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猫恋 ~銀河帝国出身の私が異世界の猫たらしに命令されて恋に落ちました~  作者: ひろの
第2章 追われるもの

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第21話 残響の核(レムナント・コア)

「やばいやばいやばい」


二人して辺りをドタバタしながらウロウロした。


「えーい!うろたえるな!」


一番うろたえていたリュミナが叫んだ。


「アレン!私をお姫様抱っこして!」


「は?こんな時になんだよ!」


「違うの!このローブだと走りにくいの!

 だから私を抱きかかえて崖の際まで走って!」


仕方なくアレンがリュミナをお姫様抱っこして走り出した。

リュミナはぎゅっとアレンに抱きつき顔を寄せた。


「おい、リュミナ。走りにくいからやめて!」


「いいから走れ!時間がない!」


仕方なく抱きかかえたままアレンは猛ダッシュした。

結局、リュミナが自分で走った方が速かったかもしれない。

抱いてほしかっただけのようだ。


崖際に到着してリュミナを下ろした。


二人して崖の底を見ようとするが、あまりにも深くて見えない。


「なぁ?リュミナ?ここ飛び降りるとか言わないよな?死ぬぞこれ。」


「良いから!!今度は私がアレンをおんぶするから後ろに回って!」


「は?何言ってる?」


「良いから、いちいち口答えすんな!」


叱られて仕方なく後ろに回ってリュミナの首に手を回した。


「それじゃダメ、私の首が締まる。もうちょっとした腋の方まで手を伸ばして。」


「え?な、な、なんで?!それだとその……触ってしまう……お前の胸を……。」


「もーう!童貞かよ!今、非常事態なの!分かってる?別に減らない!

 触っていいから早くして!」


恐る恐るアレンがリュミナに腕を回す。


「ぎゃあ?!揉むな!」


「あ、ごめん!」


ドタバタしている内に詠唱が完了し、メテオ・ストライクが発動する。

上空に巨大火球が発生して荒野に向けて移動し始めた。


「これで終わりだ。大魔導士。」


シエルはにやりと笑うと、巻き込まれないように転移の魔法を唱えて消えた。

迫りくるメテオ。


リュミナは足元の機械を操作した後、背中にアレンを背負ったまま、

崖に飛び降りた。


もの凄い勢いで落下するが、急にその速度が遅くなる。

足元に半重力フィールドが展開されて、ゆっくりとした落下に変わった。


「アレン、しっかり捕まってて。離したら死ぬよ。」


「あ…あぁ。」


手に柔らかい感触を感じながら、アレンの頭が沸騰気味に返事をした。


その時、上方からすさまじい地響きと爆音、そして爆風が発生した。

もしあの場にいたら簡単に吹き飛ばされていただろう。


「助かったぁ。」


リュミナが両手でバランスを取りながら呟いた。


「このまま下りるよ。」


「あ…あぁ。」


相変わらずアレンは沸騰気味。


どれくらい時間が経ったのだろうか。辺りは日の光も届かず真っ暗だ。


唐突に足元に感触が現れる。


「地面に着いた。」


辺りを確認する。


「アレン、もう着いたよ。」


「あ…あぁ。」


「……いつまで握ってるんだよ!」


肘が顎にあたってようやくアレンは引き剥がされた。


「あ、ありがとう、リュミナ。生き延びた。」


アレンは大の字に倒れたまま、辛うじてそれだけ返事した。


アレンがランタンに火を入れる。辺りに淡い光が灯る。

暗闇の中に、微かに光を反射する石の壁が視界に入る。


「……なんだ、これ……?」


アレンの元にリュミナも駆け付けた。


リュミナも膝をつき、手にした機械を照らしながら周囲を確認した。

砂塵が舞う中、目の前に現れたのは、まぎれもなく人工的な構造物だった。


「アレン……見て。これは……遺跡……それも、ただの遺跡じゃない。」


壁面には細かい彫刻と、見慣れない古代文字が刻まれている。

リュミナの機械が反応し、文字列を解析すると、低い声で呟いた。


「これは……。」


(……これは実験施設……か。先駆文明の研究所だったようね。)


