90話:早朝の訪問者
翌日のことだ。俺の家の前に、早朝から、紅色の派手な車が止まった。それは、見覚えのある車。
――プァアアアン!!
早朝の住宅街にクラクションの音が鳴り響く。俺は、慌てて窓を開けて、クラクションを鳴らした人を確認した。
「深紅さん!」
「やあ、清二君」
優雅に挨拶をしながら車を降りた人を俺は、咎める。
「朝っぱらから、クラクション鳴らすなんて何考えてるんすか?」
「少し話があってね」
そう言って、一瞬で、気が付いたら、深紅さんは、俺の――背後にいた。
「うおわぁ!」
俺は、わざとらしく驚く。実際は、昨日あった時点で凄いことは見抜いていたし、白羅で慣れていたからそこまで驚かない。
「おいおい、驚きすぎだ」
呆れた顔の深紅。しかし、このわざとらしい声には、目的が二つ。一つは、俺が深紅さんほどのスピードになれていないと錯覚させること。そして、もう一つは、
「清二!」
「セイジ!」
我が家の居候二人を呼び寄せるため。
「|《黄金の剱》《コールブランド》!」
「氷千帝華!」
「な、何っ!」
驚愕の表情の深紅さん。俺は、笑っていた。
「驚いた。キミは、人を欺くのがうまいな……。それに策士だ」
深紅さんからの賞賛の言葉。
「それで、何のようですか?」
「ああ、悪いな。オレから頼みがあった」
頼み?
「今ので君をためさせてもらったが、十分強いからな。彼方を頼めないか?」
会長を頼む?どういうことだ。
「すまん、言葉が足りなかったな。天龍寺彼方は、今、時期当主という立場に悩んでいるんだ。それを支えてやってくれないか?」
時期、当主?
「ちょっと待て、どう言うことだセイジ」
「ええ、説明を頼みたいわ」




