ。ならば、魔物らからすれば用済みのはずじゃろう?」


 案外、賢いではありませんか。

 からかうようにして、ヨシュアにそんなふうに言われてしまった。


「だからといって、始末してしまうことはありません。あらゆるケースを想定した場合、どうしたって利用価値があるという結論に至りますから」

「今になって思う。本当に、イェンファを占領する必要はあったのじゃろうか……」

「我が国の置かれている立場、さらには近隣諸国の情勢を考慮すると、やらざるを得ない。事前にそうご説明したはずでございますが?」


 スフィーダはがっくりと肩を落として、吐息をついた。


「どうすれば、戦争のない世になるのかのぅ……」

「ヒトが欲をなくせば、なくなるかもしれませんね」

「もっと幸せになりたいという気持ちを削ぐようなことがあってはならんと思うぞ?」

「もっと幸せに。その思考自体が間違いでございます。ヒトにはそれぞれ、身の丈に合った幸せというものがありますから」

「ヨシュアよ、今のおまえは幸せか?」

「じゅうぶん幸せです。陛下は違うのでございますか?」

「幸せじゃぞ? 幸せじゃが、なんというか、もっとこう……」

「ああ。フォトンとイチャイチャしたいのでございますね?」

「そそっ、そんなことは言っとらんじゃろうが」

「性欲は旺盛であってもよいかと存じます」

「お、旺盛ではないぞ? けっして旺盛ではないのじゃぞ?」

「しかし、したいのでございましょう?」

「ししっ、したいとか言うな!」

「まあ、とにかく」

「う、うむっ。そうじゃな」


 ヨシュアは優しげな表情を浮かべ、こくりと頷いた。


「はい。これにて一連の戦役は終結でございます」

「本当に、多くの犠牲を払ってしまったものじゃ……」

「しかし、犠牲があってこそ、ヒトはまた、強くなることができる」

「ヒトとは立派なものじゃのぅ」

「それでも、陛下には敵いません」

「そうか?」

「はい。女王陛下万歳でございますよ」

「おまえまで、俗っぽいことを言うでない」

「陛下」

「ん?」

「起立してくださいませ」

「玉座の上でか? それをするとおまえは怒るでは――」

「お立ちくださいませ」

「わっ、わかたったぞ。わかったからそう怖い声を――ひゃっ」


 立ち上がった瞬間、ヨシュアに抱え上げられてしまった。

 お姫様抱っこである。

 彼はくるくると回ってみせた。


「こっ、こら、ヨシュア」

「やはり、女王陛下万歳なのでございますよ」


 回転を止めるなり、そう言ったヨシュア。

 彼はほっぺにキスまでかましてくれたのだった。


 多少取り乱しはしたが、まもなく冷静さを取り戻し、スフィーダは天井を仰いで、ユメルのことに思いを馳せた。

 その悲しみに、両の目尻から涙が伝った。

 その液体すら、唇で受けてくれたヨシュア。


「ここまでしてしまうと、フォトンに叱られてしまいますね」


 ヨシュアはそう言って、凪のように穏やかに、笑ってみせた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ヨシュアの漢気をみました。 サラッと、国威の高まりに対するスフィーダの考察が入っていて彼女はしっかりした女王なのだと感じました。 [一言] ユメルのことは予測はしていましたがショッキング…
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