アレンは思わず息を飲む。


「まだこの遺跡の存在はギルドにも知られてないぞ。」


「ええ、未発掘の情報が眠ってるかも?」


リュミナは手で壁をなぞりながら、微かな隆起を探る。


「入り口は……ここらしいわ。何か仕掛けがあるはず。」


古代文字は単なる装飾ではなく、制御機構の一部のように見える。

壁面に手を触れると、リュミナの手が微かに震えた。


「アレン、ここ……ただの扉じゃない。

 触れる場所を間違えると、閉じ込められたり

 ……トラップが作動するかも。」


アレンは深呼吸して頷いた。

「わかった。慎重に行こう。二人同時に操作する感じか?」


「いえ、一人で大丈夫。中には私一人で行く。」


「待て、危険だろ!」


「この遺跡……アレンの方が危険なの。お願い。私を信じて。」


「……でも……。いや、わかった。危険なことはしないな?」


「えぇ、もちろん。アレンはここに野営地を設立して。

 どんなモンスターが居るかもわからない。警戒して。」


「わかった。ここはまかせろ。」


アレンは辺りを警戒しながら拠点の作成を行った。


そしてリュミナが壁面の古代文字と装置を照らし、指を滑らせる。

文字の形状や隆起を丁寧に確認すると、扉の下部に微細な凹凸が連なるラインを発見する。


「ここ……。軽く押すと何かが動くはず。」


リュミナが手を添えると、壁全体が低く唸るように振動した。

続いて微かに機械音が響き、石の壁に光のラインが浮かび上がった。

それは扉のような輪郭であり、ゆっくりと左右にずれ始める。


「……開いた。」


光が漏れ、薄暗い通路が姿を現した。

ひんやりとした空気が二人の顔を撫でる。

湿った石の匂いと、微かに残る古代魔素の匂いが漂った。


「……ここが、レムナント遺跡の奥か。」


リュミナの声が少し震える。


(外見は小さいけど、中は相当広そうね……警戒しながら進まないと。)


アレンが外で見守る中、薄暗い通路の奥へと足を進めた。

壁には実験用の設備らしき痕跡が散見され、天井には古代魔力を循環させる管が絡まっている。


「ここで、古代文明は何を……研究していたんだろう?」


リュミナのつぶやきが静かな空間に響き渡った。


崖下の遺跡は、想像以上に立派で、なおかつ秘密めいていた。

彼女の足音だけが、深い地下通路に静かに吸い込まれていく。


比較的大きな部屋に出た。


前と同じように実験データや報告書を全て端末にダウンロードした。


ここの施設でも同じようにニャーンから作り出した進化亜種の研究を行っていたようだ。

ここでは前のデータベースでは入手できなかった、その後の情報が新たに入手できた。


守護国の先駆研究者はニャニャーン神聖帝国と同様に、彼らを魔法兵として活用することを考えたようだ。


クローン繁殖し、意志を削除したヒューマン達の魔法兵は一万人ほど編成されて、別の惑星で戦闘試験を行ったようだ。


結果は――大失敗だった。


彼らが魔法を発動できるのはアルティオン粒子のおかげであり、

粒子の濃厚な惑星レヴェリスでしか使えなかった。


その上、アルティオン粒子濃度が通常の宇宙空間では、彼らは不調をきたし

次々と死んでしまった。

つまり、彼らはアルティオン粒子に適合しすぎた影響により、粒子が豊富な

レヴェリスでしか生き残れない体質となってしまったようだ。


兵士としての価値が激減したことで、先駆帝国内でも、この研究と魔法に対する興味が失われ、予算削減と共にこのプロジェクトは凍結された。


「こっこれは・・・!?」


(重要な交渉材料を手に入れたわ!

 先駆文明は気付いたんだ!

 レヴェリスのみんなは兵器には適合しない!

 彼らはこの星でしか生きられない。

 今まで通りそっと観察するしかないことを!)


「私達ニャーンもそうあるべき!」


他にも生きているデータの中で必要そうなものを全てダウンロードした。


その時、小さな円環型の装置をリュミナが見つけた。


「こっこれは!? ゼログラヴィティ・リング」


かつて、先駆文明から流出したことがあり、図鑑でみたことがある。

アーティファクトの一つとして認知される先駆アイテム。


背中に装着する半円形のリング状装置で浮遊時は光の羽のようなエネルギーが展開される。

使用者の周囲の重力を局所的に反転・中和し、浮遊状態を維持、アルティオン粒子を噴出することで方向制御と加速が可能だ。


これ1個で宇宙戦艦が何隻も購入可能なほど高価な代物である。


「これで地上に戻れる!」


リュミナは背中に装着し、取得したデータと共にこの研究室を後にした。


走って入り口まで向かう。外から激しく争う音が聞こえる。


(アレンが戦っている?!)


外に出るとアレンが疲労した顔で迫りくる敵を追い払っていた。

野営地を作る余裕すらなかったようだ。


リュミナの顔をみると安堵した表情で走り寄って来た。


「ここは危険だ」

「抱いて!」


同時に全く正反対の二つのセリフが放たれた。


「は?またかよ!?」


「その反応いいから!」


叱られて、アレンは素直にリュミナに抱きついた。


「落ちないようにもっとしっかり抱きついて!」


お互いが胸を押し付け合い、顔も寄せ合った。


あぁ、この鎧がなければ……アレンはそう思ったに違いない。


アレンがしっかり抱きついたのを見たリュミナがゼログラヴィティ・リングを起動した。


背中に光の翼が展開される。

迫りくるモンスターを無視して、リュミナの体がアレンごとふわりと浮かんだ。


そして手を広げたリュミナが高速に上昇していった。


「落ちないでね、アレン!このまま地上に行くよ!」

今回はアレンにとっては、いっぱいお胸を揉めたラッキースケベ回でした。

リュミナは気にしてないし、アレンは固まったままですけど、アレン、よかったね。



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