コケモモ採りに行こう!
ある秋の日の朝、アルブムが森を散策した成果を報告してくれた。
『パンケーキノ娘ェ、森デ、コケモモヲ、発見シタヨー!』
「コケモモですって!?」
それは秋に森で採れる、貴重な木の実なのだ。
アルブムはコケモモジャムを作り、パンケーキにかけて食べたいと言う。
「アルブム、コケモモはジャムもおいしいのですが、ソースにして焼いたお肉に載せて食べてもおいしいのですよ」
「エー、ナンダソレ! 気ニナルウ!」
そんなわけで、ザラさんを誘い、アルブムと共にコケモモを採りに出かけることとなった。
パンにハムを挟んだだけのお弁当をアルブムに作ってあげたら、喜びながら唐草模様の風呂敷に包み、背負っていた。足取りもルンルンである。
「コケモモはフォレ・エルフの森でもあったのですが、とにかく酸っぱくて」
「ある程度寒くないと、甘くならないのよねえ」
ザラさんの故郷である雪国では、甘いコケモモが採れるらしい。
「実家ではコケモモをお酒に漬けて飲んでいたわ」
「あー、いいですねえ」
お酒は飲めないのに、ザラさんから話を聞くとおいしそうに思えるから不思議である。
「ソースも楽しみだわ」
「期待していてください!」
アルブムはずんずんと先頭を歩いていたが、突然立ち止まる。
『ン?』
「アルブム、どうかしたんですか?」
『ナンカ、変ナ、足音ガ聞コエル』
「魔物ね」
ザラさんは背負っていた戦斧を手に取り、戦闘態勢になる。
そうこうしている間に、前方から四足歩行の魔物が駆けてくる姿が見えてきた。
アルブムは『ヒイイイ!』と悲鳴をあげつつ、私の胸に飛び込んできた。
「メルちゃんとアルブムは下がっていて」
「わ、わかりました」
『アルブムチャン、イイ子ニシテイルヨオ』
現れた魔物は、額に角が生えたオオカミである。数は五頭くらいか。
ザラさんは巨大な戦斧を振り回し、牙を剥く魔物の首を跳ね飛ばす。
『グルルルル!!』
「文句を言われても、あなた達のほうから襲ってきたんでしょう!!」
そんなことを言いながら、最後の一頭の首をはね飛ばした。
「もう大丈夫よ」
「お、お疲れ様でした」
『サ、サスガ、デスネエ』
ザラさんにケガはないようで、ホッと胸をなで下ろした。
それから一時間くらい歩いた先に、コケモモが生えた一帯にでてくる。
コケモモというのは言葉の通り、コケみたいに地面を這うように生える姿から呼ばれるようになったらしい。
『ヨーシ、採ルゾー!!』
アルブムはハムサンドを平らげ、空いた風呂敷の中にコケモモを摘んでいく。
私達も昼食であるサンドイッチを食べてから、コケモモ採りを開始した。
一時間半後――たっぷり採れたので、帰ることにした。
アルブムはコケモモを味見しながら摘んでいたようで、口周りが真っ赤になっていた。
ハンカチで拭いてあげようとしているのに、くすぐったいと暴れるのだ。
『アハハハハ! アハハハハ!』
「ちょっと! アルブム、大人しくしていなさいよ!」
『アアアア、アアアアア!』
くねくねと動き回るアルブムの口を拭いていたら、隣にいたザラさんがぼそっと呟く。
「アルブムはいいわね。メルちゃんにお世話してもらって」
「ザラさん? 何か言いました?」
「いいえ、なんでもないわ。帰りましょう」
帰宅後――すぐに調理に取りかかる。
お肉をほどよく焼いて、同じ鍋でソースを作る。
肉汁に赤ワインとコケモモ、ニンニクにショウガ、塩、コショウでしっかり味付けをした。
盛り付けたお肉にコケモモソースをかけたら完成だ。
「できましたよー」
『ワーイ!』
アルブムは食事のさいに汚れないよう、前掛けをかけていた。
「あら、アルブム。いい物を持っていましたね」
『モラッタ!』
ザラさんが作ってくれたのだろう。なんて優しい人なのか、としみじみ思った。
そして、今日、頑張って積んだコケモモをソースに仕立てたステーキをいただく。
アルブムはコケモモソースがたっぷり絡んだところにかぶりつく。
『ンンン~~~~!!!!』
アルブムの瞳がキラキラ輝く。
『オイシーイ!』
どうやらアルブムのお口に合ったようである。
続けて、ザラさんも感想を言ってくれた。
「コケモモのソースが甘じょっぱくて、お肉によく合うわ。とってもおいしい」
「よかったです」
私も一口。
ほどよい酸味のあるソースが、お肉によく絡んでいる。
そこまで高価なお肉ではなかったものの、コケモモのソースのおかげで、高級レストランの一品のように思えるから不思議だ。
「私の実家では、コケモモは薬みたいなものだったの。風邪を引いたら、ジャムを舐めるように言われていたわ」
コケモモには疲労回復、整腸効果、鎮静作用などが期待できるらしい。
常備薬代わりにジャムを置いていてもいいかもしれない。
森までコケモモを採りにいくのは大変だったが、おいしい料理を食べられたし、楽しい一日だった。
アルブムが『明日モ、コケモモ採リニ、行コウ!』だなんて言っていたが、さすがにそれは丁重にお断りさせてもらったのだった。




