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猫恋 ~銀河帝国出身の私が異世界の猫たらしに命令されて恋に落ちました~  作者: ひろの
第4章 未来へ

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第31話 鋼殻の死闘、現れる悪魔

――ドォォォォン!!


北門の方角で、巨大な爆発が夜明けの空を赤く染めた。


アレンは振り返り、空へ瞬く光の奔流を見つめる。

爆炎の中でも、光翼を翻しながら舞うリュミナの姿がわずかに見えた。


「……無茶してるな、あいつ」


心臓が強く跳ねる。

一歩、そちらへ向かいたい衝動が脚を震わせる。


だが――アレンは静かに息を整え、ブレードを握り直した。


「大丈夫だ。リュミナは……ああいう時ほど強い」


信じている。

そして自分も、彼女に信じられた。


なら、迷う必要はない。


「こっちは、俺が守る」


アレンが剣先を地面に向け、一度構え直した瞬間――


 ガシャアアアアアア!!!!


西門前の森が砕けるように割れ、金属質の甲殻を持つ魔物――

シェルガイストの大群が、音を立てて迫ってきた。


「来たぞォ!! 前に出ろ、重装戦士隊!!」


隊長の怒声が響き、鉄鎧を着た重装戦士たちが一斉に盾を掲げる。

盾がぶつかり合う音が、軍陣に厚みを作った。


アレンは一歩前へ出る。


「全部斬る。俺が道を開く。

 背中は任せた!」


「任せろォ!」

「アレン殿に続け!!」


戦士たちの叫びが響く。

次の瞬間。


 一匹目が牙を剥き、跳びかかってきた。


「ッ!!」


アレンの身体が、自然に反応していた。


――青白い光が奔る。


 ズバァアアアア!!


一撃。

鋼鉄すら砕く甲殻が、紙のように裂け、シェルガイストが真っ二つに倒れる。


すかさず二匹目が横から殴りかかる。


「ふっ!」


回転し、薙ぎ払うように光刃を振る。


 ギャアアアア!!


甲殻が裂け、地面に叩きつけられる。


「全部、来い!」


アレンが吠えるように叫んだ瞬間――

群れ全体が刺激されたように、一斉に突撃してきた。


「前列、耐えろ! 押されるなァ!!」


重装戦士たちの盾にシェルガイストが激突する。

金属を殴るような音が響き、盾ごと押される戦士もいた。

それでも、誰も引かない。


「今だアレン殿!! 前列が押さえています!!」


「行く!!」


アレンは前列のわずかな隙間を通り、敵の真ん中へ飛びこんだ。

光刃が輝く。


 一撃、二撃、三撃――


  斬る、斬る、斬る!!


シェルガイストが次々と両断される。

甲殻が硬いほど、光刃は眩しく弾ける。

斬るたびに、周囲に火花のような光が散る。


(数が……多い……!!)


斬っても斬っても、背後から新的な敵が迫る。

正面を斬り裂いた瞬間、背中に影が忍び寄っていた。


「アレン殿、後ろォ!!」


「っ!」


振り返る暇もなかった。

シェルガイストの巨大な鎌が、アレンの背中へ振るわれる。


――その時。


 ガギィィィィン!!


重装戦士が間に飛び込み、盾で受け止めた。


「ぐ……うぅッ!!」


鎌が盾を貫きそうになる。

戦士の腕が震え、血が流れる。


「お前……!」


「気に……すんな……!

 前だけ見て戦ってくれや……アレン殿……!!」


アレンの胸が熱くなる。

守られている。

仲間に背中を預けられている。


「……ああ。任せろ!!」


アレンは地面を蹴り、跳び上がる。


「――はぁあああああ!!」


光刃を縦に叩きつけ、戦士を狙ったシェルガイストを真っ二つに裂く。

戦士が息をつき、笑った。


「へっ……助かったぜ……!」


「今度は俺が背中を守る番だ!」


アレンは再び大群の中へ飛び込んだ。


斬る。

斬る。

斬る。


剣筋が一瞬たりとも止まらない。

いち早くここを守り切る!

そして、北門へ応援に行くんだ。

リュミナの戦いを……楽にするために……!


アレンのブレードから、白い光の軌跡が一直線に伸び続けた。


その光が、百匹近いシェルガイストの群れを――

時間をかけながら、確実に、ひとつずつ切り伏せていった。


――どれほど斬っただろうか。


シェルガイストの甲殻が砕け散り、

地面に転がる死骸が山のように積もっていく。


アレンが息を荒くしながら、最後の一匹の前に立った。


「……は……はぁ……」


腕が震える。

剣が重い。


でも――


「まだ……来いよ……!」


足を踏ん張る。

まだ、倒れるわけにはいかない。


その声に応えるように、最後のシェルガイストが牙を広げる。

アレンは足を踏み込み――


「これで……終わりだァッ!!」


 ズバァアアアア!!


