表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エノク第二部隊の遠征ごはん  作者: 江本マシメサ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

285/413

メル、社交界デビュー!? その十一

「メルお嬢様、こちらを」

「ん?」


 侍女さんが持ってきたのは、純白の毛皮の外套。丸い帽子まで、毛皮製だ。


「外は雪が降っております」

「あ、そうなんだ!」


 身支度をしている間に、雪が降ったらしい。モッコモコの外套を着せてもらう。


「ああ、なんてなめらかな毛並み……!」

『キュッフ!!』


 エスメラルダが「私のほうが、毛並みいいんですけれど!」と張り合ってくる。


「え、まあ、エスメラルダの毛並みが最高であることは認めています」

『キュキュッ!』


 エスメラルダは「まあ、当たり前よね」とお澄まし顔で言っていた。

 侍女さんの手によってエスメラルダ専用の籠が用意されたが、いつもの天鵞絨ビロードの布が入っていないからか、顔を逸らしツーンとしている。

 侯爵家の用意した籠の中には、極上の毛皮が入っているのに……。


「仕方がないですね……よいしょっと」

『キュキュ、キュウ』

「え、いいのですか?」


 なんと、アルブムのように首に巻いていいと言うではありませんか。恐る恐る、エスメラルダを首に巻いてみる。


「うわぁ! ふかふか、暖かい!」


 アルブムは毛が短いけれど、エスメラルダは毛が長い。

 ほどよい温もりがあって、肌触りが極上で、首元が幸せになる。


「エスメラルダ、ありがとうございます!」

『キュウ!』


 そんなわけで、身支度は整った。リーゼロッテと合流する。


「リーゼロッテ、綺麗です」

「ありがとう」


 リーゼロッテの紫色の長い髪の毛は縦に巻かれ、ダイヤモンドのティアラが輝いている。ドレスは深紅でよく似合っている。上から黒い毛皮の外套を纏っていた。


「あら、メル。その襟巻素敵ね。どこで買っ……それ、エスメラルダじゃない!」

「ええ、そうです」

「よく、許してくれたわね」

「ええ、まあ」


 毛皮のコートにエスメラルダが嫉妬した結果だろうが、言わないほうがいいだろう。

 それに、幻獣愛好家が超希少幻獣である『魔石獣カーバンクル』を見たら驚くかもしれない。今日一日、襟巻の振りをしてもらっていたほうがいいだろう。


「まあ、いいわ。行きましょう。もう、参加者は集まっているみたいだから」

「私達、最後なんですね」

「主役だから、仕方がないじゃない」

「ええ~」


 リーゼロッテにがっしりと、腕を組まれる。


「実を言えば、わたくし、不安だったの」

「不安、ですか?」

「ええ。こういう侯爵家主催のパーティーに出るのは、初めてだから」

「そう、なのですね」

「ええ。園遊会を行う時はいつも、お父様が一人で切り盛りしているところを、そっと窓から覗いていたわ」


 リーゼロッテのお母さんは国のあちらこちらを飛び回り、慈善活動をしている。そのため、侯爵様一人でホストをするしかなかったようだ。


「わたくしは、小さな時から興味がない人と話すのが苦手で」

「得意な人なんて、そんなに多くないですよ」

「ええ、そうだけれど……」


 社交界の付き合いから逃げていたリーゼロッテは、いざ公の場に出た時に後ろ指を指されないか不安だったらしい。


「お父様の顔に泥を塗ることになるでしょう? わたくしは、こんなだから」

「そんなことないですよ。リーゼロッテは遠征部隊で騎士を立派に務めていたではありませんか。それに、幻獣の周知にも貢献しました。きっと、侯爵様にとって、自慢の娘ですよ」


 そう言ったら、リーゼロッテの目からポロポロと涙が流れた。


「わっ、リーゼロッテ!?」

「メル、ありがとう」


 涙を流すリーゼロッテを、優しく抱きしめる。

 そのさい、小さな声で「エスメラルダって、やっぱり毛並みがいいわ」と呟いていた。私が抱擁した際に、エスメラルダにも触れてしまったらしい。


 なんていうか、リーゼロッテは、どんな状況でもリーゼロッテだった。


 ◇◇◇


 リヒテンベルガー侯爵家の庭は、うっすら雪が積もっていた。滑らないように注意をしなければ。

 噴水のある広場には、幻獣パーティーに招待された三十名の客と契約している幻獣がいた。


 もっとも大きな個体は、火蜥蜴レザールだろう。全長三メトルくらいあるのか。

 見た目は大きなトカゲだが、ルビーのような美しい鱗を持っている。

 他に、目立っているのは、角や瞳が宝石のように美しい宝石鹿ジャムハート、全身まっ白で、モコモコで愛嬌のある雪狐スノソラ

 他に以前、幻獣誘拐事件のさいに、脱走し保護した幻獣も来ていた。

 恋茄子アルラウネ白栗鼠スクイラル銀兎インレプスなど。捕まえるのに苦労したな、と懐かしくなった。


 主役らしいリーゼロッテが来たが、注目は別の存在ものに集まった。


鷹獅子グリフォンだ!」

黒銀狼フェンリルもいるわ!」


 大型幻獣なので、目立つのだろう。逆に、襟巻に徹しているエスメラルダの存在には、まったく気づいていない。

 ここで、想定外の事態となる。


「エルフもいるわ!! どうして!?」

「エルフも幻獣だったか?」


 ……残念ながら、エルフは幻獣ではないデス。


 ここで、侯爵様がゴッホンと咳ばらいし、リーゼロッテと養女である私を紹介してくれた。

 ハッと我に返った参加者らが、温かい拍手を贈ってくれる。


 私とリーゼロッテは淑女の礼を返した。

 幻獣パーティーの始まりである。


お知らせ

◇その①

コミック版『エノク第二部隊の遠征ごはん』十四話が、本日お昼の12時くらいに更新にされる予定です。

ついに、幻獣保護局と正面対決編となりました。そして、眼鏡っ娘な幻獣マニアもコミック版初登場です! 可愛いので、ご期待ください。

◇その②

本日より新連載「『王の菜園』の騎士と、『野菜』のお嬢様」がスタートします。

地味すぎて結婚できない騎士と、畑愛が強いお嬢様の両片想いラブコメです。どうぞよろしくお願いいたします。

https://book1.adouzi.eu.org/n6152fc/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