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猫恋 ~銀河帝国出身の私が異世界の猫たらしに命令されて恋に落ちました~  作者: ひろの
第4章 未来へ

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第32話 因縁の対決

――灼熱が生まれようとしていた。


リュミナの頭上、高空に。

天を裂くように回転しながら圧縮されていく赤黒い魔力の塊――


メテオ・ストライク。


それはただの魔術ではない。

“街を一つ消す”ほどの殺戮魔法だ。


(……もう……間に合わない……)


リュミナの胸がきゅっと縮む。

レーザーガンを構えた手が震え、視界が揺れる。


(こんな……こんな時に、わたし……)


彼女の表情から血の気が失せる。


光が膨れ、圧力が空気ごと悲鳴を上げた。


――終わる。


リュミナは、思わず強く目を瞑った。


その瞬間だった。


メテオが、爆ぜた。


いや、正確には――

具現化しかけた魔力構造そのものが、中から「破壊」された。


 パリンッ……!


ガラスのように砕け散った魔力が風に溶け、炎の核は跡形もなく消えた。


「……え?」


リュミナは目を開けた。

何が起きたのか、理解できない。


イグラートの顔が、凍りついた。


「な、なんだと……!?

 魔法構造破壊術式コード・ブレイカー……だと!?」


狼狽が露骨に声に滲む。


「馬鹿な、ありえん……!

 あれを破壊するには、メテオ・ストライクそのものを習得している魔術師でなければ不可能だ!

 人間如きが……!」


「――人間如き?」


嘲るような声が、空を裂いた。


風が震え、リュミナの身体が反射的にそちらを向く。


そこに――


蒼い外套を翻し、魔力の残滓を払うエルフの女性が立っていた。


「人間如きと馬鹿にしてもらいたくはないな。

 魔法は何も、お前たちデーモンの所有物ではない。」


金髪が風に揺れる。

澄み切った瞳は、イグラートを一点に見据えていた。


「――シエル!!?」


リュミナが叫んだ。


シエルは振り返り、短く笑う。


「久しぶりだな、リュミナ。」


軽く手を上げ、そこに蒼い魔力が集まっていく。


「借りを返しに来たぞ。

 まさかこの街が狙われるとは思っていなかった。……遅れた。」


「遅れてなんかないよ!!

 本当に……助かった……!ありがとう!ありがとうー!!」


胸の奥がじんと熱くなる。

リュミナは、肩が震えているのを自覚した。


そんな彼女を横目で見ながら、シエルは静かに、しかし鋭く言い放つ。


「リュミナ、この魔物の大群は――全部私が引き受ける。

 お前は迷うな。イグラートは……お前が止めろ。」


「私が……?」


「行け。」


言葉は短いのに、絶対の信頼が込められていた。


リュミナは息を呑む。


(……そうか。私、ひとりじゃないんだ……)


シエルは一歩前へ出る。

その気配は、空気ごと切り裂くほど鋭い。


イグラートが歯噛みし、怒声を上げた。


「貴様ァ……!

 小娘に肩入れするとは、愚かな人間よ!

 よほど死にたいのだな!!」


シエルは肩をすくめ、吐き捨てるように言った。


「勘違いするな。少しばかりの借りはあるが……。

 私はただ――」


蒼い魔力が爆ぜる。


「お前のような傲慢な奴が嫌いなだけだ。」


――空気が震えた。


シエルはそのまま火炎弾の魔法を詠唱する。

まるでマシンガンのように火炎弾が北門の魔物に襲いかかった。

着弾と同時に爆ぜて、魔物たちを吹き飛ばしていく。

一気に北門の形勢が傾いた。


「生意気なエルフめ!!」


シエルを狙ったイグラートの火球に、リュミナが割り込んでシールドで弾き飛ばした。


「あんたの相手は私!聞いてなかったの?」


「小娘がぁ!!」


イグラートの黒翼が炸裂音と共に羽ばたき、赤黒い魔力が尾を引く。

対するリュミナは光翼を展開し、加速した瞬間に残像が三つ走った。


魔物の大群の相手はシエルに任された。

だからこそ――この空は、リュミナとイグラートの決闘の場となった。


「小娘が……メテオを止められたぐらいで調子に乗るな!!」


イグラートの両腕から黒炎弾が連射される。


 ドッ! ドドドッ!!


