89話:叔母
仕事の帰り、俺は、会長と共に、道を歩いていた。
「んぅ~、いくら夏でも、日が落ちると涼しいわね~」
会長の言葉に、俺は同意した。
「そうですね~。この時期、まだ、少し肌寒いですから、寝冷えとかにも気をつけたほうがいいでしょうし」
「ん~、そうだね」
そんな会話をしているとき、俺と会長の横を、一台の車が通った。紅色の派手な車だ。そして、俺たちの少し先で車が止まる。
「ん、あれって」
会長が何かに気が付いたようだ。
「どうかしましたか?」
「え、いや、なんでもないって言うか、手遅れ、かな」
車のドアが開く。中から出てきたのは、深紅の髪と深紅の瞳をした、二十代くらいの女性だ。
「彼方、今帰りか?」
アーサーのような、男口調で、女性は、会長に尋ねた。
「ええ、今かえり道ですよ、叔母上」
叔母上?会長の叔母さんなのか。
「そっちは……ほぉう、蒼か。懐かしいな」
「深紅叔母様、用がないなら、お帰りください!」
会長は、少し怒り気味だ。まあ、仕方ないことか。疲れているだろうし、早く帰りたいに違いない。
「なあ、キミ、名前は、なんて言う」
俺へ向けられた問い。
「青葉清二ですけど」
「蒼刃聖慈?なるほど、蒼天の……」
蒼天といったか?俺の《蒼天の覇者の剱》を知っているのだろうか。
「ハハッ、面白い。オレは、天龍寺深紅だ。彼方の叔母にあたる」
「俺は、三鷹丘学園生徒会生徒会会計を勤めています」
深紅さんの自己紹介と俺の自己紹介。その後、会長は、深紅さんに送られて家に帰ることになった。
「それじゃあ、また明日、学校で会いましょう」
「うん、じゃあね清二君」