最後の巨大な影が、光の柱に貫かれるように斬り裂かれた。


静寂。


風が吹き、アレンのマントを揺らす。


周囲には――動く影はもういなかった。


「……は……はぁ……」


アレンは肩で息をしながら、ゆっくり剣を下ろす。


後ろには重装戦士隊が立っていた。

誰もが息を荒げ、盾には無数の傷、甲殻の破片が刺さっている。

膝をつきながらも、全員がアレンを見ていた。


「……生きて……るよな……」


「なんとか……な……」


「アレン殿……全部……斬ったのか……」


アレンは力なく笑った。


「お前たちが……持ちこたえてくれたおかげだ……

 本当に……ありがとう……!」


重装戦士のひとりが、笑いながら肩を叩いた。


「いや……礼なら……全部倒したアンタに……言うべきだ……!」


「西門――守りきったな!!北門に伝えてやれ!」


「えい!えい!おーーーーーー!!」


西門から上がる勝鬨が、北門を守る兵士達の気持ちを盛り上げた。


「俺達も負けてられん!いくぞぉぉぉ!」


北門からも雄たけびがあがった。


アレンは最後にもう一度だけ北門の空を見上げた。

そこでは、光が踊っていた。


「リュミナ……お前も頑張ってるな。今から応援にいく!」


アレンは剣を握り締めたまま、大きく息を吐いた。


西門の激戦は――終わった。


だが、ザルドの戦いはまだ続いている。


・・・

・・


西門の激戦が終わり、アレンたちが北門に向けて走り出そうとした、ちょうどその時だった。


――ドグァァァァァァァン!!


北門のほうから、雷鳴のような爆音が響きわたった。


「……!!?」


アレンが振り向くより早く、北門上空にいたリュミナが、はじかれたようにそちらを見る。


城壁の一角が、まるで巨人に殴り砕かれたように吹き飛んでいた。

石片が弾丸のように飛び散り、そこに陣取っていた魔法兵と弓兵が、次々と悲鳴を上げながら空中に投げ出され――


 バラバラ、バラバラッ……


無力に地面へと落下していく。


「なっ……なんで!?」


リュミナは硬直した。

その光景が、現実だと脳が受け止めるのに、一瞬遅れた。


魔物の投石でもない。

魔術の斉射でもない。


ただの爆発では、あんな一点だけえぐり取るような破壊は起こらない。


「――ッ!?」


第二撃が飛んできた。

今度は見えた。


炎をまとった巨大な光球。

赤黒い尾を引きながら、城門そのものへ向かって一直線に落ちてくる。


リュミナはそこに向かおうとするが間に合わず、二撃目の火球で城壁が爆ぜる。


――ドガァァァァァァァァン!!!!


城門全体が揺れ、木材が悲鳴を上げた。

同じく城壁を守る兵士達が多数犠牲となった。


「今のは…どこから……?」


耳鳴りがまだ消えないうちに、リュミナは震える視界を上げた。


そこにいた。


空中に浮かび、黒い翼をゆったりと広げながら笑う影。

背後には漂うように炎の魔力が渦を巻き、まるで夜明けの赤空を自らのものとしているかのようだった。


「……イグラート……!」


魔将イグラート。

魔王直属の幹部、最凶クラスの怪物。


奴は、口端を吊り上げていた。


「ククッ……久しいな、小娘。あの時の痛手、お前にも返しにきたぞ?」


その声が、震えるほど冷たい。


「その前に………少々ここはうるさいな。少し掃除するか。」


(……っ! また撃ってくる――!)


リュミナの喉がひゅっと締まる。


イグラートは詠唱を開始する。


「さ、させるか!!」


リュミナはイグラートに向けてレーザーガンを連射した。

イグラートはこれが魔法障壁で防げないことを知っている。


その時――


巨大な影がイグラートの前に割り込んだ。


翼竜。

いや、違う。

従魔だ。


レーザーが翼竜の体を焼く。

でも――翼竜は動かない。

主を守ることだけを優先している。


(くっ……操られてる!?)


翼竜の体がレーザーで焼かれる。

それは、自分の命よりもイグラートを守ることを優先していた。


翼竜の盾を撃ち抜けない。その隙に、イグラートが詠唱を完成させようとしていた。

その時、空気が歪む。上空に極大の火球が生み出されようとしていた。


(しまった!?メテオ・ストライク!?

 これは防げない。一撃で街が消える!?)


リュミナは叫びかける。


「やめ――」


しかしイグラートは聞く耳を持たない。

その眼は、完全に獲物をいたぶる捕食者だった。


「さあ――もう一度味わわせてやる。絶望という名の、真の炎を……!」


イグラートが、冷たく言い放った。


「メテオ・ストライク」

美しき男たちの戦場での友情、いいですねー。そして最後の絶望の引きです。

どう切り抜けると予想しますか?


ご感想やご意見、スタンプ、どんな些細なものでも大歓迎です。励みになります。

もしよろしければ、次の読者への道標に、評価やブクマをお願い致します。

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