リュミナは息を殺し、身体をひねって滑るように回避した。

まるで空気の流れそのものを読んでいるかのように。


 ヒュンッ!


黒炎がかすめるたび、髪が揺れ、光翼が青白く散る。


(シエルが魔物の群れを抑えてくれてる……!

 だから、私がイグラートを止める!)


リュミナは魔法玉を片手で高速投擲。


「――行けッ!」


命中した瞬間、火炎炸裂弾が花火のように爆ぜる。


 ドォォン!!


黒炎と火炎が空中でぶつかり、光が渦巻いた。


「チッ……!」


イグラートが弾け飛ぶように後退した。


イグラートはイラついたように舌打ちし、急にその軌道を変え――

一直線ではなく、不規則なジグザグを描きながら突っ込んできた。


速い。

さっきより、明らかに速い。


「死ねぇぇぇ!!」


左右から二方向同時の闇弾。


(くる!)


リュミナは一瞬で判断し、身体を"風に乗せるように"反転。


 ギュンッ!


紙一重で弾道を抜ける。


イグラートの目が驚きに開いた。


「……馬鹿な!?人間如きが我らデーモンより速く飛行できるわけがっ!」


「あんた、ちょっとうぬぼれすぎじゃない?

 本気の”ほ”も出してなかった私に1回ぼろ負けしてるくせに!」


イグラートの眉間に青筋が走る。

猛烈な勢いでリュミナに向けて突撃した。


「貴様ぁ!!」


それをギリギリで交わすと、すれ違いざま、

リュミナは腕のパーソナル端末のスイッチを押した。

ホログラフのアレンが現れる。

ARゴーグルをかけさせた時に、その動きが面白かったから悪戯で撮影した時の物だ。

投影されたアレンはリュミナの傍に立ち、空中で腕をジタバタさせている。


「あ、あの剣士を召喚!?」


急なアレンの登場にイグラートは完全に動揺した。


その隙を見逃さない。

よく狙ったレーザーガンが、イグラートの左手親指を撃ち抜いた。


「がっ!?」


黒い血が、空に散る。

その痛みで握りが緩くなって、持っていた杖を地上へ落とした。


「しまった?!」


イグラートは叫ぶとすぐに杖を追った。


だがリュミナがレーザーガンを乱射したため、イグラートはそれ以上近寄れず杖を失った。

これで今までのような高速詠唱ができなくなる。


「ぐっ……このガキィ!!」


イグラートは腰に下げていた、魔剣を抜いて構えた。

魔剣ヴァル=ネクス――“終焉を告げる黒炎の剣”

彼が持つ中で最強の剣であり、その刀剣が纏う魔力素は

レーザーブレードでも焼ききるのは困難だろう。


杖を失った影響か浮遊魔法も不安定になった。


イグラートは仕方なく、地上へ向かう。


彼が地上へ降りた、その瞬間――


「――待ってたぞ、イグラート」


低い声。


リュミナが振り向く。


「アレン!?」


いつの間に――

いや、西門を制圧して、リュミナを目指してずっと走ってきていた。


傷だらけの体。

それでも、剣を構えている。


リュミナも着地した。


「アレン!?」


「リュミナ、頑張ったな。後は俺に任せろ!」


「でも!?」


「下がってろ。もうお前をこれ以上危険な目に合わせたくない。

 最後は俺がこいつを仕留める。」


その気迫にリュミナも気圧された。

そして優しさも感じた。


「わ、わかった。アレンに任せる!

 でも……、絶対に勝つこと!いい?」


「もちろんだ。危険だから下がっていてくれ。」


二人の会話を無視して剣を構えたイグラートが歩み寄ってきていた。


剣を振りかぶる。

アレンはそれをギリギリでかわす。


リュミナは足手まといにならないように空中に逃れた。


二人の男が剣を突きつけ合った。


双方しばらく動かなった。


アレンの目が、イグラートを捉える。

イグラートの目が、アレンを睨む。


目に見えない闘志がぶつかり合う。


リュミナが息を呑む。


そして――


二人は同時に踏み込んだ。


剣と剣が交差する。


ガキィィィィンッ!!!


火花が散り、衝撃波が地面を抉る。


最後の戦いが、今、始まった。

遂にラスボスとの決闘です。


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